ナタリー PowerPush - 吉澤嘉代子

ひとりぼっちの魔女が紡ぐラブリーな歌

インディーズミニアルバム「魔女図鑑」が大きな話題を集めたシンガーソングライター吉澤嘉代子が、ミニアルバム「変身少女」でメジャーデビューを果たした。

デビュー作には1950~60年代の歌謡ポップスや、大瀧詠一のナイアガラサウンドを彷彿とさせるポップス6編が並ぶ。1990年代生まれの彼女が、いかにしてこのような音楽性にたどり着いたのか。ナタリーでは捉えどころのない“変身少女”の本当の姿を紐解くべくインタビューを行った。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 上山陽介

 
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吉澤陽水と魔女の小屋

吉澤嘉代子

──最初に音楽に興味を持ったときのことを覚えていますか?

父が井上陽水さんが大好きで、大学生の頃から……今もなんですけど、30年ぐらい陽水さんのモノマネをしていて。

──モノマネ芸人ではなく、プライベートでモノマネを?

近所ののど自慢に出たりとか、近所の友達が来たときに「お元気ですか?」って出てくるような、そういうお父さんで。

──町で有名な陽水おじさん(笑)。

はい。「吉澤陽水」と呼ばれていて(笑)。なので私も小さな頃から陽水さんの歌を聴いていて、歌を歌った一番古い記憶は陽水さんの「白いカーネーション」です。

──ディープな陽水マニアに育てられて、そのまま影響を受けたと。プロフィールには「埼玉県川口市の鋳物工場街育ち」とありますが、ずっと工場のある家で育った?

実家が金型をやっていて、おじいちゃんの代からやっている工場だったんです。でも私が生まれた頃には工場はほとんどつぶれてしまっていて、私の家の工場も私が小学校低学年の頃に廃業してしまったんですけど。ただ工場だけ残っていて、そこの屋上にある掘建て小屋を私の部屋にしていたんです。おばあちゃんに黒くて長いスカートをもらって、お年玉で買ったホウキとトランクに詰めたおやつを持って、飼っていた犬を連れて、そこで本を読んだり犬に話しかけたりしながら魔女修行をしていました。

──1人っ子ですか?

弟がいるんですけど……弟は生まれてからずっと近所の人に「100万ドルの笑顔」って言われてたんですけど、幼稚園に入ってからグレてしまって、まったく笑わなくなっちゃったんですね(笑)。ずっと何があってもニコニコしてたんですけど、たぶん彼もそれを演じるのがつらかったんでしょうね。姉が破天荒だったので自由ができなかったのか、ずっといい子を演じていたんです。でも幼稚園に入ってから変わってしまって。幼稚園の制服はすごくかわいいのに、何を言っても悪態しかつかなくなってしまって。なのでそれからはずっと距離感がありました。1人で屋上の小屋にいる時間が長かったです。

──1人の世界に入り込める離れの部屋があるというのは、育つ環境としてすごく大きいですよね。今につながる自分のルーツを掘り下げると、そこでの“魔女修行”につながる?

そうですね。幼稚園の頃からヘンな歌みたいなものを作っていて、みんなの前で歌ったり踊ったりするのは好きだったんですけど、小学3年生のときに女の子特有の社会にうまく溶け込めなくて、かなり萎縮した子になっちゃったんですよね……。

工場とのお別れ、魔女修行の終わり

──小学3年生で壁にぶつかるまでは社交的だった?

はい。でももともとおしゃべりは苦手で、おしゃべりがうまくまとまらなくて癇癪を起こすみたいな子供だったので(笑)。小さな頃はそれでもみんなと活発に遊べてたんですけど、3年生の頃にはだんだん周りとうまくいかなくなって、学校に行けなくなっちゃって。5年生の頃にちょっと引っ越したんです。1丁目から3丁目に。

──ずいぶん近距離の移動ですね(笑)。

工場から離れるみたいな感じだったんですけど、それが自分の中ではすごく大きくて。あの小屋がなければ私は魔女修行ができないということで、最後に愛用していたスティックを工場に置いて出ていきました。工場はそのあと取り壊されて、今はもうなくなっちゃったんですけど。そこで私の魔女修行は終わりました。その頃から学校にまったく行かなくなって、中学では授業を1回しか受けたことがないんです。代わりにフリースクールみたいなところに通っていました。

──フリースクールってどんなことをするんですか?

バドミントンとか卓球を……。あとは週に1回お料理をしてました。

──そこでは人間関係はうまくやれたんですか? ディスコミュニケーションな人にはバドミントンも卓球もハードル高いですよね。必ず相手が必要だし。

うふふ(笑)。そこではコミュニケーション取れました。みんなヘンな子だったので。

──道を踏み違えた者同士で(笑)。

傷付きやすい同士が集まってぶつかったりする中で、1人、親友と呼べる女の子ができたんです。その子といろいろお話をしながら中学の時代を終えましたね。

──なぜその子とは波長が合ったんですか?

うーん、なんですかね。学校に行ってない者同士の何かがあるんですよ。学校に行ってないとそれだけで自分を全否定してしまう。子供にとっては学校での生活が自分の世界のほぼ100%を占めているじゃないですか。だから自分のことが非国民のような気がしてくるし、外を出歩いちゃいけない、人目に付いてはいけないって思っちゃうんです。そんな中で私たちは秘密を共有している仲間というか、結びつきが強くなったんだと思います。

ピアノにはシールが貼ってあるもの

──中学は最後までまったく行かなかったんですか?

小学校の卒業式は出られなくて親に悲しい思いをさせてしまったので、中学の卒業式は出なくちゃいけないと思って、卒業式の予行演習がある1週間だけは行ったんです。……それがものすごく苦痛で。みんな「あれが噂の吉澤か」みたいな感じで見てくるし、私以外はみんな3年間で思い出ぎっしりなわけですよ。卒業式当日はみんなボロボロ泣いてて、私だけどうしようという感じで……本当につらい1週間だったんですけど、そんなときにサンボマスターさんの音楽に出会ったんです。

──ようやくここで初めて井上陽水以外の音楽が出てきました(笑)。それは何がきっかけで?

「電車男」が流行っていた頃で、「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を聴いたんです。「あなたのために歌うのが これ程怖いモノだとは」という歌詞が、なんだか私自身に向けて歌われているような気がして。それでアルバムを聴いたら、山口(隆)さんは絶対に私のことを知らないはずだけど、これは絶対に私めがけて歌っているということがわかって。卒業式までの1週間はすごくつらかったけど、サンボマスターを心の恋人だと思い込んで乗り切ることができたんです。そのあと通信制の高校に入ったときに、音楽がやりたいと思って軽音部に入ったんです。

──サンボマスターのような曲が作りたいという衝動から始めたんですか?

最初はコピーもしたんですけど、声質が合わなくて断念して。

──にしても唐突ですよね。それまで音楽=井上陽水みたいなお父さんの聴いている歌だったのが(笑)、サンボマスター聴いていきなりバンドを組んでボーカルをやるというのは。

あははは(笑)。もちろん宇多田ヒカルさんとか山崎まさよしさん、矢井田瞳さんとか、テレビで流れている音楽は好きで聴いていたんですけど、サンボマスターさんを聴いてからは「自分でも歌いたい」って思うようになって。

──楽器経験はあったんですか?

小さな頃はピアノを習ってたんです。でも発表会のときにドの音がわからなくて断念しました(笑)。レッスンしているピアノにはドのところにシールが貼ってあったんです。ピアノはシールが貼ってあるものだと思ってたのに、発表会のピアノにはなかったから。ドの場所がわからなくて頭が真っ白になって、先生に「嘉代ちゃん、ドはここだよ」って教えてもらったのが屈辱的すぎて。「弾けるのに! ドの場所がわからないだけなのに!」って。私には楽器はできないってそこで諦めてたんです。

──それがサンボマスターによってひっくり返されたと。軽音楽部である以上バンドの人間関係は必須ですが、そこはクリアできた?

それが大変で(笑)。コピーをやったときに自分の言葉じゃない曲を歌うことに違和感があって、曲を作るようになったんですけど、自分の曲をやるにもギターが弾けなかったので、ギターの女の子に鼻歌で伝えてコードを付けてもらったりして。でもみんな素人だから私1人だけ暴走してしまって、私だけすごくやる気がありすぎる状態になってしまったんですね。バンドは大学1年生までやってたんですけど、みんなは就職を目的に進路を選んで、私は歌詞を勉強したくて文学部に入ったんです。私だけ気持ちが違いすぎて、結局1人でやることになって。

デビューミニアルバム「変身少女」2014年5月14日発売 / 1800円 / e-stretch RECORDS / CRCP-40373
収録曲
  1. 美少女
  2. チョベリグ
  3. ラブラブ
  4. きらい
  5. 涙のイヤリング
  6. ひゅるリメンバー
CD購入者イベント ミニライブ&サイン会
  • 2014年5月14日(水)東京都 タワーレコード池袋店 6F特設イベントスペース
    OPEN 18:30 / START 19:00
    ※発売日特別記念としてサイン会時に2ショットチェキを撮影しプレゼント。
  • 2014年5月16日(金)東京都 タワーレコード秋葉原店
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2014年5月18日(日)東京都 タワーレコード渋谷店 1Fイベントスペース
    START 14:00
  • 2014年5月24日(土)大阪府 タワーレコードあべのHoop店(あべのHoop 1F オ-プンエアプラザ)
    OPEN 12:30 / START 13:00
  • 2014年5月24日(土)大阪府 ダイエー京橋店センターコート
    START 17:00
  • 2014年5月25日(日)兵庫県 タワーレコード神戸店
    OPEN 12:30 / START 13:00
  • 2014年5月25日(日)京都府 タワーレコード京都店
    OPEN 16:30 / START 17:00
  • 2014年5月31日(土)福岡県 タワーレコード福岡店 3Fイベントスペース
    OPEN 12:30 / START 13:00
  • 2014年5月31日(土)広島県 HMV広島本通店
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2014年6月1日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
    START 12:00
  • 2014年6月1日(日)東京都 dues新宿(diskunion全店対象購入者イベント)
    OPEN 18:45 / START 19:00
吉澤嘉代子デビューAL「変身少女」リリースパーティー ~嘉代子、メタモルフォーゼ!~
  • 2014年6月15日(日)東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
    OPEN 17:15 / START 18:00
Ustream番組「吉澤嘉代子の変身少女TV」第2回
吉澤嘉代子(ヨシザワカヨコ)
吉澤嘉代子

1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街で育ち、16歳から作詞作曲を始める。2010年11月にヤマハ主催のコンテスト「"The 4th Music Revolution" JAPAN FINAL」に出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2013年6月にインディーズ1stミニアルバム「魔女図鑑」でCDデビューを果たす。同年11月には東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて初のワンマンライブ「吉澤嘉代子 ファーストワンマンショウ ~夢で逢えたってしょうがないでSHOW~」を開催。翌12月より「魔女、旅に出る。」と銘打ったライブハウスツアーで各地を回っている。日本クラウン、ヤマハミュージックアーティスト、ヤマハミュージックパブリッシングの3社が合同で設立した新レーベル「e-stretch RECORDS」の第1弾アーティストとして、2014年5月にミニアルバム「変身少女」でメジャーデビュー。