ローソンチケットpresents「ここだけの話 ~クリエイターの頭の中~」05. 小林顕作×福原充則|削ぎ落としてもなくしても、最終的に “自分”は残る

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クリエイターの創作はどこから始まっているのか? 実は、台本執筆や稽古場に入るずっと前、普段の“頭の中”ですでに始まっているのではないか? 目の前の作品のことだけじゃなく、作り手の普段の頭の中を覗いてみたい。そんなクリエイターたちの頭の中を、クリエイターたちのトークによって垣間見せてもらおうというのが本連載だ。

第5回は小林顕作と福原充則が登場。宇宙㋹コード&コンドルズに所属し、Eテレ「みいつけた!」ではオフロスキーとして大人気の小林は、「帝一の國」や「パタリロ!」など2.5次元系の舞台を大ヒットに導いた敏腕演出家でもある。一方の福原は、ピチチ5、ニッポンの河川、ベッド&メイキングスなどさまざまな団体に関わりながら、O.L.H.(面影ラッキーホール)の楽曲を用いた“歌謡ファンク喜劇”「いやおうなしに」や土田世紀原作の舞台版「俺節」など商業系の舞台でも高い評価を得て、2018年には岸田國士戯曲賞を受賞した。近年は映画にも挑戦するなどますます活躍の場を広げる彼らが、あらゆる仕事で強烈なオリジナリティを放ち続ける、その極意とは?

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 金井尭子

「演者と観客」から「キャストとスタッフ」の関係へ

福原充則 僕は二十代前半から客として顕作さんを観てます。

小林顕作 よく福原くんに言われるのは、「『ムック@オッホ』が面白かった」ってこと。¡OJO!(現:熱帯)の番外公演で「ムック@オッホ」(1997年)っていうのに、富岡(晃一郎)くんとばたけちゃん(横畠愛希子)と出て、コントをいくつかやったことがあって。それがすごく面白かったって。

福原 そのあと僕は¡OJO!に演助(演出助手)として入るんですけど、だから20年前くらいから顕作さんのこと、知ってます。で、そのあと宇宙㋹コードを観に行くようになって。

左から小林顕作、福原充則。

小林 僕が福原くんの存在を知ったのは、お台場SHOW-GEKI城(2006年)のとき。いろんな団体が集められたイベントだったんだけど、そこでピチチ5がやっちゃいけないネタをやって問題になって(笑)。「福原くんって、カッコいいことするなあ」と(笑)。

福原 今考えても、ゾッとするほどやっちゃいけないことしてました(笑)。

小林 そのあと、昔から知り合いのトミー(富岡晃一郎)が福原くんとベッド&メイキングスって劇団を立ち上げたと言うんで「墓場、女子高生」(12年)を観に行ったんですよね。それがすごく面白くて。で、「2人共若手なんだし、ギャラとかいいから」ってベッド&メイキングスの第2回公演「未遂の犯罪王」(12年)に出ることになった。でも稽古が本当に1週間くらいしかないし、直前まで僕はEXILEのMATSUくんの単独公演(「『MATSUぼっち02』―銀河より愛をこめて―」)の作・構成・演出をやってたので、すごく迷惑かけたなって。

福原 そうだ、稽古が1週間くらいでしたね。顕作さん、武田信玄役で(笑)。

小林 なんとか間に合わせようと思ってセリフも大体で覚えて行って、大丈夫だろうと思ってたらダメ出しが僕に集中して。「顕作さん、ちゃんとセリフ言ってください!」って言われたのはよく覚えてます(笑)。

福原 そのときベッド&メイキングスはまだ旗揚げして2作目で、しかも、オファーの段階ではあらすじもタイトルも決まってなくて。そういう作品に、顕作さんはもう“今更出る必要ない人”だったんですよ。でもダメもとでオファーしたら、「小林顕作は、これ断らない」って(笑)。

小林 あははは!(笑) YAZAWAみたいだね! おかしいね、俺どうかしてたね!

福原 こういう大人になりたいって、劇団の方向性が決まった瞬間でしたね(笑)。ベッド&メイキングスを立ち上げたときってすでに三十代半ばで、最初に作った劇団に比べればだいぶ落ち着いた感じで始めちゃったんですが、よくないなって。それで「未遂の犯罪王」のチラシは全員裸にすることにして。顕作イズムでいこうと。

小林 いや、あれ全然、俺イズムじゃないよ!

常にホーム、常にアウェー

小林 ホームと言える場所って、僕は今持ってないな。

福原 宇宙㋹コードって言ってくれないとファンとしては寂しいですよ。

小林顕作

小林 でももうずっとやってないし。それに俺、“どこがホーム”とかって前から全然考えてない。

福原 小林顕作がいるところがホームってことですか?

小林 YAZAWA的だよね(笑)。でもそうかもしれない。「俺がいる場所がホーム」……そうしちゃってるところが、恥ずかしいけどありますね。だからと言って、そのときいないカンパニーが大事じゃないってわけじゃないんですけど。でもコンドルズにいても疎外感あるしな……将棋指してると怒られるから。

福原 稽古場で指すからですよ! 将棋指してて怒られない稽古場ってあるんですか?(笑)

小林 俺の稽古場。あ、でもこの前怒られたわ、演助の子に「いい加減にしてください!!」って(笑)。

福原 あははは!(笑) 僕は一応ピチチ5がホームだと思ってますけど、何年もやってないし、もうやらないと思います。だから、ダムで消えた村が実家、みたいな……(笑)。

小林 好きだなー、ダム。

福原 どこにいてもアウェーな気持ちがあって。

小林 何それ。どこにいても僕はホーム、どこにいても福原くんはアウェーって、けっこう言ってること一緒だよ!

福原充則

福原 (笑)。最近一番頻繁にやってるのはベッド&メイキングスだから、共同主宰の富岡くんは、僕がプロフィールにピチチ5って書いたままなの、嫌がってると思いますけどね。興味持って僕のこと検索してくれた人が「あれ? この人ベッド&メイキングスの人じゃないのかしら?」って混乱すると思うし。あ、ちなみにうちのパソコン、「ケンサク」って打つと「検索」よりも「顕作」が先に出てきます。

小林 どんだけ打ったの?(笑)

小林顕作(コバヤシケンサク)
1971年東京都出身。96年に宇宙㋹コードを旗揚げ、脚本・演出を手がけ出演もする。同年コンドルズの旗揚げにも参加し、出演すると同時にコント部分の脚本を担当。俳優として河原雅彦、長塚圭史などさまざまな演出家の舞台に出演するほか、絵本の読み聞かせを全国各地で展開。近年はEテレ「みいつけた!」のオフロスキーや、大河ドラマ「真田丸」の明石全登役で注目を集めた。さらに演出家として「帝一の國」「パタリロ!」舞台版を手がけヒットへ導く。作詞・作曲も行い、定期的にフォークライブを行っている。今秋公開予定の映画「パタリロ!」では初メガホンをとった。
福原充則(フクハラミツノリ)
1975年神奈川県出身。2002年にピチチ5(クインテット)を旗揚げし、脚本・演出を手がける。またニッポンの河川、ベッド&メイキングスなど複数のユニットを立ち上げ、不定期で作品を発表。外部作品の脚本、演出を手がけることも多く、「視覚探偵 日暮旅人」など映像作品でも活躍。近年の作品に、ベッド&メイキングス「墓場、女子高生」(脚本・演出)、パルコプロデュース「いやおうなしに」(脚本)、東京No.1親子「あぶくしゃくりのブリガンテ」(脚本・演出)、月影番外地「どどめ雪」(脚本)、「俺節」(脚本・演出)、「秘密の花園」(演出・出演)。15年には初監督作品「愛を語れば変態ですか」が公開された。18年に「あたらしいエクスプロージョン」で第62回岸田國士戯曲賞を受賞。