GLIM SPANKYが3枚目のミニアルバム「I STAND ALONE」をリリースする。本作にはGLIM SPANKYがこれまで培ってきた自身のロック性を、より自覚的に深く掘り起こそうと試みた全5曲が収録されている。
特にリード曲である「美しい棘」は、GLIM SPANKYのファンはもとより、それ以外の音楽リスナーからも高い評価を受けた「大人になったら」の続編と言える楽曲となった。ナタリーPower Push 3度目の登場となる今回のインタビューでは、本作の制作秘話はもちろん、映画「ONE PIECE FILM GOLD」の主題歌などで全国区の注目を得てから今日までの心境についてもじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 上山陽介
「『ONE PIECE』って、こういうことなんだなあ」
──前作「Next One」の際は、リードトラック「怒りをくれよ」が映画「ONE PIECE FILM GOLD」の主題歌に抜擢という大きなトピックがありました。あの大型タイアップ以降、周辺環境に変化はありましたか?
松尾レミ(Vo, G) ライブやリスナーの客層は、それ以前からの客層が膨れ上がったという感じで大きな変化はなかったと思います。ただ、地元のお祭りや初詣といった場所で、子供たちが「『怒りをくれよ』のお姉ちゃんだー!」と寄ってくるようになって(笑)。
──おお!(笑)
松尾 私、風呂上がりからそのままみたいな油断しまくった格好だったのに、子供たちのお父さんやお母さんから「すみません、写真撮ってもいいですか?」とか言われて(笑)。それまではあり得なかったことだったので焦りましたね。聞くところによると、保育園のダンスの時間とかに流していただいているらしくて。どうやら先生がファンというパターンが多いようで。
──それは頼もしい(笑)。
松尾 「ONE PIECE」の主題歌だから「しめしめ、職場で堂々と流せるぞ」みたいな感じなのかな?(笑) 「『ONE PIECE』って、こういうことなんだなあ」と思い知らされました。
──なるほど。亀本さんはどうでしたか?
亀本寛貴(G) 個人的なことですけど、僕はあのあとちょっと憂鬱な気分に襲われたんです。だって「ONE PIECE」の主題歌の次の曲は、まず間違いなく「ONE PIECE」の主題歌ではないわけですよ。それって大変だなあと。「売れなかったらヤバイでしょ?」みたいな気分に襲われて……でもまあその憂鬱からも2、3日で抜け出せたんですけど。
──短っ!(笑) ちなみにどうやって脱出したんですか?
亀本 もう一度原点に立ち返って、自分で音楽を買って楽しんで聴いてみようと思って、年明けからアナログレコードを買い出したんです。そうしたらもう楽しすぎて、有り金を使い果たすんじゃないかってぐらいレコード買っちゃって。
──今頃になってアナログ好きになったんだ(笑)。
亀本 そうそう(笑)。でもメジャーデビューしてアルバムを2枚作ってきたせいなのか、昔なら気付かなかったようなことに気付くようになって。同じ音源を聴いても、得られるものが全然違うようになりました。すごく新鮮です。そこから「ここにこだわりたい」「こう録ろう」という意欲と熱量が一気に復活したので、今は次のアルバムに向けていい状態に整ったというか、「これなら一生続けていけそうだな」ぐらいのエネルギーに満ちていますね(笑)。
松尾 あと、亀は車の免許を取ったんだよね?
亀本 そう。車は買っていないんですけど。機材を運べるけど維持費もかかるので。どうせレミさんが一番乗るはずだから、少し援助してもらえばいいのかな?(笑)
松尾 私、免許持ってないんで(笑)。
インプットが大量にないと生きていけない
亀本 あと、レミさんは旅行に行ったんだよね?
松尾 そう。デビューからずっと旅行のためにしてきた貯金を全部はたいて、2週間かけてフランスとドイツとアメリカへ行ってきました。曲作りって1日1曲ペースでできちゃうような人と、がんばって1カ月に1曲できるような人がいると思うんですけど、私は後者のタイプなので、アルバム1枚出す度に一度死んだような気分になるし、インプットが大量にないと生きていけないんです。
──で、旅の成果は?
松尾 とにかく街でも美術館でも歌詞になりそうな場所を回りまくったら、そこで感じたことがすぐに歌詞になりました。やっぱり私はインプットこそ命だなあと実感しました。インプットしたものが自分の楽曲に昇華されていく過程を、短期間でリアルに感じられましたね。
亀本 音楽じゃなくても、何かをクリエイトしている人を見るとそれだけでやる気が出るよね?
松尾 そうそう! パリはもちろんアートの国だから美術館がいっぱいあって。逆にベルリンはあんまりお金がないみたいで、部屋を改造したアトリエみたいな場所がたくさんあって。右を向けば写真家が何かやっていて、左を向けばペンキの付いた人が歩いてるみたいな。ニューヨークではちょうどMoMAで1900年代初頭の本とか絵画とか、マジックショーのチケットや怪しい絵が刷られたパンフレットやらポスターなんかの企画展があって。それがもう大好物すぎちゃって(笑)。そこで見てきたものからできたのが、今回のミニアルバムの2曲目の「E.V.I」なんです。
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深い部分を打ち出して、3rdアルバムに向けた導入編に
- GLIM SPANKY「I STAND ALONE」
- 2017年4月12日発売 / Virgin Music
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初回限定盤 [CD+DVD]
2916円 / TYCT-69115 -
通常盤 [CD]
1944円 / TYCT-60098
- CD収録曲
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- アイスタンドアローン
- E.V.I
- Freeder
- 美しい棘
- お月様の歌
- 初回限定盤DVD収録内容
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全国ワンマンツアー "Next One TOUR 2016" ファイナル公演(2016.10.30新木場STUDIO COAST)ライブ映像
- NEXT ONE
- ダミーロックとブルース
- 闇に目を凝らせば
- grand port
- 時代のヒーロー
- いざメキシコへ
- 風に唄えば
- 怒りをくれよ
- 大人になったら
- ワイルド・サイドを行け
- リアル鬼ごっこ
- GLIM SPANKY 野音ライブ 2017
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- 2017年6月4日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂
- 2017年6月17日(土)大阪府 大阪城音楽堂
- GLIM SPANKY(グリムスパンキー)
- 松尾レミ(Vo, G)、亀本寛貴(G)による男女2人組のロックユニット。2007年に長野県内の高校で結成。2009年にはコンテスト「閃光ライオット」で14組のファイナリストの1組に選ばれる。2014年6月に1stミニアルバム「焦燥」でメジャーデビュー。その後、スズキ「ワゴンRスティングレー」のCMに、松尾がカバーするジャニス・ジョプリンの「MOVE OVER」が使われ、松尾の歌声が大きな反響を呼ぶ。2015年7月には1stアルバム「SUNRISE JOURNEY」をリリース。10月には東京・赤坂BLITZにてワンマンライブを実施した。7月20日に2ndアルバム「Next One」を発表。収録曲「怒りをくれよ」は映画「ONE PIECE FILM GOLD」主題歌に起用された。2017年4月に3rdミニアルバム「I STAND ALONE」をリリースする。リード曲「美しい棘」はテレビ朝日系で4月13日より放送されるドラマ「警視庁・捜査一課長 season2」の主題歌。