吉澤嘉代子|10個の変化と手放したくないもの

吉澤嘉代子が11月25日にニューシングル「サービスエリア」をリリースした。

2018年11月に発売されたアルバム「女優姉妹」から約2年ぶりの新作となる「サービスエリア」。音楽ナタリーではこの2年の間に30代に突入し、レーベルを移籍し、眼鏡をかけるようになった吉澤にインタビューを実施。大小さまざまな10個の変化と共に、新たな環境で生み出した新作について話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 松永つぐみ

変化130代に突入

──吉澤さんの新作は2018年11月発売の4thアルバム「女優姉妹」以来約2年ぶりです。その間に30歳になったりもしましたが、30歳という節目を吉澤さんはどう捉えていますか?

私はずっと30代と70代が似合うんじゃないかと思っていたんですよ。誰かに言われたわけではないんですけど。

──自分は30代と70代がしっくりくる人間だと。

はい。なので30代になるのはちょっと楽しみでもあったんですけど、実際に30歳を目前にしてみたら、急に「何かしなければいけない」とあせる感覚があって。それも本当に直前だけで、結局何もないまま30歳になりました。

──自分が似合うと思っていた30代の生活は、実際に30歳になってみてどうですか?

まだ熟してないですけど、自分が子供の頃に思い描いていた30歳よりもすごくいいです。

変化2パクチーが食べられるようになった

──ライトな変化では、少し前にTwitterで「パクチーが食べられるようになった」という報告もありました。

そうなんですよ。パクチーとラムとピーマン。この3つが私の苦手な食べ物だったんですけど、急に食べられるようになって。ジンギスカンと焼いたピーマンをパクチーが入ったタレで食べるということもできるようになりました。

──何かきっかけがあったんですか?

去年、香港に行ったのがきっかけなんじゃないかと思っています。女優ツアーが終わった頃かな。休みをもらったので、初めて海外旅行で。香港ではその3つは口にしていないんですけど、異国を感じたことによってなんでも受け入れられるようになったんですよね。極端な性格で。

吉澤嘉代子

変化3初めての海外旅行

──香港は1人旅を?

いえ、友達5人での旅行だったんですけど……空港でパスポートを渡したらスタッフの方に「え!」と驚いた顔で言われて。これはもう、きっと私が何かドジをして1人だけ香港に行けないのかもしれないと、5人全員が思った瞬間だったんですよ。そうしたら「今朝も『ミューズ』を聴いて出勤しました!」って言われて。いつも私の歌を聴いてくださっている方だったんですね。

──さっきまで聴いてた吉澤嘉代子本人が突然目の前に現れて(笑)。

ドキドキしました。そんなこんなで到着した香港だったのですが、街は煌めいているし食事はおいしいし、完全に浮かれた観光客になりました。そして、この景色を歌にしたいなと思いました。

変化4眼鏡をかけるようになった

──吉澤さんが最近SNSにアップされる写真は眼鏡姿が多いですよね。急に視力が落ちたとか、そういうことでしょうか?

いえ、目はずっと悪いんですけど、BUMP OF CHICKENの藤原基央さんが「見えすぎるのが怖いから裸眼でいる」というような発言をされていて、カッコいい!と思って真似していたんです。私も「見えないくらいがちょうどいい」と思って生きてきたんですけど、ライブのときにセットリストが見えなくて曲順を間違えちゃって、急に私が違う曲を歌い始めてバンドがびっくりするみたいな。そういう被害が出始めて……。

──カッコよくいられなくなってきた(笑)。

はい。それでライブ中にコンタクトレンズを使い始めたら、普段の生活でも手放せなくなって。最近はコンタクトの装着が面倒になって眼鏡をかけているんです。

──でも眼鏡も似合っているし、いっそ眼鏡姿を定着させてもいいんじゃないでしょうか。

そうですね。人前に出るときは眼鏡をかけてないから……前に個展を観に行ったらイラストレーターの方に「知ってる!」と声をかけられたんですけど、「この曲歌ってますよね?」と見せられたのが柴田聡子さんだったんですよ。柴田さんは眼鏡がお似合いで、とっても素敵なミュージシャンですけど、それは私じゃないですと。でもそのときから「私、眼鏡ハマってるのかな」と思って、よくかけているんです。

変化5同世代と仲良くなった

──あと最近の吉澤さんは世代の近いアーティストとどんどん交流の輪を広めている印象がありますが、それはどうですか?

そうですね、仲よくなれてるかも。OKAMOTO'Sのハマ・オカモトくん、KIRINJIの弓木(英梨乃)ちゃん、Creepy NutsのDJ 松永くん、SANABAGUN.の(澤村)一平ちゃんとバンドを組んだんですよ。みんな同い年で。

──そういう世代の近い方たちと音楽の話はするんですか?

集まるとしていますね。みんなジャンルがバラけているので面白いです。一緒におじいちゃんおばあちゃんになれたらうれしいなと思っています。

──同年代の指原莉乃さんが日本テレビ系の番組「今夜くらべてみました」で吉澤さんの楽曲「残ってる」を「全女に聴いてほしい」と絶賛するという出来事もありました。

あれはうれしいフレーズでしたね。「月曜日戦争」をリリースしたときもそうだったんですけど、「月曜日戦争」「残ってる」「ミューズ」をそれぞれ発表したタイミングで、ライブに女性のお客さんが増えたなという印象はありました。

──「残ってる」は歌詞に共感する女性リスナーが多い印象ですが、そういう反響はうれしいですか?

そうですね。私が作る曲にはどれも物語があって、主人公の気持ちを曲の中に封じ込められたらと思って作っているので。共感した方は何かの縁が重なって主人公に親近感を持ってくれたのかなと思うから、また別の曲も聴いてもらえたらうれしいです。

変化6井上陽水と吉澤陽水の邂逅

そういえば、ついに父を井上陽水さんのコンサートに連れて行くということができました。

──陽水さんのモノマネをしていたという、お父さん?(参照:吉澤嘉代子「変身少女」インタビュー

はい。私の父は30年以上、「吉澤陽水」と言って陽水さんのモノマネをしている人なのですが、陽水さんの娘さんのサラサさんの御厚意で、なんと親子で陽水さんにご挨拶させていただくことが叶いました。

──ついに。お父さんはどんな様子でした?

憧れの人を前に、突然大きい声で「38年間、陽水さんのモノマネをしてきた者です!!!」と自己紹介し始めて、本気で焦りました(笑)。