2022年7月、2ndシーズンに突入したネルケプランニングが新企画「WELCOME KIDS PROJECT」を始動させた。「WELCOME KIDS PROJECT」は、子供たちのみならず、さまざまな世代の観客にハイクオリティなエンタテインメントを提供するプロジェクト。「WELCOME KIDS PROJECT」ではこれまでに、「『Dr.STONE』THE STAGE~SCIENCE WORLD~」「ライブ・スペクタクル『NARUTO-ナルト-』~忍界大戦、開戦~」、ミュージカル「Shuffle!~まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』~」が上演され、12月にはクリスマス☆リーディングステージ「クリスマス・イブのおはなし」の公演を控えている。
今回の特集では、11月に行われた「Shuffle!」小学校貸切公演の様子をレポートするほか、「WELCOME KIDS PROJECT」の立役者である下泉さやかプロデューサーにインタビュー。また、「WELCOME KIDS PROJECT」にキャストとして参加した小宮璃央、西葉瑞希、岩城直弥のコメントも掲載している。
取材・文 / 興野汐里
370名の児童が大興奮!楽しみながら演劇を学ぶ
ミュージカル「Shuffle!~まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』~」
小学校貸切公演レポート
「WELCOME KIDS PROJECT」のラインナップの1つ、ミュージカル「Shuffle!~まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』~」が11月に東京・天王洲 銀河劇場で上演された。15日には小学校貸切公演が行われ、渋谷区の小学校より4年生から6年生まで、370名ほどの児童が招かれた。同校に舞台業界の関係者がいたことから縁がつながり、「WELCOME KIDS PROJECT」初の試みとなる小学校貸切公演が実現したという。
当日は、昼過ぎに劇場前へ数台のバスが到着。学校から離れた場所、しかも劇場での課外活動ということで、期待と不安の入り混じった表情を浮かべながら、子供たちは劇場へと向かった。劇場内に入り、座席に着席した児童たちは、早速舞台美術や照明・音響機材を指差して、「あれ、何だろう?」と興味津々の様子。うっすらと流れるBGMに合わせて身体を揺らしたり、遠くの席に座っている友人と手を振り合ったり、記録写真を撮影しているカメラマンにピースサインを向けたりと、子供たちはそれぞれ思い思いの時間を過ごしながら開演を待っていた。
開演直前、舞台上に登壇した下泉さやかプロデューサーが「こんにちは」と呼びかけると、児童たちも元気いっぱいに拍手で応える。下泉プロデューサーは「Shuffle!」の概要を説明しつつ、「俳優さんをはじめ、照明や音響、衣裳、ヘアメイク、劇場案内係など、さまざまな人たちが力を合わせて、1つの舞台を作っています。今日はお芝居だけでなく、劇場全部を楽しんで帰ってくださいね」と呼びかけた。
続いて、上演中の諸注意をするために、ダルタニアン役の小宮璃央、司書役の平川和宏が登場。小宮が「初めまして! 僕たちも今日が来るのをとても楽しみにしていました」と客席に手を振ると、会場中から「うわあ、カッコいい……!」という声が上がる。「公演中、静かにできる人は拍手!」という小宮の呼びかけに、子供たちは大きな拍手で応えた。
脚本・作詞をOne on Oneの浅井さやか、演出を児玉明子が手がける「Shuffle!」では、ふとしたハプニングで「若草物語」と「三銃士」の物語が混ざり合い、両作のキャラクターたちが入れ替わってしまう。小宮扮する「三銃士」のダルタニアン、西葉瑞希扮する「若草物語」のエイミーが入れ替わっていることに気が付くシーンでは、客席の至るところから「えー!」と感嘆の声が上がり、場面転換で舞台美術が大きく動く際には「おおー!」とざわめきが聞こえる。会話が続く場面でソワソワしてしまう子供たちが何名かいたものの、華やかなダンスシーンや歌唱シーンになると、彼らは再び舞台に釘付けになり、カラフルな照明で彩られたステージを楽しそうに見つめていた。
物語の最後、力を合わせたダルタニアンと三銃士が、敵対するリシュリュー枢機卿に見事勝利する場面では、ダルタニアンの勝利をたたえてガッツポーズをする子供たちの姿も。終演後のカーテンコールでは、小宮が「約束事を守ってくれたおかげで、無事に公演を終えることができました。みんな、仲間を大切にする気持ちを忘れないでね!」とあいさつ。客席通路を抜けて退場する小宮たちに向けて、子供たちは笑顔で拍手を送っていた。
その後、キャスト一同が再び舞台上に姿を現し、記念撮影へ。リシュリュー枢機卿としてヒール役を担った郷本直也が、劇中とはうって変わって柔らかな表情で、「みんな、おじさんは本当は怖くないからね!? 良い人だからね!?(笑)」とアピールすると、児童たちは笑い声を上げる。舞台観賞を終えた子供たちは「楽しかったね」「面白かった! 先生も観てた?」とクラスメイトや先生とささやき合ったり、劇中で披露されたダンスや殺陣をまねながら、満足げな様子で劇場をあとにした。
後日、ネルケプランニングヘ児童からの感謝状が届いた。「ミュージカル関係者のみなさんへ」と書かれた手紙には、子供たちが描いた「三銃士」や「若草物語」のイラストがちりばめられ、印象に残ったシーンや演出、スタッフワークについての感想、学校で実施される学芸会に向けた抱負など、熱い思いがしたためられていた。生のエンタテインメントに触れた今回の体験は、子供たちにとって得難い経験になったのではないだろうか。「Shuffle!」を観劇した児童の中から、次代のエンタテインメント業界を担う未来の演劇人が誕生したら……と期待せずにはいられない。