「ONE PIECE FILM RED」特集 Adoインタビュー|世界の歌姫・ウタの歌唱キャストに抜擢、豪華アーティスト提供曲で感じた新たな可能性

アニメ「ONE PIECE」劇場版シリーズの15作目として8月6日から全国公開される「ONE PIECE FILM RED」。原作者・尾田栄一郎が総合プロデューサーを務めた本作では、赤髪海賊団の大頭・シャンクスの娘であり、世界中を魅了する歌姫・ウタを中心にしたストーリーが繰り広げられる。

音楽ナタリーではウタの歌唱パートを担当したAdoにインタビュー。物語の軸になるウタの歌声を担うこと、中田ヤスタカ、Mrs. GREEN APPLE、Vaundy、FAKE TYPE.、澤野弘之、折坂悠太、秦基博といった豪華アーティストが手がけた楽曲を歌うことへの思い、「ONE PIECE」に対するイメージなどを語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

いまだに夢のよう

──「ONE PIECE FILM RED」で、物語の鍵となるウタの歌唱を担当することが決まったときは、どう思われましたか?

なんと言えばいいでしょうか、いまだに夢のようで。正直、今でも「本当に歌ったのかな?」という感覚ですし、不思議な気持ちです。事務所の方に「『ワンピース』の話が来たよ」と伝えられたときも、最初は「洋服のことですか?」と聞いちゃったんですよ(笑)。「違うよ」と言われ、まさかアニメの「ONE PIECE」だったという。まさか私が「ONE PIECE」に携わる日が来るとは思っていなかったですし、とても驚きました。

「ONE PIECE FILM RED」の劇中楽曲を収めたアルバム「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」の通常盤ジャケット。尾田栄一郎がイラストを描き下ろした。©尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会」

「ONE PIECE FILM RED」の劇中楽曲を収めたアルバム「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」の通常盤ジャケット。尾田栄一郎がイラストを描き下ろした。©尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会」

──ウタというキャラクターに対しては、どんな印象がありました?

最初にビジュアルを見たときは、すごくかわいらしくて、元気で愛らしいなと思いました。「このキャラクターに私の歌声が乗って大丈夫かな」という戸惑いもありましたが、ウタがどのように動いて、歌って、どのような物語を繰り広げてくれるのか楽しみになりましたね。「みんなの背中を押して、キラキラ輝いているんだろうな」と想像していたのですが、そういう部分もありながら、実際にはもっといろいろなものを背負っていて。喜びや希望といった明るい印象だけではなく、人間としての苦しみ、悲しみ、切なさも抱えていて……。たくさんの感情を歌に乗せて歌っている歌姫であり、力強いキャラクターだと思います。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタの登場シーン。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタの登場シーン。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタの登場シーン。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタの登場シーン。

──Adoさんがウタとして歌唱した楽曲は、中田ヤスタカさんが手がけた主題歌「新時代」をはじめ、Mrs. GREEN APPLEによる「私は最強」、Vaundyによる「逆光」、FAKE TYPE.による「ウタカタララバイ」など7曲。音楽シーンの第一線で活躍するアーティスト7組が楽曲を提供しています。

これまでボカロPの方に書き下ろしていただいた楽曲を歌ってきて、普段自分がカバーしている曲もボーカロイド系が多いのですが、今回は以前から存じ上げているアーティストの皆さんに提供していただいて。この7曲を歌うことで、いろんな自分、いろんな声を引き出せたのかなと思います。もちろんすべての曲がこの映画とウタのために作られていて、作品のストーリーにもピッタリで。こんなにも素晴らしい曲を私の声で歌わせてもらえたのは、本当に貴重な経験になりました。

──シンガーとしてのステップアップにもつながった、と。

そうですね。普段からいろんな声を使って歌っていますが、今回の7曲にはそれぞれ楽曲を制作したアーティストの方の色が出ていますし、自分が歌ってこなかったジャンル、趣味としても歌ったことがない楽曲でした。例えばバラードだったり、ラップがある曲だったり。Adoとして歌うのではなく、あくまでもウタというキャラクターとして歌おうと思っていました。なので「ウタはこんなふうに歌わないんじゃないかな」「ここはあまりにもAdoすぎる」みたいに感じることもありました。特にバラードは難しかったです。いつもはパワフルでハードな曲が多いので、優しく歌うのがかなり大変で……。声色を変えればいいというわけではないし、「ちょっと強すぎないかな?」「優しく歌えるんだろうか?」と考えながらいろいろ試しました。自分自身とウタとの調和と言いますか、そこはかなり難しかったですし、自分の成長にもつながったのかなと思います。

とにかくリズムがすごい「新時代」

──ちなみにAdoさんは、「ONE PIECE」のマンガやアニメには親しんでいたんですか?

原作のマンガは10代後半から読み始めたのですが、私が生まれる前から連載されている作品ですし、多くの人たちに愛されていて。世界的な作品というよりも、「ONE PIECE」=世界と言えるくらいの大きな力があると思っています。キャラクターの生い立ちや過去、人生がすごく丁寧に描かれているのも魅力ですよね。キャラクターが過去に経験してきたことが、現在の姿や言動、思想につながっているのを感じるたびに、胸が熱くなって。あと、ルフィや仲間たちはもちろん、敵のキャラクターにも一貫して揺るぎない信念があるのもカッコいいなと思います。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタとルフィ。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタとルフィ。

──テレビアニメやこれまでの映画の音楽についてはどうですか?

アニメの主題歌が給食の時間に流れたり、「ONE PIECE」関連の楽曲は子供の頃からよく耳にしていました。爽快で明るい、盛り上がれる音楽という印象があったのですが、GLIM SPANKYさんの「怒りをくれよ」(2016年公開の映画「ONE PIECE FILMGOLD」主題歌)にはビックリしました。カッコいいのはもちろんなのですが、いい意味で「これが『ONE PIECE』の曲なの!?」と。いろんな可能性があるというか、「ONE PIECE」はずっと進化していて、これからもいろいろな形で楽しませてもらえるのだろうなと感じました。

──Adoさんが「ONE PIECE FILM RED」に参加したことも、「ONE PIECE」の新たな可能性につながっているんだと思います。では、ウタの楽曲のうち、すでに配信されているものについて話を聞かせてください。まずは映画の主題歌「新時代」。中田ヤスタカさんらしいエレクトロのテイストを軸に、どこかエキゾチックな雰囲気もある楽曲です。

イントロからワクワクさせられました。海賊らしいと言いますか、太鼓の音で始まって、おっしゃる通り中田さんのエレクトロの感じがあって。とにかくリズムがすごいですよね。もちろん「ONE PIECE」らしさもあるし、映画のストーリーの中の“新時代”を描きつつ、現実世界の“新時代”にもつながってる感じがします。令和らしさと言うと違うかもしれないですが、「ここから新しい時代が始まる!」という雰囲気があって、オープニングにピッタリだなと思いました。

──高揚感にあふれたボーカルも聴いていてすごく気持ちよかったです。

ありがとうございます。先ほどもお話ししましたが、これまではボカロPの方々に曲を作っていただくことが多くて。ボーカロイド系もジャンルが広いですし、個人的な趣味としてエレクトロやEDM、ダブステップの曲も歌ったこともあるのですが、中田ヤスタカさんが作った楽曲を歌わせてもらえたことがうれしく、私にとってすごく新鮮でした。