「SHAMAN KING ふんばりクロニクル」|日笠陽子(麻倉 葉役)×臼井草太(Studio Z)×吉田守芳(少年マガジンエッジ編集長) 鼎談 スタッフの愛が細部まで宿った、ファンによるファンのためのスマホゲーム

2018年に20周年を迎え、完結版の刊行、続編やスピンオフ作品の連載、展示イベントの開催、2度目のアニメ化などさまざまな広がりを見せている「SHAMAN KING」。その多種多様な展開の1つとして、「SHAMAN KING」初のスマートフォン向けゲーム「SHAMAN KING ふんばりクロニクル」が12月8日にリリースされる。このゲームは麻倉 葉をはじめとしたおなじみのキャラクターたちで自由にチームを編成して、3DCG映像によるバトルを楽しめるRPG。各キャラクターを掘り下げるオリジナルストーリーや描きおこしイラストなどのコンテンツが数多く盛り込まれている。

コミックナタリーではそんな「SHAMAN KING ふんばりクロニクル」の特集として、アニメ「SHAMAN KING」で葉役を演じている日笠陽子、少年マガジンエッジ(講談社)の吉田守芳編集長、ゲーム開発を担当しているStudio Zの臼井草太ディレクターによる鼎談を実施。「SHAMAN KING」ファンが多数だという開発チームの熱意溢れる制作エピソードやゲームの魅力はもちろん、放送されたばかりのアニメ「SHAMAN KING」の「恐山ル・ヴォワール編」についても聞いた。

取材・文 / 齋藤高廣撮影 / 星野耕作

日笠陽子に葉の魂が宿った「恐山ル・ヴォワール編」

──日笠さんには以前にもアニメ「SHAMAN KING」の特集(参照:TVアニメ「SHAMAN KING」特集 日笠陽子(麻倉 葉役)インタビュー)でお話を伺いました。そのアニメが4月に放送スタートしてから、約半年が経ちましたね(※取材は10月下旬に行われた)。

日笠陽子

日笠陽子 本当に早いですね。

──前回のインタビューで日笠さんには「SHAMAN KING」というビッグタイトルの主人公を演じるプレッシャーや、あまり経験がなかった少年役を演じる難しさについて語っていただきました。それから現在まで、心境の変化はありましたか?

日笠 「SHAMAN KING」の麻倉 葉という役を、自分の人生をかけて一生懸命演じようという思いは変わっていないです。でも悩み方は時期によって変わっています。アフレコが始まったばかりの頃はどうすれば葉の気持ちに寄り添えるのかと悩んだり、1カ月ほど前には「SHAMAN KING」での経験を通じてなりたかった自分になれていない焦りが出てきたり……。そのたびに音響監督の三間(雅文)さんをはじめいろんな方にアドバイスをいただいたり、支えてもらったりして。1人ではここまで来ることができなかったなと深く実感しています。

──周りに支えられていることを強く感じた半年だったということですね。臼井さんは大の「SHAMAN KING」ファンとお聞きしたのですが、アニメをご覧になった感想はいかがですか。

臼井草太 今回のアニメでは、今まで映像化されなかった原作のストーリーが展開されていますよね。その中に「恐山ル・ヴォワール編」という葉くんとアンナの出会いが描かれるエピソードがあって、オンエアより一足先に拝見させていただいたのですが、すごく丁寧に作られていて。これを観られるのはファンとしてただただ幸せだなと思いました。

左から吉田守芳編集長、臼井草太ディレクター。

──「恐山ル・ヴォワール編」で特に印象に残ったところはありますか。

臼井 葉くんの「大切なものがたくさんあるというのは大変な事だ」というセリフがあるのですが、ここの日笠さんの演技がすごくよかったです。葉くんとしての思いはもちろん、前回のアニメを特集したインタビューで日笠さんが「1人でも多くの方にいい作品だな、面白いなと思ってもらうことが私の使命です」とおっしゃっていたその思いも伝わってきて、うるっとしてしまいました。

──日笠さんはどんなふうにこのセリフを演じたのでしょうか。

日笠 あまり覚えていないです……。

臼井吉田守芳 (笑)。

日笠 「恐山ル・ヴォワール編」の収録では変なスイッチが入っちゃったんです。役に深く入り込んでしまったせいで、あまり記憶がなくて。

──トランス状態というか。

日笠 そうなんです。役者としてはよくないモードだったのかもしれないのですが、スタッフの方に「戻ってきて」と言われるくらい没入してしまって。「SHAMAN KING」という作品には不思議な引力があるんですよね。

吉田 「恐山ル・ヴォワール編」のアフレコといえば面白い裏話があって。第33話に林原(めぐみ)さんが歌う「恐山ル・ヴォワール」が流れるシーンがあるんですけど、台本に書かれた歌詞を日笠さんが読み始めたことがありました。

日笠 ええっ!? あそこは読まない箇所だったんですか?

吉田守芳編集長

吉田 そうです(笑)。ミキサーの方が「あれ、これって曲流すところじゃないの?」って聞いたら古田(丈司)監督が「そうですよ」って言って、でも三間さんが「面白いからこのままいこうや」と録り続けたという。

日笠 衝撃!(笑)

吉田 その朗読の最中に日笠さんがすすり泣きをされて、「あっ、本当にこの人は葉くんになっているんだ」と思いました。三間さんは「いつかどこかで使うだろう」とおっしゃっていましたね。

日笠 「いつかどこかで」ということは、カットされてるじゃないですか!(笑)

吉田 本編では普通に曲が流れます(笑)。

臼井 (笑)。「恐山ル・ヴォワール」が流れる前に葉くんの語りがありましたけど、そこの演技もすごく感情が込められていて、日笠さんがトランスしていたと聞いて納得しました。それから、恐山で鬼に襲われて葉くんが逃げるシーンも「日笠さんに演じていただいてよかった」と思って。

日笠 ありがとうございます。

臼井 ここって、鬼に襲われて逃げているから怖いシーンのはずなんですけど、武井先生はそういう怖いシーンにも少しギャグテイストを入れるじゃないですか。だから怖さとギャグっぽさの両立が難しい場面だと思っていたのですが、日笠さんの演技はその両方とも振り切れていたのがすごいなと思って。観ていて「ありがとうございました」と……って、ただのファンのメッセージですみません(笑)。

日笠 (笑)。ここは必死に演じていました。普段はもっと多人数で掛け合うことが多いので、林原さん演じるアンナとの2人芝居が大変だったのを覚えています。

武井宏之が提案した衝撃の新キャラクター

──せっかく吉田編集長がいらっしゃるので、アニメやゲームの企画が立ち上がった経緯について聞かせてください。まず、完全新作のアニメ化はどのように決まったのでしょうか。

吉田 2018年に「SHAMAN KING」が20周年を迎え、完結版などが展開されるタイミングで「この作品を再度盛り上げるためには何ができるのか」と社内で話し合ったところ、「もう一度アニメ化しよう」という結論になったんです。そして企画を実現するためにスポンサーを集め始めたら、スポンサーになっていただけた企業の担当者にも作品ファンがたくさんいて。ちょうど子供の頃「SHAMAN KING」に触れていた読者が、社会人として力を貸してくれた。

左から吉田守芳編集長、臼井草太ディレクター、日笠陽子。

──長らく愛されている作品ならではのエピソードですね。

吉田 そして今回のアニメ化企画では「原作のラストまで映像化する」ということを大前提にしていて、さらに期やクールを分けず一気に放送したかった。小中学生にも観てもらいたいので、夕方帯のオンエアも必須。これらの条件で企画を進めた結果、今の形になりました。あとは海外ファンにもアニメを届けたくて、Netflixなど各サービスでの配信にも力を入れましたね。実は今、原作もロシア、トルコ、ポーランドといったさまざまな国で刊行されています。特にロシアには「SHAMAN KING」ファンが多いんですよ。

臼井 確かにゲームの公式Twitterにも、ロシア語のリプライが来ていました。

日笠 ロシアでも人気があるというのは今初めて聞いて、びっくりしました。ぜひイベントなどで行きたいですね。

──ゲームの企画はいつごろ始まったのでしょうか。

ゲーム「SHAMAN KING ふんばりクロニクル」キービジュアル

吉田 アニメ化を決めた後で、さらに「SHAMAN KING」を盛り上げるために何が必要かと考えて、アプリゲームを作ることになりました。それでメーカーさんを探していたところ、Studio Zさんは熱意が高く、方向性がちゃんと見えているゲームを作ろうとしてくださっていたので、制作をお願いしたという次第です。

──そしてゲーム開発がスタートしたと。制作に武井先生は関わっていらっしゃるのでしょうか。

吉田 まず企画の初期に武井先生には「ソーシャルゲームで、Studio Zさんに制作していただきます」とお伝えして、その後も何度か打ち合せにお越しいただきました。話し合いを重ねる中で武井先生からは「『ハオを倒す物語』という点はどうしても譲れない」と要望をいただいたのですが、「原作やアニメと同じストーリーを展開するだけでは面白くないよね」ということになり、詳しくは言えないですが設定を少し工夫しています。

臼井 とはいえ基本的に作品のストーリーを踏襲してはいて、序盤は葉くんが竜さんを憑依合体でこらしめるところから展開していきます。そこにプレイヤーが操作するオリジナルキャラクターの主人公が絡んでくるという形なので、「SHAMAN KING」を知らない人もその物語の流れを追えますし、もともと知っていた人はオリジナルキャラクターが加わることによる変化を楽しめるようになっていると思います。

吉田 そういったストーリーのアイデアや、ゲームで登場する新キャラクターのデザインについては、武井先生から原案をいただいて、それをもとに開発を進めていますね。

──武井先生が原案を担当されているからこそ生まれたキャラクターや、盛り込まれた設定はありますか。

ゲーム「SHAMAN KING ふんばりクロニクル」設定画

吉田 例えば某キャラクターの子供という設定のキャラクターを提案いただきました。こういうことは編集部とStudio Zさんの間だけでは絶対に決められない(笑)。あと武井先生にはストーリーやキャラクターの原案だけでなく、3Dモデルの監修にも関わっていただきましたよね。

臼井 武井先生はプラモデルやロボットが好きじゃないですか。3Dモデルもある意味プラモデルに近いようなところがあったと思うので、とても気にかけてくださって。弊社が最初に作った3Dモデルは今振り返ると全然似ていなかったのですが、武井先生の赤入れが入ったことできれいなモデルになって、すごいなと思いました。絵を描く方なので、2Dのイラストをカッコよく描けるのはわかるんですけど……武井先生の頭の中では、キャラクターがしっかり3次元で生きていらっしゃるのだろうと思いましたね。