1歩踏み出せる人にはWANIMAの歌は必要ないのかも

──最後は4曲目「For You」について聞かせてください。

KENTA　これはライブの最後に歌う曲を作りたいと思ってできた曲です。前作のレコ発ツアー「Are You Coming? Tour」で、最後の曲に入る前に言葉のセンスがなくてMCが長くなったり、伝えたいことから逸れたりすることがあって。MCせんでも締めれる曲を作りたいと思ったんです。

──どういう気持ちが込められているんでしょうか？

KENTA　自分が信じてることを言葉にしました。作ってるときに「WANIMAのこの3人であと何曲作れるやろう」って思ったんです。そしたら何百曲もないなと思って。だって先のことなんてわかんないじゃないですか。だから自分と向き合って、人ときちんと向き合って、伝えたいことは伝えないとダメやなと。

──「優しい歌はいらない」という歌詞が印象的です。

KENTA　ああうれしい。そこ、最初は「悲しい歌はいらない」やったんですよ。でもよく考えたら、いらないのは優しい歌やなって。「大丈夫だよ」って歌われても大丈夫じゃないし、「がんばれ」って言われてもがんばっとるから。だから優しい歌はいらない気がしたんです。それよりも、一緒になる……寄り添うことのほうが必要だなと。応援はしてるんですけど、応援しなくていいと思ってるんですよ。うまいこと言えないんですけど。「がんばれ」よりも「一緒にいこう」のほうが大事だと思います。

──WANIMAの曲には、「前に進もう」というよりは「踏ん張ろう」という歌詞が多いですよね。

KENTA　もしかしたら1歩踏み出せる人にはWANIMAの歌は必要ないのかもしれないですね。俺は1歩踏み出すのはそんなに簡単なことじゃないと思ってるので、そういう人に音楽を届けたい。でもそれだけやとアレなので、1歩踏み出せるよっていう人はWANIMAのエッチな歌を聴いてもらえれば。

ライブに向かう姿勢の変化

──KENTAさんがどこかで「一時期、今日がなんのライブかもわからないみたいな状態なことがあったけど、今は呼ばれた意味やどういうライブをするべきかがわかるようになってきた」と話をしていたのがすごく印象的でした。それに気付けるようになったきっかけはなんだったんですか？

KENTA　なんですかね、きっかけとして何か出来事があったわけではないと思うんですけど、フェスにしても主催者の顔が見えるものだったり、意味のあるフェスだったりにばっかり出ているので、主催者の人と目を見て話してるうちに、責任と気持ちが生まれました。

──どういう気持ちが生まれてきたんでしょうか？

KENTA　俺らの30分のライブのために、みんな何カ月も準備してきてる。そういう気持ちに対して俺らができることは限られとるなって。それからはライブ1本1本の準備を3人でしっかりするようになりました。

FUJI　主催者の方も「自分たちじゃ言えないけど、WANIMAだったら自分たちの代わりに自分たちが伝えたいことを伝えてくれる」って思って呼んでくれてると思うんですよ。その“WANIMAが伝えるべきことは何か”を3人で話し合う時間を作ってます。

KENTA　その上でその日のテーマをシンプルに決めてます。ホント些細なことなんですけどね、一生懸命歌う、とか。

FUJI　ちゃんと後ろまで届けるとか。

KENTA　気持ちが1人でもズレてると届かないと思うんですよ。だからそういう些細なことでも3人が共通したものを持つようにしています。

──今年、「YON FES」では04 Limited Sazabysの「monolith」を、「京都大作戦」では10-FEETの「VIBES BY VIBES」を、「DEAD POP FESTiVAL」ではSiMの「KiLLiNG ME」をというふうに、それぞれ主催者の曲をカバーしていましたね。

KENTA　俺ら、わりとサプライズが好きなんですよね。くまモンに寄せるみたいで嫌なんですけど（笑）。

FUJI　「これやったら主催者が驚くんじゃないか」ってこそこそスタジオで練習して。

KENTA　だから俺ら、SNSで「レコーディングしてる」とかも発信しないですし。周りのバンドもお客さんも、もっと驚かせたいんですよ。WANIMA、まだまだやれると思うんで、楽しみにしててほしいです。