WOWOW「大人計画 怒涛の7カ月大特集」Vol.1|岸田國士戯曲賞作「ファンキー!〜宇宙は見える所までしかない〜」から、ウーマンリブ最新作「もうがまんできない」まで、大人計画の“2つの頭脳”、松尾スズキ&宮藤官九郎が前半戦10作品を一挙紹介

宮藤官九郎インタビュー

“生きた芝居”を残すなら、劇場での収録が一番

──11月に放送される「春子ブックセンター」は、宮藤さんが劇団本公演の作・演出を初めて手がけた作品です。「30祭」の記念本の中で、松尾スズキさんからの助言を受けて本作を執筆されたと振り返っていらっしゃいましたね。

「本公演を宮藤が書いても良いと思うんだ」と松尾さんがおっしゃったときの、劇団員の反応がみんな違ってみんな面白かったです。松尾さん書かないなら、いっぱい出られるなと思って、お笑い芸人を主人公に、“笑い”について考察することの無意味さ、みたいなことをやりたかったんだと思います。芸人の物語は“ドーランの下に涙の喜劇人”的な、人情喜劇になってしまいがちですが、そうはしたくなかったので、そこから一番遠い、河原(雅彦)さんをキャスティングしました。

──10月に放送される「もうがまんできない」についても伺わせてください。「もうがまんできない」は今年4・5月に上演予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で残念ながら全公演中止となりました。今回の「大人計画 怒涛の7カ月大特集」では、本多劇場で収録した映像が放送されます。

“生きた芝居”を残すなら、劇場での収録が一番なんだって思いました。例えば、お客さんの前で1週間、2週間くらい上演したあとに収録してたら、セリフやギャグが削られていたり、付け足されていたりする部分が絶対にあったと思うんです。稽古場で完成させたものを、いい意味で形が崩れる前に出せたというか、自分にとって完成に一番近いものが作れたんじゃないかと。映像作品ではあるけど、すごく生っぽいですし、“完成度の高いゲネプロ”になったかなって思います。

──「もうがまんできない」はJAGATARAの楽曲と同じタイトルですが、どのような経緯で生まれた作品だったのでしょうか?

JAGATARAの曲名と一緒なのは偶然なんです(笑)。最初は「奥さん、もうがまんできない」と「もうがまんできない」の2つ候補があったんですけど、(大人計画社長の)長坂(まき子)さんに相談したら「奥さんはないほうがいい」ってアドバイスをもらって。僕自身、もともとJAGATARAの曲が好きだし、(今回音楽を担当した)向井(秀徳)さんもJAGATARAがお好きなのは知っていたので、「『もうがまんできない』の1曲だけで芝居作りたいです」ってお願いして、アコースティックバージョンとかインストバージョンとかいろいろなバージョンを作ってもらいました。

内容に関しては、今の世の中、なんとなくみんな我慢しながら生きているなと感じていたので、いろいろなことを我慢してる人たちが我慢できなくなっていくお話にしようと思っていたんです。まさかもっと我慢しなきゃいけなくなるとは思わなかったですけど……(笑)。

──「もうがまんできない」では、上司の妻と浮気をしてしまった権蔵(阿部サダヲ)を中心に、ストレスを抱えた人々の群像劇が展開されます。

僕の公演では、阿部くんに頼りがいのある役をやってもらうことが多いんですけど、今回はあえて一番情けない役というか、出番は多いけどおいしくない役をやってほしいと思って。お客さんがいたら頼りがいのある役になっていた気がするから、無観客収録で良かったのかもしれません。「もうがまんできない」では、いつもと違う阿部くんが観られると思うのでお楽しみに。

宮藤官九郎(クドウカンクロウ)
1970年生まれ。1991年より大人計画に参加し、脚本家・監督・俳優として活動している。1995年に結成したパンクコントバンド・グループ魂ではギタリストを務め、作詞・作曲も担当。第25回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第53回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第49回岸田國士戯曲賞、第29回向田邦子賞、東京ドラマアウォード2013脚本賞、第67回芸術選奨文部科学大臣賞など多数の賞を受賞。2019年に放送されたNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」では脚本を担当した。10月より、パーソナリティを務めるラジオ番組「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」(TBSラジオ)の放送がスタート。10月から11月にかけて、自身が作劇を手がけたねずみの三銃士「獣道一直線!!!」に出演する。また、2021年1月から放送されるテレビドラマ「俺の家の話」では脚本を担当する。