Zedd×中田ヤスタカ|エレクトロミュージックがポップミュージックに変わるとき

「この人だ!」っていう出会いを求めている

──中田さんは短いスパンで制作して作品をリリースをしている印象もありますね。

中田 思いついたらすぐに作りたいタイプですが、短くしたいのはスパンというよりも、作ってからリリースまでの期間かな、常に早く出したいとは思っていますね。だけどタイアップなど何かに使われる前提のものとなると、だいぶ前から用意しなければいけなくなる場合も多くてタイムラグがかなりあります。

Zedd 僕はここ数年で制作のペースが落ちてきている。と言うのも、シンガーを見つけるのが大変なんだ。シングル「The Middle」のときは15~16人の歌い手を試したし、新しいシングルのシンガーはいろいろ試しているけど、現時点でまだ見つかっていない。「この人だ!」っていう出会いを求めているから、どうしても時間がかかってしまうんだよ。

左からZedd、中田ヤスタカ。

中田 Zeddが活躍する場所では常に音楽が中心にあって、ボーカリストのために曲を書くのではなく、曲のためにボーカリストを探しているんだよね。つまり曲をさらによくするために人が集まってきている。これって日本ではなかなか実現できないことなんだよ。僕は日頃からそうやって音楽を作りたいと思っているから、すごく共感するなあ。

Zedd 日本だとシンガーありきで音楽を作っていくの?

中田 シンガーありきと言うよりも、1曲のためにそれほどの時間を割いて動いているプロジェクト自体が少ないんだよね。3、4年にアルバム1枚みたいなスパンでのリリースは世界的に見たら普通だけど、日本でそれをやると引退したと思われるかもしれない(笑)。

Zedd へえ。それはストレスもプレッシャーも大きいね。僕の場合は制作に加えて年間で100本近いライブもあるから、息を付く暇もなくなってしまいそうだよ。

タイムレスな曲は意図がなくできるもの

──Zeddさんは中田さんの「Stay」のリミックスを聴いてどんな印象を持ちましたか?

左からZedd、中田ヤスタカ。

Zedd 繊細でディテールに凝っているのに音楽的であることにまず驚きました。僕は日本のゲームミュージックも大好きなんだけど、このリミックスには同じような傾向があると思います。中田さんのリミックスはそれに加えてEDMのように先が読める展開でもなくて、聴いていてとてもワクワクするような仕上がりでした。

中田 作曲についてDJたちとよく「こういうサウンドを入れると、こういう人はどんなふうに盛り上がる」ということを話しているんだよね。僕も普段からDJ活動をしているから、そういう音楽の機能的な考えも傍らに置いてはいるんだけど、トラックメイクに熱中しているうちに、ふとした瞬間そのことを忘れて、この曲でやったようなアプローチをするんだろうなと思ってるよ。

Zedd 同感だね。もちろん数学的に考えても曲は作れるけど、長い期間にわたって人々を踊らせられるタイムレスな曲っていうのはそういう意図がなくできたものだと思う。「Clarity」も最初の半年くらいはショーでプレイしても、なかなかお客さんも歌ってくれないし、はっきり言って“弱い曲”だった。でも6年経った今はショーの中で一番盛り上がる曲になったんだ。

Zedd「Stay+」
2017年12月27日発売 / ユニバーサルミュージック
Zedd「Stay+」

[CD] 2376円 / UICS-1337

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収録曲
  1. Stay / Zedd & Alessia Cara
  2. Get Low / Zedd & Liam Payne
  3. Break Free feat. Zedd / Ariana Grande
  4. Beautiful Now feat. Jon Bellion / Zedd
  5. Candyman / Zedd & Aloe Blacc
  6. Adrenaline / Zedd & Grey
  7. Ignite / Zedd
  8. Starving feat. Zedd / Hailee Steinfeld & Grey
  9. Stay (Yasutaka Nakata Remix)
  10. Get Low (Kuuro Remix)
  11. Let Me Love You feat. Justin Bieber (Zedd Remix) / DJ SNAKE & Zedd
  12. Zedd Mega Nonstop Mix / Zedd
Zedd(ゼッド)
ロシア生まれ、ドイツ・カイザースラウテルン育ちのDJ、音楽プロデューサー。本名はアントン・ザスラフスキー。両親が共に音楽家だったため、4歳のときからピアノを習い、12歳のときにドラムを始めた。当初はドイツのロックバンド・Dioramicとして活動していたが、のちにJusticeのアルバム「†」を聴いてエレクトロミュージックに目覚める。2010年頃までにBeatportのリミックスコンテストで2度優勝。間もなく、スクリレックスやレディー・ガガらの曲のリミックスで注目を集める。2017年にアレッシア・カーラとコラボしたシングル「Stay」をリリースすると、全米ラジオ・トップ40で初の1位を獲得し、グラミー賞にも2度目のノミネートを果たした。「Stay」はその後も世界的に大ヒット。日本では中田ヤスタカによる「Stay」のリミックスなどを収録した日本独自の企画アルバム「Stay+」を2017年末に発表した。
中田ヤスタカ(ナカタヤスタカ)
音楽家 / DJ / プロデューサー。2001年に自身のユニットCAPSULEにてデビュー。日本を代表するエレクトロシーンの立役者であり、“Kawaiiダンスミュージック”からハードなトラックまで、その独自の感性によって世界中のアーティストから支持を受けている数少ない日本人アーティスト。音楽プロデューサーとしてはPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅなど数々のアーティストを世に送り出し、国内外のポップシーンを常に牽引してきた。国際的なセレモニーへの楽曲提供などパブリックな作品のほか、数々の映画の楽曲制作にも携わっている。2018年2月には初のソロアルバム「Digital Native」を発表し、iTunesアルバム総合チャートで1位を記録した。