木村達成がデビュー10周年に届けた“声”、初コンサート「Alphabet Knee Attack」がWOWOWで

2022年にデビュー10周年を迎えた俳優の木村達成。その記念として昨年末に2日間にわたって開催された自身初のコンサート「木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-」が、2月18日にWOWOWライブ・WOWOW4Kで放送・配信される(参照:木村達成の10周年コンサート「Alphabet Knee Attack」WOWOWで放送&配信決定)。ゲストに加藤和樹、柿澤勇人、MCに川久保拓司を迎えて行われたコンサートでは、木村が昭和歌謡から懐かしのJ-POP、ミュージカルナンバーまで、自身を形作り、“芯”となっている楽曲の数々を披露した。

ステージナタリーではコンサートの放送・配信に向けて、木村に当日の様子や思いを振り返ってもらった。特集後半には、木村と舞台や映像で作品を共にした安蘭けい、白井晃、武田航平からデビュー10周年の木村に向けたお祝いメッセージを掲載している。

取材・文 / 大滝知里撮影 / 秋倉康介
スタイリスト / 部坂尚吾(江東衣裳)スタイリストアシスタント / 清水月(江東衣裳)
衣裳協力 / :colon(エンメ株式会社)ヘアメイク / 木下恭子

選んだ曲の中の“言葉”に意図を感じてもらいたい

──2022年12月29・30日に10周年を記念するコンサート「木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-」が開催されました(参照:有楽町でお会いしましょう!木村達成の10周年コンサート、ゲストに加藤和樹・柿澤勇人)。振り返ってみて、初めてのコンサートはどのような体験でしたか?

コンサートで歌う曲の構成は前々から考えていましたが、本番の1週間前くらいまで「本当にやるの?」という感覚でした(笑)。リハーサルが始まって、やっと実感が湧いたというか。ただ、役を背負わない、素の木村達成でお客様の前で歌うという経験が初めてだったので、それには少し違和感がありました。というのも、僕が今までコンサートをあまりやってこなかったのは、自分が出演していない作品の曲も歌わなきゃいけないと思っていたから。それがなんか……嫌だったんです。演じたことのある役は台本を読んで、その役を理解したうえで歌うことができますが、理解していない状態で歌うと、楽曲だけが前に立ってしまって、何も伝わらないんじゃないかと思って。負けず嫌いというのかな、「演じていない役の曲は歌いたくない!」っていう気持ちがあったんです。

でも以前、マエストロの塩田明弘さんが「コンサートは“こんな歌も歌えるんだよ”という自分の未来へのプレゼンにもなるから、やったほうがいい」とお話ししてくださって、ちょっと前向きになれた。実際、すごくいい経験でした! スナックのお立ち台にいつもはせいぜい5分くらいなのに、1時間半も立ち続けて、ヒーローになれたような気持ちでしたね。生バンドを背に、酔いしれるような、痺れるような感覚がありました。

木村達成

木村達成

──コンサートでは両日共に、前半には「バンザイ~好きでよかった~」(ウルフルズ)や「ギザギザハートの子守唄」(チェッカーズ)など、懐かしいナンバーを聴かせてくださいました。木村さんのスナック愛はよく知られるところですが、これらの楽曲もご自身がスナックで歌われてきたものですか?

そうですね。カラオケにも行きますが、それではだめで、スナックで歌う懐メロが好きなんですよ。その場にいる、僕より年齢が上の人たちに喜んでほしいっていう気持ちもありますし、若い自分でもこんな曲を知っているんだぞっていう、闘いを挑みにいくようなところもあって。最近の曲は自分にとってキーが高くて速いものが多いんですが、昔のポップスはテンポがゆったりしていて、奥行きを感じるんですよね。

──ミュージカルナンバーだけで聴かせるコンサートも多い中、セットリストに昭和歌謡や懐かしいJ-POPを入れたのはなぜですか?

ミュージカルソングだけでやるつもりは、はなからなかったんです。それだったらきっと、僕はこの船から降りていたと思います!(笑) 何十曲と歌う中で、最初から最後まで、歌詞も含めて自分のこれから生きていく未来が詰まっている感じにしたかったんですよね。ただ歌を聴かせるのではなく、選んだ曲の中の“言葉”に意図を感じてもらいたかった。そう思ったときに、ミュージカルには1曲で人生の大部分を語れるような曲が多いので、そうではなく、人生のいろいろな瞬間を摘み取るように歌を届けたかったんです。

加藤和樹・柿澤勇人は隣にいてくれるだけでも…

──セットリストは木村さんが決定されたのですか?

はい。あとはもちろん有名な曲やファンの皆さんからのリクエストにお応えしている曲、WOWOWさんに「この曲を達成さんの声で聴きたい」と言われて選んだ曲もあります。女性シンガーの曲もいいなと思って、aikoさんの「カブトムシ」も入れてみました。

──「カブトムシ」はジャズアレンジが加えられていて、男性の歌声で聴くと一層センチメンタルに感じました。ポップスのあとには、初日は加藤和樹さん、2日目には柿澤勇人さんをゲストに迎えられましたが、お二人は木村さんにとってどのような先輩ですか?

僕にとって2人は、“先輩”という感じではないですね(笑)。友人でもない、“腹を見せられる人”とか“飾らないでいられる人”。今回、初めてのことだらけだったので、不安しかなかったんですよ。だから2人がいてくれることでその不安が帳消しになるんじゃないかという期待があって、お声がけしました。実際、そばにいてくれるだけですごく安心しましたし、こんなことを言ったら失礼ですが、隣で僕の歌を聴いてくれるだけでも良かったんです(笑)。それはさすがにぜいたくなので歌っていただきましたが。MCの川久保(拓司)さんもそういう存在。僕1人だけでは無理でしたね。

木村達成

木村達成

──木村さんの“憧れの人”こと井上芳雄さんはビデオメッセージを寄せてくださいました。

ありがたかったです。初日が終わってすぐにコンサートの報告をしたんですが、芳雄さんから「盛り上がっている様子をSNSで観ていました」「また一緒にやれるのを楽しみにしています。フル回転の1年お疲れ様。よいお年を」というメッセージをいただいて。良かったら今度はぜひ、出ていただきたいです。

──もしコンサートでの共演が実現するとしたら、井上さんとどのような曲を歌いたいですか?

……それは3日くらいもらわないと、答えが出ないです(笑)。

難しいことだらけだったミュージカル「四月は君の嘘」

──コンサートでは、ゲストのお二人とご一緒する時間を経て、ミュージカルナンバーを歌い上げるコーナーが展開します。「演じていない役の曲は歌いたくない!」という気持ちがあったとおっしゃっていましたが、ミュージカル「ルドルフ ザ・ラストキス」の「明日への階段」やミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち」の「ありのままの私」など、未経験の楽曲にも挑戦されていましたね。

そこはもう、“もし自分がやるなら”という気持ちで割り切りました。言ってしまえば、J-POPだって自分の曲ではないわけですし。

木村達成

木村達成

──では、披露されたミュージカルナンバーの中で特に思い入れのある曲は?

ミュージカル「四月は君の嘘」の「映画みたいに」ですかね。思い返してみると、2020年の当時は日本初演で、フランク・ワイルドホーンさんが作った楽曲だから難しいことだらけだったんです(参照:「四月は君の嘘」ビジュアル、小関裕太・木村達成・生田絵梨花らが制服姿に)。そこからどうやってカンパニーを背負っていくかとか、どう良くしていくかとか、皆ですごく話し合った作品でした。歌っている間、そのときに悩んでいたことが全部よみがえってくるようなナンバーでしたね。実は、一度コロナで公演中止になって再び上演が決定したときに、高校生の物語だし「年齢的にも、もういいかな」と思っていたんです(参照:ミュージカル「四月は君の嘘」2022年5月に上演決定、小関裕太・木村達成・生田絵梨花ら続投)。でも、代わりに演じた誰かがその役でバーンと売れてしまったら、悔しいじゃないですか。あのときカッコつけて断っていなければって。そんな思い出がある作品です(笑)。

──ミュージカル「エリザベート」の「最後のダンス」はしっとりとした色気がありました。

この曲は僕が「エリザベート」に出演するきっかけになった曲。「ルドルフ役のオファーが来たら、絶対に受けなさいよ」と言ってくださった先輩・悠未ひろさんの、ファンクラブのイベントで一節歌ったことがあって。まさか自分がフルで歌う日が来るとは思いませんでした。

木村達成

木村達成

──ゲストの方とデュエットもされましたが、過去のインタビューで、出演にあたりかなり苦戦されたと語っていたミュージカル「ジャック・ザ・リッパー」の「こんな夜が俺は好き」を歌われていたのも印象的でした。

うん、自分が歌った曲じゃないから(笑)。この曲はかーくん(加藤)との思い出があったので、一緒にセッションしたいなと思ったんです(参照:木村達成・小野賢章ら出演「ジャック・ザ・リッパー」本日スタート!白井晃が手応え)。普段、舞台の稽古や本番中は自分のことしか考えないので、口ずさむのも初めてでした。余裕があるときは楽屋でほかの人の曲を口ずさんだり、「この曲いいな」と感じたりするんですが、当時は誰の曲に対してもそんなことを思わなかった。だから、いざ歌ってみるととても素敵な曲でした(笑)。