音楽ナタリー PowerPush - 在日ファンク

ハマケン(+川副マネージャー)の熱血ファンク物語

「じゃあ本当の俺見せてやるよ」

──そのときの星野さんとの出会いが、のちのSAKEROCKへの加入につながるわけですよね。

浜野 はい。村上と星野くんと何回かの決別を繰り返しているうちに、村上が大学に入って。その頃にSAKEROCKを始めたんです。

──そこからはファンの皆さんがよく知る歴史が始まるわけですけど、在日ファンクの活動を始めたのが2007年頃と。「SAKEROCKのハマケン」として軌道に乗り始めたタイミングでなぜ在日ファンクを?

浜野謙太

浜野 実はSAKEROCKでガンガン活動している間も、村上の大学で文化祭があるときは毎回出てたんですよ。JBバンドって名前でジェームス・ブラウンのコピーばっかりやってたんですけど、そのバンドでは俺はもうノリノリでできるから覚醒していて。文化祭で旋風を巻き起こしてたんですよ、実は。文化祭とか新歓の時期だけ出てきて「あの人誰なの?」みたいな(笑)。最近、当時の村上の後輩がライブに来るんですけど、「新歓に颯爽と現れて階段から転げ落ちるパフォーマンスをしていた、“JB”と呼ばれた人の姿が記憶に焼き付いている」って。人知れず刻んでたんです。

──そのバンドをちゃんと形にすべく始めたのが在日ファンク。

浜野 そうです。あの覚醒状態をよみがえらせたくて。どっかでストレスも溜まってたんでしょうね。だから俺、SAKEROCK始めた頃も「いや、俺は歌いたいからできない」って1回断ってるんですよ。そのぐらい拮抗してずっと続けてたものだったので、あるときイベントで「なんかSAKEROCK以外のハマケンでやれることない?」って言われて「じゃあ本当の俺見せてやるよ」みたいな感じで始めたのが在日ファンクなんです。まあどっちも本当の俺なんですけど、みんなが知らない俺を見せてやりたいって思いが強かったんです。

──SAKEROCKのインストバンドという姿勢があるからこそ、ボーカルとしての自分が出したかった。

浜野 いや、歌いたいというより、騒ぎたかったんですよ。トロンボーンのことを考えずに騒ぎたかった。

──重たい首飾りを外して(笑)。

浜野 そう(笑)。ファンクやヒップホップのような、単にカッコいいやつ……こないだ田我流さんと対談して思ったんですけど、単にカッコいいものって素晴らしいなと思うんですよ。ドーン! カッコいい! みたいな。そういうのって俺にも村上の中にも追い求めるものとしてあったので、それをひけらかせたかったんです。

──ひけらかせたかった(笑)。あくまでパーマネントなバンドとしてやる前提で始めたんですか?

浜野 そこは具体的に考えてなかったですね。とりあえずかましたいみたいな。在日ファンクはずっとそうなんですよ。

Bose様々ですよ

──これまでナタリーで在日ファンクを取り上げた記事をいくつか抜粋してみたのですが……。

川副 ああっ、すごい!

──ナタリーに初めて在日ファンクの記事が掲載されたのが2008年4月、アナの自主企画「PATROL」出演時ですね。この記事もそうですが、2008年の段階では「浜野謙太と在日ファンク」名義でした。このあたりまではちょっとしたサイドセッション的な活動なのかなと見ていたのですが、2009年8月の岡山・中世夢が原でのライブ「STARS ON 09」の開催発表記事で初めてアーティスト写真が登場して、あれ? いよいよ本格的になってきたぞと。そして2009年10月には1stアルバム「在日ファンク」(2010年1月発売)の情報が。

浜野 あー、なるほど。面白い。最初は本当にひけらかしたいだけだったんですけど、この2008年の「ビボサン」でスチャダラパーと一緒にやったとき、Boseさんがいたく気に入ってくれて。Boseさんがいいって言ってくれてるってことは、これはすごいんじゃないかと。そのあと「EYESCREAM」という雑誌で連載(「ボーズとハマケンの“浜田じゃなくて、浜野です!”」)が始まって。俺がBoseさんに相談するって内容なんだけど、俺が薄っぺらいからそんなに盛り上がらず。でも在日ファンクの話をしたら盛り上がるんですよ。Boseさんに焚き付けられたというのが大きかったですね。「いいよあのバンド、最高だよ!」みたいな。それで「一度CDを出してみたらいいよ」って言われて作ったのが1stアルバムなんです。

──Boseさんの言葉がなかったら、たまにライブに出る程度のバンドになっていたかもしれない。

浜野 そうですね、ホントに。Bose様々ですよ。今思い出しましたけど。

──川副さんがスタッフとして合流するのがこのアルバム発売前後ですね。川副さんにはその関わりを年表としてまとめてもらいました。年表によると2009年のneco眠るとの対バンが1stコンタクトですが、この経緯を詳しく教えてもらえますか?

2009年
6月
Easel presents 「neco眠る Vs. 在日ファンク」というイベントを川副(学生)が主催。出会いのキッカケです。レーベルで軽くバイトしていて、たまにイベントをやっていました。キセルやグッドラックヘイワがNGで仕方なく在日ファンクに声をかけた記憶が、、、
結果ここでSOLD OUTしたので、翌年リリースしたレコ発を手伝うことになりました。レコ発の話のついでに今の浜野奥さんとの恋愛相談などを受けた記憶があります。

川副 学生時代にお手伝いをしていたEaselというインディーレーベルでイベントを打つことになって。仲がよかったneco眠るを東京に呼ぶにあたって、彼らの音楽はカクバリズムの音楽とシンクロするかなと思ったから、キセルに声をかけたらスケジュール的にダメで、グッドラックヘイワも難しくて、じゃあもう無理かなあと思ってたときに……。

浜野 ……それは知らなかったなあ……。

川副 初めて言いましたよ(笑)。角張さん(カクバリズム社長)に「ハマケンが面白いバンドをやってるよ」って浜野さんを紹介してもらったんです。そのときに、まだそんなにライブもしてないしCDも出してないのにいきなり「出演料は10万で」って言われて。

浜野 違う違う違う、5万だよ5万。いや、その最初にかかってきたのがすげー暗い電話で。暗くて信用おけない感じのしゃべり方のやつから電話がかかってきたから、だまされちゃいけないと思って「やるのはいいけど決まってるギャラがあるから、5万円はちゃんと払ってくれ」って。

──きっかけは妥協案だったかもしれないけど(笑)、そこで在日ファンクを気に入ったからこそ、今の関係に至っているわけですよね。

川副耕介

川副 まあそうですね。僕はファンクに全然興味なかったんですけど(笑)、なんか面白いなって。単純にそういう音楽を目の当たりにしたのが初めてだったのもあって。それから仲良くしているうちに、アルバムリリースするからレコ発イベント手伝ってよって声をかけられて。

──年表には「レコ発の話のついでに今の浜野奥さんとの恋愛相談などを受けた」とありますが?

浜野 俺は警戒はするんだけど、仲良くなったとたんに「家に泊まりに来い」みたいな(笑)。俺がハッシュドビーフ作ってあげたりとか。

川副 浜野さんが台所でトントンしてる間、僕はマンガを読んで待ってる(笑)。

──じゃあアルバムツアーを経て正式にスタッフとして参加するまでは、むしろ友達関係のような。

浜野 そうですね。でもそのツアーのチケットがあまり売れてなくて、このままだとCDを発売したんだかしてないんだかわかんない状態になるんじゃないですかね、ってすげえ暗い話をされて凹んだ覚えがあるんだよね。

川副 そうやっていろいろ話すようになって「メールの返信とかも早いし、正式に手伝ってよ」って言われた記憶があります。就活も終わってて就職先も決まってたんですけど、音楽には関わっていたかったし、バンドメンバーにもサラリーマンがいるし基本土日しか活動できないのがわかってたから、手伝える範囲なら手伝いますよと。

メジャー1stアルバム「笑うな」 / 2014年9月3日発売 / 日本コロムビア
在日ファンク「笑うな」
初回限定盤 [CD+DVD] 3780円 / COZP-964~5 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3024円 / COCP-38724 / Amazon.co.jp
アナログ盤 3456円 / COJA-9280 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. 大イントロ
  2. 根にもってます
  3. ちっちゃい
  4. 不甲斐ない
  5. パラシュート
  6. 恥ずかしい
  7. 断固すいません
  8. 産むマシーン
  9. 笑うな
  10. 百年
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「根にもってます」Short Movie(監督:萩原健太郎)、Making Movie
  • 「在日ファンク【所信表明】コメント」Long Version(監督:山岸聖太)

※メンバーによるオーディオコメンタリー付き

アナログ盤収録曲
SIDE A
  1. 大イントロ
  2. 百年
  3. 根にもってます
  4. 不甲斐ない
SIDE B
  1. ちっちゃい
  2. 産むマシーン
  3. パラシュート
  4. 恥ずかしい
  5. 断固すいません
  6. 笑うな
在日ファンク「笑うな」発売記念ツアー
  • 2014年10月4日(土)福岡県 BEAT STATION
  • 2014年10月5日(日)広島県 ナミキジャンクション
  • 2014年10月12日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2014年10月13日(月・祝)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2014年10月18日(土)香川県 DIME
  • 2014年10月19日(日)京都府 KYOTO MUSE
  • 2014年10月25日(土)長野県 ALECX
  • 2014年10月26日(日)石川県 Kanazawa AZ
  • 2014年11月1日(土)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
  • 2014年11月2日(日)新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE
  • 2014年11月8日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年11月9日(日)秋田県 Club SWINDLE
  • 2014年11月14日(金)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2014年11月16日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
在日ファンク(ザイニチファンク)

在日ファンク

浜野謙太(Vo)を中心に2007年に結成された7人組のファンクバンド。メンバーはハマケンのほかに、村上啓太(B)、仰木亮彦(G)、永田真毅(Dr)、後関好宏(Sa)、ジェントル久保田(Tb)、村上基(Tp)。結成当初は「浜野謙太と在日ファンク」名義で活動していたが、2010年6月に1stアルバム「在日ファンク」をリリースしたタイミングで現在のバンド名に改名した。さらに同年10月からサイトウ“JxJx”ジュン、サイプレス上野とロベルト吉野、ROY(THE BAWDIES)らとのコラボシングルを3カ月連続で発表。2011年には2ndアルバム「爆弾こわい」をリリースし、翌2012年1月にはシングル「爆弾こわい -岡村靖幸REMIX-」が発売された。2014年6月には日本コロムビアからメジャーデビューすることを発表。9月にメジャー第1弾作品となる3rdフルアルバム「笑うな」をリリースし、10~11月には全国14都市を回る「笑うな」発売記念ツアーを行う。