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鈴木敏夫が宮崎駿、寅さん、トトロ、毛虫のボロについて縦横無尽トーク

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トークイベントの様子。左から藤巻直哉、鈴木敏夫、石井朋彦。

トークイベントの様子。左から藤巻直哉、鈴木敏夫、石井朋彦。

本日12月6日、東京・DNPプラザにてスタジオジブリの鈴木敏夫とスタジオジブリ出身で「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」や「東のエデン」シリーズなどをプロデュースしてきた石井朋彦のトークイベントが行われた。

鈴木の著書「ジブリの仲間たち」、石井によるビジネス書「自分を捨てる仕事術 鈴木敏夫が教えた『真似』と『整理整頓』のメソッド」の刊行を記念して行われた本イベント。鈴木は「石井が初めて本を書いたというので、ぜひ売れたらといいなと思ってやってきました」と挨拶する。石井は「僕が書いた本というより、鈴木さんのおっしゃったことをメモした紙がダンボール2箱ぐらいたまっていてそれを整理したものです。だから九割九分九厘鈴木さんの本です」と自書を説明した。

イベントは、「崖の上のポニョ」の主題歌で第59回NHK紅白歌合戦に出演した藤巻直哉が司会を担当。藤巻からスタジオジブリの採用試験の様子を聞かれた石井は「最終面接が鈴木さんだったんですが、面接というより怒鳴り合いになってしまって。僕が自分をアピールすることにいっぱいいっぱいになっちゃったからなんですけど、最後に鈴木さんから『これからがんばってね』と言われて。300人ぐらいの応募者の中で唯一受かったんです」と振り返る。選んだ理由を聞かれた鈴木は「選んだ方は基準を覚えてない。でも選ばれた方は覚えてる」と覚えていない素振りを見せる。

石井は「自分の意見を1回捨てなさい」という鈴木からの言葉が心に残っていると述べ、「『そうしないと人の意見が入ってこない。若いことの最大の価値は誰にも必要とされてないことなんだ。だから他人が言ったことや身振りを書いて俺に送ってこい』と言われて、それを実行したらいろんなことが見えるようになって、仕事が面白くなっていった」と続ける。鈴木は「その(言葉を言った)鈴木さんってどこにいるんだろ?」と笑い、「読み書きそろばんが人が生きていく上で大事。その3つがあれば人は生きていける。若い人の中にその3つが弱い人が多くて気になっていた」と述懐する。

人との接し方も鈴木から学んだという石井は、宮崎駿と会話するときの注意点について「『宮さんはせっかちだから最初に結論を言え』と言われた」と説明。高畑勲については「高畑さんはすごい知識人なんですね。それで鈴木さんから『すぐに返事するな。本当に頭のいい人の前ですぐわかったふりするな。斜め上を見て考えてるふりをしろ』と言われたんです。それで、その通りやったら高畑さんが僕のことを評価してくれるようになった」と石井が述べると、鈴木は終始笑いが抑えきれない様子だった。

人間の生き方は2つあると前置きした鈴木は「目標を決めてそのために努力するという生き方と、目の前のことをコツコツとやっていくという生き方。そして後者だから開ける未来もある。ジブリでも辞めたいと言ってくる若い人が少なからずいたそのときの理由が『自分を見失いそう』というものだった。そんなとき僕は『理想が高すぎるんじゃない?』と言い続けた」とコメント。大ファンだという「男はつらいよ」の車寅次郎に触れ鈴木は「寅さんに夢はあるのか? 自分の理想像はなく、マドンナなど目の前の人との関係だけがある。だから楽しく生きることができた。つまり自分のことは何も考えていない」と自身にとっての理想の生き方を語った。

宮崎について「奇妙キテレツなキャラクターを作り出せるが、お話はまあまあ」と辛口な発言をした鈴木は「『(となりの)トトロ』は高畑さんの『火垂るの墓』と同時上映で、同じ時期に制作を開始したんです。それで宮さんはほかの人、特に高畑さんが何をしているか気になるんです。そのときも気になってしょうがないみたいで僕が『火垂るの墓』の話をすると『なにそれ文芸作品じゃない……ネコがバス? 向こうが文芸作品やっている中そんなバカなことやってられないよ!』って言い出して」と当時の様子を明かす。「『トトロがコマに乗る? そんなことやってらんないよ!!』とも言っていて、もう説得するのが大変でしたよ」と楽しげに苦労話を披露した。

イベントでは観客の質疑応答も実施。宮崎が監督を務める短編アニメ「毛虫のボロ」について聞かれた鈴木は「来年の春に完成し、6月か7月に(三鷹の森ジブリ美術館で)公開する予定」と回答する。またプロデューサーの仕事の極意を聞かれた石井は「監督は映画を演出する仕事で、プロデューサーは現実を演出するのが仕事だ。そのためには言葉を磨きなさい。そして現実を映画のシナリオのように朝から晩まで組み替えて演出しなさい」という、鈴木から言われた言葉を述べる。同じ質問に対して鈴木は「監督を守る、これに尽きます。彼が間違った方向に行っていてもそれを口に出さず、信じて(一緒に)作って、その中で軌道修正していく」と信念を述べた。

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