作品を締める大真面目なバラード

──ラストナンバー「愛想笑いはあとにして」は大真面目なソウルバラードです。アカペラの冒頭部分はふざけてますけど。

こういう曲じゃないとまとまらなかったんですよね。

──作品にオチが付けられなかった？

全体的に。今思えば、生ドラムの曲は過去に意識が向いていて、打ち込みの曲は過去を引っ張った上で未来に向かってるみたいな感じなんです。で、これはそのうちの生ドラムの、過去のほうの曲ですね。爆弾ジョニーのタイチがサポートでドラムを叩いてるんです。

──過去形の曲だし、「ゲームボーイズメモリー」にも感じたちゃんと過去に決着を付ける系の感じなのかなっていう。

1年タイチと一緒にずっとライブとかもやってて、でも普通にすげえ仲よかったんで、まだまだ一緒にやりたいなって気持ちもありつつ、でもやっぱ僕、爆弾ジョニーもすごい好きなんで、それ以上にそっちに注力してほしいなっていう気持ちもあり……みたいなことを考えたときにお別れっていうのはいろいろあるもんだなと。いろいろ考えたときに鼻歌と笑い声で構成されたデモができあがって。そこに歌詞を乗せました。

──肩の力が抜けていて気持ちよかったです。

ありがとうございます。ほかはずっとずっと筋トレしてるみたいな曲なんでね。

──「愛想笑いはあとにして」は力が抜けているものの、作品全体を通して聴く人にカロリーや教養を要求する感じが面白いですよね。

BGMみたいに聴ける曲が流行ってますけど、許しません、僕は！

ナゴム的自分と開けたい気持ち

──今作を自分で聴いてみていかがですか？

僕は好きです。流行ってる音楽はありますけど、こういう音楽が好きな人間は必ずいると思うし、そういう人には僕らしかいないなと。

──とはいえ下川さんは、シティポップや今流行ってる、いわゆるJ-ROCKと呼ばれる音楽が嫌いなわけでもないし、このアルバムが古臭いわけでもないですよね。

もちろん。ナゴム的な自分と、そこから開けてもっとたくさんの人に聴いてもらえるようになりたい気持ちと、そのちょうどいいものが作れたらいいなと思ってます。

──「テクノ番長」は聴きようによっては四つ打ちダンスロックとして機能するわけだし、「ゲームボーイズメモリー」は本当に洒落たダンスミュージックとして機能するしっていう。懐古主義的なことやマニアックなことばっかりやってるわけでもない。

誰もやってないんで、聴く人が聴いたら逆に一番新しいんじゃないかな。なんというかいわゆるJ-ROCKの人たちと一緒に聴いてほしいなって思ってます。普段J-ROCKを聴いてる人たちにJ-ROCKのオルタナティブな姿として聴いてもらえたら一番ありがたいな。

──それが美しく出てるアルバムだと思いました。

僕、たまに「ダメ人間の希望です」みたいなことを言われたりするんですね。「学校行くときずっと聴いてます」って。俺にとってもそういうバンドっていたなと思って。自分がそういう存在にちょっとずつなっていってるのであれば、それを引き受けるために俺はダメ人間のままがんばらないとダメだなと思って。ダメ人間的にがんばってるっていうか。

──「ダメ人間だからダメだし」じゃなくて、ダメ人間なりにがんばる。

「エヴァ」見てるんで。

──シンジくん、最後までダメなまんまですもんね。

僕、新劇場版みたいなところあるんで。シンジくんががんばらないと意味ないんですよ。だから僕も、下川ががんばらないといけない。

──じゃあ今後の目標はダメ人間なりにがんばる？

そうですね。堂々とダメをやってもいい挫・人間でありたいですね。