浜野謙太＝在日ファンク

──リリース後の反響などでもまた変わってくるかもしれませんが、メジャーデビューを果たした在日ファンクをこのあとどうしていこうと考えていますか？

浜野　アルバムができて改めて思ったんですけど……フルアルバムは3年出してなくて、それは音源をバンバン作って摩耗するよりもライブをもっとやって力を付けようという判断だったんだけど、それが意外とキツかったんですよね。当たり前ですけど、ちゃんと作品を発表して意思表明するのは重要なんですよ。テレビに出る機会も増えたりしたから、リリース以外にもできることがあるって気持ちが心のどっかにあったと思うんですよね。でもやっぱりミュージシャンはリリースしないと意志が表明できない。

──常に自分たちの意志を更新し続けないと疲弊してしまう。

浜野　そう。しかも俺らレコーディングのほうが好きなんじゃないかってちょっと思ったりもしてるから（笑）。レコーディングエンジニア（「笑うな」では柏井日向、内田直之が担当）さんもすごく楽しんでやってくれて。メンバーも「こういうレコーディングがあるんだ。というかこれがレコーディングなんだ」って目覚めちゃって。マスタリングはアメリカに持ってったんですけど、The Rootsとかをやってるデイヴ・カッチという世界的なエンジニアで、その人はたまたま在日ファンクファンだったんですよ。最高のマスタリングが上がってきて、なんか面白かったんですよね。魔法がかかったみたいで。現場のディレクターも最高なんですよ。……もう川副いらないのかなっていう（笑）。

川副　アハハハハハハ（笑）。

浜野　川副不要論が上がってきていて。仲間がいっぱいできたから、川副が最近俺らのことを守ってくれないんですよ。そのへんの変化はあるかもしれないですね（笑）。

──これだけ長時間かけて歴史を振り返った結果、長年連れ添ったパートナーとの最終回みたいなことに（笑）。

川副　不要かどうかはバンドの判断に委ねますけど（笑）、僕も在日ファンクだけやってちゃいけないなという意識はあるので。こと在日ファンクに関して話させてもらうと……まあ今後一緒にやれるかはわかんないですけど（笑）、環境も変わってここからもう一度デビューするような意味合いがあると思うので、今回は「“ほぼ”ハマケン100%」でしたけど、次回は「“ほぼ”在日ファンク100%」と言える作品を全員で作るべきなんだろうなと思いますね。いいアルバムができたけどこれで完結ではないから、次はもっとすごいものを世に出してほしいし、その手伝いをしたいなと思いますね。まあ手伝うのは僕じゃないかもしれないけど（笑）。

──では最後に。浜野さんはナタリーで記事が出るときも「浜野謙太（SAKEROCK、在日ファンクほか）」と複数の肩書きがあるし、俳優として見ている人もいれば「たまにめちゃイケに出てくる人」という認識の人もいると思うんですよ。浜野さん自身にとって在日ファンクはどういう存在ですか？

浜野　孤独……ですかね。俺はSAKEROCKをやって女にモテて、妻とも結婚できたんですよ（笑）。妻は在日ファンクについてもアドバイスをくれるんだけど、どうもハマってないんですよね。それがまたムカつくんですけど、なんとなく女にはわからない世界観なのかなという感じがあって……孤独な戦いというか。でも在日ファンクのことは俺が一番わかってる……俺か村上が一番わかってるぞと。俺もわかってるけど詳しいことは村上に聞けっていう。

──あははは（笑）。でもこうしてメジャーデビューしたことにより、さまざまな顔を持つハマケンという人の中で、在日ファンクの比重が大きくなるんじゃないかと思うんですよ。それこそ「浜野謙太（在日ファンク）」という肩書きがもっとも自然なものになるかもしれない。

浜野　そうなってほしいんですよ早く。そうなってほしいし、もし落ちぶれて小さなライブハウスにたまに出てくるだけみたいな存在になっても、根底にあるのはここ（在日ファンク）でありたいと思ってますね。