ローソンチケット PR

ローソンチケットpresents「ここだけの話 ~クリエイターの頭の中~」03. 岩井秀人×三浦大輔|リアルを突き詰めた面白さ、違いはコスパ?

「ここだけの話 ~クリエイターの頭の中~」特集トップへ

クリエイターの創作はどこから始まっているのか? 実は、台本執筆や稽古場に入るずっと前、普段の“頭の中”ですでに始まっているのではないか? 目の前の作品のことだけじゃなく、作り手の普段の頭の中を覗いてみたい。そんなクリエイターたちの頭の中を、クリエイターたちのトークによって垣間見せてもらおうというのが本連載だ。

第3回となる今回は、ハイバイの岩井秀人とポツドールの三浦大輔が登場。引きこもりや家族の話など自らの体験をベースに、社会の深層に斬り込む作品を生み出す岩井と、恋人や友人など多様な人間関係を通して自ら体感した人間の“業”を、シニカルな笑いとクールな目線で描き出す三浦。一見するとまったくアプローチの異なる2人が、顔を見合わせるなり笑顔で話し始めたのは、リアルを追求し手探りで進んできたこれまでの軌跡、そして作家だからこそ分かち合える、“生み”の苦しみだった。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 川野結李歌

ずっと近いところにいる感じがした

岩井秀人 ゆっくり話すのって2012年に(当時、岩井と三浦が非常勤講師を務めていた)四国学院で顔を合わせたとき以来? 三浦くんが授業でやったワークショップに(ハイバイの)平原テツとか川面千晶が参加して。

三浦大輔 そうですね。ちゃんとしゃべったのもそのときが初めてかもしれないです。近いところにいる感じはずっとあったんですけど、直接的な接点はなかったですよね。岩井さんは何年生まれですか?

左から岩井秀人、三浦大輔。

岩井 (19)74年生まれ。三浦くんより1個上です。でも僕が劇団を始めたときは、もうポツドールがゴリゴリになんか巻き起こしてて。

三浦 (笑)。ハイバイはもう少し遅いですよね。

岩井 2003年が旗揚げ。

三浦 僕らは96年なんですよ、大学在学中に劇団を立ち上げたので。

岩井 あれを大学でやってたの?(笑) 僕は本当に一方的にポツドールを知ってて、でもみんなが王子小劇場で「とんでもないもの観た!」って言ってるのよりは、ちょっと遅かったんですよね。最初に観たのが「ANIMAL」だったか、「恋の渦」だったか、なので。

三浦 王子って言うとドキュメンタリー時代ですね。

岩井 そうそう、ドキュメンタリー演劇! 僕は28歳で演劇を始めたんだけど、当時は口語劇をやるくらいしか決めてなくて探り探りで。だからポツドールは1つの目安にはなりました。“本当にその場でしゃべっているようなやり方を突き詰めすぎた人”みたいな。

三浦 あははは! (笑)

ポツドールとハイバイ、コスパで比較するなら

岩井 演出って「こういうニュアンスを出そうとしてるんだな」とか大体“手の内”が見えるけど、ポツドールはそういうのがまったく見えなくて、なのに役人物がお腹の中で不安になったりうれしくなったりするのが全部漂ってくる。それをどうやって作ってるのかがわからなくて。

三浦 でもそれは岩井さんの作品もそうですよね?

岩井秀人

岩井 いやいやいや。で、ポツドールに出演した友達に聞いたら、やっぱりかなり荒々しい稽古だと(笑)。当時ポツドールが宣伝用に配ってた稽古風景を映したDVDも見たんだけど、取っ組み合いみたいな稽古をしてる横で三浦くんも一緒に興奮して、「もっとやれもっとやれ!」って言いながら「でも怪我だけはするなよ!」って言ってて。「わあ、本気! でもその一線は気にしてるんだ?」と思った(笑)。

三浦 意外に客観的なんですよ(笑)。必死は必死なんですが。

岩井 でもそのときにね、ポツドールにうちがちょっとだけ勝ってる部分があるなと実は思って。それは、俳優のロジカルさを突き詰めた面白さという部分でポツドールがこのくらい(手を目の高さに上げて)だとしたら、うちはそれよりちょっと下くらいなの、ってことにさせてね。でもここに至るまでの苦労を考えるとコスパが……。

三浦 コスパ!(笑)

岩井 うん、コスパは圧倒的にうちのほうがいいと思った。

三浦 いやそうなんですよ、うちは本当にコスパが悪い(笑)。

岩井 三浦くんはきっと自分が役者をやらないから、僕だったら言えないようなことを俳優に言えるんですよ。僕は俳優でスタートしてるから、俳優同士として作品を作りたいという思いがある。だからこそ、できる努力をしない人にはキレることもあって。

三浦大輔

三浦 今日岩井さんにどうしても聞こうと思ってたのは、僕の演劇界での悪評は広がってると思うんですけど(笑)、岩井さんの悪評は広がってないなと思ってて。でも、けっこういろいろやってらっしゃいますよね?(笑)

岩井 ……! いや俺はそんなにひどくないと思うよ?

三浦 あははは!(笑) と言うのも、想像ではご自身が役者をやるだけに、特段、役者にシビアなのかなとは思ったんですよ。最近、岩井さんは役者としても売れてて羨ましいです。

岩井 いやいや、売れてないよ、台本書いてなかったら本当にどこにも出てないんだろうなって思うし。

三浦 役者欲は強いんですか?

岩井 「何にでも出ます!!」って気持ちはまったくなくなった。でも台本も書きたくないから、本当によくわからなくなってきた。だって書きたくはないでしょ? どっちかって言ったら。

三浦 まったく、書きたくはないです(笑)。

岩井 いわゆる技術として考えたら、これだけ書いてきたんだからもうちょっと余裕で書けるようになっててもいいと思わない?

三浦 そうですね、全然変わらないですよ。今日も朝まで書いてましたけど(笑)。

岩井 宮藤(官九郎)さんみたいに先天的な何かがない限り、好きで書いてる人ってなかなかいないと思う。ご本人の苦労をそっちのけで言いますけど。

三浦 そうかもしれないですね(笑)。あと今日もう1つ岩井さんに聞きたかったのは、僕ら演劇の持っている恥ずかしさに敏感になってやってきた世代だと思うんですよね。で、下の世代をどう思ってますかってことなんですけど。

岩井 うーん、恥ずかしさが取れたというか、なくなったと思う。そこに対する違和感を感じることはありますね。

三浦 演劇が恥ずかしくないんでしょうね、いいか悪いかはさておき、そこは変わってきたなと僕も思います。

リアルを獲得して、そこからどうするか

三浦 岩井さんと僕の共通点ってリアリティって部分もありますけど、実体験をベースにそれを起こして書くってことがあると思うんです。

岩井 三浦くんはオープンにはしてないけど、ベースに実体験があるんだよね?

三浦 ほぼですよ。岩井さんはけっこうそのままですか?

岩井 脚色しながらね。

三浦 僕もけっこうはめ込みますけど、でもほぼ実体験ですね。それじゃないと書けないと言うか。岩井さんや僕の作品のリアリティはそこからきてるのかなと思うし、自分の体験をもとに書いているから、ある程度の説得力は担保できる。僕らの世代はリアルを獲得するのは比較的たやすかったと思うんですよ。みんなやってたから。でも、リアルを獲得してそこからどうするか、だと思うんです。岩井さんの芝居もある意味、演劇としての評価と違うことを言われるじゃないですか。岩井さんの作家性についてとか……。

岩井秀人

岩井 そうね。それに演劇としての評価って、別にいいもんね。俺より三浦くんのほうが興味ないと思うし。

三浦 そうですね(笑)。そこも何か共通してるなって思いますね。

岩井 あと2人の共通点として、松尾(スズキ)さんが好きっていうのもあるでしょ?

三浦 そうですね。松尾さんの影響は受けました。観ましたよ、アレ。

岩井 (2016年に上演された松尾作・演出「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」の)ワギーですね(笑)。

三浦 あんなところでよく戦えましたね(笑)。別にお世辞を言うわけじゃないですけど、一番笑いを取っていたような。

岩井 それはないよ、阿部(サダヲ)さん、皆川(猿時)さんがいて松尾さんがいて。でもあれは本当に松尾さんのおかげと言うか、大人計画ってこんなにバケモノぞろいなんだって思った。でも松尾さんが好きだからといって、三浦くんはそれを自分の作品に取り入れたりはしてないよね? むしろ最初に無意識に抜いた刀だけで、なんとか道を切り開いてきたと言うか。そのまま突き進んで次はシアターコクーンでしょ。

三浦大輔

三浦 あははは!(笑) まあ今、そんな感じになってるんですよ。でも面白いのは、ポツドールって本当に集団自体が異端だったので、それがなんでこんな……とは思います。劇団の分岐点はあったんですよ。ハイバイもそうだと思いますけど、認知されてきて動員が増えて、岸田國士戯曲賞も取って、アカデミックなほうにいくのか、商業的なほうへいくのか、大きく言えばこの2択に分かれてきて。最初ポツドールは両方やろうと思ってたんです。海外公演とかアカデミックな需要もあったし、逆に映像の仕事が増えてエンタメ寄りに取られることもあって。イメージに振り幅があるのは面白いかなと。でも進むに連れて自然と商業ベースが増えていったんですよね。自分でそうしたわけではなく、流れに身を任せていたらこうなったんですけど。

岩井秀人(イワイヒデト)
1974年東京生まれ。劇作家、演出家、俳優。2003年にハイバイを結成。07年より青年団演出部に所属。東京であり東京でない小金井の持つ“大衆の流行やムーブメントを憧れつつ引いて眺める目線”を武器に、家族、引きこもり、集団と個人、個人の自意識の渦、等々についての描写を続けている。2012年にNHK BSプレミアムドラマ「生むと生まれるそれからのこと」で第30回向田邦子賞、13年「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。18年は2月から3月にかけて「ヒッキー・ソトニデテミターノ」を上演、初のパリ公演も行う。また5月にさいたまゴールド・シアター番外公演として「ワレワレのモロモロ ゴールド・シアター2018春」の構成・演出を手がける。初の監督作品「女の半生」が日本映画専門チャンネルのステーションIDとして1月28日から放送予定。
三浦大輔(ミウラダイスケ)
1975年北海道生まれ。早稲田大学演劇倶楽部を母体として96年に演劇ユニット・ポツドールを結成。2006年に「愛の渦」で第50回岸田國士戯曲賞を受賞する。10年にドイツで行われたTHEATER DER WELT 2010(世界演劇祭)に招聘され初の海外公演を実施。以降、ブリュッセル、モントリオールなどでも公演を行い、高い評価を得る。また劇団公演とは別に、ニール・ラビュート作「THE SHAPE OF THINGS」、つかこうへい作「ストリッパー物語」、ネルソン・ロドリゲス作「禁断の裸体-Toda Nudez Será Castigada-」の演出、石田衣良原作「娼年」の脚本・演出や、PARCOプロデュース「裏切りの街」「母に欲す」の作・演出を手がける。近年は映画監督としても活動の幅を広げており、自身の舞台を原作とした「愛の渦」「裏切りの街」を映画化している。18年は3月から4月にかけて「そして僕は途方に暮れる」(作・演出)を上演、4月6日に映画版「娼年」の公開が控える。