Perfumeとゆかりの深いライターたちが振り返る「PLASMA」ツアー|WOWOWでの放送に向けて見どころを語り合う座談会 (2/3)

泣いたからっておかしくない、Perfumeのメロディライン

照山 今回のオープニングの演出は、3人が昔からやりたがっていたことなんですよね。あ~ちゃんがよく「ライブで空を飛びたい」と言っていて。アルバムの最初に入っている「Plasma」という楽曲自体が「ストレンジャー・シングス」っぽい80年代SF映画のオマージュを感じるものだったので、「別の世界からやって来た3人が地上に降り立って、ライブをして最後にまた空に帰っていく」というストーリーにしたのかもしれません。

──WOWOWの視聴者の方にも、ぜひ冒頭から注目していただきたいですね。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」のオープニング「Plasma」での登場シーン。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」のオープニング「Plasma」での登場シーン。

照山 そうですね。素晴らしい技術によるカメラワークで、あの演出がどう捉えられているのか必見です。ちなみに3人ともかなり上のほうにいるときもすごくリラックスした表情をしてましたね。

──あれ、めちゃくちゃ高そうですけど……。

照山 みんな意外と高いところは平気らしくて。過去に「edge」のライブ演出で高所に上がったときも全然怖がってなかったみたいです。

──「PLASMA」ツアーの前半パートは、いわゆる最先端の演出もほとんどなく、映像も控えめでしたよね。観ている途中で気付いたんですけど、僕はこのときあんまりLEDモニターを観ていなかったんですよ。あれぐらい大きい会場でのライブだったら、もしステージからわりと近いところにいたとしても、モニターに映るメンバーの映像のほうを観てしまいがちなんですが。

藤井 本当にそうだったと思う。あれだけ大きい会場なのに全員の視線が生身の3人に集まっていましたね。

──映像演出が控えめとは言いましたけど、舞台セットが曲ごとに変わっていくから見た目的に単調な感じはまったくしないんですよね。おそらく裏方のスタッフはステージの下で大変なことになってそうですが(笑)。

照山 1曲目「Flow」のときにステージを覆っていた白い布も、気が付けばいつの間にかなくなっていたり。手品的な仕掛けのセットだからこそ、人間の温かみも感じました。

──そしてライブ終盤、「Party Maker」以降のセットリストは、Perfumeがお客さんとの一体感を高めようとしているのを感じました。「エレクトロ・ワールド」は普段なら会場中でコールする曲だし、「Puppy love」は観客みんなで同じ振付で踊る曲だし。あのとき「コロナ禍になってからの2年半、3人はずっとこういうことがやりたかったんだろうな」と感じて。

藤井 終盤の一体感はすごかったですよね。私、本当に「Puppy love」で号泣しましたもん。「上下上上下上下下」って手を振っているだけで涙が止まらない(笑)。

照山 もう体に染み付いているんですよね。幼稚園のお遊戯で聴いた童謡を大人になっても覚えているように、「Puppy love」を聴くと「上下上上」のレクチャーが聞こえてくる(笑)。Perfumeさんの楽曲ってそういうノスタルジックな感覚にさせるメロディがちりばめられていると思うんです。「再生」の「いつか一人の国から便りが届いて」という部分も日本のわらべうたっぽいメロディだし、このツアーのセットリストの流れで「すぐに行かなきゃ」と歌われたら、もう涙で前が見えない。まだ序盤なのに(笑)。

藤井 でも私も最初の「Flow」でもう泣いてましたよ(笑)。

照山 「Flow」にも「ほう ほう ほたる来い」とちょっと似たメロディラインが出てきますよね。多くの人の琴線に触れるような音階が取り入れられている。それを3人が歌うと、はかなさとか優しさとか、なんともいえない気持ちになるんです。「Perfumeのライブで泣いた」というと大げさだなと思うかもしれませんが、別に泣いたからっておかしくないんだぞ、って主張したいです(笑)。

かつて狭いところで踊ってきた経験が生かされているのか

照山 僕はさいたまスーパーアリーナ公演は初日のほうに行ったんですが、この日のMCで「中田(ヤスタカ)さんはどうして私たちの未来を予言してくれるようなことを書いてくれるんだろう」って話をしてたんです。「曲を作った当時、中田さんが私たちに託してくれた言葉に今になってハッと気付くことがある」って。確かに、コロナ禍前に書かれていた「再生」もそうでしょうし、2009年に発売されたアルバム「⊿」の収録曲は今回の「PLASMA」とつながっているところがありますよね。「Kiss and Music」や「Zero Gravity」とか。

藤井 そうなんですよね。私もそう思いました。

照山 13年経って再びここにたどり着いたんだと思うと感慨深かったです。今回のツアーの見どころの1つである「Drive'n The Rain」で椅子が小道具としてステージに出てきたとき、「直角二等辺三角形TOUR」でのサイコロを使った「Zero Gravity」のパフォーマンスがフラッシュバックしたんです。

──僕は「おっ? 『Take me Take me』が始まるのかな?」って思いました(笑)。

照山 ああいう当時は本人たちが「まだ早すぎるかな」と思っていた曲が今ピッタリくる感覚も、これだけ長く活動を続けているからこそだと考えると感慨深いです。

藤井 アルバムを聴いたときに「Drive'n The Rain」はライブでどうなるんだろうと思ってたんですけど、やっぱり大人っぽい雰囲気でしたね。パンとした明るい照明ではなく、ほのかなディムライトの中で踊るのが素敵で。昔のロックコンサートみたいな、真っ暗な中でピンポイントで当てられている淡い光で、本人たちに視線をギュッと集めているのが素敵でした。

「Drive'n The Rain」をパフォーマンスするのっち。

「Drive'n The Rain」をパフォーマンスするのっち。

かしゆか

かしゆか

あ~ちゃん

あ~ちゃん

照山 照明は松井幸子さんという方が長年担当されていて、シャープなビームからほのかな柔らかい光まで完璧に表現されているんです。

──「Drive'n The Rain」の振付は自動車の運転をモチーフにしてるから、椅子を小道具にすることに必然性があるんですよね。

照山 あの椅子、曲が始まったら床がパカッと開いて出てきて、終わったらストンと落ちるんですよね。歌舞伎のセリみたいに。

藤井 ステージ上のいろんなところに穴があるわけで、実はけっこう危険と隣合わせなんですよね。だから皆さん、細心の注意を払われていて……。

──その話の流れでいうと、今回のセンターステージは心なしか小ぶりだったように見えました。かなり近いところまで客席があったからそう見えただけかもしれませんが。

藤井 それは私も思いました。

──もしちゃんとポジションを取れない人が同じようにパフォーマンスをしたら、ステージから転落する危険があったかもしれませんよね。「ナチュラルに恋して」では、曲がりくねった細い花道の上で、下を見ないで踊りながら移動していましたし。

藤井 そうそう、すごくハラハラしながら観てたんですよ。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」の会場の様子。

「Perfume 9th Tour 2022 "PLASMA"」の会場の様子。

照山 あれはご本人たちもドキドキしていたそうで、ツアー初日が終わったあと花道の幅をもう少し広くしてもらうようお願いしていたみたいです。

藤井 あ、そうなんですか!

照山 ハイヒールを履いてステップ踏んでますからね。

藤井 それもすごく楽しそうにね(笑)。客席に笑顔を送りながら足元も気を付けられる、特別な視野を持っているんだなあって本当に思います。

──かつて“セマイドル”と呼ばれていたことを思い出しますね(笑)。

照山 2006年くらいにスぺシャさんの配信番組で司会の掟さんに「それではここで歌ってもらいましょう」と振られて、スタジオ内の2畳くらいのスペースで「エレクトロ・ワールド」を踊ったことでそう呼ばれるようになったんですよね(笑)。

──だから、狭いところで踊るのは原点に返ってきたんだと言えるかもしれません。かつての経験が今の演出に生かされているというか。

照山 2000年代のPerfumeはインストアイベントやライブハウスのステージをたくさん経験しているから狭いところで踊るのは全然平気なんですよね。むしろ逆に、会場が大きくなってきたときに「広いステージを3人だけでどう見せるのか」がずっと課題の1つだったんです。

──2013年の「LEVEL3」ドームツアーでは、3人それぞれが違うサブステージでダンスしているんだけど、モニターの映像が3分割されていて、3人で並んで立っているように見せていました(参照:Perfumeライブで思わず涙「東京ドームがホームになった」)。あれもその試行錯誤の中で生まれた演出だったんでしょうね。

照山 そうですね。東京、ロンドン、ニューヨークの3都市に分かれて「FUSION」を踊った企画(参照:Perfumeの3人が世界3都市で同時にダンス、1万km離れてもタイムラグなくシンクロ)の、先乗りのようなことをすでに現場でやっていたという。