烏野高校メンバーに新キャストを迎えたハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“飛翔”が11月にスタートする。ステージナタリーでは、開幕を1カ月後に控えた10月初旬、主人公・日向翔陽を演じる醍醐虎汰朗と2015年の初演から2018年まで日向を演じ、座長としてシリーズを牽引した須賀健太の対談を実施。須賀との対面に少し緊張気味だった醍醐は、話し始めるとすぐに打ち解けた笑顔を見せ、須賀からはさまざまなアドバイスが送られた。バレーボールを通じて“頂の景色”を目指す日向、そして“新生烏野”は、今作でどのように羽ばたくのか?
また特集の後半には、“新生烏野”を演じるキャスト11人の撮り下ろし写真を掲載。演劇「ハイキュー!!」にまつわるQ&Aでは、それぞれが自身の務める役や、高い壁となって立ちはだかるライバルについて語っている。
取材・文 / 川口聡 撮影 / 入江達也
スタイリスト / 井上亮(醍醐虎汰朗)、立山功(須賀健太)
須賀健太 衣装協力:DISCOVERED(TEL:03-3463-3082)、oundabout
成長していく日向を見せたい
──須賀さんをはじめとした烏野キャストが2018年の演劇「ハイキュー!!」“最強の場所(チーム)”で卒業され、烏野高校排球部に新キャストを迎えた今回の“飛翔”で、日向翔陽役のバトンが須賀さんから醍醐さんへと渡されました。
須賀健太 醍醐くんとは映画で一緒になったことがあるんですが、少し挨拶を交わしたくらいなんですよね。
醍醐虎汰朗 ちゃんとした形でお話するのは今日が初めてですね。
──醍醐さんは、これまでの演劇「ハイキュー!!」にどんなイメージを持っていましたか?
醍醐 3度ほど観に行かせていただいたのですが、舞台と客席の空気が一体となって、観客もキャストと同じ熱量で観ているように感じました。プロジェクションマッピングを使っているのでバレーボールの試合もとてもわかりやすかったですし、何より役者の運動量と汗がすごいなと!
──キャスト陣が映像と動きをシンクロさせて、全身で試合を表現しているのが印象的ですよね。
須賀 動きに関しては苦労した部分が多かったですね。烏野高校の戦術もそうですが、僕らキャストが何を武器にできるのか?ということをすごく考えていた。“小さな巨人”を目指している日向としては、誰よりも動いて汗をかかないと説得力が出ないだろうなと思って実践していました。
──醍醐さんは、そんな須賀さん演じる日向を客席から観ていて、どんな印象を持たれましたか?
醍醐 存在感がすごかったです。日向翔陽という強いエネルギーの塊が、確実にあの舞台上にいましたね。須賀さんは誰よりも動いて、大きく演じられていたので目を引きましたし、遠くにいても表情がわかったんです。すごくいいな、と思いながら、同時に自分がどう演じればいいのかな?とも思いました。僕が演じる日向は、根本的なところは変わらないのですが、選手として成長していて、自分で考えられるようになっているんです。
須賀 1人のバレーボーラーとして確立されてきているよね。
醍醐 そうなんです。だからプレイヤーとして成長していく日向を見せたくて。今はどう見せたらいいのか、探りながら稽古をしています。
“同じ釜の飯を食う”こと
──お二人は日向をどんな人物だと分析されていますか?
須賀 バレーボールに対しての熱量の高さもそうですが、“好き”を原動力に動いていますよね。原作でも、最近はプレイヤーとしてクレバーな面も備わって。僕が演じていたときの日向の印象とはまた変わってきています。
醍醐 日向ってものすごくポジティブシンキングですよね。普通だったらマイナスに思えることもプラスに考えられちゃう人なので、日向を演じることで彼から学ぶことができたら、今後の人生を幸せに生きていけそうだなって(笑)。心の底からあのポジティブさが欲しいです!
須賀 求めているんだね(笑)。
──須賀さんは日向を演じるにあたって、どういったアプローチを心がけていましたか?
須賀 最初のうちは意図的にキャラクターに寄せていきました。舞台上でのチームメイトとの掛け合いも普段の距離感が出ると思ったので、人との距離をあえてすごく近くしてみたり。あとは素直にリアクションすることを心がけましたね。日によって役者のコンディションや反応が違って、絶対同じものができないのが演劇の面白さだと思っていて、セリフのトーンやニュアンスも毎日変わっていいと思っていたので。日向を通して自分がどういう気持ちになるのか?という部分は、自分のそのときの感情に任せていました。演劇「ハイキュー!!」は運動量がすごく多いので、身体と心がリンクして自然と感情も乗るんですよね。
醍醐 なるほど。
須賀 それと、僕は日向の持つ二面性も意識していました。バレーボールに対してまっすぐすぎて狂気を帯びてくると言うか、熱量がバロメーターを振り切っちゃう瞬間を大切にしていましたね。
──醍醐さんは8月の製作発表で「あくまで自分のフィルターを通した日向を演じて、新しいことをしていきたい」とおっしゃっていました(参照:「ハイキュー!!」製作発表、醍醐虎汰朗「あくまで自分の日向翔陽に」)。稽古では、どのように新しい日向像を作っていますか?
醍醐 「新しいこと」と言ったのも、須賀さんたちと同じものはできないな、と思ったからなんです。本当に素晴らしかった須賀さんの日向を真似するのではなく、自分なりの解釈で作ろうと。稽古ではみんなとぶつかり合いながら切磋琢磨して、稽古のあとはご飯に行ったりして親睦を深め、チーム力を上げていきたいですね。
須賀 “同じ釜の飯を食う”じゃないけど、ご飯に行くのはすごく大事! 稽古ではわからなかったその人の人となりを知れるからね。あとはお風呂! 地方公演のときはみんなで大浴場に行って、のぼせるまで公演のことについて話してたよ。
醍醐 本当の部活みたいですね! 実は僕らもすでに温泉に行く話をしてます(笑)。
須賀 たどる道は一緒なんだね(笑)。でも新生烏野の11人を今日初めて見たけど、最初からまとまっている感じがする。僕らの烏野キャストはみんなクセが強すぎて、最初のうちは会話が成立しないぐらいだったから(笑)。
醍醐 そうだったんですね(笑)。
──須賀さんは3年間苦楽を共にした烏野高校排球部をどういうチームだったと振り返られますか?
須賀 それぞれが強くてバラバラの個性を持っていたので、やっぱり“烏合の衆”という言葉がぴったりのチームでしたね。3年間、彼らと挑戦できて本当に幸せでしたし、僕自身が助けられた瞬間が何度もあった。最高の仲間に出会えた時間でした。実は僕が一番寂しがり屋だったりするので、今でもしょっちゅう連絡するんです。みんな「集まるにはちょっと早くない?」とか言うわりには、ちゃんと集まってくれて。結果「みんな好きじゃん!」みたいな(笑)。
一同 あははは!(笑)
次のページ »
それぞれの烏野高校排球部の在り方