
今月のお笑い 37本目 [バックナンバー]
ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2025年5月のお笑い」
打ち上げでも怒る、THE SECOND振り返り、義理や人情や無駄なこと、永野の恋リア、マユリカに嫉妬
2025年6月9日 19:00 46
消えゆく情けない話
──前回は取材中にくるまさんの活動に関する発表がありましたけど、直後すぎてうまく話せていなかったんじゃないかと思って。むしろ取材後の「ぶちラジ!」のほうが考えがまとまっていた感じがしました。
井口 そうでしたね(笑)。まあ、くるまのことに言及しているのが僕しかいないっていう謎の状態になっていて。
飯塚 「ぶちラジ」での発言がネットニュースになってたね。
井口 こういうときにだけなるんだから。個人のYouTubeも賞レースのときだけなるし。
飯塚 (くるまに)会った?
井口 会ってはないですね。よしもとはやめちゃったわけですからね。
──会ったらなんて言います?
井口 「何やってんだよ!」ってことですけどね(笑)。どうなってるのかあんまよくわかんないので。
──飯塚さんはお会いしました?
飯塚 会いました。
──元気でした?
飯塚 元気でしたよ、普通に。
──元気なら何よりです。
井口 まあ元気なら何よりだし、この件に関して僕はよしもと側についたわけですからね、ついに(笑)。
飯塚 「勝手に動画だしたらダメだろ!」っていうね。
井口 くるまのことを言う人があんまりいないですけど、僕は言っていきますよ。
飯塚 すごくいろいろ考えてやっているんだろうとは思います。宣材写真をかが屋の加賀くんに撮ってもらったり、「野菜-1グランプリ」の審査員に就任したり、今自分がこういうものに出ることがどんな意味を持つのか、と考えながら。自分のことを「よしもとが生んだ最高傑作」と言っていたくらいなので、これからどう活動していくのかは興味深いです。
井口 まあ、この件に限らずですけど「新しそう」っていうだけで崇めるなよとは思います。自由とかいろいろ言うけど、大変なことだってあるわけじゃないですか。やりたくないことも多少はやっていかなきゃいけないというか。やっぱり義理とか人情ってゼロにはできないと思うんですよ。だから、今後の世の中どうなっていくんだろうと思ったりもしますね。そういう(義理や人情が)ない人が増えていくのかな、とか。
飯塚 でもそうなっていくんじゃない?
井口 たとえばライブで、「エンディングまで残れたら残ってください」と言われていても若い人は帰っちゃう。エンディングまでいても意味ないっちゃ意味ないけど、でも本当に意味ないのかな?って僕は思うんですよ。無駄なことこそ大事なときもあるし、それが面白かったりもするし。人と人とのつながりってそういうものから生まれると思うから、効率だけに縛られるのって僕は個人的には好きじゃなくて。芸人にもそういう奴が増えてきた気がしますね。
飯塚 SNSがあるから、「どう見えるか」にみんな重きを置いているんだと思う。意味がないことに時間を割かないようにしている感じはする。
井口 究極、お笑いなんか意味のないものじゃないですか。意味のないこと、不要なことを自ら選んでやっているのに何を効率求めてるんだっていう。
飯塚 オードリーのラジオで、売れてないときに暇すぎて芸人仲間たちと公園で変な遊びを延々とやっていたという話をよくしていて。もちろんカメラを回してるわけでもなく。それがこうしてのちにエピソードとして話せているわけで、若い人ってそういうのがあんまりない気がする。時間があったら配信しようとか、note書こうとか、意味があることしかやらないから、くだらないことがあんまり起きない。本当はもっとしょうもない話があってもいいのに。しょうもないことって、「お金になるかも、話題になるかも」っていう打算の外にあるものだと思うから、そういうのがないのはちょっとさみしいよね。
井口 こういうこと言うと「お前らが古いんだ」とか言ってくる奴がいるけど、正解なんてまだわかんないからな! 今に見とけよ! あいつらがトガり散らかしてた10年が実は間違ってた、となる可能性だってあるんだから。
飯塚 そんな中、
井口 飛んじゃったやつですね(笑)。
飯塚 こういう情けない話、久々に聞いたなと思って。簡単に説明すると、古市くんが浮気して彼女に別れを告げられたから、スネて芸人引退するって言って、よくわかんないけどプロポーズまでして、それでもやっぱりフラれて、仕事飛んじゃったっていう。
井口 それをラジオで言って、相方が最終的に「俺のほうがモテねえみてえじゃねえか!」ってツッコんでて。そこで思いましたね、そんなにモテたいんだ?って。情けない面白さはありましたけど、僕はゾッとはしました。
飯塚 そこに着陸するんだ?っていうのはあるね。舞台に穴を開けるのはダメだし、彼女にとっては嫌な話だと思うけど、こういう話は面白いって思っちゃった。もちろんこんなのバズろうとしてやってないじゃん(笑)。浮気もダメだけど、オンラインカジノは本当にダメじゃないですか。額がデカいのとか引いちゃうから。
井口 いや本当に。
※編集部注:オンラインカジノ騒動以前、井口がしばしば9番街レトロと月収が同じくらいだとテレビなどで話していたことに対して、みなみかわらは「嘘だ」と疑っていた。
井口 あいつが使った額、何千万とかって文春の記事に書いてあったじゃないですか。やっぱりそうじゃねえかよ! 同じどころの騒ぎじゃないですよ。記事見て、誰も何も言わなくなっちゃって。だから信じろよ! 僕のことをいい加減。1個も信じないんだから。
──ここ最近のいろんなことを見ていると……嘘つきが多いですね?
飯塚 急にどうしたんですか(笑)。
──だから井口さんだけが本当のこと言ってるんだなあとつくづく思いました。
井口 そうですよ! みんな嘘つきなんだから。僕は誰のファンにも1回もなったことないです。芸能人は全員嘘つきだと思ってるから。
──え! そうなんですか。
井口 だって、みんな嘘つきじゃないですか(笑)。と、思って僕は生きてます。
全員許しません!
飯塚 くるま氏の話に戻るけど、佐久間さんのYouTubeで「芸能界天下取り将棋」という企画をやっていて、いろんな名前が挙がる中、最後に井口くんと永野さんがくるま氏の両脇に配置されていたね。
井口 くるまが言ってくれれば影響力もあると思うんですけど、前に「見取り図じゃん」(テレビ朝日)にさらば青春の光が出て、森田さんが僕や小宮さんのことを「東京に来て驚いた芸人」と言ってくれてたんですけど、一向にも「すごい」とか「そうなんだ!」ってならないというか。
飯塚 おかしいねえ。
井口 「そんなわけないだろ」みたいな。もう観ている人の中で言ってほしい人の答えが決まってるんですよ。なんなんだよ! 「やっぱ井口ってすごいんだ」にまったくならない。本当にうんざりですよ。生きててしんどいよ! この気持ち本当にわかってほしい。本当にしんどい! そういう世界だと思って地道にがんばるしかないですね。気づかないんだから、なんにも。そんな中、「ReHacQ-リハック-」っていう謎のビジネスYouTubeに出て、1ミリも手応えなかったのにコメント欄は称賛の嵐で。なんにもすごいことしたつもりはないですけど、いつもお笑いを見てない人からすると「こんなに切り返し速いんだ」みたいになるんですかね。だから、お笑い好きな人こそ凝り固まってるんですよ。認めてくれよ、そろそろ。
飯塚 リハック、1回観た感想で言うと、悲しかったんだよね……。番組側の「はい、しゃべってください」みたいなノリとか、ひろゆきさんがずっと嫌なイジりしてくる感じとか。でもひろゆきさんってたぶん、井口くんという存在が好きなんだよね。井口くんのコスプレとかもしてたじゃん。
井口 そうだそうだ。
飯塚 だから結論、好きな人でもああいう感じでイジっちゃう人なんだなーとも思った(笑)。
井口 そんな中、僕が嫌な顔せずやってるっていうのがね。
飯塚 そうそう。キレちゃうよと思ったもん、自分だったら。ひろゆきさんのやり方って、いざ身内の人がやられたらすごいツラいんだなってわかった(笑)。
井口 僕は言われたからやるだけだし、なんも思わないので。ただ、これでいいんかいっていうのはありますね。普段もっとすごいことやってるはずなのに誰も褒めてくれない。だからくるまがいくら名前挙げてくれても、ひと笑いのために名前出したくらいにしか思わないんじゃないですか? 本当につらいっすよ。
──それだけつらいのに、よくやれてますね。
井口 本当に、よくやってますよ(笑)。だから絶対許さないです、全員。
──全員?
井口 絶対許さない。死ぬときに全員言ってやりますよ。
──何をです?
井口 文句とか言って。それこそこの連載が書籍化されて、あとから「実は好きだった」とか言ってももう許さないですからね!
若い芸人のトーンにビビる
井口 土田(晃之)さんのラジオに
飯塚 まあ、ここまで言わないと浸透しないっていうのもあるよね。
井口 そうですね。なんにせよ、どうせさらばが名前出してくれようが、くるまが言ってくれようがダメなんで、地道にやっていくしかない。いつか全部がひっくり返るまで信じてやるしかないですね。
飯塚 ひっくり返る瞬間って全然あるしね。嫌われ者だった出川(哲朗)さんも国民から愛されるキャラクターになったし、そういう日はやってくるよ。
──こんなに言っても伝わらないと絶望してもおかしくないのに、えらいです。
井口 絶望はしないですけど、もうやるしかないって思ってますよ。
飯塚 またよしもとに事件が起きたら、アンチよしもと活動家としてワイドショーにコメント求められるんじゃない?
井口 どんな肩書なんですか(笑)。僕が一番よしもとに元気でいてほしいですからね。それでこそ言えるので。
飯塚 でもそういう火種を生み出す人っていないよね。今ってみんな仲がいいから。
井口
飯塚 怖かったんだ?(笑)
井口 しゃべるトーンなんですかね? 若い人と接してて感じることが多いんですけど、本当に論破してこようとしてくるトーンなんですよ。「ちょっと、なんなんですかあ!」とかじゃなくて、「いや、でも、こうこうこうで……」みたいな(笑)。僕らはそれに「え……?」ってビビっちゃうというか。昔の人ってしゃべり方違うじゃないですか。とんねるずが出てきてとんねるずっぽくしゃべるとか、たけしさんとかダウンタウンとか。今それが変わってきてるんでしょうね。何かが若い人に影響を与えていて、僕らにはない低いトーンになっているのか。
飯塚 平場で結果出そうとか、平場で売れようって思う人がいなくなっている気はする。展開を想定して用意したりとかはもうちょっとするかなと思うこともあるんだけど、そういう感じでは今はもうないのかなと思って。
井口 こっちはこっちで本当のおっさんたちだったりすると、若い人たちとうまく組み合えなくて(笑)。
飯塚 とはいえ、友田オレさんは最近まで大学生だったからね。
井口 確かに!(笑) それはそうか。23歳とかですもんね。
飯塚 ネタの面白さと芸人としての基礎体力が付いているかどうかは別だし、先にネタが完成されていく人が多いというのはあるだろうね。
「チャンスの時間」の問題作
飯塚 「チャンスの時間」(ABEMA)で最近けっこう“問題作”が多くて。1つは永野さんが恋愛リアリティーショーのMCをやったらどうなるかという企画で、永野さんはめちゃくちゃにするよりもちゃんと進行する中で永野節を入れるっていう手法を取ったんだけど、うまくMCできていることに対して千鳥さんがイジるっていう、メタのメタのメタのメタみたいな複雑なことをしていて。スタッフの意図がどうだったかはわからないんだけど、でも見応えはすごくあって、永野さんも最近で一番追い込まれたんじゃないかなっていう内容になっていた。もう1つは井口くんが審査員として出ていた「フリースタイル口喧嘩バトル」。井口くんも「芸人同士で口喧嘩をする」というド直球なことを今やるんだって言ってたけど、1戦目は普通に低レベルな口喧嘩やっちゃって「これどうしたらいいのこれ?」となりながら、みんなで作り上げていく過程が面白かった。
井口 これはスタッフさん的に、意図して固まりきってない状態で走らせていたんですかね?
飯塚 それはわからないね。
井口 まだ配信されてないんですけど、もう1個「チャンスの時間」の収録に行って、また審査員みたいなことやったんですけど、それもたぶん思ってるのとは違うことになっているんですよ(笑)。結果盛り上がりはしてるけど、「これでいいのか?」っていう。
飯塚 最終的には千鳥さんが笑いにしてくれるという信頼のもと、ある意味雑なことでも「やってみよう」と踏み出せるのはすごい。
ルシファー吉岡は究極の芸人
飯塚 あとルシファーさんが「グランド座王」(※)になった。
井口 ああーそうだそうだ。
※編集部注:「千原ジュニアの座王」(関西テレビ)歴代チャンピオン16名の中の王者“グランド座王”に輝いた。
飯塚 ルシファーさんがちゃんとこういうところでも通用するんだってことが知られるのがうれしいよね。
井口 そうですね。前も言いましたけど、ラジオの超ポンコツなイメージで単独ライブを観に行くとあまりにもちゃんとしてるからお客さんがびっくりするっていう(笑)。ルシファーさんっていろんな面白さがあるので。
飯塚 大喜利も強くてポンコツってあんまりいないよね。
井口 僕とか小宮さんとか(ジグザグジギー)池田さんはそういう面が大好きなので。ネタはめちゃくちゃちゃんとしてるし、「座王」みたいなモロお笑いで殴り合う戦いでも勝って、その話をラジオでするときはポンコツでまともにしゃべれない(笑)。変わってますよね。
飯塚 もしかしたら究極の芸人かもしれない。センスの人って人間的なかわいげみたいなものがどうしても出ないし、そう見てもらえないところがあるけど、ルシファーさんは両方を兼ね備えてる。
井口 確かにそうですね。あと、本当におじさんだし(笑)。
飯塚 芸人の最終形態だよね。報われてほしいな。
FRUITS ZIPPERのインタビューも読んでいる
井口 あとは、僕が新しく始まった「バラバラ大作戦」に昨シーズンから引き続き積極的に出ているっていう。マヂラブの「声優談子」とか、
※編集部注:「バラバラ大作戦」の前回シーズンでマユリカはFRUITS ZIPPERと一緒に番組を担当。公式お兄ちゃん的存在となっている。
──でもFRUITS ZIPPERのメンバーが井口さんの誕生日を祝ってくれているXのポストとか見ましたよ。
井口 直前に収録が一緒だったので、みんな義務のように言ってきてくれましたね(笑)。
──井口さんも誰かの公式お兄ちゃんになれたらいいですね。
飯塚 井口くん向いてると思うけどね。公式お兄ちゃん。
井口 FRUITS ZIPPERの番組に出させてもらって思い出したんですけど、昔モツ鍋屋でバイトしてたときから年下の女子からの扱いがなんにも変わってないんですよ。もちろん芯の部分は年上だとは思ってくれているとは思いますけど、ちょっとバカにしてくる感じがもうずっと一緒。あいなぷぅとか、あのちゃんもそうですけど。人間って変わらないというか、ナメられ気質みたいなものはもともと持っているものなんだろうなって思いましたね。まあなんか言ってきてくれるほうがこっちも「うるせえ!」とか言えるからいいですし。あと、見てる人が一切嫉妬しないっていうのもあるでしょうから。
飯塚 モテようとしてる公式お兄ちゃんは怖いもんね。自分がアイドルの親だったら預けられない。
井口 だから金魚番長なんか絶対近づけちゃダメですよ。モテようとしてるんだから。絶対に向こうも好きにならない、みたいな人じゃないと。
飯塚 井口くんは第2のあのちゃん的な人を探していかないと。ちょうどいい感じでナメてくれる人を。
井口 FRUITS ZIPPERが今年紅白出てほしいって誰よりも思ってますからね、僕が(笑)。ただ、名前を出してくれないと! FRUITS ZIPPERは知らないと思うけど、僕は信じられないくらいいろんな人のインタビュー読むんだから。あのちゃんはお願いしたらいっぱい名前出してくれてたんで。「マユリカさん呼びたい」じゃなくて!
※次回は書籍発売イベント開催のため、連載を1回お休みします。代わりに「今月のお笑い」にまつわる動画をお笑いナタリーのYouTubeチャンネルに公開する予定です。
お知らせ
「書籍!!今月のお笑い ウエストランド井口と作家飯塚のお笑い界ひねくれ大解説」刊行記念サイン会
日時:2025年6月25日(水)18:15開場 18:30開始
会場:東京・芳林堂書店高田馬場店 8Fイベントホール
申込受付期間:2025年6月6日(金)12:00~
1冊券はこちらから
2冊券(3ショット撮影あり)はこちらから
※1冊券100名まで、2冊券100名までの合計200名限定。
※スリーショット撮影はスタッフが来場者の携帯電話、スマートフォン等をお借りしてその場で行います。
※希望者には為書き(宛名入れ)をお入れいたします。
プロフィール
井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)と
飯塚大悟(イイヅカダイゴ)
1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」「クレイジージャーニー」(TBS)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。
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