ポップミュージックは“作るもの”ではなく“なるもの”

──中田さんのリミックスは原曲よりもテンポも速く、かつボーカルのカットアップなども凝っていました。ああいうアレンジになった経緯は？

中田　原曲とは違うものにしたい、なったほうがいいという気持ちがありましたし、得意なことをやりやすいのがあれくらいのテンポなんですよ。それとZeddが今言ってたようなことって、僕もまさに体験していて。DJで自分の新しい曲をかけたときにお客さんがポカーンとしちゃって、でも1、2年後にはすごく盛り上がるようになったりする。これってやっぱりミュージシャンをやっていて、すごく気持ちいい瞬間だったりします。

──と言うことは、プロデューサーとして常に時代の先を読む力も必要になりますね。

中田　先を読むというより、やっぱり自分で作った自分が好きなサウンドをDJでかけ続けるっていうのが大事だと思います。人の曲でそれをやっていてもあんまり意味がないと言うか。

Zedd　「True Colors」に収録している「Addicted To A Memory」は、曲ができたときから世に出るまでに3年経っている。それってかなりのタイムラグがあるけど、仕方ないね。

──エレクトロミュージックのトレンドの移り変わりはとても早いですしね。

中田　トレンドの移り変わりは昔から常にありますが、細かなトレンドにおいて逐一曲に落とし込んでもしょうがないと思っていて。もっと大きく考えたときに、ダンスミュージックじゃない音楽も世の中にはたくさんあるし、将来的にもっとみんなが聴くようになる音楽を作りたいと思っています。

Zedd　「Clarity」はグラミー賞でダンス部門を受賞したんだけど、自分としては同じジャンルだと思っていた「Stay The Night」は、その1年後にポップパフォーマンスの部門にノミネートされた。だから世界が「これはポップだ」と言えばポップミュージックになる。自分が思っていたジャンルとは意図せずに変わったりするものなんだよね。

中田　今、Zeddが言っていたことはまさにいつも僕が思っていることと同じで。ポップミュージックという音楽はなくて、ポップミュージックになったものがそう呼ばれているだけなんだよね。

Zedd　その通りだよ。

何がヒットに結び付くかなんてわからない

──ダンスミュージックのプロデューサーであるお二人にとって、ヒット曲になり得る曲を作るためのセオリー、もしくは心がけていることはありますか？

中田　僕の場合は「本物はない」と思って創作していますね。本物という言い方は「過去にある」と言う意味だから。そういう意味で、もし僕が本物を求めていたら、きゃりーぱみゅぱみゅの音楽みたいなものは生まれないだろうし（笑）。だから自分が好きなものとその時代に鳴っている音、そのバランスがちゃんと噛み合ったものが新しいポップソングになる可能性があるものだと思っています。

Zedd　ヒットはチャートに表れる結果ではあるとは思う。でも作り手としての見地で言えば、カルチャーと人生と音楽がマッチする瞬間があって、それを多くの人が好きだと思うから起きる現象だと思うよ。5年前や5年後にその曲をリリースしてもダメなんだ。

中田　同感だね、結局考えてできるものというより、皆既日食みたいなもので。自分の軌道をちゃんと描いていることは大事なんだけど、ほかのいろいろな軌道もうまく重なってそう言う現象が起こるというか。だからヒットするかどうかって、ある意味ラッキーでしかないよね。

Zedd　そうだね。例えば自分の曲がリリース直後は売れなかったとして、ネコが踊る動画をきっかけにバイラル現象が起きてヒットしたら、その曲がヒットした理由はそのネコのおかげになってしまうのかもしれない（笑）。だから、何がヒットに結び付くかなんてわからないよね。