日本の演劇史に大きく貢献し、数々の名作・名演を生み出してきた帝国劇場が、建て替えのため2025年2月28日をもって一時休館となる。2月14日に開幕するコンサート「THE BEST New HISTORY COMING」は、59年の歴史を持つ現・帝国劇場(以下、帝劇)の最終公演。帝劇のステージに立ち、色とりどりのパフォーマンスで観客を魅了してきた豪華な顔ぶれが一堂に会して、帝劇への感謝と思い出を分かち合う。
このたび、会期中7公演の模様がau Live Streaming(旧uP!!!)およびTELASAにてLIVE配信される。ステージナタリーでは、全日程に出演するレギュラーキャストの中でも、近年、舞台「千と千尋の神隠しSpirited Away」や舞台「キングダム」といった話題作に出演し、“新世代”の俳優として帝劇に名を刻む三浦宏規に、コンサートや帝劇への思いを語ってもらった。
構成・文 / 大滝知里
au Live Streaming(旧uP!!!)およびTELASAでは、CONCERT「THE BEST New HISTORY COMING」一部公演の模様をLIVE配信!
CONCERT「THE BEST New HISTORY COMING」LIVE配信
2025年2月15日(土)、17日(月)、19日(水)、22日(土)、24日(月・振休)、26日(水)、28日(金)
日時:2025年2月15日(土)18:00開演回
Aプログラム公演
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
生田絵梨花、昆夏美、涼風真世、平野綾、森公美子
ゲスト:鹿賀丈史、大地真央、松たか子
日時:2025年2月17日(月)18:00開演回
Bプログラム公演
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
生田絵梨花、昆夏美、涼風真世、平野綾、森公美子
ゲスト:石丸幹二、加藤和樹、平原綾香、吉原光夫
日時:2025年2月19日(水)18:00開演回
Cプログラム公演
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
木下晴香、昆夏美、涼風真世、平野綾、森公美子
ゲスト:伊礼彼方、駒田一、保坂知寿、松下優也、山口祐一郎
日時:2025年2月22日(土)18:00開演回
Dプログラム公演
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
一路真輝、木下晴香、瀬奈じゅん、花總まり、屋比久知奈
ゲスト:朝夏まなと、和音美桜、中川晃教、山崎育三郎
日時:2025年2月24日(月・振休)18:00開演回
Eプログラム公演
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
一路真輝、木下晴香、瀬奈じゅん、花總まり、屋比久知奈
ゲスト:石川禅、城田優、堂本光一、前田美波里
日時:2025年2月26日(水)18:00開演回
Fプログラム公演
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
一路真輝、木下晴香、瀬奈じゅん、花總まり、屋比久知奈
ゲスト:有澤樟太郎、石井一孝、海宝直人、上白石萌音、濱田めぐみ、別所哲也、愛希れいか
日時:2025年2月28日(金)13:00開演回
Gプログラム公演(大千穐楽)
キャスト
井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守
一路真輝、木下晴香、瀬奈じゅん、花總まり、屋比久知奈
ゲスト:市村正親、今井清隆、鳳蘭、笹本玲奈、田代万里生
※アーカイブ・見逃し配信の実施は予定しておりません。
初帝劇でトボトボと帰る三浦宏規、山口祐一郎の笑顔が救う
──いよいよ開幕する、現・帝国劇場(以下、帝劇)の最終公演「THE BEST New HISTORY COMING」。三浦さんはレギュラーキャストとして、井上芳雄さん、浦井健治さん、小野田龍之介さん、甲斐翔真さん、佐藤隆紀(LE VELVETS)さん、島田歌穂さん、宮野真守さんと共に、全日程に出演されます。開幕に向けての心境を教えてください。
このメンバーの中に自分がいることが本当に驚きで、まだ全然実感が湧いてこないんです。「出演できるんだ!」という喜びのほうが大きくて(笑)。大先輩方がたくさんいらっしゃる中で、若手として恐れ多い気持ちはありますが、これまでにご一緒させていただいた方も、初めましての方も、皆さんとても優しくて、スタッフの方も含め、伸び伸びと稽古をできる環境を作ってくださっています。
「THE BEST New HISTORY COMING」ではこれまで帝劇で上演されてきた作品の楽曲がたくさん並んでいます。自分のパートをしっかり務めなくてはと思いながらも、「あの方のこの歌を聴けるんだ!」「あの方とこの方のデュエットを聴けるんだ!」と、出演者としてより、いち観客として早く観たいなという気持ちが、実は大きいです(笑)。
──三浦さんは2019年にミュージカル「レ・ミゼラブル」で、最年少となるマリウス役で帝劇デビューされました。十代から舞台出演経験を重ねてきた三浦さんにとって、大きな注目が集まった帝劇デビューに、どのような思い出がありますか?
あのときは、いろいろな要素や運が組み合わさって、奇跡的にオーディションに受かったと思っています。実力が足りないということは自分でも感じていたので、稽古ではよくショックを受けていました。稽古場から自宅まで徒歩で1時間以上かかるのですが、その日の稽古のことを考えながらトボトボと歩いて帰っていましたね。憧れの舞台に出演できるという喜びはオーディションに受かったときだけで、それからは試練の日々でした。キャストの皆さんもスタッフの皆さんもとても優しくて気にかけてくださっていたのですが、自分で自分に納得ができずに悔しい日々でした。でも、「レ・ミゼラブル」公演中に、ほかの作品の稽古で帝劇にいらっしゃっていた山口祐一郎さんに、楽屋のエレベーターでお会いしたんです。当時は面識がなかったのですが、マリウスの衣裳を着ている僕に「がんばって」と言ってくださって。その笑顔に救われたことを覚えています。
舞台「キングダム」で“少しは任せてもらえる”俳優に
──2022年の舞台「千と千尋の神隠し」でハク役、2023年の舞台「キングダム」では主人公・信役を演じられ、帝劇の話題作に参加されている三浦さんにとって、この2作は俳優としてどのようなターニングポイントになったと思いますか?
共に世界初演の作品でした。「千と千尋の神隠し」はジョン・ケアードさんをはじめ、皆さんといちからモノ作りができて、それが実を結んで世界に大きく羽ばたいていって……本当に素晴らしいことだと思います。日本で作った作品で海外に行くことは僕の昔からの夢でもあったので、かなえてもらえたことに感謝しています。「キングダム」は初日が開くときに、「人生が変わるね」とプロデューサーから言われたんです。それがとてもうれしくて。この帝劇で座長を担わせていただき、至らぬところも多かったのですが、たくさんの方々の思いを背負わせてもらえた感覚がありました。それに応えられたのかはわかりませんが、少しは任せてもらえる俳優になったんだなと実感しましたね。
帝劇は“非日常を観せてくれる”最たる場所
──ジャンルをまたいで舞台に出演されている三浦さんが、俳優、観客として、帝劇に“特別感”を感じるところはどこですか?
帝劇は、日本でトップの劇場だと思います。舞台俳優を志す者は夢見る劇場。最初に立ったときは、やはり足が震えました。“劇場は非日常を観せてくれる”と言いますが、僕自身、観客目線でも、帝劇はその最たる劇場だなと思います。扉から一歩入ったときに広がるロビーの景色に重厚感を強く感じますし、どんな作品を上演していても違和感がない。何を上演していても“その公演のためにある劇場だ”と思わせてくれる、不思議な魅力があります。帝劇では観客としていろいろな作品を観てきましたが、中でも“忘れがたき作品”を挙げるなら、2017年のミュージカル「レ・ミゼラブル」です。一度観てとても感銘を受けて、何とかしてもう一度観に行きました。自分もいつかこの作品の世界に飛び込みたいと強く思った作品です。
──2030年度にリニューアルオープンする帝国劇場で、俳優としてどのような姿を見せたいですか?
舞台俳優として1つひとつの作品を大事にしながら真摯に取り組み、また立たせていただけるよう、努力を怠らずにこれからの5年を過ごしていきたいです。
沼に入って5年後の帝国劇場を楽しみにお待ちください
──「THE BEST New HISTORY COMING」レギュラーキャストでは同世代となる甲斐翔真さんに、共演者としてメッセージをお願いします。
同年代を代表するミュージカルスターの甲斐翔真くんに、いつも刺激をもらっています! ご一緒するのが楽しみでなりませんし、仲良くなりたいなーとずっと思っています!
──豪華キャストが集結する、“現・帝国劇場の集大成”こと「THE BEST New HISTORY COMING」で、LIVE配信ならではの三浦さんの推しポイントを教えてください。
LIVE配信は、沼に片足を突っ込ませたい友人を気軽に誘えますので、ぜひ一緒に楽しんでいただければと(笑)。そして沼に入っていただけたら、5年後の帝国劇場をぜひ楽しみにお待ちください(笑)。われわれ出演者も、今の帝劇の集大成に恥じないパフォーマンスを楽しんでいただけるように、精一杯がんばりたいと思いますので、応援よろしくお願いいたします!
プロフィール
三浦宏規(ミウラヒロキ)
1999年、三重県出身。5歳でクラシックバレエを始め、数々のバレエコンクールで入賞を果たす。「ミュージカル『テニスの王子様』」3rdシーズンで跡部景吾役、「ミュージカル『刀剣乱舞』」シリーズで髭切役を務め、「恋するブロードウェイ♪」シリーズ、「Nostalgic Wonderland ~song & dance show~」シリーズに出演。そのほかの出演作に、ミュージカル「レ・ミゼラブル」「GREASE」「のだめカンタービレ」「ナビレラ」、舞台「千と千尋の神隠しSpirited Away」「キングダム」、「BOLERO -最終章-」など。7・8月にミュージカル「ジェイミー」への出演が控える。
芸術性と大衆性を融合する、“帝国”を冠した劇場
帝国劇場は、1911年に日本初の本格的な西洋式大劇場として誕生。1940年からは東宝の直営劇場となり、1955年から1964年までシネラマ上映館として運営されたあと、1966年に現在の“2代目帝国劇場”(以下、帝劇)が開場した。
対面に皇居を望み、またビジネス街に囲まれた立地にある帝劇は、コンセプトに“オーセンティック”を掲げ、現在まで輝きを放ち続けてきた。1900人近くを収容できるオーディトリアムには、古代紫の布地の客席が扇状に並び、金刺繍の緞帳が現実と虚構を仕切る境として存在する。
帝劇は、「開場披露 オール東宝スター オープニング・フェスティバル」で幕を開け、「帝国劇場開場披露歌舞伎公演『二代目中村吉右衛門襲名』」で華々しくその開場を告げた。菊田一夫による「風と共に去りぬ」、ミュージカル「ラ・マンチャの男」「屋根の上のヴァイオリン弾き」など、再演を重ねて愛され続ける作品が生み出されたほか、専属の歌舞伎俳優を有した帝劇歌舞伎や、小劇場で名を揚げた蜷川幸雄の進出、森光子や堂本光一による単独主演公演の継続上演、オリジナルミュージカルやストレートプレイの創作など、帝劇では、再演を除いて350を超える演目が披露され、開場以来続く芸術性と大衆性の融合、舞台芸術に対する先達たちの思いを受け継ぎながら、日本の劇場文化の発展を支えて来た。
帝劇は一時休館を経て、2030年度に新たな劇場空間として観客を迎え入れる。3代目帝国劇場は、客席・舞台は同規模ながらも、ロビー空間とバックヤードが充実し、さらに劇場の演出技術を豊かにすることで、日本の舞台界のフラッグシップモデルとなる劇場へと生まれ変わる。今年で開場60年目という長い歴史のその先に、どのような観劇体験が待ち構えるのか。期待して待とう。