押切蓮介「でろでろ」

青押切蓮介の初連載作、新装版刊行!ホラーギャグや押切流女の子のルーツ語るインタビュー

押切蓮介の初連載作「でろでろ」の新装版が、本日12月25日より全8巻で刊行スタートする。ヤングマガジン(講談社)にて2003年から2009年まで、6年間連載されたホラーギャグで、いまだ根強いファンを持つ押切の代表作だ。

押切はヤングマガジンに凱旋し、新作「でろでろ 2杯目」を短期集中連載することも決定。コミックナタリーでは新装版刊行と新作執筆を記念し、押切にインタビューを敢行した。特徴的な女の子やホラーギャグというジャンルのルーツ、さらには押切の家族話まで、パーソナルな部分にも踏み込み語ってもらった。

取材・文/粟生こずえ 撮影/坂本恵

 
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押切蓮介インタビュー

女の子のルーツはつげ義春先生のマンガ

押切の初単行本となる「でろでろ」1巻。

──「でろでろ」新装版刊行おめでとうございます。押切先生にとって「でろでろ」は初の本格的な連載作でもあり、思い入れが深い作品なのでは?

それまで僕は、ショートではなくて18ページとか30ページのマンガを描いていたんです。でも担当さんが、僕の絵柄でその長さのマンガを読むのはつらいって言うんですよ。で、「8ページのショートを描かないか。それならヤングマガジン本誌で連載できるかも」と言われたので……「じゃあそうします」と。

──すごく素直ですね(笑)。

そのときちょうど、ヤンマガでショート枠が空いてたんですよね。こっちは生活かかってますからね、そこに乗っからない手はないでしょ!

──「でろでろ」を立ち上げるに当たって、苦労したことは?

耳雄と留渦という兄妹のキャラが固まるまで時間がかかりましたね。初期設定の留渦は、全然かわいくなかったんですよ。目つきも異様な感じで、性格も……。「これじゃダメだ、とにかく妹をかわいくしろ」って何度も担当さんに言われて。

──「でろでろ」において、留渦のかわいさは重要ですよね。いまや押切先生は女の子キャラのかわいさでも定評がありますが、理想とするモデルはありますか?

ずっとかわいいと思ってるのは……つげ義春先生のマンガに出てくる女の子ですね。

つげ義春「紅い花」を手に取る押切。

──えっ、つげ義春……ですか?

つげ先生のマンガって、男たちはみんな三白眼でいびつでしょ。だけど出てくる女の子たちはハッとするようなかわいらしさなんですよ。たぶん僕のマンガで女の子がかわいいと思われるのも同じ理由なんじゃないかな。まわりの男はブスッとして冴えない感じだけど、女の子だけは黒目がちだから。ほかのマンガ家さんの女の子キャラと並べるとどうかなあ、本当にかわいいのかなあと思ってますが。

──いやいや、グッとくる独特のかわいさがありますよ。

当時の担当さんには、見た目以外の部分でも「キャラクターを大事に描け」と徹底して言われましたね。兄の耳雄も、妹には弱いけどオバケには強いところをわかりやすく、「ルパン三世みたいなキャラを目指せ」と言われてハッとしたことは印象的でしたよ。それまで、そういうキャラの立て方ということを考えないで描いてきたから。

──編集さんの言うアドバイスは、さすがに的を射ていたわけですね。

押切蓮介

本音を言えば、「オレはオレの考えてるように描きたいんだーっ!」って気持ちはあったけど。言うこと聞いてよかったと思ってますよ、さすがプロの編集者ですよね。でも2話くらい描いたところで「これは10話くらいで終わりだね」とはっきり言われたけど(笑)。

──じゃあ、まさかあれほどの長期連載になるとは……。

思わないですよ! 9話、10話あたりを描きながら、いつ打ち切りを言いわたされるかと。でもネームを催促されるので「あれ、15話くらいまでいけるのかな?」「20話くらいまで?」とビクビクしつつ……なぜかその頃から自分でも結構ノッて描けるようになってきたんですが。

24時間、妖怪ネタを考え続けた「でろでろ」モードの日々

──「でろでろ」の妖怪は、ある種ユルくてショボいところが魅力ですよね。

あれは「あるあるネタ」と妖怪をくっつけちゃおうという発想からきてるんです。そもそも、昔から語り継がれている妖怪もそうで。家をミシミシいわす「家鳴り」とか、後ろからついてくる足音がするだけの「べとべとさん」にしても、みんな「あるある」から生まれてるわけですよね。現代で「こういうことあるよね」ってことを全部妖怪のせいにしちゃおうと。

──害を及ぼすばかりが妖怪じゃない、と。

「でろでろ」新装版1巻。

いい妖怪もいれば悪さをするやつもいるし、なんにもしない妖怪もいるし。

──新装版1巻にも収録されている10話の「つままれ君」なんてまさにそうですよね。電気のヒモの先で、「つい男の子がピシパシ叩きたくなる難儀な宿命を負った妖怪」とありますが(笑)。

あのヒモをパンチするのって、みんなやるでしょ!? こういうくだらない妖怪っていくらでも思いつきそうだけど、実際はキツかったですね。毎週毎週妖怪を考えて、その妖怪が何をして、兄妹がどう思ってどう解決するかを8ページでまとめなきゃいけないから。

──いちばんお気に入りの妖怪は?

やっぱりカントクかなあ。

──カントクは読者人気もズバ抜けてますよね。

ガチャピンに似た風貌の妖怪・カントク。

ルックスは完全にガチャピンのパクリですけど(笑)。

──それ、言っちゃっていいんですか?

だって、だれがどう見てもガチャピンじゃないですか。

──なぜあえてそうしたんでしょう?

うーん、ガチャピンが好きだったから……まあ中身は全然違いますけどね。映画に憑かれた妖怪ではあるんですけど、人間より人間くさくて動かしやすかったからレギュラー化したんでしょうね。

──妖怪のアイデアはどうやって考えていたんですか?

日々、何を見ても何をしてても妖怪のネタに結びつかないか考えてる状態ですよ。週刊だから、一瞬も気を抜けない。連載中は、それこそ妖怪に取り憑かれてたといっても過言じゃないでしょうね。

──妖怪のネタ出しだけでも、相当ハードではないかと思います。

押切によるネーム。

「でろでろ」が終わった瞬間にそのモードも消えたから、いま、ものすごく苦しんでるんですよ!

──いまは「でろでろ」の新作を準備中と伺いました。

来年ヤンマガに発表する「でろでろ」のネームをちょうどさっきまで描いてたんですけど、4日もかかったんですよ。ずーっと悩んでて。

──「でろでろ」モードは、かなり特殊な状態だったんですね。

それもあるけど……いま、ちょっと自分は安定しはじめてるいるのも原因なのかも(笑)。あの頃は危機感がすごかったもの。貧乏ってのはモチベーションにつながるんですよね。どうしてもマンガで食っていきたいんだーっていう、しがみつき感がすごかった。

2003年から2009年までヤングマガジンにて連載されたホラーギャグマンガが新装版として復活! 霊感体質のため、奇っ怪現象に出くわしやすい悪ガキ中坊・耳雄が、なぜかオカルト耐性 が異常に高い耳雄の妹・留渦と、お化けに弱い耳雄の愛犬・サイトーさんとともに、悪霊や妖怪をバッタバッタとブッ倒していく。各巻に描き下ろしも収録。

2巻は2月6日、以降毎月6日に発売。さらに2月3日発売のヤングマガジン10号にて集中連載「でろでろ 2杯目」スタート!

押切蓮介(おしきりれんすけ)

押切蓮介

1979年9月19日生まれ、神奈川県川崎市出身。1998年に、ヤングマガジンにて「マサシ!!うしろだ!!」でデビューし、「でろでろ」などホラーギャグの分野で人気を博す。代表作に「ミスミソウ」「椿鬼」「ピコピコ少年」など。現在は月刊少年シリウス(講談社)にて「ゆうやみ特攻隊」、漫画アクション(双葉社)にて「焔の眼」を連載。月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)では、格闘ゲームを題材にした青春作品「ハイスコアガール」を連載している。