wyse「ヒカリ」特集 wyse×手塚るみ子(手塚プロダクション)|110万馬力で駆け抜けるコラボプロジェクト

さまざまな世代に響く3作品とコラボ

──モチーフにした作品のセレクションが素晴らしいですね。「鉄腕アトム」「リボンの騎士」「ジャングル大帝」。それぞれが持つテーマが現代とつながる3作品です。

手塚 たぶん皆さんの世代的に一番やりやすいのは「ブラック・ジャック」あたりだと思うんです。どちらかと言うと今回の3作品はオールドファンが多いものなのに、あえてそこを選んだのはなぜですか? 皆さんそれぞれ「この作品がいい」という話し合いがあったとか?

月森 もちろん選べるものならすべて選んでいたと思います(笑)。

手塚 そうなったらアルバム何枚にもなっちゃいますよね(笑)。

月森 さっき初めてMORIが「きりひと讃歌」が一番好きだと知ったんですけど、実は僕も一番好きな作品なんです。

HIRO(G)

HIRO 僕は「アドルフに告ぐ」が一番好きです。

手塚 どちらかと言うと手塚のダークサイドの作品ですね。

月森 「きりひと讃歌」は、ちょっと明るくないマンガも読み始める時期に出会ったので、自分が生まれる前にこんなすごいものを描いてたんだっていう衝撃もあって。もちろん今回「きりひと讃歌」を推したい気持ちもあったんですが、せっかくコラボさせていただくからにはいろんな人に楽しんでほしい気持ちがあったので、みんなが知っている3作品を選びました。CDのアートワークは僕とMORIが手塚プロダクションさんと一緒にデザインを考えさせていただきました。

手塚 ジャケットとロゴマークのラフをいただいて。こういうふうにしたいというイメージがあったんですね。

MORI 僕がラフ絵を描いたんですけど、楽しくてしょうがなかったです。

手塚 もし「きりひと讃歌」を選んでいたなら、また違う方向に行っていたでしょうね。そういう部分ではwyseのファンの方はもちろん、小さい子からお年寄りの方まで楽しんでもらえる入り口としてこの3作品を選んだのは正しいでしょうし、デザインとしても一度は手をつけてみたいキャラクターたちではないかなと思いました。ここ最近、マンガ家の方に二次創作というかスピンオフ的なものを描いていただく機会も多いんですけれども、同業者がやるとマンガからマンガですので手塚ファンも厳しい目で見るんです。その点、ミュージシャンの方は一回咀嚼して自分たちの表現として出しますから。

──とは言え、誰もが知っているアニメ「鉄腕アトム」の主題歌だったり、「ジャングル大帝」「リボンの騎士」を作曲した冨田勲先生に挑むわけですからハードルが高かったのではないですか?

月森 いやいや! そこに挑もうなんて恐れ多い気持ちは僕たちもないので(笑)。

TAKUMA 「そういうところに足を踏み入れるんだぞ」というプレッシャーはありつつ、すごく光栄なことだという認識で取り組みました。

陰があってこその光

──作業はどの曲から進めていったんでしょうか。

TAKUMA まず最初は表題曲「ヒカリ」でした。これはまだどこにもお話ししてないんですけど、この曲のテーマは“陰があってこそ光がある”……究極的には自己犠牲の考えなんです。例えば、誰かが陰の存在なら、自分はその人を照らしてあげたり導いてあげられる存在になれるように努力をする。そして今度その人が光になったときは、陰になって支えてあげる。それが手塚先生の作品から自分が強く感じたものでした。

──今の話はメンバーの皆さんも初めて聞かれた?

月森(Vo)

月森 初めて聞きました。いつもそうなんです(笑)。ただ、TAKUMAが言った内容と同じようなことを僕も考えながらレコーディングに臨みました。「ヒカリ」という歌だからといって、ただ明るく歌ったのではたぶん楽曲の真意は伝わらない。ポジティブな強さというのは、そうじゃないものがあって初めて築けるものだと思うし、僕らも20年やってきていろんなことを経験したからこそこういう歌が歌えるんだ、それが声や息遣いに含まれていたらいいなって。

──るみ子さんは完成した「ヒカリ」を聴かれて、いかがでしたか?

手塚 今日初めて直接感想をお伝えするんですが、手塚の作品は光を象徴的に描いた作品が多いんです。特に「火の鳥」は顕著で、光に人類が導かれていくお話ばかりですよね。もともと手塚が終戦後の絶望的な状況の中、真っ暗だった焼け野原の街にパッと点いた電灯を見て“自分は生き延びたんだ、マンガ家になってこれからどんどんマンガを描こう”と希望を抱いたという実体験から光というものを描いているんです。だから「ヒカリ」という曲を聴いて、手塚の作品をすごく読み込んで核となる部分をちゃんとキャッチして、それをタイトルテーマとしてお書きになったんだろうなと勝手に解釈していました。

TAKUMA 恐れ多いです。

手塚 “陰があってこその光”というのは、いろんな生き方の中にありますよね。人は光に向かって次のステップを踏むわけですから。

TAKUMA 悲しみを知らないと喜びも知ることができないと思うんです。人生における大きなテーマですけれども、もし何年か前だったら僕らはきっと表現しきれなかったし、気付けなかったかもしれない。今回こういうテーマに向き合えたことも運命的なものを感じましたし、20周年を迎えてステップアップしようとする中で「ヒカリ」を書けてよかったなと思います。

「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」を題材にしたC/W曲

──そこから、それぞれの作品に対して楽曲を作られていったわけですね。

TAKUMA 頭の中にイメージはあったんですが、逆に全部の曲が完成してからじっくり取り組もうと思ったのが「鉄腕アトム」をイメージした「僕のヒーロー」(鉄腕アトム Disc収録)でした。「リボンの騎士」をイメージした「Blue Moon」(リボンの騎士 Disc収録)では二面性と、その2つの心を頭では分かっていてもうまく処理できない複雑な気持ちというのが自分の中でのテーマで。楽曲のアプローチとしても難しくなることは分かっていたので、苦手意識が付かないうちに自分のイメージにしたいという思いが強くて。なので完成して一番ホッとした曲かもしれないです。

──「リボンの騎士」は女性が主な読者層でしたからアプローチが難しかったと思います。そこをイントロのストリングスからドラマティックに盛り上げていますね。

wyse

TAKUMA ありがとうございます。次に「ジャングル大帝」をイメージした「Link」(ジャングル大帝 Disc収録)は、自分が大自然の中にいることを想像しながら、環境保全など、そういったメッセージも含みながらそれらをさりげなく届けられるように考えながら作りました。タイトルの「Link」は、過去の自分と未来の自分がリンクすること、また今この世界に存在するさまざまなこととリンクすること、それらが大事なテーマであると思い付けました。

──セカンドライン的なリズムも取り入れられて。そして最後にアトムの楽曲です。

TAKUMA 「僕のヒーロー」を作るうえで、曲のキャッチーさと明るさ、そしてアトムが持つイメージ……誰でも入っていける間口の広さ、楽しむことができる間口の広さがすごく大事だなと思いました。同時にメッセージがちゃんとある歌詞にしたいなと。僕の幼少期は「鉄腕アトム」のアニメがリアルタイムで放送されていたわけではないですけども、アトムのおもちゃを持っていたので、どこへ行くにもアトムと一緒に過ごせたんです。それが5年、10年と経てば、さすがに同じような距離感ではなくなってしまう。それでも思い出の中にはちゃんと温もりが残っている。そういう意味では今でも僕のヒーローであって、どこかでいつも僕を応援してくれる存在だったので、距離は離れても大切な存在だよということを書けたらいいなというのが、この曲のイメージでした。

wyse「ヒカリ」
2018年9月26日発売 / CHAIN RECORD
wyse「ヒカリ」鉄腕アトム Disc

鉄腕アトム Disc [CD]
2700円 / QAFJ-10009

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wyse「ヒカリ」ジャングル大帝 Disc

ジャングル大帝 Disc [CD]
2700円 / QAFJ-10010

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wyse「ヒカリ」リボンの騎士 Disc

リボンの騎士 Disc [CD]
2700円 / QAFJ-10011

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収録曲

鉄腕アトム Disc

  1. ヒカリ
  2. 僕のヒーロー

ジャングル大帝 Disc

  1. ヒカリ
  2. Link

リボンの騎士 Disc

  1. ヒカリ
  2. Blue Moon
公演情報
wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION TOUR「ヒカリ」
  • 2018年9月29日(土) 埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3(wyse祭)
    OPEN 14:30 / START 15:00
  • 2018年9月29日(土) 埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3(FC限定)
    OPEN 18:00 / START 18:30
  • 2018年9月30日(日) 埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3
    OPEN 16:00 / START 16:30
  • 2018年10月20日(土) 大阪府 OSAKA MUSE
    OPEN 16:30 / START 17:00
  • 2018年10月21日(日) 大阪府 OSAKA MUSE
    OPEN 16:00 / START 16:30
  • 2018年11月3日(土・祝) 愛知県 SPADE BOX
    OPEN 16:30 / START 17:00
  • 2018年11月4日(日) 愛知県 SPADE BOX
    OPEN 16:00 / START 16:30
  • 2018年12月7日(金) 東京都 新宿ReNY
    OPEN 18:30 / START 19:00
  • 2018年12月8日(土) 東京都 新宿ReNY
    OPEN 16:00 / START 16:30
wyse(ワイズ)
wyse
1999年2月に結成された4人組ロックバンド。2001年12月にアルバム「the Answer in the Answers」でイーストウエスト・ジャパン(現ワーナーミュージック・ジャパン)からメジャーデビューを果たすも、2005年2月に解散する。2011年に再始動し、結成20周年を迎える2018年に、手塚プロダクションとのコラボ企画でシングル「ヒカリ」をリリース。9月からコラボツアー「wyse20th+OSAMU TEZUKA90th=110万馬力 COLLABORATION TOUR『ヒカリ』」を開催する。
手塚るみ子(テヅカルミコ)
プランニングプロデューサー。マンガ家・手塚治虫の娘で、手塚プロダクション取締役も務める。2017年に手塚治虫との日々を綴った著書「定本 オサムシに伝えて」を発表した。