ナタリー PowerPush - Alice Nine

挑戦と更新を繰り返してきたバンド活動の到達点「“9”」

前作「GEMINI」はオリコンウィークリーチャート3位を記録。その後も「BLUE FLAME」「Heart of Gold」「虹の雪」という高品質のシングルを発表してきたAlice Nineが、ニューアルバム「“9”」(ナイン)を完成させた。オーセンティックなへヴィメタルサウンドを継承する「the Arc」、ベーシストの沙我がポエトリーリーディングを披露する「ハロー、ワールド」、心地良い疾走感に満ちた「リニア」、そして、壮大なストーリー性をたたえたメロディと「世界を肯定したい」という祈りを感じさせるリリックがひとつになった「すべてへ」。バンド名の一部をタイトルに据えた本作によって、Alice Nineはさらに高いフィールドへと進むことになるはずだ。バンドにとって大きなターニングポイントになる可能性を秘めた本作について、将(Vo)、ヒロト(G)、沙我(B)に訊いた。

取材・文 / 森朋之

自分たちを大きく見せるために無理をする必要はなくなった

──ジャンルに捉われない音楽性、アルバム全体を包む壮大な世界観。今作は、バンドネームの一部を冠した「“9”」というタイトルにふさわしく、Alice Nineの特性が強く発揮された作品だと思います。皆さんの手ごたえはどうですか?

アーティスト写真

(Vo) 元々、すごくいろんなジャンルに手を出すバンドなんですよ。結成当初は「とりあえずやってみましたけど、どうですか?」という状態に過ぎなかったのが、前回の「GEMINI」、その前の「VANDALIZE」あたりからさらに音と向き合えるようになってきて。今回の「“9”」は自分たち的にはAlice Nineのスタンダードに戻った感じがあるんだけど、いろんな挑戦をしてきた経験が活かされているし、音に説得力を与えてくれたなって。5枚目にして「僕たちはこういうバンドです」と声を大にして言えるアルバムができたと思います。

ヒロト(G) 「GEMINI」はグッと焦点を絞って、深いところまで追求したアルバムだったんですよね。その反動もあると思うんですけど、今回は力まず、考えすぎず、開放された状態でやれたんじゃないかな、と。もちろんいろんな挑戦はあるんですけど、ちゃんと身の丈に合ったプレイを詰め込めたと思います。

沙我(B) スケール感が自然に出てるんですよね。狙っていない分、それが個性と言えるのかなって。

──もちろんこれまで積み重ねてきたものも大きいとは思うのですが、バンドがより自然体になれたのは、どうしてだと思いますか?

 そうですね……。去年の活動の中でいうと、正月に初めて日本武道館のワンマンライブをやらせてもらって。自分たちだけでは実現しなかったライブだと思うし、ファン、スタッフとのつながりも再確認できて、気持ちを引き締め直したんですよね。その後、「GEMINI」というやりきったアルバムをリリースして。大きく言うと、そのふたつが自信になった部分はあると思います。自分たちを大きく見せるために、無理をする必要性を感じなくなったというか。

Alice Nineは「NG」がないバンド

──その結果、元々持っていた音楽性がさらにストレートに表現できるようになった、と。

沙我 音楽性というものを持ってないのかもしれないですね、いい意味で。音楽の趣味が合うから結成したわけでもないし、ホントにやりながら作り上げてきたので。あんまり「NG」っていう言葉が出ないバンドなんですよ。たとえばコードをジャーンと鳴らす感じのバンドの場合、いきなりメタルみたいな曲を持っていってもNGじゃないですか。

──「このバンドには合わない」ってことになりますよね。

沙我 それがないんですよね。堅苦しい人がいないというか、どんな曲でも持っていける雰囲気があって。自分自身もいろんな音楽が好きですからね。メタルも好きだし、J-POPや歌謡曲も好きだし、アンビエントも聴くし。

ヒロト 今後もそれは続いていくと思いますね。

沙我 ただ、失敗も結構多いですけどね(笑)。なんでもやろうとするけど、なんでもやれるバンドではないんですよ、実は不器用なんで。

 だから、これでも意外と絞られてきてるんだよね。

沙我 ジャンルとかではなくて、音楽が持っているカッコよさってあると思うんですよ。そのツボが似てるんでしょうね、きっと。

──メンバー以外の人から「もっとわかりやすく絞ったほうがいいんじゃない?」って言われたことはないんですか?

 いや、それはないですね。チューニング(の種類)が多いから、ライブのとき大変でしょ? って言われますけど。

──変則チューニングが必要な曲、結構ありそうですね。

ヒロト そうですね(笑)。5種類くらいかな?

沙我 ライブは1本でやれるに越したことはないなって思いますけどね(笑)。

ヒロト そのことに気付くのにもかなり時間がかかっていて。わりかし遠回りはしてると思います。

5thアルバム「“9”」 / 2012年2月22日発売 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ

  • 初回限定盤[CD+DVD] 3780円(税込) / TKCA-73733 / Amazon.co.jp
  • 通常盤[CD] 3150円(税込) / TKCA-73737 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. Heavenly Tale
  2. the Arc
  3. GALLOWS
  4. 花霞
  5. BLUE FLAME
  6. ハロー、ワールド
  7. 虹の雪
  8. リニア
  9. Apocalypse [It's not the end]
  10. Heart of Gold
  11. すべてへ
DVD収録内容
  1. 「すべてへ」MUSIC CLIP
  2. MUSIC CLIP MAKING
  3. 「すべてへ」MULTI ANGLE ver.
Alice Nine(ありすないん)

2004年結成のヴィジュアル系バンド。将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)の5人からなる。所属事務所はthe GazettE等が所属するPS COMPANY。ポップで華やかなパフォーマンスは国内に留まらず世界的に高い人気を誇る。サウンド面ではデビュー当初の和情緒にこだわった作風からロック的な壮大さをもつものへと進化を遂げ、表現の幅を広げている。バンド名表記は2009年より「アリス九號.」から「Alice Nine」に統一。2011年には初の日本武道館ワンマンライブを成功させ、最高傑作との呼び声が高いアルバム「GEMINI」をリリース。2012年には通算5作目となるオリジナルアルバム「“9”」を発表し、春から夏にかけて合計23公演の全国ツアーを敢行する。