SUPER BEAVER史上最大キャパの野外ワンマンに向けて──ライブで披露し続けてきた楽曲を語る (2/2)

予感
2018年11月21日発売のシングル「予感」表題曲

──2018年リリースの「予感」は、オープニングのギターカッティングが印象的です。

柳沢 ビーバーは歌で始まる楽曲が多いから、「青い春」のようにイントロから印象的なフレーズが鳴ってる曲は実は少なかったんです。だけど「青い春」で手応えを感じたから、「イントロのリフ一発で『この曲が来た!』と思えるような楽曲がもっとあったらいいよね」という話になって。「予感」はドラマ「僕らは奇跡でできている」の主題歌として制作した楽曲なんですが、ちょうどドラマの制作スタッフの方が「曲の冒頭に特徴的なものがあったらうれしい」とおっしゃっていたので、このタイミングでトライしようと思いました。

──ライブではこの曲にどんな場面を任せることが多いですか?

柳沢 この楽曲を演奏すると、ライブにおいて表情の変化を付けられるんですよね。縦ノリのリズムで楽しい空気をはらんでいる楽曲なので、ライブに来てくださった方の中には「自然と体が揺れちゃった」というような楽しみを覚えてくださった方もいるんじゃないかと思います。

──リズムが大事な曲ということは、リズム隊の腕が試されるところもあるのではないでしょうか。

上杉 ベーシスト目線で言うと「予感」は演奏するのが大変な曲です。リズムを細かくタイトに刻み続けなきゃいけないので。最初は指を3本使って弾いていたんですけど、最近演奏の仕方を変えて親指で弾くようになりました。前までは超ストイックに弾く曲という印象があったんですけど、弾き方を変えてからはライブ中に顔を上げられるようになって、自分もカラフルでポップなこの曲の雰囲気の中に入りながら演奏できるようになりました。ドラムもけっこう細かいよね?

上杉研太(B)

上杉研太(B)

藤原 ドラムもすごくテクニカルです。というか「予感」以降、SUPER BEAVERの曲のドラムはさらにテクニカルになってきているんじゃないかと思います。2018年の後半はシングルとしてこの曲をリリースしたものの、アルバムは作らず、ライブをたくさんやっていたんですよ。そうしてライブを重ねていくうちに、自分もメンバーもリズムに対する理解が深まった。それが自分たちの作る曲が音楽的に変化していくきっかけになっていったんだと今振り返って思います。2018年にたくさんライブを重ねたことが今のライブスタイルにもつながっているし、「予感」があるからこそ生まれた曲もたくさんある気がします。

──ちなみに、ボーカルの難易度はいかがですか?

渋谷 かなり難しいと思います。メロがかなり細かいし、自分でプラスしている部分もあるし……でも、SUPER BEAVERの曲はみんな難しいから、この曲が特別難しいという認識を持ったことは実はないです。

名前を呼ぶよ
2021年7月7日発売のシングル「名前を呼ぶよ」表題曲

──2021年リリースの「名前を呼ぶよ」は、映画「東京リベンジャーズ」の主題歌として制作されたアッパーチューンです。この曲をきっかけにSUPER BEAVERを知ったという人や、ライブでこの曲が演奏されることを楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。

上杉 そうですね。「この曲がきっかけでSUPER BEAVERを知って、初めてライブに来ました」という人もすごく多いし、ライブでやり始めた当初から、曲が始まった瞬間に「この曲が聴きたかった!」と反応してもらえることが多かったです。

藤原 「青い春」とはまた違う意味で安心感のある曲だよね。

渋谷 そうそう。「青い春」は長くやってきたからこそ実家のように思ってもらえている曲だけど、「名前を呼ぶよ」に関しては、この曲をやれば「ああ、この人たちね」とわかってもらえるんだろうなという安心感がある。「名前を呼ぶよ」は映画のタイアップをいただいた曲だったので、いろいろなところで発信される機会が圧倒的に多かったと思うんですよ。それに僕はこの曲で初めて「タイトルは知ってるけど、誰が歌ってるのか知らなかった」と言われました。曲の存在がバンドの名前を追い越すなんてすごく健全な状況ですよね。だから、「名前を呼ぶよ」はほかの曲とは出生が違う曲だと思っていて。たぶん、ちっちゃい頃から私立の学校に通っているようなやつだと思うし、初めて自分たちに大学出の曲ができたな、みたいな(笑)。

柳沢 すごくわかる(笑)。ここまで出てきた曲は全部出生が違うよね。「名前を呼ぶよ」は大学を出てから俺たちのところに来た頭のいいやつで、「青い春」は10代の好青年で最初からいいやつだったから今日も笑ってくれている感じがする。一方「東京流星群」はもっとガツガツした性格のやつで、ストイックにがんばることで自分の道を切り開いてきたんだろうなと思います。

渋谷 ただ、どんなに頭がよくても性格が悪ければ周囲とは馴染めないだろうし、結局は社会に出てからそいつ自身ががんばれるかどうかじゃないですか。「名前を呼ぶよ」は確かに出生は違うけど、そもそも曲自体に力があったからこそタイアップとの相乗効果が生まれたんだと思ってます。

──「名前を呼ぶよ」はライブでの声出しが制限されていた時期にもたくさん演奏していましたよね。

柳沢 そうですね。精神的にも物理的にも人との距離をすごく感じやすい時期だったからこそ、人と出会えることの奇跡を今一度しっかり歌にしたいと思いながら書きました。聴いてくださる方の顔を想像しながら作ったのを覚えています。

藤原 楽曲には強い気持ちを込めたけど、実際に皆さんが僕たちの名前を呼べるようになるのはいつになるだろうと思いながらいつも演奏していたんですよ。だけど声出しが解禁されてからの最近のライブでは、曲が終わったあとに「藤原!」と呼ぶ声が聞こえてくることもあって。そのたびに「あ、今名前を呼ばれてる……」と感じ入っています。

藤原“35才”広明(Dr)

藤原“35才”広明(Dr)

グラデーション
2023年4月19日発売のシングル「グラデーション」表題曲

──「グラデーション」は今年4月にリリースされたばかりですが、ライブで演奏することで楽曲に対する印象は変わりましたか?

渋谷 変わりましたね。レコーディングの段階では、じっくり腰を据えて演奏しながら沸々と感情を湧き上がらせるような、青い炎系の曲だと思っていたんですよ。だけど意外と赤い炎系でした。思いっきりやるのが気持ちいい曲です。

上杉 ライブでやるたびにどんどんエネルギッシュになっていくし、すごい曲だなと最近改めて思っています。

柳沢 映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 –運命-」の主題歌ということで、春のフェスやイベントで演奏したときには「この曲知ってる!」とリアクションしてくれている人も多くて。SUPER BEAVERというバンドを知ってくださるきっかけになり得る曲がまた1つ生まれたなと感じているところです。

藤原 イントロが始まった瞬間に「待ってました!」と迎えてもらえることが多いなと最近のライブで感じているんですが、ワンコーラスを歌ったあとに歓声が上がったり拍手が起こったりすることも多い曲なんですよ。

柳沢 確かに。もちろん楽曲を作ってパッケージングしている時点で「こんなふうにしたら、こんなふうに返ってくるのかな」と自分たちなりに想像しているんですが、やっぱり生の反応はライブならではの醍醐味ですよね。わーっと声が上がった瞬間や、「あ、今この人の表情が変わったな」と気付いた瞬間はやっぱりうれしくなります。

儚くない
2023年6月28日発売のシングル「儚くない」表題曲

──映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 –決戦-」主題歌として制作された最新曲「儚くない」についても聞かせてください。「青い春」は10代の好青年、「名前を呼ぶよ」は私大卒のエリートと例えていましたが、この曲に対しては現状どんな印象を持っていますか?

渋谷  まだライブでやっていないから想像できないなあ(※取材は6月上旬に実施)。ただ、大活躍してくれそうな予感はしています。SUPER BEAVERでは自分たちの肝と言えるようなバラードが時期ごとに生まれていると思うんですが、「儚くない」は結成19年目を迎えた今のバンドの軸をしっかり担ってくれる存在になりそうです。

上杉 自分は、本当に素晴らしい曲ができあがったと思っていて。楽器を始めた頃の自分がこの曲を聴いたら「1つの到達点にたどり着いたんじゃないか」と思うだろうし、自分たちがずっとやりたかったことがこの曲に全部詰まっている気がするんですよ。これからどういう付き合いになっていくのか楽しみです。

柳沢 きっとやればやるほど深みを増していく曲なんだろうなと思っています。どんな日に、どんな場所で、誰の前で演奏するのか……そういう1つひとつの条件がかなり作用してくるんじゃないかと。そういった変化を僕自身早く味わいたいと思っているし、そのときフロアの1人ひとりがどんな表情で聴いてくれるのか、そこにどんな感情が生まれるのか、すごく楽しみです。

藤原 だからこそ早くライブでやりたいです。感情を込めれば込めるほどよくなる曲だと思うし、どれだけ感情を込めてもまだまだ余裕があるくらい器の大きい曲だと思うので、精一杯感情を込めながら、丁寧に演奏したいと思っています。

初めて尽くしのライブに向けて

──では最後に、7月22、23日に富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催される「SUPER BEAVER 都会のラクダ SP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~」の話を聞かせてください。取材を行っている現在、SUPER BEAVERは全国ツアー「SUPER BEAVER 都会のラクダ HALL TOUR 2023 ~ ラクダ紀行、ロマン飛行 ~」の真っ最中です。ツアーと並行して富士急公演に向けた準備も進めているのでしょうか?

上杉 そうですね。ツアーはしっかり回りつつ、合間に富士急のセットリストを考えたり、少しずつ準備を進めています。あと、昨日の夜は自分がやっている「LEADER」というブランドが出すブースの打ち合わせをしましたし、今日の午前中にはコラボフードの試食をしてきました。アミューズメントエリアもいろいろとこだわりながら準備しているので、来る方は楽しみにしていてほしいです。

──どんな2日間にしたいと思っていますか?

渋谷 自分たちが、そして何よりも観に来てくださる方が楽しめればいいなと思っています。だけどそれは常に思っていることなので、このライブのことを特別視しているわけではありません。いつも通り、一番いい日にします。

柳沢 自分たちのスタンスは変わらないと言いつつも、バンド史上一番大きな会場でのワンマンライブで、しかもそれが夏の野外で、2DAYSあって……と初めて尽くしなんですよ。結成から19年経ってもまだ初めての経験ができるなんてすごくうれしいことだし、今はまだ想像もつかない感覚がきっとそこにはあるんだろうなと感じています。

藤原 今日話した楽曲も新しい環境で演奏することで、もしかしたら新しい発見も生まれるかもしれないですよね。そこでまた新しい自分たちに出会えたらうれしいなと思いますし、当日を楽しみにしながら練習していきたいです。

上杉 ライブはもちろんいいものにします。そしてアミューズメントエリア含め、来た方が全力で楽しめるような企画をたくさん考えているので、総じて忘れられない夏の思い出になればいいなと思っています。自分たちも来た人1人ひとりも「本当に楽しかった! 最高だった!」と感じられるように、今全力で準備しているところです。本当に楽しみだし、あとは天気にも恵まれればもっと最高だなって思います。

SUPER BEAVER

SUPER BEAVER

ライブ情報

都会のラクダSP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~

  • 2023年7月22日(土)山梨県 富士急ハイランド・コニファーフォレスト
  • 2023年7月23日(日)山梨県 富士急ハイランド・コニファーフォレスト

SUPER BEAVER「都会のラクダSP ~サシ飲み五番勝負、ラクダグビグビ~」

  • 2023年8月3日(木)宮城県 SENDAI GIGS
    <出演者>
    SUPER BEAVER / マカロニえんぴつ
  • 2023年8月7日(月)愛知県 Zepp Nagoya
    <出演者>
    SUPER BEAVER / Saucy Dog
  • 2023年8月24日(木)香川県 レクザムホール(香川県県民ホール)
    <出演者>
    SUPER BEAVER / DISH//
  • 2023年8月31日(木)大阪府 Zepp Osaka Bayside
    <出演者>
    SUPER BEAVER / ハルカミライ
  • 2023年9月14日(木)福岡県 Zepp Fukuoka
    <出演者>
    SUPER BEAVER / My Hair is Bad

SUPER BEAVER「都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」

  • 2023年9月29日 (金)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年9月30日 (土)広島県 広島文化学園HBGホール
  • 2023年10月14日 (土)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2023年10月15日 (日)宮城県 仙台サンプラザホール
  • 2023年10月21日 (土)福岡県 福岡サンパレス
  • 2023年10月22日 (日)福岡県 福岡サンパレス
  • 2023年10月28日 (土)新潟県 新潟県民会館
  • 2023年10月29日 (日)新潟県 新潟県民会館
  • 2023年11月11日 (土)愛媛県 松山市民会館
  • 2023年11月12日 (日)愛媛県 松山市民会館
  • 2023年11月18日 (土)北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
  • 2023年11月19日 (日)北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
  • 2024年1月27日(土)愛知県 日本ガイシホール
  • 2024年1月28日(日)愛知県 日本ガイシホール
  • 2024年2月10日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年2月11日(日・祝)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年3月23日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2024年3月24日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

プロフィール

SUPER BEAVER(スーパービーバー)

渋谷龍太(Vo)、柳沢亮太(G)、上杉研太(B)、藤原“35才”広明(Dr)の4人によって2005年に東京で結成されたロックバンド。2009年6月にEPICレコードジャパンよりシングル「深呼吸」でメジャーデビューした。2011年に活動の場をメジャーからインディーズへと移し、年間100本以上のライブを実施。2012年に自主レーベルI×L×P× RECORDSを立ち上げたのち、2013年にmurffin discs内のロックレーベル[NOiD]とタッグを組んでの活動をスタートさせた。結成15周年を迎えた2020年、Sony Music Recordsと契約を結んだことを発表し、6月にメジャー再契約第1弾となるシングル「ハイライト / ひとりで生きていたならば」をリリース。2021年2月にアルバム「アイラヴユー」を発表し、7月に映画「東京リベンジャーズ」の主題歌を表題曲としたシングル「名前を呼ぶよ」をリリースした。同年10月より初のアリーナツアーを開催。2022年はテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」第6期第1クールのオープニングテーマ「ひたむき」をシングルとしてリリース。2023年は映画「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 –運命- / -決戦-」に主題歌「グラデーション」「儚くない」を提供し、7月に山梨・富士急ハイランド・コニファーフォレストでキャリア史上最大キャパシティの野外ワンマンライブ「都会のラクダSP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~」を行う。さらに8月より対バンツアー「都会のラクダSP ~サシ飲み五番勝負、ラクダグビグビ~」、9月よりホールとアリーナを回るツアー「都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」を開催する。