曇り空がパーッと青空になるような爽快感を!成井豊、野田裕貴×畑中智行×原田樹里が語る舞台「トリツカレ男」

ジュゼッペ役・野田裕貴×トト役・畑中智行×ペチカ役・原田樹里 「トリツカレ男」トーク

成井さんは誰よりも原作のファン!

──「トリツカレ男」はいわゆる原作ものです。成井さんが原作を舞台化される際、その再現度の高さから、演劇ファンはもちろん、原作ファンからも非常に高く評価されている印象がありますが、皆さんは成井さんのどういった部分が原作ファンの心をつかんでいると思いますか?

畑中智行 原作に対する愛情とリスペクト、じゃないですかね。そもそも、原作があるものを舞台化するのって、ものすごい労力が必要じゃないですか。お客さんの中にも、先入観やイメージがそれぞれあるし。でも、成井さんは、“ちょっと好き”なだけじゃ舞台化しない。原作が成井さんにとってもう圧倒的に好きなものだから、自分が一番感動したところを絶対に外さないようにしている。あと、あくまで、“原作小説を舞台化している”ということを大事にされているから、「なるべくカットはしたくない、全部やりたい」という気持ちも成井さんの中にはあって。そのぶん僕らもテンポを求められます。

原田樹里 成井さんはそういう“ファン心”を、すごくわかっていますよね。誰よりも原作を愛しているからこそ、「こうあってほしい」というビジョンが、稽古の時点で明確にある。原作を愛しているお客さんにも喜んでほしい、という成井さんの気持ちを強く感じます。

左から畑中智行、原田樹里、野田裕貴。

野田裕貴 稽古場では、成井さんの熱量に常に引っ張っていただいている感じがしました。小説を読んでいるとき、自分の中で想像が膨らんで、ワクワクする瞬間があると思うんですけど、成井さんはそういうシーンを、“演劇ならでは”の面白さで魅せてくれますよね。

畑中 それは人力で表現しているのも大きいかもね。今だと、映像表現とか、装置で具体的にシーンを立ち上げる手法を取ることもできるけど、成井さんは身体表現とか、人力での表現にすごくこだわっている。アナログだからこそ、お客さんに想像の余地を残すことができるんじゃないかな。

野田 本当にそうだと思います!

野田くんはリアルにジュゼッペ

──野田さんは、今回、主人公の“トリツカレ男”、ジュゼッペ役に抜擢されました。レストランでウェイターとして働くジュゼッペは、何かを好きになると、それにトリツカレたように没頭してしまう青年です。

野田裕貴

野田 お話をいただいたとき、まさか自分がそんな役をやらせていただけるなんて、という驚きと……いやもう、本当にただただびっくりしたんですけど(笑)。

畑中原田 (笑)。

野田 ほかはどんな方々が出演されるのかな、ってキャスト表を拝見したとき、「これはもう絶対面白い」と、ワクワクが最高潮に高まりました!

──原田さんとは、「成井豊と梅棒のマリアージュ」に続きカップル役です。成井さんも、「野田くんと原田のカップルがぴったりで理想的」とおっしゃっていました。

野田 樹里ちゃんともまたご一緒させていただけて、そしてまさか、初演・再演でジュゼッペをやられた畑中さんがトト役で。なんかもう……「ちょっと、ちょっとちょっと!」っていう(笑)。

畑中 あははは!

野田 そんな夢のような、すごく素晴らしいキャスティングだからこそ、僕も本当にがんばらなきゃいけないなって思っています。もちろんプレッシャーもあるんですけど、とにかく本当に楽しみです!

──原田さんは、再演ではジュゼッペに思いを寄せる、少しおせっかいな幼なじみのイザベラ役を演じていましたが、今回は外国から来た風船売りの少女・ヒロインのペチカ役です。役が発表されて、どのような心境でしたか?

原田 変な声が出ました。

野田畑中 (笑)。

畑中 外に出て「やったー!」って叫んだりしなかったの?(笑)

原田樹里

原田 いや、むしろ「ペチカは原田じゃないでしょ」って思われるんじゃないかって、申し訳ない気持ちに……(笑)。でも、イザベラとは正反対の役どころなので、違う角度からこの作品を観られることが、とても楽しみ。また野田くんとご一緒できるのもうれしいです! 実はペチカ役に決まってから、ジュゼッペ役は誰がやるんだろうって、キャスティングをいろいろ自分で妄想していたんですけど、野田くんならぴったりだなって考えていて。

野田 ええっ!

原田 そうしたらその通りだったので、「キた!」と思いましたね。

畑中 野田くん、リアルジュゼッペに見えてくるもんね。

野田 本当ですか?(笑)

原田 うん、野田くんはリアルにジュゼッペ! とても信頼している俳優さんなので、ジュゼッペとペチカを演じられることにワクワクします。

──そして畑中さんは、今回ジュゼッペの大親友のハツカネズミ・トト役を演じます。

原田 野田くんも言っていたけど、これまでジュゼッペをやってた人がトト役って、「やられたなー」と思いました。

畑中 お客さんからも、すごい反応でした。「トトやるんですか!?」って(笑)。

──トトは、ジュゼッペとだけ会話ができるハツカネズミで、奥手なジュゼッペを励ましたり、ジュゼッペのためにペチカの悩みを調べてきたりと、ジュゼッペにとって、頼れる兄貴分的な存在です。トト役に決まって、どんなお気持ちでしたか。

畑中智行

畑中 笑っちゃいましたね(笑)。年齢的に、もうジュゼッペはやれないとは思っていたから、もしまた「トリツカレ男」を上演するんだったら、今度は客席から観たいなと思っていたんです。だけど、プロデューサーから「トトをやってください」って言われて。「えっ、トト!?」って(笑)。

野田原田 (笑)。

畑中 でも、ジュゼッペの相棒役としてまたこの作品に携われるのは、素直にうれしかったです。「トリツカレ男」って、すごくハッピーなお話ではあるんですけど、一歩引いて物語を見ると、けっこう複雑で。トトはジュゼッペと違って社会性もあるし、調子が良くて世渡り上手なんですけど、実は同じネズミの仲間もいないし、知り合いがいない。だから、トトにとっても、ジュゼッペが唯一の友達なんですよね。

野田 確かに。

畑中 ジュゼッペにはお兄さんぶって接してますけど、トトも実は孤独で。どこか似ている2人なんです。ただトトはサポートする側なので、ポジションが違う。そういう意味でも、これまでとは違った視点から、物語を舞台上で観ることができるのは新しい経験にもなりますし、チャレンジもいっぱいできそうだなって思っています。相棒のトト役として、野田くんのお尻を蹴っていきたいですね!(笑)

野田 あははは!

人生を変える力のある作品

──初演から約15年、再演から約9年を経ての上演です。ここ数年で社会の状況も大きく変化し、観客にとっても、演じ手にとっても、本作が持つメッセージ性の受け取り方が、以前とは異なってくるのではないかと思います。改めて、作品への思いを聞かせてください。

左から畑中智行、原田樹里、野田裕貴。

原田 実は私、「トリツカレ男」の初演を観て、キャラメルボックスに入ろうって決めたんです。観たあと、言葉には言い表せないような高揚感に包まれて、「もう絶対ここに入りたい」って思いました。本当に人生を変えた作品です。

──そうだったんですね。原田さんのように、今回の「トリツカレ男」を観て演劇を志す人がまた生まれればうれしいですね。

原田 そうですね。また、毎日大変な生活を送っていらっしゃる方が今、多いと思うんです。なので、「トリツカレ男」を観て一瞬でもつらい気持ちを忘れて、幸せな気持ちで「明日もがんばろう」と思っていただけたら、それだけで私も幸せです。

畑中 原田だけでなく僕にとっても、「トリツカレ男」ってすごく転機になった作品なんです。この作品でジュゼッペをやっていなかったら、きっと今の僕はないと思っていて。初演のあとに、キャラメルボックスでトークショーを実施したんですけど、そのときに“好きな作品ランキング”を行って、お客さんの部と劇団員の部それぞれあったんですけど、両方とも「トリツカレ男」が2位にランクインしていて。数あるキャラメルボックスの作品から、2位に選んでいただけたことがすごくうれしかったですし、改めてお客さんにとっても、劇団員にとっても、ものすごくインパクトを与えた作品だったな、と。僕は「トリツカレ男」が、人生において良い効果を与える、力のある作品だと思っています。そのパワーを発揮できるキャストが今回そろっているので、だまされたと思ってぜひ観に来てほしい。クレームは全部僕が引き受けます!(笑)

野田原田 (笑)。

畑中 それくらいの自信が、この作品にはありますね。圧倒的にハッピーな作品なので。

野田 僕は今回、再々演という形で、初めてこの作品に携わらせていただくわけなんですけど、脚本を読んで、初演から時間が経っているとはいえ、やっぱり色褪せない魅力があると感じました。何かに夢中になったり、何かを好きだと思う気持ちって、いつどの時代でも、誰しもが持ち合わせているものだと思うんです。そしてその夢中になる気持ちは、今こういう状況だからこそ、自分を支えてくれますし、改めて大事だなと。今回、僕たちでその気持ちをまっすぐに届けられると思います。お客さんには爽快感や高揚感を感じていただき、幸せな気持ちで劇場を出ていただけたら何よりですね。そのゴールに向かって、がんばっていきたいです。

野田裕貴(ノダヒロタカ)
1988年、埼玉県生まれ。俳優、ダンサー、振付家。ダンスエンタテインメント集団・梅棒メンバー。近年の外部舞台出演作に「成井豊と梅棒のマリアージュ」、NAPPOS PRODUCE 舞台「かがみの孤城」、キ上の空論「みどり色の水泡にキス」など。振付作品に、「おねがいっパトロンさま!The Stage」、「改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」、舞台「あやかし緋扇」、「舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-」など多数。
畑中智行(ハタナカトモユキ)
1978年、奈良県生まれ。2000年に演劇集団キャラメルボックスに入団。劇団公演での主演作多数。近年の出演作に、ナイスコンプレックス「12人の怒れる男」、ピウス企画「プレイルーム」「ゲームブレイカー」、舞台「仮面山荘殺人事件」など。
原田樹里(ハラダキリ)
1989年、大阪府生まれ。2009年に演劇集団キャラメルボックスに入団。CS「インターローカルマーケット」で番組進行担当。近年の舞台出演作に、空晴「『ふたり、静かに』東Ver.」、「成井豊と梅棒のマリアージュ」、TRASHMASTERS「埋没」、NAPPOS PRODUCE 舞台「かがみの孤城」、パルコ・プロデュース 舞台「トムとディックとハリー」、舞台「仮面山荘殺人事件」など。