映画ナタリー Power Push - 「何者」

就活は静かな戦争!? 6人の俳優が語る若者たちの“リアル”

岡田将生
岡田将生 @宮本隆良

「こいつかわいいな」って思った

──隆良は、就職活動に励む拓人たちをどこか見下しているようなクリエイター志望の大学生です。脚本を読んだ際に、隆良という人物についてどんな印象を受けましたか?

ある意味、スパイスのような役目を持ったキャラクターだなと思いました。最初に脚本を読んだときはちょっと「嫌なやつだな」と思って。でも監督の三浦(大輔)さんとお話をして、ただの嫌なやつではないということがわかったので、役へのアプローチの仕方を変えました。

──ご自身と隆良には、重なる部分はありますか?

ないですね(笑)。

──岡田さんは俳優ですから、組織の一員である会社員とは違って、孤独に戦っているところがあると思うんですね。そういう意味では隆良と重なる部分もあるというか。

共感できる部分がまったくないわけじゃないんです。でも隆良って、個性があるようでない人なんですよ。自分の内から出てきた言葉じゃなくて、他者の言葉を並べているだけで、中身がまったくないというか。それに、就活をがんばってる人たちを前にして、あんな偉そうなことを言う度胸は僕にはないです(笑)。逆に、そこが彼の面白いところであり個性なのかなとは思いましたが、自分とはやっぱり全然違うタイプの人ですね。

──大きなことは言うけど並べるのは他人の言葉だから、自信があるのかないのかわからないような人ですよね。

理香と一緒に住んでる部屋にみんなが集まって就活会議をしてる場面で、隆良はベッドに1人で寝転がってるんですが、明らかに彼は話に加わりたがってるんです。そこで加わらない自分がいいと隆良は思っていて、でもやっぱり我慢できなくて、いきなりべらべらしゃべり出しちゃう。そういうところは「こいつかわいいな」って。菅田(将暉)くんも映画を観終わったあと「隆良めっちゃかわいい」って言ってくれたんです(笑)。

──最初の印象は「嫌なやつ」だったけど、「かわいいやつ」に変わっていったと。

隆良ぐらいの年齢の人って、けっこうあんな感じなんじゃないかと思います。高校生のときとか大学生のときって、自分を大きく見せたがる時期だと思うんです。もちろん僕もそうだったし、今もそうかもしれない。

──役柄を作っていくうえでどのあたりが難しかったですか?

全体的にリアルな演技が求められていたんですけど、隆良が入ってくるとどうしても場面のトーンが自然じゃなくなっちゃうんですよ(笑)。だから、どう演じたら自然に見えるかということを、撮影に入る前にリハーサルで探れたのはよかったですね。いきなり現場に入っていたらうまくできなかったんじゃないかと思います。

「怖いな」と思うしゾクッとさせられる

──完成した作品を観て、改めて気付いたことなどはありましたか?

三浦監督はテイクを重ねる方なので、現場でだんだん訳がわからなくなってくるときがあるんです。でも完成した映画を観て、あれだけテイクを重ねる理由がよくわかりました。三浦監督の過去作は観てましたけど、改めてすごい方だなと思いました。「怖いな」と思うしゾクッとさせられる場面があって、出演者の皆さんも本当に上手だなって(笑)。

「何者」より。

──「怖い」と思われたということですけど、拓人とサワ先輩と隆良が3人で会話をするところなんてまさに「怖い」シーンでした。

あそこは隆良の人柄がけっこう出るところですよね。拓人とのやり取りで動揺しつつ、途中でやって来たサワ先輩を見下すあの感じ……「面白いなあこの人」って思っちゃいます(笑)。あのシーンもすごくテイクを重ねたんです。三浦監督の「こうしてほしい」という細かいリクエストに応えて微調整していったのですが、演じていて楽しかったです。

──表面的には何も大きなことは起こってないんですけど、ひりひりするような緊張感があって。

あれは(山田)孝之さんが醸し出してくれた雰囲気なんですよ。やっぱりすごいなあって思いました。

SNSで情報を発信する意味がよくわからない

岡田将生

──「何者」ではSNSというツールが重要な仕掛けとして出てきますが、岡田さんはご自分ではTwitterもFacebookも使われていないですね。それはどうしてでしょう?

情報を発信する意味が僕にはあまりよくわからなくて(笑)。

──SNSで、自分が誰かに陰で批判されていたりすることに気付いたら耐えられると思いますか?

「マジかー」って思うぐらいですかね(笑)。「そっかー」って(笑)。

──では、友人だと思っていた人に悪く言われても許してしまう?

いや、そもそも僕は、自分が他人によく思われているとは思ってないんです。だから悪く言われていたとしてもそれほどショックを受けなくて「ああ、そうだよねー」みたいな(笑)。それに、人間って表とか裏があって当たり前ですしね。

「向いてねえな、やめようかな」と何度も思ってきた

──就活って、落とされると人によっては人格を全否定されたような気持ちになったりするものですが、岡田さんはこれまでにそういう感覚を味わったことがありますか?

岡田将生

新しい作品に参加するたびに味わってます。自分が思うように演じられなかったり、監督が求めていることができなかったときに。「(俳優に)向いてねえな、やめようかな」って何度も思ってきました。

──それでも、実際にはずっと俳優を続けられていますよね。それはどうしてでしょう?

それはもう、やっぱりこの仕事が好きだから。好きだからこそ壁にぶち当たるし、好きじゃないならやめればいいだけだと思いますし。毎回否定されて苦しんで、でもやっぱりこの仕事が好きだからもうちょっとがんばろうという、その繰り返しですね。

「何者」2016年10月15日より公開

「何者」2016年10月15日より公開

かつて演劇サークルに所属し、脚本の執筆や芝居に熱中していた大学生・拓人。今ではリクルートスーツに身を包み、ルームメイトの光太郎とともに就職活動に本腰を入れようとしている。拓人は光太郎の恋人だった瑞月に思いを寄せているが、彼女はいまだ光太郎に未練があるようだ。ある日、自分たちが暮らす部屋の上階に瑞月の友人・理香が住んでいることを知った拓人と光太郎。彼らは理香の提案で、就活の情報交換のため彼女の部屋に集まるようになる。理香の就活のやり方や、彼女と同棲中の恋人・隆良の就活生を見下すような態度に違和感を覚えつつ、拓人はままならない現実に次第に焦りを感じるように。そんな日々の中で、ついに仲間内から1人目の内定者が現れて……。

スタッフ

監督・脚本:三浦大輔
原作:朝井リョウ「何者」(新潮文庫刊)
音楽:中田ヤスタカ
主題歌:中田ヤスタカ「NANIMONO(feat.米津玄師)」

キャスト

二宮拓人:佐藤健
田名部瑞月:有村架純
小早川理香:二階堂ふみ
神谷光太郎:菅田将暉
宮本隆良:岡田将生
サワ先輩:山田孝之

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岡田将生(オカダマサキ)

1989年8月15日生まれ、東京都出身。2007年公開の「アヒルと鴨のコインロッカー」で映画デビューを飾り、2009年には「重力ピエロ」「ホノカアボーイ」などでの演技を評価されブルーリボン賞新人賞を受賞する。そのほかの出演作に「天然コケッコー」「宇宙兄弟」「秘密 THE TOP SECRET」など。「銀魂」「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」が2017年に公開される。