ナタリー PowerPush - BUMP OF CHICKEN
切実なメッセージと私小説的楽曲 心の琴線に深く触れるシングル2作
BUMP OF CHICKENトークライブ ナタリーTVにて生放送! - 日時:2010年4月14日(水)21:30~23:00(予定)
簡単には使えない「一緒に」という言葉
──歌詞にある「僕と一緒に歌おう」という言葉には、スッと救われるような感覚を覚えます。藤原さんは「一緒に」とか「みんなで」という表現はまずしてこなかっただけに、特に。
そうですね。この「一緒に」は、自分の中でも結構ハードルが高くて。「一緒にコンビニに行こうよ」とは言えても、こういう「一緒に」は簡単に使っちゃいけない「一緒に」なので。それに、そういう意味合いを持った「一緒に」っていうのは、人生の中でもそんなに多くは言えたことはないし。だから、言うことをとても躊躇してしまう「一緒に」なんですけど、ここはもう、こういうふうに歌う必要があったんですよね。きっとね。
──そして「Happy Birthday」のコーラスですけれど。この言葉は普通にワンワード、ひとつの固まりとして捉えれば「お誕生日おめでとう」という意味ですよね。でも、この歌からは“生まれてきたことへの祝福”にも感じましたし、“生き続けていることが確認できる言葉”にも思えて。藤原さん自身は、この「Happy Birthday」にどういう思いを込めたのでしょうか?
まさに今おっしゃった、「Happy」と「Birthday」がセットになってひとつの単語になっている、というところからまず始まりました。で、「Happy Birthday」って誕生日に言う言葉ですけど、あまり「お誕生日おめでとう」という気持ちでは歌っていません。その言葉自体は、いつ言ってもいい言葉なんじゃないかな。というか、そういう意識自体はいつ持っていてもいいんじゃないかな、と思います。これは曲と関係なく、その言葉自体に対しての気持ちですけど。曲と関係したところで言うと、この言葉に対してどう思ってくれるのかな、っていうのがある意味僕も楽しみで。そこは、聴いてくれる人それぞれでしょうし。で、これは振り幅の広いコーラスワークになってると思います。2回言ってひとくくり、を何回も歌ってるんですけど、なんで2回言ってるかっていったら、コード進行が2種類だから。で、パターンAとパターンBで印象を変えているんです。ちょっとだけ。そういう仕掛けのあるコーラスワークなので、どんなふうに聴いてもらえるのか楽しみですね。
重要な役割を果たしているオケヒット
──サウンド面についても訊かせてください。イントロからハッとさせられるような音作りで、ブギー的なギターのリズムから、全体的に前進するようなイメージがある気がしますが。
そのイメージは、歌詞の印象もあると思うんですけど。音だけのことで言えば「イエーイ!」っていう感じです(笑)。ロック寄りな気分だった、というか。ジャンルで言えば、サザンロックの部分もあるし、グラムロックの部分もあるし。曲作りの最初は、今おっしゃったギターのところから始まったと思うんですが、これは僕の手癖みたいなもので。で、僕のデモテープの段階ではそこにベースが付いてドラムが付いて、というシンプルな感じだったんです。それが、プロデューサーが加わってメンバー全員でいろいろ試していくうちに、新しいアイデアがどんどん入っていって今の形になりました。
──では、サウンドの全体像と言うのは、アレンジメントとして広がっていった?
そうです。でも、大幅に違うのはひとつですね。プロデューサーのアイデアでオケヒットが打ち込みで入ったんですけど、それはデモの段階ではやってなくて。これは、床とか壁とかをカチカチ叩いて録ったパーカッション的なトラックや、ベースをめちゃめちゃ歪ませたり、ギターをめちゃめちゃ歪ませて短くギャッ! って弾いたりした音をサンプリングして作ったんです。
──イントロからど真ん中で鳴ってる、あの分厚い音は……?
分厚くリズミカルにガッガッって入ってる音ですよね? あれが正にみんなで作ったオケヒット、音の固まりです。デモテープのアレンジは温度感があったんですけど、オケヒットを入れることによって、その温度感にストイックさとダンサブルな要素が加わってきて。だから、この機械のリズムというのは、この曲で重要な役割を果たしているんです。
BUMP OF CHICKEN(ばんぷおぶちきん)
1994年に中学3年の文化祭用バンドとして結成。高校入学後に本格的な活動をスタートする。地元・千葉や下北沢を中心にライブを続け、1999年にインディーズからアルバム「FLAME VEIN」を発表。これが大きな話題を呼び、着実に知名度を上げていく。2000年9月にはシングル「ダイヤモンド」で待望のメジャーデビューを果たし、その後も「jupiter」「ユグドラシル」といった名曲満載のアルバムを発表。2006年9月にはアルバム収録曲から着想を得て制作されたオリジナル無声映像作品「人形劇ギルド」もリリース。現在まで不動のメンバーでマイペースに活動を続けている。