音楽ナタリー PowerPush - 在日ファンク

ハマケン(+川副マネージャー)の熱血ファンク物語

川副、会社辞めるってよ

──結果、2013年10月には本業のほうを辞めるという選択を。

2013年
1月~
新曲制作に入るもなかなか進まず。浜野の俳優業も本格化。川副もますます中国や国内出張が増え、しんどくなる。リリースも無いため、我慢の年だったような。
8月
NHK秋田放送局主催のイベントに出演。この辺りの出来事がきっかけで、川副はバンドに専念しようと心変わりしました。
10月
職場で辞める宣言。直後に浜野声帯炎でツアー飛ばし。辛かった。。

浜野 なんで8月の秋田で決断したの?

川副 WORLD ORDERですよ。あのイベントは何千人も集まっていたのに豪雨で中止になって、在日ファンクのメンバーは仕方ないから楽屋で卓球かなんかしてたんですけど、そこにスーツも髪の毛もびしょ濡れになった須藤元気さんが入ってきたんです。どうしたんですかって聞いたら「せっかくお客さんが来たんだから、握手会をやってた」って。無音でパフォーマンスまでやったって聞いて「俺たちは全然ダメだな」と。それはメンバーというよりも自分の立場として。もっと自分にやれることがあるような気がしたし……昼の仕事(本業)も大きな案件を任されるようになって、両方の責任を全うするのはもう限界かなと思っていたところだったので、このバンドともっと関わろうと、そこで決めました。

──ここからメジャーデビューへとつながっていくわけですが、これってレーベルから誘われたのではなく、川副さんが自ら売り込みをしたんですね。

2013年
11月
環境を変えようと、メジャーでのリリースを計画。知人の薦めもあり、コロムビアと接触。バンドの契約が決まる。
12月
現上司から勧誘を受け、川副もコロムビアに入社することが決まる。
2014年
3月
川副、サラリー退職。13日最終出社で14日のAX公演が延期に。絶望。
4月
コロムビアとの契約スタート。川副も入社。現在まで良い感じです。

川副 単純に興味本位だったんですよね。実は今のディレクターとは一度、髭とスプリットシングルを出したときに(2011年11月発売「We are HiGE! / におい将軍」)仕事をする機会があったんです。すごく印象に残る人だったんですけど、本業を辞めることを決めてさあどうしようというときに、親交のあった業界の方に興味本位で「誰か外(メジャー)の人紹介してもらえませんか」と相談したら一発目に挙がったのがそのディレクターだったんですよ。ああ、その方知ってますということでさっそく話をしに行ったら、すごく理解してくれたし、メンバーそれぞれの活動も尊重してくれた上で契約しようって言ってくれたので、メンバーも共感してくれるんだったら話を進めようかなと。それで浜野さんたちに「インディーズでできなかったことがこんだけあって、メジャーだとこういうことができますね」と説明したら「じゃあメジャーに行くのが正しいんじゃないか」という結論に至って。

──しかも単にバンドがメジャーに進出するだけでなく、マネージャーも自ら日本コロムビアに転職するという(笑)。

左から浜野謙太、川副耕介。

川副 僕も勢いで進めちゃったのでそのへんまったく考えてなくて(笑)。契約を決めてからディレクターと話している中で「1人でリスク抱えるぐらいなら中に入らないか」って言ってくれて。

浜野 バンドの中でも、川副が仕事辞めてまで専念するって言ってるけど、これからどうなるみたいな感じがあったんですよ。「川副、会社辞めるってよ」みたいな(笑)。会社辞めて個人で在日ファンクだけで食ってくのは大変だろうし、在日ファンクを回すことに必死になりすぎて、変な仕事までやり始めちゃうんじゃないかという不安もあったんです。俺らも搾取されるのは嫌だし(笑)。でもマネージャーとして就職すれば、最悪在日ファンクがダメになってもこいつはコロムビア社員として生きていけるから(笑)。それを聞いたときはすごく安心しましたね、こっちも。

応援ソングを歌わないメジャー歌手

──満を持してのメジャー発表が、今どきないぐらいメジャーを大々的に打ち出した発表で(笑)。

浜野 バックボーンがあるのは強いなと。ももクロとか「モテキ」をきっかけに在日ファンクいいじゃんって言ってくれたりとか、気に入ってくれてうれしいというのはあるんですけど、そこ止まりだったよなあみたいな。だって、バックボーンがなければただのおじさんの集まりになっちゃいますからね(笑)。もっとちゃんとしたアーティストとして扱ってもらえてたら、形だけでも大事にされるんじゃないかなって。

──そういう意味ではこの歴史あるコロムビアのロゴが後ろに控えているのは心強いですよね。

浜野 ホントそうですよ。このマークが付くだけで、メジャーだという“設定”ができるんですよ。

──だけどメジャーの第一歩としてリリースされるアルバムのタイトルは「笑うな」。そのへんの姿勢はくずさないまま、コロムビアのマークという箔が付いているのはいいですよね。姿勢は変わらないながら、極限まで削ぎ落として濃く抽出した在日ファンクならではの言葉と音は、さらに洗練されているように感じました。「場」まで削ぎ落とせるのか!と。

浜野 アハハハハ(笑)。

──メジャーレーベル所属のアーティストだから……みたいな遠慮があったら「場」ってタイトルの曲は入れないですよね(笑)。何か止められたこと、メジャーだからという理由での縛りってありました?

浜野謙太

浜野 それがないんですよ。ほかのメジャー進出した人たちも感じてるかもしれないけど、むしろ自分たちだけで採算を立てようとがんばってる共同体のほうが変に合理化が進んでるというか。今までのほうが自由が利かなかったですね。川副の言うこと鵜呑みだったし(笑)。コロムビアのディレクターのほうから「原点回帰してくれ」って言われたのもあるし、今までムダと思ってあきらめてきたことにも可能性があるからと、とことんこだわってやってみた結果できたのがこのアルバムなんです。

川副 思ったより売れなかったらガチガチに縛られるかも(笑)。

──「笑うな」だし「場」だし、「根にもってます」という曲がリードトラックとしてビデオクリップまで作られるという。自由すぎるぐらい自由ですよね。

浜野 ディレクターから「『根にもってます』で行こうや」って言われたときは、こっちが大丈夫かなと思ったぐらいで(笑)。やっぱどこか自分たちで「メジャーだから」みたいな規制を作っちゃってるんですよね。

──「メジャーアーティストなのに、みんなのことを応援する歌を歌わなくていいのかな」みたいな(笑)。

浜野 そうそうそう(笑)。

川副 在日ファンクに応援ソングを求めるのは、ナンセンスの極みだと思うんですよ。受け手が自由に応援ソングと思ってくれるぐらいでいいのかなと。浜野謙太が「爆弾こわい」って言えば「面白い」と思う人も「何か裏がある」と思う人もいるわけだから。その自由さが在日ファンクの魅力だと思うし、それを変わらずにメジャーでできていることを、メンバーにもお客さんにも楽しんでもらいたいですね。

──原点回帰を目指す上で、今作は1曲を除いてすべて浜野さんが新曲を書き下ろしていますが、曲を作る上でメジャーならではの重圧、プレッシャーはなかった?

浜野 なかったですね。ほかのメンバーが曲を書いた「連絡」を作ったことでメンバーに対して敗北感があったのか(笑)、俺がんばろうみたいな気持ちが強かったんですかね。ガンガン曲を作って掘り下げて……けっこういっぱい出てきたんですよ。一晩で3曲できたりしたもんね。

川副 浜野さんなりに「連絡」を超える、リミッターを外すみたいな気概があったのかな、と近くで見ていて感じましたね。今までだったらもっと悩んだ結果ボツにしちゃってたかもしれないような曲が、ある程度の輪郭を持って落ちてきたので、バンド側もスッと形にできたのかなと思います。だから変にこねくり回してない、突き抜けた印象がある。

浜野 それをバンド全体で共有できた感じがあって。「今だったらハマケンもう1曲ぐらい書けるよね」みたいな、不思議な雰囲気だった。「このスケジュールで1曲はムリでしょ」みたいな現実主義的なメンバーなんですけど、「いけんじゃない?」みたいな雰囲気で。

川副 環境の変化がいい方向に作用したと思いますね。

メジャー1stアルバム「笑うな」 / 2014年9月3日発売 / 日本コロムビア
在日ファンク「笑うな」
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / COZP-964~5 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3024円 / COCP-38724 / Amazon.co.jp
アナログ盤 3456円 / COJA-9280 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 大イントロ
  2. 根にもってます
  3. ちっちゃい
  4. 不甲斐ない
  5. パラシュート
  6. 恥ずかしい
  7. 断固すいません
  8. 産むマシーン
  9. 笑うな
  10. 百年
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「根にもってます」Short Movie(監督:萩原健太郎)、Making Movie
  • 「在日ファンク【所信表明】コメント」Long Version(監督:山岸聖太)

※メンバーによるオーディオコメンタリー付き

アナログ盤収録曲
SIDE A
  1. 大イントロ
  2. 百年
  3. 根にもってます
  4. 不甲斐ない
SIDE B
  1. ちっちゃい
  2. 産むマシーン
  3. パラシュート
  4. 恥ずかしい
  5. 断固すいません
  6. 笑うな
在日ファンク「笑うな」発売記念ツアー
  • 2014年10月4日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2014年10月5日(日)広島県 ナミキジャンクション
  • 2014年10月12日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2014年10月13日(月・祝)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年10月18日(土)香川県 DIME
  • 2014年10月19日(日)京都府 KYOTO MUSE
  • 2014年10月25日(土)長野県 ALECX
  • 2014年10月26日(日)石川県 Kanazawa AZ
  • 2014年11月1日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2014年11月2日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2014年11月8日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年11月9日(日)秋田県 Club SWINDLE
  • 2014年11月14日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2014年11月16日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
在日ファンク(ザイニチファンク)

在日ファンク

浜野謙太(Vo)を中心に2007年に結成された7人組のファンクバンド。メンバーはハマケンのほかに、村上啓太(B)、仰木亮彦(G)、永田真毅(Dr)、後関好宏(Sa)、ジェントル久保田(Tb)、村上基(Tp)。結成当初は「浜野謙太と在日ファンク」名義で活動していたが、2010年6月に1stアルバム「在日ファンク」をリリースしたタイミングで現在のバンド名に改名した。さらに同年10月からサイトウ“JxJx”ジュン、サイプレス上野とロベルト吉野、ROY(THE BAWDIES)らとのコラボシングルを3カ月連続で発表。2011年には2ndアルバム「爆弾こわい」をリリースし、翌2012年1月にはシングル「爆弾こわい -岡村靖幸REMIX-」が発売された。2014年6月には日本コロムビアからメジャーデビューすることを発表。9月にメジャー第1弾作品となる3rdフルアルバム「笑うな」をリリースし、10~11月には全国14都市を回る「笑うな」発売記念ツアーを行う。