信頼とは何か?「スイートホーム ビターホーム」中山優馬・秋元才加・藤井清美インタビュー、佐藤アツヒロらのコメントも (2/2)

メインキャスト6名が語る「スイートホーム ビターホーム」

藤野涼子(弓川夏葉役)

藤野涼子

──藤野さんが演じる良介の後輩・弓川夏葉の印象を教えてください。

第一印象は、オンラインでの接客を得意とする若手のエース。仕事とプライベートをしっかり分けていそうなタイプだなと思いました。
ですが、わからない言葉や単語が出てくると、好奇心が勝ってつい意味を聞かずにはいられない、そんなチャーミングな一面もあります。
物語が進むにつれて、彼女がなぜ職場の人たちと一線を引いているのかが少しずつ紐解かれていきます。
その背景には、25歳という年齢だからこそ抱えてしまう悩みがあり、同世代の私自身も共感する部分が多いと感じています。
そうしたギャップや揺れ動く思いを持っているところが、弓川という人物の印象的な魅力だと思います。

──稽古中に印象的だったエピソード、または作・演出の藤井清美さんの言葉でヒントになったことなどを教えてください。

藤井さんが「このお仕事コメディは、意図的に面白いことをして笑わせるのではなく、こんな人いるいる。とか、この状況だとそんな行動してしまうよね。あるある。と共感のある笑いにしたい」とおっしゃっていて、その言葉は大切にしています。
なので、25歳の夏葉ちゃんの考え方や言葉って上の先輩達にはどう伝わるんだろう?と毎日試行錯誤しながら1日1歩進むことができるように稽古に臨んでます!

──稽古をしていて面白いと感じるシーン、また刺激を受けている共演者の方がいれば教えてください。

人が真剣に取り組めば取り組むほど、思わず笑ってしまう面白さが生まれると思います。
稽古で、一生懸命に振り回されているお芝居を見ていると、つい口元が緩んでしまいます(笑)。
稽古場では、雪見みとさんが演じる河野梓が、ある人につかみかかるシーンがありました。
そのキャラクターがそんな行動を取るとは思っていなかったので、その瞬間、思わずみんなで「ふふっ」と笑ってしまいました。
また、佐藤アツヒロさんの登場の仕方は毎回違っていて、まったく予想していないテンションで現れるので、いつも驚かされつつ、クスッとしてしまいます(笑)。
皆さんが日々しっかり準備されていたり、その場の空気から生まれるものが積み重なっていく過程は、本当にワクワクします。
初日は先輩方からの刺激がすごくて、頭がショートしてしまいそうでした(笑)。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から努力良介役の中山優馬、丸元翔太役の井上拓哉、権藤正則役の駿河太郎、弓川夏葉役の藤野涼子、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から努力良介役の中山優馬、丸元翔太役の井上拓哉、権藤正則役の駿河太郎、弓川夏葉役の藤野涼子、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から丸元翔太役の井上拓哉、弓川夏葉役の藤野涼子、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ、権藤正則役の駿河太郎、辰巳万理役の小林美江、佐久間亜紀子役の秋元才加。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から丸元翔太役の井上拓哉、弓川夏葉役の藤野涼子、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ、権藤正則役の駿河太郎、辰巳万理役の小林美江、佐久間亜紀子役の秋元才加。

井上拓哉(丸元翔太役)

井上拓哉

──井上さんが演じる、良介の後輩・丸元翔太役の印象を教えてください。

今まで後輩ポジションだった自分が、三十代に突入し責任を負わなければいけない立場に。ゆとり世代ど真ん中の丸元は、現状にあまり不満はなく最低限をやり過ごせればいいと思っている。ただ、景気が悪く、生きづらい社会に対しては不満やもどかしさを感じており、どうすればいいんだ?と日々もがきながら、社会の渦に巻き込まれている。一見能天気な丸元ですが、彼なりに社会と人と向き合いながら、一生懸命に生きています。

──稽古中に印象的だったエピソード、または作・演出の藤井清美さんの言葉でヒントになったことなどを教えてください。

とあるシーンで、男性にはわからなくて、女性にはわかるという、男女の価値観の差が生じるシーンがあります。女性はそう思うの!?と、男性陣が衝撃を受けたシーンがあり、稽古が少し中断して盛り上がったのが印象的でした。

──稽古をしていて面白いと感じるシーン、また刺激を受けている共演者の方がいれば教えてください。

人と人とのすれ違いや世代間で異なる価値観など、自分の知らない価値観に触れたり、自分の価値観が伝わらないシーンがいくつかあります。そんなシーンや会話は演じていてとても楽しいです。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から権藤正則役の駿河太郎、努力良介役の中山優馬、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ、丸元翔太役の井上拓哉、弓川夏葉役の藤野涼子。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から権藤正則役の駿河太郎、努力良介役の中山優馬、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ、丸元翔太役の井上拓哉、弓川夏葉役の藤野涼子。

舞羽美海(段田晴菜役)

舞羽美海

──ご自身が演じる、施工会社の社長・段田晴菜役の印象を教えてください。

外資系でバリバリ働いていた女性です。
海外で働き、利益や自分の功績を考えて生きていた中で家業を継ぐことになり、自分の生きてきた世界の価値観ではうまくいかず、いろいろなことを理解しつつ飲み込み、器用に、そして不器用に生きています!!
本当に守らなければいないことに関しては、社長として矢面に立つ姿がカッコいいと思います。
また、好奇心旺盛なところも魅力です!
生い立ちもまったく違えば性格も真逆のような気がするのですが、共感できる部分がかなりあり、演じていてとても楽しいです。

──稽古中に印象的だったエピソード、または作・演出の藤井清美さんの言葉でヒントになったことなどを教えてください。

清美さんのアドバイスには共感しかありません!!
お稽古が始まる前から役の設定などを書き出してくださり、イメージの女性の方のお名前など、とにかく的確に言葉にしてくださるのでとてもわかりやすいです。
本作の台本を読み、自分も歳を重ねたことを実感しますし、変化し続ける時代の間にいるような繊細な言葉がグッと胸に刺さります。
お芝居のアドバイスにしても休憩時間にしても、特に女性陣が深く、数多くうなずいていることが多い気がします!!
「わかりますー!!!」というワードがよく飛び交っているような……(笑)。

──稽古をしていて面白いと感じるシーン、また刺激を受けている共演者の方がいれば教えてください。

皆さんから刺激を受けています!
いつかお仕事でご一緒したいと願っていた方ばかりで、皆さんから学ぶことができ、毎日歓喜しています。

この舞台は、かなり繊細なお芝居だと思います。
人間関係の微妙な空気の変化であったり、歩み寄りや優しさが染み渡る感じがします。
共感しかありません。
本筋の決まりごとを守りつつ、皆様かなり自由にお芝居をしていて、毎公演かけ合いの間が異なるので、観劇する日により共感する役が変わる気がします! そこが見どころです。
ぜひ何度も観て、かみ砕いていただけたらうれしいです。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、努力良介役の中山優馬、段田晴菜役の舞羽美海。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、努力良介役の中山優馬、段田晴菜役の舞羽美海。

瀬戸カトリーヌ(田辺舞子役)

瀬戸カトリーヌ

──ご自身が演じる良介の先輩・田辺舞子の印象を教えてください。

営業の中でも中堅の田辺舞子は、責任感の強さからか、周りからは少し煙たがられている存在だと思います。
昭和生まれの先輩から根性論を習い、平成・令和を生きる若者の新しい価値観に触れ、そのギャップに板挟みになっています(笑)。
職業や立場は違えど自分自身と重なる部分が多く、私は舞子が愛おしいです。
舞子や私たちは、いわゆる、がむしゃらにがんばってきた橋渡し世代?(笑)

──稽古中に印象的だったエピソード、または作・演出の藤井清美さんの言葉でヒントになったことなどを教えてください。

ハウスメーカーの営業担当として、モデルハウスでは、(お客様が来る可能性があるときは)“座ってはいけない”ということを知り、驚きました。
舞台上では常にスリッパを穿き、動き回りながら、営業職の方の大変さを身をもって体感しています。

また家を売ることの責任の重さ、そしてSNSでの出来事が会社の命運を左右する状況について、藤井さんから「少し前だとそれは=コロナです」という言葉に、改めて身が引き締まりました。世代間ギャップや日常の「あるある~」もリアルに描かれていて、思わずニヤリとしてしまう瞬間もあります。
作品のテーマでもある“信頼”という言葉の重みを稽古を通して深く考えさせられています。

──稽古をしていて面白いと感じるシーン、また刺激を受けている共演者の方がいれば教えてください。

稽古初日、私はジャージを着ていたんですが、若人の皆さんはキチンとジャケットを用意してこられ、私は昭和の演劇人だなと(笑)。でも駿河太郎さんもゆる~い格好でホッとしました^_^
立ち稽古が進む中、ほかの舞台公演中で遅れて参加した中山優馬さんが、セリフを完璧に覚えていて動きも見事で、これまた身が引き締まりました(笑)。
そんな中山さんが四苦八苦するシーンはリアルに見応えがあるかと!

また謎の人物を演じる佐藤アツヒロさんは何者なのか? 私も気になります(笑)。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から権藤正則役の駿河太郎、努力良介役の中山優馬、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ、丸元翔太役の井上拓哉。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から権藤正則役の駿河太郎、努力良介役の中山優馬、田辺舞子役の瀬戸カトリーヌ、丸元翔太役の井上拓哉。

駿河太郎(権藤正則役)

駿河太郎

──ご自身が演じる、良介の上司・権藤正則の印象を教えてください。

まだまだいろいろ試している最中ですが……周りに振り回される中間管理職であることは間違いないです。まあ、あとは観てのお楽しみということで。

──稽古中に印象的だったエピソード、または作・演出の藤井清美さんの言葉でヒントになったことなどを教えてください。

光GENJI世代としてはまさかあっくん(佐藤)と一緒にお芝居するとは思っていませんでしたよね……印象的というより、不思議でしかないです。

──稽古をしていて面白いと感じるシーン、また刺激を受けている共演者の方がいれば教えてください。

皆さん芸達者なんで、コレ!!とは言いづらいですが……
個人的には小林美江さんの熟練の間と、井上拓哉くんのナチュラル演技がツボです。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から権藤正則役の駿河太郎、努力良介役の中山優馬。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から権藤正則役の駿河太郎、努力良介役の中山優馬。

佐藤アツヒロ(山田役)

佐藤アツヒロ

──ご自身が演じる、謎多きキーパーソン・山田の印象を教えてください。

山田も、ある意味「自分がやりたいことをやれていない」という社会へのリベンジを果たしているのだと思います。だからこそ、謎の怪しさが生まれる。ぜひ、彼の行動の裏に隠された本音を感じ取ってほしいです。

──稽古中に印象的だったエピソード、または作・演出の藤井清美さんの言葉でヒントになったことなどを教えてください。

藤井清美さんといえば“お仕事コメディ”。この稽古場はいつも大人数でワイワイとにぎやかで楽しい一方、稽古前半は特に交通整理が大変です。バタバタ感に役者全員で力を合わせて立ち向かうチームプレイに、毎回全力投球しています。

──稽古をしていて面白いと感じるシーン、また刺激を受けている共演者の方がいれば教えてください。

“お仕事コメディ”で3作とも共演させていただいている、小林美江さんです。絶妙な役のふくらませ方に、稽古場がいつも明るくなります。また、主演の中山優馬さんが、セリフ量の多さにもかかわらずあまりにも覚えが早くて驚きました。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、山田役の佐藤アツヒロ。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、山田役の佐藤アツヒロ。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から山田役の佐藤アツヒロ、努力良介役の中山優馬。

「スイートホーム ビターホーム」稽古より、左から山田役の佐藤アツヒロ、努力良介役の中山優馬。

プロフィール

中山優馬(ナカヤマユウマ)

1994年、大阪府生まれ。俳優・歌手。2008 年、テレビドラマ「バッテリー」で俳優デビューして以来、ドラマ、映画、舞台作品に多数出演。近年では、「星降る夜に出掛けよう」をはじめ、「血の婚礼」「あゝ同期の桜」などの舞台で主演を務めた。2026年3・4月に上演されるミュージカル「破果」に出演予定。

秋元才加(アキモトサヤカ)

1988年、千葉県生まれ。俳優・タレント。AKB48のメンバーとして活動し、2013年8月に同グループを卒業。その後、俳優として映画、ドラマ、舞台、海外作品に出演している。2026年4・5月に上演されるシス・カンパニー公演「新宿発8時15分」に出演予定。

藤井清美(フジイキヨミ)

1971年、徳島県で育つ。脚本家・演出家・小説家。筑波大学在学中から舞台に携わり、小劇場から大劇場まで多くの作品を発表している。「ブラック or ホワイト? あなたの上司、訴えます!」「行先不明」をはじめとする舞台作品のほか、映画「るろうに剣心」シリーズや映画「鳩の撃退法」、テレビドラマ・映画「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」など、映像作品の脚本も担当。近年では、小説の執筆にも挑戦している。

藤野涼子(フジノリョウコ)

2000年、神奈川県生まれ。俳優。2015年に公開された映画「ソロモンの偽証」で主演デビューを果たし、第39回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、数多くの賞を受賞した。2026年3月にたやのりょう一座 第15回公演「飛龍伝」、同年7月に舞台「成瀬は天下を取りにいく」に出演予定。

井上拓哉(イノウエタクヤ)

1995年、兵庫県生まれ。俳優。劇団Patch所属。NHK連続テレビ小説「おちょやん」「虎に翼」や、日曜劇場「下剋上球児」など、話題の映像作品への出演が続いている。

舞羽美海(マイハネミミ)

兵庫県生まれ。俳優。2005年に宝塚音楽学校へ入学し、2007年に宝塚歌劇団第93期生として初舞台を踏む。2011年に雪組トップ娘役に就任し、2012年に宝塚歌劇団を退団した。2026年2・3月に上演される「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語~再演~」に出演予定。

瀬戸カトリーヌ(セトカトリーヌ)

1976年、フランス生まれ。俳優・タレント。1995年、OSK日本歌劇学校を卒業。三谷幸喜、宮本亜門の舞台に出演するほか、映画やドラマ、テレビのバラエティ番組にも多数出演。「世界ふしぎ発見!」ではミステリーハンターを17年務めた。

駿河太郎(スルガタロウ)

1978年、兵庫県生まれ。音楽活動を経て30歳から俳優活動を始める。NHK連続テレビ小説「カーネーション」、TBS系「半沢直樹」など多数のテレビドラマのほか、近年では映画「正体」「十一人の賊軍」、Netflix「地面師たち」など数々の話題作に出演している。大阪松竹座への登場は、2019年に上演された主演作「『天下一の軽口男』笑いの神さん 米沢彦八」以来。

佐藤アツヒロ(サトウアツヒロ)

1973年、神奈川県生まれ。俳優・演出家・歌手。1987年、光GENJIのメンバーとしてデビュー。グループ解散後、俳優として活動し、つかこうへい演出作品や劇団☆新感線作品などに出演。近年では舞台作品の演出も手がけている。