ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
映画「ALWAYS三丁目の夕日'64」主題歌「グッドラック」
「グッドラック」という言葉に対して深く考えた
──直井さん、升さん、増川さんにとって「グッドラック」はどういう曲になりましたか?
直井 すごく勇ましくて、優しい曲だと思います。だからベースも勇ましく、優しく弾きました。デモの段階で藤原くんが鍵盤で弾いたベースが入っていて。Bメロでベースがドゥドゥドゥドゥって鳴ってるじゃないですか。あれは藤原くんが鍵盤でベースを入れるときに伸ばさなかったから、切って入れただけなんです。それがすごくしっくりきたから「いただきます」って言って(笑)。
藤原 音を伸ばそうと思えばできるのにめんどくせえからって(笑)。
直井 でも、その感じが勇ましいと思って。僕の中で「グッドラック」感がハンパねえなと思ったんですよね。こんなにシンプルにバスドラムと重ねるのも今まであまりなかったから、すごく新鮮だったし。
藤原 最初、ドゥドゥドゥドゥって4つ休符を入れて弾いていて、最後だけ8つになるんですよね。それをチャマも僕も同じように考えてたんですよ。「最後だけ8つになってもいいよね?」って。あれはうれしかった。
直井 そうそう。そこが「グッドラック」な感じだったんですよね。後半の歌詞がそう思わせたというか。抽象的な言い方になるけど、幸運を祈りながら広がっていく感じがあって。だから、ベースもそれと一緒に広がっていけばいいなって。
──いい話ですね。
直井 「グッドラック」って、普遍的な別れの言葉じゃないですか。その言葉に対して深く考えたことはなかったんですけど。この曲を通して「グッドラック」という言葉が持っている奥行きや自分のこれまでの人生で起こった「グッドラック」な出来事や思いについて考えるようになりました。藤原くんの書く歌詞は、いつもそうやって新しくも普遍的な気付きを与えてくれますね。
──升さんはどうですか。
升 さっき藤原くんと三宅さんが話していたように、BUMP OF CHICKENの曲として独立した存在感があった上で、しっかり映画の内容と呼応している曲に仕上がっていると思います。ドラムに関しては、明確にイメージするまでに少し時間がかかったんですけど、最終的にはさっき直井くんが言っていたような勇ましさや行進していくようなニュアンスを意識しましたね。ライブでやっていてもすごく楽しい曲です。一緒に歩いているようなイメージが、お客さんとも共有しやすいと思うし。
──増川さんは?
増川 テンポはミドルなんですけど、アッパーだし、アゲアゲな印象が強くて……アゲアゲって(笑)。
藤原 いやいやアッパーだし、アゲアゲだと俺も思うよ(笑)。
増川 (笑)。このテンポ感でそういうダイナミックな響き方をするのがこの曲の特徴だと思います。すごく熱いものが流れているというか。映画の内容もそうですけど、時代を超える力のある曲だと思いますね。ライブではアッパーな感じを常に出していたいなと思ってます。さっき藤原くんの話を聞きながら「おおっ!」って思ったんですけど、「ひとつの塊として成立するようなメロディ」という感じは、弾いていてすごく実感するというか。プレイ面でも基本的にずっとシンプルなアプローチで進行していくんですけど、聴こえ方としてしっかり躍動感がある曲になっていると思います。
僕らが音楽で表現する必要のあることをバンドの生理現象として出してる
──しかし、いつも言ってる気がしますけど、ホントにいい曲だなって。BUMPだけが鳴らせるグッドミュージックだと思う。
藤原 ありがとうございます。ずっとやってきていることと、昔はできなかったことが形になっていると思います。昔は知らなかったコードの使い方とか、アンサンブルにしても成長していると思いますね。
──その上で、ちょっと無粋な質問になっちゃうかもしれないけど、ここ最近のシングルはBPMが速い曲がないですよね。
藤原 ああ、ないですねえ。速い曲も書くんですけどね。「COSMONAUT」には入ってるでしょ?「友達の唄」のカップリングの「歩く幽霊」も速かったし。
──そうなんですよね。でも、シングルのリード曲は速くならないっていう。
藤原 そうなんですよね。でも、特にこれといった理由はないんですよね。僕らが音楽で表現する必要のあることを、バンドの生理現象として出していってるだけというか。たまにあるんですよ?「久しぶりに速い曲やろうよ」みたいになることが。メンバーに「次はどんな曲やりたい?」って聞いて、みんなが「速い曲やりたい」って言って、「よし。じゃあ速い曲を書こう」ってやったりするとすごく迷走したりしてね(笑)。だから、そこはね、出るべくして出たものを皆さんに聴いてもらっているんだと思います。
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
藤原基央(Vo, G)、増川弘明(G)、直井由文(B)、升秀夫(Dr)の幼なじみ4人によって、1994年に結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たす。
その後も「jupiter」「ユグドラシル」といったアルバムがロックファンを中心に熱狂的な支持を集め、2007年には映画「ALWAYS 続・三丁目の夕日」主題歌に起用されたシングル「花の名」を含むメジャー3rdフルアルバム「orbital period」をリリース。2008年には全国33カ所41公演、22万人動員の大規模なツアーを成功させた。
2009年11月に両A面シングル「R.I.P. / Merry Christmas」を発表したあとは、精力的なペースで楽曲をリリース。2010年4月にシングル「HAPPY」「魔法の料理 ~君から君へ~」を、10月にシングル「宇宙飛行士への手紙 / モーターサイクル」を発売。12月には宇宙飛行士を意味する単語をタイトルに冠したアルバム「COSMONAUT」をリリースした。
さらに2011年2月には「映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ天使たち~」の主題歌として書き下ろした「友達の唄」をシングルとして、5月には東日本大震災被災者を支援する「復興支援ポータルサイト」のテレビCMソング「Smile」をチャリティシングルとして発表。10月に、PSPゲームソフト「FINAL FANTASY 零式」テーマソングとして書き下ろした「ゼロ」をシングルリリースし、12月からは約3年半ぶりの全国ツアー「BUMP OF CHICKEN 2011-12 TOUR『GOOD GLIDER TOUR』」をスタートさせた。
2012年1月には、最新シングル「グッドラック」を発表。この曲は、3D映画「ALWAYS三丁目の夕日'64」の主題歌であり、2007年の「花の名」に続く同シリーズとのコラボレーションとなる。また4月からは全国13都市20公演のアリーナツアー「BUMP OF CHICKEN 2012 TOUR『GOLD GLIDER TOUR』」を開催する。