ナタリー PowerPush - 吉澤嘉代子

ひとりぼっちの魔女が紡ぐラブリーな歌

音楽人生の窓口になるようなサウンドを

──自身の音楽のスタイルとして、まずその歌声、歌唱法はどうやって見つけたんですか? インディーズミニアルバム「魔女図鑑」の時点で歌声も楽曲の世界観もすでに完成しているように感じたんですけど。

どうなんですかね? 徐々にできていった感じですけど……。

──「魔女図鑑」と今回のメジャーデビュー作「変身少女」を聴くと、1960年代やそれ以前の歌謡曲、オールディーズや和製ポップスだったり、大瀧詠一さんがプロデュースする女性アーティストからの影響が想像できるものの、ここまで出てきたのは主に井上陽水とサンボマスターですよね(笑)。

うふふふ(笑)。歌声は高校生のときの曲を聴き返すとすごく変わっていて。ただ単にみんなに愛されたくて変わったんだと思います。

──愛されたくて(笑)。

愛されたい気持ちが爆発してこういう歌い方になったとしか思えないんです(笑)。4年前に今のディレクターと会ったときに「メロディが大瀧詠一みたいだね」って言われて。

──最初に聴いた印象で、これはすごく掘り下げているマニアか、まったくの天然かどちらかだと予想してたんですけど、後者だったんですね(笑)。

はい(笑)。私はそのとき大瀧さんのことを知らなかったんですけど、ディレクターにいろんな音源を聴かせてもらったときに、大瀧さんのメロディも松本隆さんの歌詞も自分にしっくりきて、そこから雪村いづみさんとか昔の音楽を聴くようになりました。歌謡曲やオールディーズ、ドゥワップとか。

──まさに雪村いづみ、奥村チヨ、江利チエミといった名前が例に挙がるような音楽性だと思うんです。そこはディレクターの目利きというか、吉澤さんの声や楽曲にその匂いを嗅ぎ取って。

そうですね。それまでは歌詞もすごく散文的で、あまり意味がわからないものが多かったんですけど、歌謡曲の伝わりやすい優しい言葉がギュッと短く詰まっているのが魅力的だなと感じて、そこから音楽の志向も変わっていきました。歌謡曲やオールディーズみたいなサウンドは、ユーモアのある、ひょうきんな言葉が乗せやすいんです。今回のアルバムもそうですけど、こういうかわいいサウンドがヘンテコな歌詞とマッチしているような気がして、自分と相性がいいのかなって。メジャーデビューするにあたって、自分の一番の武器になるのはラブリーポップスなんじゃないかなと思ってこういう作品にしたんですけど、これを一生やり続けたいわけではないんです。初めてメジャーで音楽を出す、自分でこれからの音楽人生のレールを敷いたときに窓口になるようなサウンドを集めたのが今回のアルバムで。

──「チョベリグ」みたいな高度な50'sシミュレーションサウンドもあるけど、同時に90年代生まれの女の子がごく自然に奏でた2010年代の音楽という印象もあるんですよ。だからこそマニアか天然かどっちかだと感じたんです。「和製ポップスの再来!」みたいな見え方はキャッチーだと思うけど、本人はそのあたりをどう考えているのかなと。

曲を作る上ではあんまり考えてないですね。私の中では言葉に重点を置いていて、メロディはそれに合うもの、という考え方なので。

浮世離れが生んだ語感

吉澤嘉代子「美少女」MV

──1曲目の「美少女」はまさに大瀧詠一のナイアガラサウンドを思わせるアレンジで、伊集加代さんのコーラスも大瀧楽曲のそれを彷彿とさせる雰囲気で。ディレクターが吉澤さんに感じた「大瀧詠一っぽさ」を極端にブーストさせたのがこの曲なのかなと。

オマージュがいっぱい入ってると思うんですけど、基本的にプロデューサーにお任せですね。

──ちなみにサウンドプロデューサーの石崎光さんがクレジットでは「石崎光子」になってますけど、これは?

この曲は女性で固めたかったので(笑)。

──光子になってもらわざるを得なかった(笑)。

エンジニアさんも木内智子になってます(笑)。「美少女」はラブソングと見せかけたモラトリアムな曲で、「恋がしたい」というのは直接的な恋じゃなくて、何か夢中になれるものを見つけたいっていう曲なんです。音楽を始める前の自分の歌。でも直接そういうことを歌うよりも恋愛ソングにしたほうがみんな喜んでくれるので、その中で自分なりの表現や言葉遊びをしてみました。

──次の「チョベリグ」は一転して、ひたすらうれしくなって側転してる子の話ですけど(笑)。

「チョベリグ」は……なんにも考えてない……。

──ひたすら楽しいだけの歌。

いや、楽しいとも思わなくて(笑)。これでいいのかなってずっと思いながら作ってましたね。

──無感情でこれ!? でも確かに、すごく楽しそうにしゃくり上げて歌ってるのに、なぜかすごく虚無的なんですよね(笑)。サウンドはコニー・フランシスみたいなオールディーズ感満載で、各楽器を極端に左右振り分けてドラムのマイクも少なくしてみたいな直球のオマージュ曲だけど、歌詞の雰囲気も漣健児の訳詞のムードをきちんと継承しているように感じます。さっき「ひょうきん」とか「ヘンテコ」って言葉が出てきたときも思いましたけど、わりと天然で古い語感を持った人なのかなと(笑)。

教育を受けるべきときに集団生活の輪に入っていなかったので、浮世離れしたところはあるんじゃないかってディレクターには言われました。私としてはできるだけみんなと同じように生きていきたいんですけど……。

──あははははは(笑)。吉澤さんの世代だとおそらく、SPEEDに憧れたり、モーニング娘。で盛り上がったりというあたりが共通の話題だったんだと思いますけど……。

全然わからないですね……。

デビューミニアルバム「変身少女」2014年5月14日発売 / 1800円 / e-stretch RECORDS / CRCP-40373
収録曲
  1. 美少女
  2. チョベリグ
  3. ラブラブ
  4. きらい
  5. 涙のイヤリング
  6. ひゅるリメンバー
CD購入者イベント ミニライブ&サイン会
  • 2014年5月14日(水)東京都 タワーレコード池袋店 6F特設イベントスペース
    OPEN 18:30 / START 19:00
    ※発売日特別記念としてサイン会時に2ショットチェキを撮影しプレゼント。
  • 2014年5月16日(金)東京都 タワーレコード秋葉原店
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2014年5月18日(日)東京都 タワーレコード渋谷店 1Fイベントスペース
    START 14:00
  • 2014年5月24日(土)大阪府 タワーレコードあべのHoop店(あべのHoop 1F オ-プンエアプラザ)
    OPEN 12:30 / START 13:00
  • 2014年5月24日(土)大阪府 ダイエー京橋店センターコート
    START 17:00
  • 2014年5月25日(日)兵庫県 タワーレコード神戸店
    OPEN 12:30 / START 13:00
  • 2014年5月25日(日)京都府 タワーレコード京都店
    OPEN 16:30 / START 17:00
  • 2014年5月31日(土)福岡県 タワーレコード福岡店 3Fイベントスペース
    OPEN 12:30 / START 13:00
  • 2014年5月31日(土)広島県 HMV広島本通店
    OPEN 17:00 / START 17:30
  • 2014年6月1日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
    START 12:00
  • 2014年6月1日(日)東京都 dues新宿(diskunion全店対象購入者イベント)
    OPEN 18:45 / START 19:00
吉澤嘉代子デビューAL「変身少女」リリースパーティー ~嘉代子、メタモルフォーゼ!~
  • 2014年6月15日(日)東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE
    OPEN 17:15 / START 18:00
Ustream番組「吉澤嘉代子の変身少女TV」第2回
吉澤嘉代子(ヨシザワカヨコ)
吉澤嘉代子

1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街で育ち、16歳から作詞作曲を始める。2010年11月にヤマハ主催のコンテスト「"The 4th Music Revolution" JAPAN FINAL」に出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2013年6月にインディーズ1stミニアルバム「魔女図鑑」でCDデビューを果たす。同年11月には東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて初のワンマンライブ「吉澤嘉代子 ファーストワンマンショウ ~夢で逢えたってしょうがないでSHOW~」を開催。翌12月より「魔女、旅に出る。」と銘打ったライブハウスツアーで各地を回っている。日本クラウン、ヤマハミュージックアーティスト、ヤマハミュージックパブリッシングの3社が合同で設立した新レーベル「e-stretch RECORDS」の第1弾アーティストとして、2014年5月にミニアルバム「変身少女」でメジャーデビュー。