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武井宏之が新天地で“気負わず”描く新作とは

もう人を描きたくなかったんです

──先ほども「猫を描く一番の理由は気負いたくないから」とおっしゃっていましたが、その辺りについて詳しくお聞かせいただけますか。

もう人を描きたくなかったんです。人描くのが面倒になっちゃった。

──それはなぜでしょうか。

人が嫌いなんで。なんかね、人間はみんな汚くて嫌になりました。あと、人間を取り扱うと、ややこしいことが多いじゃないですか。何かを想起させたらマズいとか、いろいろと制約も多いし。猫なら、そういう縛りをあんまり気にせず描けるかなと思ったんです。

──猫だったら、自由に描ける。

「シャーマンキング」に登場するマタムネのフィギュア。

多少は許されるんじゃないかなって。例え話で済ませられるから。

──猫のキャラクターと言えば「シャーマンキング」のマタムネの印象が強いです。

単純に猫、好きなんですよ。今は7匹飼ってます。猫はね、意外と主人に忠実なんですよ。猫が主体的に主人を守るんです。恩義に厚い。侍も恩義に厚いでしょ。……取ってつけたようですけど(笑)。

──ははは(笑)。だから猫で侍。

猫は一番ルールに従って生きてると思いますね。身だしなみもちゃんとしてるし。自分のメンテと生活ペースは絶対崩さない。

──ご自分の飼われている猫を見て、キャラクターに活かしたりもされるんですね。

ただあんまり猫のかわいい仕草を入れると、狙ってるみたいになっちゃうので避けてます。媚びてる感が出るじゃないですか。なのでほとんどそういうのは出ないですね。と言いつつ、のっけに出てくるんですけど(笑)。でもギャップを作りたかったから、かわいいだけじゃなくて強い。

──ノラ千代は武井先生のキャラクターでは珍しく、最初からかなり最強ですよね。

武井の仕事机。

その強い理由も明かされていく連載です。

──いつも設定などきめ細やかに作られていますが、今回は?

これまでは神経質にやってましたね。今回は何もないです。ずっと思いつきだけ。話の本筋は、ノラ千代がなぜ旅をしていて、どこに向かって、どう終わるのかだけはちゃんと考えてます。

──あとの肉付けは、そのときのノリで?

うん。普段、頭きてることは全部斬ってやります(笑)。

猫だから、時代劇も描ける

──「猫ヶ原」は世捨て猫の侍・ノラ千代が悪を斬っていくというストーリーですが、時代劇にしたのはなぜでしょうか。

武井宏之による「猫ヶ原」の色紙。

「猫かわいい」だけじゃなくて、カッコよくしたかったから。あとファンタジーとして入りやすいんじゃないかと思って。でも実は、時代劇って普段は全然見ないです。そんな興味ない。勧善懲悪も嫌いだし。任侠ものもカッコいいと思わないし。

──それを、あえて選んだのは?

あえて選んだのは、あえて猫を描いたから。これが人だったら、時代劇も任侠も、いわゆるヤンキーものも描かないと思う。わかりやすい王道もの、あんまり好きじゃない。人を外したから描けたんだと思います。だから今回、今までにないメジャーな題材ですよね。

──ええ、仏像や重機から考えると、猫と時代劇というのはかなり王道ですね。

でもこの組み合わせ、なかったでしょ? よかったなと思ってます。第1話描いてみて、意外といいものできたなって。それでまた気合い入っちゃってるんですよ。失敗したな(笑)。

──気負わずと言っていたのに(笑)。描くにあたって、参考にされた時代劇などはあったんでしょうか?

いや、もう昔から見てて馴染みのある、知ってるものくらい。小さい頃おばあちゃんが「水戸黄門」見てたのを横でなんとなく見てたりとか、ほかに番組やってないから、なんとなく「大岡越前」が流れてる、くらいの感じです。マンガのほうはもちろん何作かは読んでますが。

「少年マガジンエッジ」2015年9月17日(木)創刊! / 650円/講談社
ラインナップ

武井宏之「猫ヶ原」/箕星太朗「制服ロビンソン」/原曲:Sound Horizon 漫画:鳥飼やすゆき「新約Märchen」/天道グミ「Bの食卓」/原作:はやみねかおる 漫画:フクシマハルカ「都会のトム&ソーヤ」/ゴツボ×リュウジ「ARAMITAMA」/衿沢世衣子「うちのクラスの女子がヤバい」/松本ひで吉「境界のミクリナ」/ミキマキ「星野さん家のアルとカナ」/池野雅博「シュガードッグ」/殿ヶ谷美由記「池袋ヲトメ道戦記」/森田ウユニ「魔王インストール」/はる桜菜「グリモワールの庭」/アシュレイ・ウッド「クロージング・パンドラ」/寺井赤音「花街ヒイロヲ」/jam3「九条くんの美味なる放課後」/児玉潤「アイ先生はわからない」/田中マコト「ジャジャジャジャーン!」

武井宏之「猫ヶ原」あらすじ

何かを求めて浮世を彷徨う、世捨て猫・ノラ千代。己が信念を貫き、悪しき心を斬り伏せる! 彼の行く先には何が待ち受けるのか──。

武井宏之(タケイヒロユキ)

1972年5月15日青森生まれ。1996年、週刊少年ジャンプWinter Special(集英社)にて「デスゼロ」が掲載されデビュー。1997年に週刊少年ジャンプにて「仏ゾーン」で連載デビューを果たす。1998年より同誌にて連載された「シャーマンキング」は、TVアニメ化、ゲーム化もされヒット作に。そのほか代表作品に「ユンボル-JUMBOR-」「機巧童子ULTIMO」(original story:スタン・リー)など多数。現在はコロコロアニキにて「ハイパーダッシュ!四駆郎」(原作:徳田ザウルス)も連載し、関連するミニ四駆のデザインも手がけている。そのほかゲームのカードイラストやTVアニメのキャラクターデザインなどマルチに活躍中。


2015年9月17日更新