ナタリー PowerPush - Alice Nine
挑戦と更新を繰り返してきたバンド活動の到達点「“9”」
岡野ハジメさんはすごくメンバーに近い存在
──前作「GEMINI」に続き、今回も岡野ハジメさんがプロデューサーとして参加してますね。シングルのときは別のプロデューサーとも仕事をしていましたが、再び岡野さんと一緒にやろうと決めた理由はなんですか?
将 「GEMINI」の制作のとき、すごく熱を持って僕たちにぶつかってきてくれたんですよね。それがすごく良くて、今回も制作に入る前のミーティングで「もう1回、岡野さんとやりたい」という話になって。
ヒロト すごくメンバーに近いんですよ。一緒に音を作っていく感覚というか。
沙我 音楽をジャンルで捉えていないし、今も新しい音を追求されてますからね。細かいフレーズや演奏のことよりも、もっと大きな考え方の部分でいろいろと勉強になることが多いですね。小難しく考えていたところを「もっとシンプルに捉えていいんだ」って思えたり、逆に「ここはもっと突き詰めたほうがいい」という部分が見えてきたり。
──なるほど。では、楽曲について訊かせてください。まず1曲目の「Heavenly Tale」ですが、イントロから色彩豊かな音楽世界に引き込まれるようなムードがありますね。作曲は沙我さんですが、アルバムのオープニングを意識してたんでしょうか?
沙我 うん、そうですね。アルバムを作るときって、まずは「アタマとケツをどうしよう?」って考えるんですよ、個人的には。そこをしっかり決めてから、「じゃあ、真ん中は?」って構想を練っていくというか。
将 アルバムのあり方やライブのセットリストに関しては、いつのころからか沙我くんがイニシアティブを取ってくれてるんですよね。それに対してメンバーが自由にアイデアを出し合うっていう。
7年前の自分たちに聴かせたら爆笑されると思います
──構成力もアルバムを重ねるごとに高まってますよね。2曲目も沙我さんの曲ですが、かなりメタリックなナンバーに仕上がっていて。今まではあまりなかったタイプの曲ですよね?
沙我 なかったですね。というか、今までだったらNGだったフレーズがたくさん入ってるんですよ。ツーバスだったり、ザクザク刻むギターだったり。さっき「NGはない」って言いましたけど、以前はこういう曲はナシでしたね(笑)。
ヒロト しかも沙我くんがいちばん避けてた感じの曲だよね。
沙我 (バンドを結成した)7年前の自分たちに聴かせたら、爆笑されると思います。「なんのつもりですか?」って。
──それが「アリ」になったのはどうして?
沙我 やっぱり、いろいろやってきた結果でしょうね。どこまで羽ばたけるかわかった上で、さらに羽ばたいてみたいなって。
将 沙我くんの話を聞いてすごく納得したのが、僕らが子供のときにやってたRPGの音楽って、結構メタルだったんですよ。
ヒロト 8ビット、16ビットの音楽だったけど、バンドでやったらメタルになるっていう。
将 そういう音楽をカッコいいと思っていた記憶も残ってるし。シックリ来るんですよね。
ヒロト そのころゲームの音楽を作っていた人たちって、多分、ハードロックやへヴィメタルをリアルタイムで通ってる人が多かったんじゃないかなって。
沙我 イトケンさん(※伊藤賢治。1990年代から数多くのゲーム音楽を手がけてきたクリエイター)にはぜひお会いしてみたいですね。天才だと思います。
「ライブって宇宙的だな」って感じたんです
──「GALLOWS」では、将さんの歌詞がすごく心に残りました。タイトルは「絞首台」とか「断首台」という意味ですよね?
将 はい。メメント・モリ(死を思う)精神というか、終わりを意識することで、今という瞬間が輝くっていう、それを感じることが多くなってるんですよね、普段の生活の中でも。それを強く伝えたいと思ったときに、こういうタイトルになって。
──今の時代を考えても、メメント・モリというメッセージに反応するリスナーは多いでしょうね。
将 うん、そんな気がしていて。ネガティブなことがあるからこそ、ポジティブに向かっていくべきだということは、強く言いたいと思っていました。
──ヒロトさんの作曲による「花霞」も、アルバムのポイントだと思いました。ここで雰囲気が変わるし、さまざまな感情が凝縮される楽曲だな、と。
ヒロト 「GEMINI」のツアーのとき、「ライブって宇宙的だな」ってすごく感じたんですよね。大きな起承転結があるし、ものすごく楽しい瞬間があると思えば、絶望的な表情をしている人もいて。なんて言うか、あらゆるものが集約されてる気がしたんですよ。それを1曲で表現してみたいと思って作ったのが、この曲なんです。
将 始まりはすごく切迫感があるんだけど、少しずつまばゆい光に包まれていく曲だなって。その状況を感じてもらえる歌詞にしようと心がけました。
ヒロト ライブ中、将くんの切迫した声に「おお!」と思う瞬間があって。辛そうなんだけど、すごく突き刺さるというか……。それもこの曲に反映されてますね。
CD収録曲
- Heavenly Tale
- the Arc
- GALLOWS
- 花霞
- BLUE FLAME
- ハロー、ワールド
- 虹の雪
- リニア
- Apocalypse [It's not the end]
- Heart of Gold
- すべてへ
DVD収録内容
- 「すべてへ」MUSIC CLIP
- MUSIC CLIP MAKING
- 「すべてへ」MULTI ANGLE ver.
Alice Nine(ありすないん)
2004年結成のヴィジュアル系バンド。将(Vo)、ヒロト(G)、虎(G)、沙我(B)、Nao(Dr)の5人からなる。所属事務所はthe GazettE等が所属するPS COMPANY。ポップで華やかなパフォーマンスは国内に留まらず世界的に高い人気を誇る。サウンド面ではデビュー当初の和情緒にこだわった作風からロック的な壮大さをもつものへと進化を遂げ、表現の幅を広げている。バンド名表記は2009年より「アリス九號.」から「Alice Nine」に統一。2011年には初の日本武道館ワンマンライブを成功させ、最高傑作との呼び声が高いアルバム「GEMINI」をリリース。2012年には通算5作目となるオリジナルアルバム「“9”」を発表し、春から夏にかけて合計23公演の全国ツアーを敢行する。