YOUR SONG IS GOODが3月6日にニューアルバム「Sessions」をリリースした。
結成20周年を記念してリリースされた本作には、オリジナルメンバー6人に松井泉(Per)、後関好宏(Sax, Flute)を加えた8人が、ユアソン初期の代表曲から最新曲までを一発録りした全10曲を収録。セッション形式で全曲を1日で録り終えたという、まさにバンドの“今”を真空パックしたかのような作品に仕上がっている。
音楽ナタリーでは本作のリリースを記念して、メンバーのサイトウ“JxJx”ジュン(Organ, Vo)とヨシザワ“モーリス”マサトモ(G)にインタビューを行い結成からこれまでの20年を振り返ってもらった。なおヘッダーおよび文中のコラージュビジュアルはイラストレーターとしても活躍するモーリスの手によるもの。バンドの歴史をテーマにした彼のアートワークと共にテキストを楽しんでほしい。
取材・文 / 宮内健 インタビューカット撮影 / 臼杵成晃
ヘッダー&文中コラージュ / ヨシザワ“モーリス”マサトモ(YOUR SONG IS GOOD)
ユアソン結成前夜
──ジュンくんとモーリスくんは、武蔵野美術大学基礎デザイン学科の同級生として出会ったんですよね。当時の印象は?
JxJx モーリスは3浪とか4浪とかして入ってきた、絵がめちゃくちゃうまい人っていうイメージでした(笑)。大人っぽく見えたんですね、たぶん。
モーリス そう、老けてたんです(笑)。俺のジュンくんの印象は、受験のときか入学式のときか忘れたけど、大学からの帰り道、自分の前を彼が歩いてたんですよ。そのときのしゃべってる声がすごく大きくて(笑)。
JxJx ははははは! 声が大きいって(笑)。
モーリス で、学校生活が始まったら「あ、あの人、同じ学科の人なんだ!」って。当時から、めちゃくちゃ格好もおしゃれで垢ぬけて見えました。
──そこから接近していったきっかけは?
JxJx YOUR SONG IS GOODの初代ベーシストだったマツムラタケオくんも同じ学校に通ってて。モーリスとタケオが同じクラスで、すごく仲がよかったんです。それで、音楽好き同士ということで、僕も仲良くなったんですよね。大きな共通項としてはパンクがあるんですけど、モーリスに関しては、どんな音楽にも詳しくて。で、僕もどちらかというと、いろんな音楽を聴くタイプだったので「この人、本当に音楽が好きなんだな」と。そこで仲良くなっていった気がします。
モーリス 確かにそうかも。ジュンくんとはソウルの話とかよくしましたね。当時だとサイマンデとか……。
JxJx サイマンデ!(笑) 懐かしい! 最高! 確かにそのへんのレアグルーヴの話とかよくしてた。あとはスカの話とかね。
モーリス うんうん。とにかく、いろんな音楽の話をした記憶がありますね。
JxJx それから僕は、大学在籍中にFRUITYっていうバンドを始めて。モーリスも何かやってたよね?
モーリス マツムラと、高校の同級生だったシライシ(コウジ / YOUR SONG IS GOODのギタリスト)たちと、遊びで短期間だけどバンドをやってたんですよ。シライシは、もともと部活が一緒で、映画研究部っていうんですけど(笑)。それで、お互いの家を行き来してビデオを観たり一緒にギターを弾いたり、ずっとツルんでる仲間だったんです。それでマツムラとシライシと一緒に、FRUITYを観に行って。
JxJx あれは高円寺20000Vでやった2回目のライブだったかな。
モーリス その刺激を受けて、「また、ちゃんとスタジオでも入ろうか?」みたいな感じになって、NUTS&MILKってバンドをスタートさせたんです。
──ジュンくんはNUTS&MILKのライブを初期の頃から観てたんですか?
JxJx 観てます。面白かったです(笑)。NUTS&MILKでは、モーリスがボーカリストだったんですけど、最初は違う人が歌ってて……。
モーリス それが、YOUR SONG IS GOODのドラマーの、レイジくん(タナカ“ズィ~レイ”レイジ)なんですけど(笑)。
──そうだったんですね!
モーリス NUTS&MILKを結成した頃、リハーサル音源をジュンくんに聴かせたら、「ボーカルの声が低すぎる」ってね(笑)。
JxJx それで、「モーリスをボーカルにしたほうがいいんじゃない?」と言った記憶があります。
──ジュンくんは、その当時からプロデューサー気質を発揮していたという。メンバーでもないのに(笑)。
JxJx でした、今にして思えば(笑)。
モーリス 僕は最初ドラムを叩いてたんですけど、レイジくんとパートチェンジして。僕はボーカル経験ないし、レイジくんもドラムを叩いたことがない。だから最初は大変でしたね。
──レイジくんはまったくのドラム未経験から、今もなおYOUR SONG IS GOODのグルーヴを支えてるわけですから、そう考えたらすごいですよね。
JxJx 本当にそうですよね(笑)。
「いい雰囲気」の10秒を全力投球
──そうして、FRUITYとNUTS&MILKが接近して、YOUR SONG IS GOODの前身バンドであるSCHOOL JACKETSが生まれたわけですね。
モーリス NUTS&MILKにジュンくんが加わって。互いのバンドとは別に、ロックステディのバンドをやろうということで、僕とジュンくんの間で盛り上がったんですよ。
JxJx いろいろ思い出すなあ(笑)。パンクバンド同士だったんですけど、もうちょっと違う音楽をやってみようかと。おそろいのスタジャンを着たロックステディバンドをやりたくて。当時、僕もモーリスもスタジャンをよく着てたんですよ。
モーリス だから最初はスタジアムジャンパーズっていう名前を付けて。
JxJx イナたい名前だった(笑)。だけど、「スタジアムジャンパーって和製英語じゃないか?」という話になって、正式名称を調べたら「スクールジャケット」だということが判明して。そこでSCHOOL JACKETSというバンドがスタートしたんです。
──最初は完全にサイドプロジェクトみたいな感じでスタートしたんですね。
JxJx そうですね。ただ、ロックステディをうまくできなかったんですよね。圧倒的に演奏技術が足りなくて(笑)。だから違うアイデアを試そうということになったんです。
モーリス 「いい雰囲気の曲をやりたい」と思ってるんですけど、その「いい雰囲気」というのが、ちゃんとした構造の1曲分もたないんですよ。いかんせん演奏技術がないから。そこを勢いで押し切るっていう。「いい雰囲気」の10秒ぐらいを全力投球で表現する感じでしたね(笑)。
JxJx で、それって、いわゆるファストコアみたいだなと思って。そのフォーマットに、いろんな音楽の要素をぶち込むようなスタイルで、ジングルみたいな短い曲を全力で演奏するっていうアイデアが生まれました。
──そういったスタイルで、いろんなタイプの曲を大量に作ったことで、現在のYOUR SONG IS GOODに通じる土台ができていったようなところもある?
モーリス あるかもしれない。ファストコア的なスタイルではあるけど、そこに入れるアイデアというのは、果てしなくオールジャンルな感じで。あの当時、だいたい40曲ぐらい作ったのかな? とにかく、いろんな曲を次々に作るのが楽しくて。あの感覚は、確かにYOUR SONG IS GOODになってからも続いてる気がしますね。楽しんでる感じというのは、今もずっと変わってないのかな。
JxJx でも、SCHOOL JACKETSは、やはりアイデアありきみたいなところがあったので、矢継ぎ早に40曲も作ってしまったがゆえに、思ったより早く限界が来て(笑)。だんだん、10秒から先の世界に興味が向いてきたんですよね。たまたま3分ぐらいの、普通の尺の曲をやってみたら、とにかく新鮮で。たぶん半年間、10秒ぐらいの曲しかやってないから変な体になってただけなんですけどね(笑)。
──完全に短距離走者の体になっていた(笑)。そんなバンドをやっていた人たちが、今や10分くらいの長尺の曲を普通にやっているという。
JxJx 確かに(笑)。あと、僕個人の話ですが、FRUITYがアメリカツアーで崩壊してしまって、SCHOOL JACKETSの面々と一緒にこの先何かできそうかもなと思ったところはありました。それで夜な夜なモーリスに電話で相談した記憶がありますね。
モーリス 僕はNUTS&MILKとSCHOOL JACKETSを掛け持ちしてたんですけど、ジュンくんがそういう状況にあったということで、だったらNUTS&MILKがなくても、ここで全員で一緒にできるじゃんということになって。そこでFRUITYとほぼ同時期に、NUTS&MILKも解散して、バンドを一本化したのが、YOUR SONG IS GOODだったんです。
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