コミックナタリー PowerPush - 少年マガジンエッジ

武井宏之が新天地で“気負わず”描く新作とは

講談社から、新たなマンガ誌・少年マガジンエッジが9月17日に創刊される。「マガジングループの最も外側を行く、とがった作品を掲載する」ことを目標に、エッジの効いたラインナップが出揃っている。

創刊号の表紙と巻頭カラーを飾るのは、「シャーマンキング」で知られる武井宏之の完全新作「猫ヶ原(ねこがはら)」。コミックナタリーでは創刊を記念し、武井にインタビューを敢行した。講談社の雑誌初登場となる武井が、新作に込める思いとは。

取材・文/坂本恵 撮影/三木美波

武井宏之インタビュー

「猫ヶ原」は一番、自由に描けてるんじゃないかな

──「シャーマンキングFLOWERS」が終わって、「機巧童子ULTIMO」が10月発売のジャンプSQ.CROWNで完結、「ユンボル-JUMBOR-」も10巻で終了と、長年連載していたものが一気に終わります。そんな中、新しい雑誌で完全新作「猫ヶ原」を始める思いをお聞かせください。

武井宏之

まだはっきりしてないんですよね。なぜなら「ULTIMO」も「ユンボル」もまだ描いているので。しっかり描き切って「よっしゃ」「感無量」みたいな状態だったら、また違った心持ちだったのかもしれないんですけど。

──「FLOWERS」も「落ちついたところでタイトルを変え仕切り直すつもりでいます」とTwitterで明言されていましたし、どれもまだ終わってはいない。

そうなんです。ちょっと足元フラフラしたまんまやっている感じはあるけど、あんま気負うのもよくないし、「ま、いっか」って。全部完結して、いきなり新作を新しい雑誌でやったら、プレッシャーで死にそうになると思う(笑)。カチカチになっちゃう。

──これくらいの状況だから、気負わず描けるものが生まれる隙がある。

そうそう。たぶん全部完結して、半年くらい暇だったとしたら、たぶんすごい設定書き込んで、カッチカチのキャラ作ってたと思う。「猫ヶ原」は今、超忙しいから「これで勘弁してください」ってノリで描いたものなんですけど、でもそれでよかったと思ってます。……いろいろあってなぜか時間かかってるけど(笑)。

──武井先生は週刊少年ジャンプでデビューしてからずっと、ジャンプスクエア、ウルトラジャンプ、ジャンプ改(すべて集英社)と、主にジャンプ系列誌で活躍されてきたわけですが、講談社から創刊される新雑誌に舞台を移すことで、変わってくるものも、少なからずはあるとは思うのですが。

舞台が変わったから、ということだけではないかもしれないですけど、「ジャンプだったらこうしなきゃいけない」みたいなことは、やっぱりどこかにあったと思います。「こうじゃないと通らない」とか、「これじゃないと終わる」とか。

武井宏之の机。ペン入れされた「猫ヶ原」の原稿が棚に差されている。

──凝り固まった概念みたいなものがあった。

自分の中では。

──「猫ヶ原」は、まっさらな状態で、何を描いてもいいという感じだったんでしょうか?

そうですね。ありがたいと思います。そういう状況ってなかなかないと思うし。ホント自由です。一番、自由に描けたんじゃないですかね。「猫ヶ原」は猫しか出てきませんけど、まず普通は主人公が人じゃないとこからいろいろ言われますからね。

表紙イラストは若冲

──新しい舞台となる少年マガジンエッジについては、どのような印象をお持ちですか?

「エッジ」ですからね。尖ってなんぼだと思います。目立ったことしてほしいですね。どんどん突拍子もないことしてほしいです。

少年マガジンエッジ創刊号を飾る「猫ヶ原」のイラスト。

──創刊号は「猫ヶ原」が表紙を飾ります。

人気というものにこだわりたくはないですけど、怖いですよね。表紙、これでいいのか……。

──ものすごくカッコいいです! 創刊号らしいイラストですし、日本画のようですね。

これは若沖の素材を使用してます。とにかくまずは少年誌で誰もやってないことをするということで、今回は「日本画風」にチャレンジしました。TAKEIロゴもハンコ風に加工して。版画とかもやりたいけど、さすがにそれは時間かかりすぎるかな。

──告知第1弾で公開された予告カットも、和紙に墨で描かれていました(参照:シャーマンキングの武井宏之、講談社に初登場!今秋創刊の少年マンガ誌で連載)。

和紙に墨で描かれた「猫ヶ原」の予告カット。

あれは最初に打ち合わせしたときに筆で描いたラフで、後から和紙のテクスチャーを貼りました。ほかと被らないっていうのも大事ですし。ごまんとマンガがありふれてる世の中なんだから、やる以上は目立たないと。

──ええ。

タイトルも被らないように、いろいろ検索してから決めましたよ。最初は「猫侍」っていうタイトルを思いついてすぐ検索したら、もうメジャーなのがあるし(笑)。「野良ヶ原」っていうタイトル候補もあったんですけど、「ノラガ」まで被ってるやつあるし、それで「猫ヶ原」になりました。

──被り、気にされるんですね。

気にしますよ。被ったら最悪です。それで、今まで変な題材ばっかり扱ってきたんですから。仏像とか重機とか。もちろん好きだからいいんだけど。結果はともかく。

「少年マガジンエッジ」2015年9月17日(木)創刊! / 650円/講談社
ラインナップ

武井宏之「猫ヶ原」/箕星太朗「制服ロビンソン」/原曲:Sound Horizon 漫画:鳥飼やすゆき「新約Märchen」/天道グミ「Bの食卓」/原作:はやみねかおる 漫画:フクシマハルカ「都会のトム&ソーヤ」/ゴツボ×リュウジ「ARAMITAMA」/衿沢世衣子「うちのクラスの女子がヤバい」/松本ひで吉「境界のミクリナ」/ミキマキ「星野さん家のアルとカナ」/池野雅博「シュガードッグ」/殿ヶ谷美由記「池袋ヲトメ道戦記」/森田ウユニ「魔王インストール」/はる桜菜「グリモワールの庭」/アシュレイ・ウッド「クロージング・パンドラ」/寺井赤音「花街ヒイロヲ」/jam3「九条くんの美味なる放課後」/児玉潤「アイ先生はわからない」/田中マコト「ジャジャジャジャーン!」

武井宏之「猫ヶ原」あらすじ

何かを求めて浮世を彷徨う、世捨て猫・ノラ千代。己が信念を貫き、悪しき心を斬り伏せる! 彼の行く先には何が待ち受けるのか──。

武井宏之(タケイヒロユキ)

1972年5月15日青森生まれ。1996年、週刊少年ジャンプWinter Special(集英社)にて「デスゼロ」が掲載されデビュー。1997年に週刊少年ジャンプにて「仏ゾーン」で連載デビューを果たす。1998年より同誌にて連載された「シャーマンキング」は、TVアニメ化、ゲーム化もされヒット作に。そのほか代表作品に「ユンボル-JUMBOR-」「機巧童子ULTIMO」(original story:スタン・リー)など多数。現在はコロコロアニキにて「ハイパーダッシュ!四駆郎」(原作:徳田ザウルス)も連載し、関連するミニ四駆のデザインも手がけている。そのほかゲームのカードイラストやTVアニメのキャラクターデザインなどマルチに活躍中。


2015年9月17日更新