YOUR SONG IS GOOD|“10秒の先”目指して駆け抜けた20年を振り返る

いつでも「ちょうどいい」感じを目指して

「YSIG 20TH ジャケットコラージュ04」

──僕は、今回の「Sessions」を初めて聴いたときに、1stミニアルバム「COME ON」をなんとなく思い浮かべたんですよね。

JxJxモーリス ああー。

──音の質感もそうだし、ライブで受ける印象とはまた違った感じのテンションというか。

モーリス 確かにそういう感じはあるかもしれないですね。ちょっと細かい話をすると、ライブ的なこともパッケージしたい、だけど録音物としてもきっちりさせたいみたいなところで、実際にライブでやってるときよりも若干テンポを下げたりした曲もあるんです。「COME ON」のレコーディングが、まさにそういう感じだったんですよね。結果「思ったより遅いね」って、いろんな人に言われたんですけど(笑)。

JxJx はははは。そうだった!

モーリス だから通じる感覚はあるかもしれないですね。

──かつてのYOUR SONG IS GOODのライブって、熱さがみなぎるイメージがあったし、実際今でもそういう部分はあると思うんです。だけど、ここ数年のユアソンには、あえて熱を抑えたことによって生まれる、すごみみたいなものがあるというか。今回の作品にもそれを強く感じて。

JxJx 「OUT」以降なんですけど、とにかくタイムレスなサウンドにしたいという気持ちがあって。これもダンスミュージックからの影響なんですけど。ダンスミュージックって、ずっと古くならないなと感じていて。ハウスとかディスコリエディットものとか、特にそう思うんですよね。いわゆるポップスとかロックの作品って、その時代の瞬間のきらめきみたいなものがすごく込められているんだけど、数年後に聴くと、「今はちょっと違うかな」とか思っちゃうこともあって、そこが面白いところなんですが、ダンスミュージックは別の時間軸にあると言いますか。いつ聴いても常にいい感じなんですよね。それがずっと謎だなと思っているんですが、その要因って、絶妙なテンションの設定や目的がシンプルなことが関係しているんじゃないかという答えにたどり着いたんです。聴かせたいポイントがハッキリしていて、とにかく機能的。そのよさを自分たちのバンドにも持ち込めないかなと思って。

──なるほど。

左からヨシザワ“モーリス”マサトモ(G)、サイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)。

JxJx これまでいろいろやり散らかしてきたからか、なんかそんな感じで、とにかくすごくしっくりくるんですよね。で、何回も言っちゃいますがタイムレスな、いつ聴いても自然に聴ける、ずっといい感じ……「いい感じ」または、「ちょうどいい」という表現が近いのかな? 「ちょうどいい」感じを目指したいな、追求したいなという気持ちが、ここ数年あります。この感覚で、昔の曲をうまく表現してあげたら、ちゃんと地続きになるんじゃないか、そういう観点で既存曲を調理していった感じですね、はい。

──「ちょうどいい」感じ、わかります(笑)。

JxJx で、そうなると、そもそもYOUR SONG IS GOODは、ずっとダンスミュージックをやってきたじゃないか、という感覚にもなるんですよね。そこで、過去の曲のおいしいところをちゃんと見極めて調理してあげれば、これから作っていく新曲と昔の曲がきっと共存できるはず、ということで、こんな感じになりました。

──例えば「Super Soul Meetin'」の最初のバージョンは突っ込んで跳ねていくような感じだったけど、今作に収録されたアレンジは、安定したビート感が強調されていて、それはやっぱり四つ打ちのダンスミュージックを経由したアレンジの妙だったりするのかなと思いますし。今のユアソンだからできることというのが、作品の随所から感じられる。

JxJx それはうれしいです。今回レコーディングするにあたって、かなりアイデアの整理をしたんですよね。昔の曲っていうのは、とにかくアイデア重視で(笑)。技術がないなら、そのことを違う面白さに転じてやろうという感覚だったんですけど。2000年代前半の曲は、とにかくドラムブレイクばっかりやってて笑いました(笑)。

過去と現在が歩み寄っている感覚

──あと、今回のアルバムを聴いて、改めて「Mood Mood」はすごい曲だなと思いました。いわゆる長尺のダンスミュージックの、同じビートや同じフレーズがずっと続いていく快感とは、またちょっと違って。同じように長尺の曲なんだけど、10分弱の中でのアイデアの詰め込み方とか、展開のさせ方が尋常じゃない。冒頭で話していた、SCHOOL JACKETSの頃のような、いろんなアイデアをどんどん試していったような感覚を、今の演奏技術とセンスで1曲の中に凝縮したような印象を受けたんです。ある種、組曲みたいな感じというか。今回のアレンジで聴くと、それがより伝わってきて。ただ心地よい音を単調に繰り返すだけでは、きっと飽きちゃうような人たちなんだなと思いました(笑)。

JxJx はははは。「Mood Mood」もライブでやりながら、だんだんと今回収録したアレンジになっていったんですよ。だからバンド的なアイデアが入ってるのかもしれないですね。原曲はいわゆるダンスミュージックに寄った感じですけど、そこからもうちょっとバンドのエッセンスが入ってきてるかもしれない。でも、ほかの曲もそうか、最近の曲は。

ヨシザワ“モーリス”マサトモ(G)

モーリス そうだね。ダンスミュージック的な発想で作った曲に徐々にバンドならではのノリが入り込んでる感じはあるかも。

JxJx 過去と現在が歩み寄ってる感じがするということですね。

──あとは、オリジナルメンバーに加えて、パーカッションの松井泉くんと、サックスのゴセッキー(後関好宏)がサポートメンバーに加わって、表現の広がりが生まれたところもあるんじゃないですか?

モーリス それは大きいですね。例えば「Super Soul Meetin'」なんかは、ワンホーンじゃできない面白さはありますよね。

JxJx 昔は固定のメンバーにこだわっていたんですけど、そういうのもなくなって、今はいい感じに、いろんな人の力を貸していただいて。ありがたいなと思います。

──「Sessions」というスタイルの作品は、今後も続けて出していくんですか?

JxJx これはバンド内では、1つの発明だなというのがあって。ある種、アウトプットを絞ったことによって、自由度が増したんじゃないかと思うんです。昔の曲とも、うまく付き合う方法を見つけられたところがあるんで。第2弾、3弾と出したいですね。

──外部のアーティストが参加して一緒にセッションする可能性も?

JxJx 全然アリです。人数が増えていくのも面白いですよね。

──ゆくゆくはサン・ラ・アーケストラみたいな、ものすごい大人数になったり(笑)。

JxJx もう全然アリです(笑)。そういうことを面白がれるぐらいに、今、バンドが自由な感じになってるので。

──では最後に、4月に行われるひさびさの野音ワンマンライブはどんなものに?

サイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)

JxJx 20周年なんですけど、バンドが今とにかくいい感じなんですよね。自分たちのライブを観てもらいたい気持ちが、今は結成以来一番強いんです。本当にいろんな人に観てほしい。内容的には、昔の曲もいっぱいやりますし、新曲もやりたいなと思っていて。バンドとしての最新のモードを伝えられたら。そういう気持ちがありつつ、昔の僕らのことを見てもらっていた人にも、ちゃんと接続可能な仕上がりにしたいなと考えています。

モーリス 今までだったら「あの曲はなかなか引っ張り出せないよな」みたいな昔の曲もセットリストに組み込める可能性を今は感じていて。ずっと雑食を続けてきたことによって、胃袋が大きくなったというか、懐が深くなったというか。いろんなことがうまく表現できるようになった、いいタイミングで20周年を迎えた今だからこそ、いろんな人にライブを観てほしいですね。

JxJx まさに今、バンドも本当に「ちょうどいい」感じなんですよ!

ライブ情報

YOUR SONG IS GOOD presents "SOFT LANDING" - 20th Anniversary Oneman Live Show at 日比谷野外大音楽堂 -
  • 2019年4月21日(日)東京都 日比谷野外大音楽堂