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武井宏之が新天地で“気負わず”描く新作とは

バトルと向き合ってみるかもしれない

──これまでの作品はバトルシーンも多かったと思うのですが、「猫ヶ原」の第1話も剣戟シーンがたっぷりでした。今後もバトルは描かれるのでしょうか。

武井の仕事場に置かれていた資料の刀。

自分の中でも全然決まってないんですけど、そこに向き合ってみるというのも、今回あるかもしれないですね。ちゃんと戦いから目を背けない。ぶつかり合ってちゃんと真正面から向き合う。今までの作品は「バトルの形を借りた何か」でしたから。

──でも、今回もバトルシーンを避けるという選択肢はあった。

多少、自分の中で昔とは変わったこともあるかもしれないです。小さい頃は、戦うことがホント嫌いだったんです。勝つとかそういうの全然こだわりがなかったし、ドッジボールもかわす専門だった。体育祭は絶対出ないし(笑)。

──そんな武井先生もジャンプで戦ってきたわけですよね。

それは、戦わないっていう目立ち方をしてただけです。でも今まで全部かわせてきた事柄が、かわせないケースもあったりして、それが今なのかと。……まあバトルに向き合うかどうかは、まだわからないですけど。いわゆるバトルが好きな人って、たぶんキャラが好きなんだと思うんです。キャラを応援したいかどうかが重要で、バトルの内容自体はそんなに興味ないんじゃないですかね。スポーツニュースと一緒で、誰が勝って誰が負けたっていうのが重要で。話題作りというか。昔、一番売れてた頃のジャンプってそういうコミュニケーションツールだったわけだから。

──次の日クラスで、「昨日のジャンプ読んだ? あいつが勝ったぜ」みたいな会話が生まれるってことですね。

そう。でももうそういう時代でもないし。勝敗の結果をすぐ求められることもない。だから今なら真剣にキャラとキャラの本気のぶつかり合いを描けるのではと思っています。

めんどくさかったキャラは、葉くんだけです(笑)

──武井先生のストーリー作りはほとんどキャラクター任せだと以前別のインタビューでおっしゃっていましたが、そのストーリー作りを任せられるキャラ、というのはどういうキャラでしょうか。

武井宏之

勝手に動くキャラですね。今回もネーム作りは全然苦労してなくて、状況を与えるだけ。第1話は自己紹介っていうか猫紹介だから、それを端的に表せる状況を与えただけです。ここからいくらでも、どこへ行っても勝手に動きますよ。自然に動いたり、見せ場ができるキャラじゃないと、もうキャラ作った時点で間違ってるから。新人のネーム見たりして話が詰まったりなんだしてたりすると、もうキャラの時点でダメなんですよ。キャラがつまんない。

──つまんないキャラ、というのは?

キャラクターにトピックスがない。「このキャラはなんなの?」って聞いたときにひと言で出てこないと。

──なるほど。武井先生はたくさんのキャラクターをこれまで生み出されてきたと思うんですが、どのキャラももう勝手に動いていく?

基本、勝手に動きます。めんどくさかったのは、葉くんだけです(笑)。

──ああ、能動的なキャラではないから……。

そう。だから勝手に動かないです。でもなんか前に立って言わなきゃいけないわけですよ。無理矢理前に出てスピーチしろ、みたいな。あれがすごく嫌だった。なんか嘘くさくなっちゃうし。アピールするの、ホント好きじゃない(笑)。

模型屋さん始めたいです

──なんだか、武井先生自身が葉くんのようです! 最後に今後、武井先生がやりたいことや目標はありますか?

模型を作って暮らしたいと語る武井の仕事場には、こんな部屋も。

模型やりたいです。模型屋さん始めたいです(即答)。

──「武井模型」の開店が、今後の目標ですか(笑)。

何にも関与せず、人里離れて、人気がどうとかそういうのから全部解放されて生きていけたら、本当は幸せなんですけど。面倒ですよね。人気のためにマンガ描くっていうのは。

──人気と読者の評判というのは、またちょっと違うと思うのですが。

そうですね。売れてるものが偉いっていう風潮がやっと終わってきたじゃないですか。よかったなと思います。つい4年前くらいまでは、売れてるものが絶対だったから。だから今はそれだけが希望ですね。マンガは、求めてくれるファンの方がいる限りはがんばります。

「少年マガジンエッジ」2015年9月17日(木)創刊! / 650円/講談社
ラインナップ

武井宏之「猫ヶ原」/箕星太朗「制服ロビンソン」/原曲:Sound Horizon 漫画:鳥飼やすゆき「新約Märchen」/天道グミ「Bの食卓」/原作:はやみねかおる 漫画:フクシマハルカ「都会のトム&ソーヤ」/ゴツボ×リュウジ「ARAMITAMA」/衿沢世衣子「うちのクラスの女子がヤバい」/松本ひで吉「境界のミクリナ」/ミキマキ「星野さん家のアルとカナ」/池野雅博「シュガードッグ」/殿ヶ谷美由記「池袋ヲトメ道戦記」/森田ウユニ「魔王インストール」/はる桜菜「グリモワールの庭」/アシュレイ・ウッド「クロージング・パンドラ」/寺井赤音「花街ヒイロヲ」/jam3「九条くんの美味なる放課後」/児玉潤「アイ先生はわからない」/田中マコト「ジャジャジャジャーン!」

武井宏之「猫ヶ原」あらすじ

何かを求めて浮世を彷徨う、世捨て猫・ノラ千代。己が信念を貫き、悪しき心を斬り伏せる! 彼の行く先には何が待ち受けるのか──。

武井宏之(タケイヒロユキ)

1972年5月15日青森生まれ。1996年、週刊少年ジャンプWinter Special(集英社)にて「デスゼロ」が掲載されデビュー。1997年に週刊少年ジャンプにて「仏ゾーン」で連載デビューを果たす。1998年より同誌にて連載された「シャーマンキング」は、TVアニメ化、ゲーム化もされヒット作に。そのほか代表作品に「ユンボル-JUMBOR-」「機巧童子ULTIMO」(original story:スタン・リー)など多数。現在はコロコロアニキにて「ハイパーダッシュ!四駆郎」(原作:徳田ザウルス)も連載し、関連するミニ四駆のデザインも手がけている。そのほかゲームのカードイラストやTVアニメのキャラクターデザインなどマルチに活躍中。


2015年9月17日更新