音楽ナタリー PowerPush - 平井堅
“平井堅だからこそできること” 話題沸騰インドPVの真相
理想の自分との距離
──そうやって自分を鼓舞し続けるのは、不安症な性格が関係しているんですかね? それともほかに理由があるのでしょうか。
もっとこうしたいのにこうならないっていう、理想の自分との距離があるからじゃないですかね。その理想と現状の間で焦ってもがいてるんでしょうね。
──理想の自分との距離感って、例えばデビューのとき、10周年のとき、今ではそれぞれ違いますか?
全然違いますね。デビューのときは、まず歌手としての過去がないから。未来しかない状態ですね。まあバカだし若いし、いい予想図しか描かなかった。ダメならダメで辞めればいいかなと思ってたし、すごくお気楽だったと思います。
──2004年頃はどうでしたか?
2004年、2005年はある種イケイケドンドンな時期でしたかねえ。だからっていつもドンペリ飲んでたとかいうことはないんですけど……(笑)、忘れちゃうタイプなのであんまり記憶がないかも。
──そして今は?
今が一番、カーッと燃えてる気がしますね。もっともっと目立ちたい、もっともっと人気者になりたいっていう俗な感情も含めて、いろんな欲があります。そういう意味でも僕自身ももっとトレーニングをしなきゃいけなくて、理想との間で戦ってるっていうか燃えてるっていうか、がんばんないといけないって思ってるところです。
芸能と音楽を両方持って歩いていきたい
──「他の人には出来ない、平井堅だからこそ出来る事」というところに立ち戻るんですけど、きっとほかのアーティストもそれを探していると思うんですね。
うん、もちろんそうですよね。
──音楽の表現方法も多様化して、いろんなアーティストが次々と新しい手を打ってくる。ご自分でもキャリアを積み重ねていく中で同じことはしたくないと思うんです。そうやって打つ手がどんどん少なくなっても、平井堅だからこそできることは……まだあると思いますか?
……もうないですって言ったら引退しかないんですけど(笑)。あると思いたいです。そもそもこういうことをし続ける自分は、芸能欲っていうのが強いほうだと思うんですね。っていうのも、それと対極の音楽家然としたもの、これが僕には足りないなっていうコンプレックスがすごくあって、それを芸能で補おうとするところがしばしばあるんですけど。
──冷静に自己分析されてるんですね。
それが……歳とってくるとどんどん芸能ではなく音楽家の人たちのほうが生き残っていきやすくなる気がするんですよね、いろんな人たちを見ていて。でも自分はどうしてもその両方が捨てきれなくて。僕がこのあとどうなっていくか、消えちゃうかわかんないけど、今は平井堅たるもの、筋力がある限りその2つを持って歩いていきたいっていうか。桑田佳祐さんとかは両方持っていて、一番わかりやすいアイコンだと思うんですけど。
──ああ、そうですね。どっちも持ち続けてる。
桑田さんのようになれるかどうかなんてめっそうもないけど……芸能と音楽っていうのを両方持ち続けたいなと思ってるんです。もちろん自分の寿命を延ばすために、淘汰されても残る実力は必要なんだけど、なんだかんだで僕は刹那主義で、将来のこと考えられないんですよね。芸能ってすごくこう、キラキラしていて、桜や花火みたいにパッと咲いてパッと散っていく美しさがあるじゃないですか。別に長くやるものじゃないみたいなところがあって。
──はい。
まあ僕はアイドル歌手でもスターでもないから全然違うんだけど、でもなんかちょっとそういう成分……例えば今回のPVだって郷ひろみさんの「林檎殺人事件」みたいだし、ジュリーとか、明菜さんとか、聖子さんとか、自分が好きだった芸能の要素をエッセンスとしてキャリアに入れてやってきてるから。ただ、そういうのがずっとできるのかどうかっていうのはわからなくて……心揺れてますね。揺れるフォーティトゥー(笑)。
- ニューシングル「ソレデモシタイ / おんなじさみしさ」 / 2014年12月10日 / アリオラジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / BVCL-619~20
- 通常盤 [CD] 1490円 / BVCL-621
初回限定盤CD収録曲
- ソレデモシタイ
- おんなじさみしさ
初回限定盤DVD収録内容
- ソレデモシタイ MUSIC VIDEO+MAKING SCENE
通常盤CD収録曲
- ソレデモシタイ
- おんなじさみしさ
- 残響
- Tomorrow
- ソレデモシタイ(less vocal)
- おんなじさみしさ(less vocal)
平井堅(ヒライケン)
1972年大阪生まれのシンガーソングライター。大学在学中にソニーミュージックのオーディションに入選したのをきっかけに、1995年にシングル「Precious Junk」でデビュー。2000年にリリースしたシングル「楽園」がヒットを記録し、その卓越した歌唱力と完成度の高い楽曲で一躍トップシンガーの仲間入りを果たす。2002年には童謡「大きな古時計」のカバーで世代を超えた人気を獲得。その後も「瞳をとじて」「POP STAR」など多くの楽曲をヒットチャートに送り込んでいる。また「Ken's Bar」と題したアコースティックライブシリーズを自身のライフワークとして定期的に開催しており、同タイトルのカバーアルバムも3作発表。フェイバリットアーティストはダニー・ハサウェイ。