Perfumeとゆかりの深いライターたちが振り返る「PLASMA」ツアー|WOWOWでの放送に向けて見どころを語り合う座談会 (3/3)

突然のトラブルも何事もないように収める対応力

藤井 今回のライブは全編を通して「3人に視線を集約させる」ことを徹底していたように感じました。

──そうですよね。あえて言えば、「アンドロイド&」でスクリーンに映るCGのダンサーとメンバーが一緒に踊る場面がありましたけど、それくらいで。

藤井 でもあそこで、ぴあアリーナMMの「polygon wave」を再演したときのような生身のダンサーを出さなかったのも、3人に視線を集めたいからなのかなと思ったんですよ。アンドロイド役とはいえ、ステージ上にほかの人がいたらそれは3人だけでのパフォーマンスではなくなってしまうので。

──なるほど。では、ダンサーを入れたライブは「polygon wave」だけの特別なものでなく、今後も観ることができると思いますか?

藤井 そうですね。「3人に視線を集約させる」というライブは今回で完成形に近いものになったと思うので、今後はまたELEVENPLAYの方々を投入したりして、いろんなバリエーションの「アンドロイド&」が観られるんじゃないかなと想像しています。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」より「Spinning World」のパフォーマンスの様子。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」より「Spinning World」のパフォーマンスの様子。

照山 「polygon wave」で今まで出さなかったダンサーさんが初めてステージに登場したのも、MIKIKO先生が「3人がここまで表現できるようになった」と感じたからだと話していましたし。「もうメンバー以外の人がステージに立っていてもPerfumeだと言える」っていう。

藤井 言ってましたよね。あと、ライブを観ていてハッと思ったことが1つあって。「STAR TRAIN」ではスタンドマイクで3人が向かい合って歌うじゃないですか。今回のツアーでは、最初は3人ともバラバラの方向を向いているんだけど、床が動いてくるくる回りながら最終的に向かい合う、という流れだったんですよね。でも埼玉公演2日目で、あ~ちゃんのいる床の回転がたぶん足りなくて、最終的にあ~ちゃんは自分でマイクスタンドを持ち上げて、スーッと動かしたんです。そして何事もないように3人で向き合って。

──あっ、そんなことがあったんですか! この日の最後のMCで「今日はトラブルもありましたが……」みたいな話をしていて、なんのことかわからなかったんですけど、それのことだったのかもしれませんね。

藤井 そうじゃないかな……?と私は思っていたんですけど。

──それにしても、その状態で焦らずに対応できるのはさすがです。

藤井 本当に何事もなくきれいに動きをつなげてたので、さすがプロだなあと。

──ほかの2人も絶対にそのトラブルに気付いていただろうと考えると、3人ともすごい対応力……!

照山 ライブって、アクシデント的なものが記憶に残ることはありますよね。「COSMIC EXPLORER」ツアーの名古屋公演で、のっちさんが豪快に靴をすっとばしてしまったことは今でも語り継がれてますし(笑)。本人たち的には不本意なことかもしれないですけど、完璧に仕上げられたものの中にたまに人間らしい一面が見えると愛しくなるんです。同じものを寸分違わず作り続けるのも美学ではあるけど、ライブは全公演違ったほうが絶対に面白いですし。

藤井 人間臭いところがあるのがPerfumeの魅力でもありますからね。

Perfumeの何がすごいのか

──最後の曲「さよならプラスティックワールド」の途中で、3人それぞれが観客に向けて「また会える日があると信じてる!」みたいなことを言っていたじゃないですか。その言葉を聞きながら「えっ、当然じゃない?」と思ったんですよね(笑)。僕はそれに対してなんの疑いも持っていないから、「なんでそんなこと言ってるんだろう?」くらいに思ってました。このときのMCでも然り、3人はよく「10年後にまだPerfumeが続いてるなんて想像もできなかった」みたいなことを話しているんですけど、ブレイク直後くらいならともかく、ここまで来ると逆に、Perfumeが今から10年後に続いていないことが想像つかないんですよね。

藤井 ですよね。それについて本人たちと話したことがあるんですけど、「例えば結婚や出産といった未来があったとしても、形は違うかもしれないけど絶対にPerfumeは続けられると思う」というようなことを言っていました。「Reframe」みたいな公演であれば可能だ、なんて私も思ったりしてるんですよ。

照山 育休の時期があってもいくらでも待てますし、伝説の2009年の大阪城ホール公演のように3時間40分やらなくても全然大丈夫ですから(笑)。むしろ僕らの体力のほうが持たなくなってきているので「Reframe」の着座スタイルはありがたかったです。あの形でいつか全曲アコースティックライブとか観てみたいなって。

藤井 同じように私たちも歳を取るから、ご心配なさらずと言いたいですね(笑)。

照山 以前「TV Bros.」で「Perfumeは60歳になったときにどうなっている?」というお題で大喜利をやったんですよ。そしたら「KANREKI」とMetallicaのロゴみたいに書いたタイトルのフリップを出して「60歳記念ライブをやる」って答えてくれて。「うわ、観たい!」と思ったんですけど、冷静に考えると2049年ですよね。「ブレードランナー」の世界ですよ。「たぶん僕は脳だけの状態になって、容器の中で液体に浸かりながら観ていると思います」と3人にはお伝えしておきました(笑)。

藤井 「いつまで彼女たちのステージを観て自分が感じられるものがあるんだろう?」って、不安になったことも過去にあったんです。でも今もなお、ライブを観るたびに感じられるものがいっぱいあるんですよね。年齢も性別も国籍なども関係なく、誰もが感じられるものがあるはずなので、まだ観ていない方には今回ぜひWOWOWで体験してもらいたいなと思っています。

照山 今回のアルバムおよびツアータイトルの「PLASMA」って、「目には見えないけれども我々の周りに確実に存在する別世界への扉」なのかなと思ったんです。今のPerfumeってそういう存在じゃないですか? 離れていても身近に感じるし、ライブでは毎回新しい驚きを感じさせてくれる。そもそも「ポリリズム」から15年、ずっと高い水準のクオリティを維持できていることが何よりすごいですよね。

──そうですね。そしてこれから先も高いクオリティを維持し続けるだろうという信頼感があります。

照山 これまでの思いが集約された「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」、WOWOWの放送が今から楽しみです。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」より「Flow」のパフォーマンスの様子。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」より「Flow」のパフォーマンスの様子。

プロフィール

Perfume(パフューム)

あ~ちゃん、かしゆか、のっちにより2000年に広島で結成。2003年に活動拠点を東京に移してからは、プロデューサーにcapsule(現:CAPSULE)の中田ヤスタカを迎え、インディーズレーベルで精力的に活動を開始。2005年にシングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューを果たす。2007年に「NHK環境・リサイクルキャンペーン」テレビCMに出演し、CMソング「ポリリズム」が大ヒット。テクノポップブームの火付け役となり、2008年には日本武道館、2010年には東京ドームでのワンマンライブを完売させる。2012年10月にはアジア4カ国で初の海外ツアーを敢行。2015年にはアメリカ・テキサス州オースティンで開催された世界最大規模のフェスティバル「SXSW 2015」に出演し、インタラクティブメディアの祭典「SXSW Interactive」のヘッドライナーを務めた。2019年にはアメリカの野外音楽フェス「Coachella」への初出演を果たす。同年、自身初のベストアルバム「Perfume The Best "P Cubed"」をリリースし、これを携えて2020年2月に全国ドームツアーを敢行。2022年7月に4年ぶりのオリジナルアルバム「PLASMA」をリリースし、同作を携えて全国9都市でのアリーナツアー「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」を開催した。