「この程度だな」と思うことがある

──「キャラバン」は、鈍色っぽい重さでズーンと沈むようなサウンドで。「魔法の料理 ～君から君へ～」のカップリングにこの曲、というのはかなり強力なバランスですよね。

そうかもしれないです。これは、フレーズが呼んだサウンドだと思います。でも和音が見えなきゃいけないので、歪めばいいってものでもなくて。太さはありますけどね。

──あと重みも。

あぁ、そうですね。

──で、この歌はもう、人の心の内が暴かれているような。

歌詞ですか？ これはね、スタジオに入って曲作りしていて。ギター持ってブース入って、紙とペン持って作っていったらこういうふうになったんです。コード進行に関しては「こういうのがやりたいな」というのが個人的にあったんですけど。でも歌詞の内容に関しては、なーんかそういうふうになっていっちゃった（苦笑）。僕はものすごく清々しい気持ちで朝ドアを開けてスタジオに来たはずだったんですけど。

──ある意味、非常に辛辣な。「その程度だ僕らなんてお互いに」と言われてしまった日には……という。

でも、僕は僕のことを「この程度だな」って思うことあるし。だから、そういうことからいろいろと始まっています。確かなことは言えないんですけど、なんか気付くとそうなるという。

偶然の副産物がスタンダードになった

──清々しい気持ちで、書けたのは重い曲。

重いってあんまり思ってないんですよ、僕自身は。振り切ってさえいれば、感情の中にそんなに住み分けはないな、というか。あまり差別化はしてないですね。……あ、ひとつ思い出した！ この曲を作って……「曲ができたら録ろうぜ」って言った日が、全然寝られなかった時期だったんです。で、結構ふらふらしていて、握力もあまりなくて（笑）。曲作りは普通、まずアコギを弾くところから始めるんですけど、そういう状況もあってアコギを弾きたくなかったんです。すごく神経を使う楽器なので。それで、エンジニアさんのコンピュータの中のアンプシミュレーターを使って、エレキをガーッと弾いてガーッと歌って。で、4つ打ちでキックを打って、デモを完成させたんです。それでレコーディングに至ったわけなんですけど、みんなデモの音を聴いてるんですよね、当然。そうしたら「この感じがいいんじゃないか」みたいな雰囲気になってきて。だから歪んでいるし、4つ打ちの感じも生きてるんです。僕はビートの解釈でドラムは転がっていくと思ってたんですけど、結局4つ打ちを基調としたフレーズになりました。だから、そのフレーズが醸し出す重さ、っていうのはあると思います。そういう偶然の副産物がみんなの中でスタンダードになっていった、この曲のスタンダードな解釈になった、ということですね。

──その副産物が、最終的には必然になった。

そういうことです。だから、最初のチョイスが正しかったということですね。多分アコギで弾いてる曲だったら「これをエレキでガシガシやるのはないでしょ」ってなってたと思うし。

新曲も書いて、制作はずっと続いている

──それにしても、全4曲それぞれタイプは違いますけれど、どの曲も同じ重みを持って響いてきました。メイン、カップリングという位置付けも関係なく。

それはめちゃめちゃうれしいです。カップリングがあまり聴いてもらえないことにショックを受けて、カップリング集まで出したバンドなので（笑）。そういうふうに聴いてもらえるのは、すごくうれしいです。

──この2作のシングルリリースの先は、アルバムに向かっていくという流れでしょうか？

ずっとそういう作業をしていくと思うんですけど、新曲もまた書いているんですよ。だから……よくわからないです（苦笑）。何曲書いたらアルバムになるのかな？ っていう気もするし。でも、楽しいです。新しい曲を書いて、できた曲をみんなでレコーディングして。こうやってどこかのタイミングで、そのうちのいくつかの曲をみなさんに発表することができて、聴いてもらうことができて。そういうことを続けてやっていれば、そのうちアルバムですよね。でも、まだ具体的な話は出てきていないんです。アルバムを出せる曲数はあるんですけど。

──どこで終わるかわからない作業を楽しく続けている、ということですね。

そうです。そういうことです、ホントに。