音楽ナタリー Power Push - 和楽器バンド

和楽器隊、洋楽器隊、ボーカリストがそれぞれ語った現在のモード

和楽器バンドが来年1月6日に東京・日本武道館にてワンマンライブ「大新年会2016 in 日本武道館」を実施する。

9月にリリースした2ndアルバム「八奏絵巻」はオリコン週間ランキングの1位にランクインし、初の全国ツアー「和楽器バンド 1st JAPAN Tour 2015」全10公演のチケットはすべてソールドアウトとなるなど躍進を続ける彼女たち。今回の音楽ナタリーの特集ではメンバーを和楽器奏者、洋楽器奏者、ボーカリストという3グループに分けて現在の心境を尋ねた。

和楽器奏者の4人にはツアーの振り返りを行いながら自分たちの楽器を携え武道館のステージに立つ意義を、ソングライターの町屋(G)と亜沙(B)を含む洋楽器隊には「八奏絵巻」の楽曲の特徴について尋ねた。そして7人の奏者に囲まれながら楽曲を歌うボーカル・鈴華ゆう子にはバンドの展望を語ってもらった。

取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 新井潔

1. 和楽器奏者 黒流(和太鼓)、神永大輔(尺八)、蜷川べに(津軽三味線)、いぶくろ聖志(箏)編

野音くらいがちょうどいい

──まずは終了したばかりの全国ツアーのお話から聞かせてください。東京・日比谷野外大音楽堂でのツアーファイナルの日は当日朝まで雨でしたが、本番までに止んでよかったですね(参照:和楽器バンド、初の野外ワンマン成功させ全国ツアー終幕)。特に和楽器にとって雨は大敵でしたでしょうし。

左から黒流(和太鼓)、神永大輔(尺八)、蜷川べに(津軽三味線)、いぶくろ聖志(箏)。

神永大輔(尺八) 本当にそうですね。ツアー中ずっと雨とは無縁だったのに、まさか最後の野音で!?って思いました(笑)。

蜷川べに(津軽三味線) ライブの週は天気予報を見ながら、直前までどうなるんだろうって思ってて。

いぶくろ聖志(箏) 雨の中でのライブとなれば楽器の糸が切れたり、三味線の皮が破れたりしてたでしょうね。あと大さん(神永大輔)が滑って転んだり(笑)。

神永 あそこのステージって濡れてるとめちゃくちゃ滑るんですよね。リハは本当に怖かったです。

──床が滑らなかったおかげか、野音では竿系の楽器の方々が縦横無尽にステージを動き回っていましたね。「こんなにステージ上で動く人たちだっけ?」とすごく驚きました。

神永 ああいったアクションは今回のツアーでおのずと身に付いたものですね。

蜷川 ツアーでライブを続けるうちにそれぞれのメンバーがどう動くのか少しずつ見えてきたんです。それで動きやすいように「そろそろ町屋(G)さんがギターを回す頃だな」と思って距離を空けるとか(笑)。

黒流(和太鼓) そう。だんだん「この人、このタイミングで動き出すぞ」ってのが見えてきたよね。

いぶくろ これまで僕らはお互いに遠慮しすぎだったけど、今回のツアーでライブを重ねながら「あっ、ここまでやっていいんだ」って気付いた。

黒流 それで野音のステージの広さでようやくみんなが自由に動けるようになったって感じだね。

いぶくろ 僕らには野音のスペースぐらいで初めてちょうどいいって言えるスペースになったね。動きやすくて。

一言で言い表せないファン層

──ライブのMCでは皆さんがノリ方について「黒流さんの動きについていけば大丈夫!」と話していたのが面白かったです。黒流さんはいつから盛り上げ役に?

黒流 この立ち位置はツアーで確立しました。というのも、僕らのライブは若い方だけじゃなくてお年寄りの方や家族連れ、お子さんも多くて。それに和楽器バンドが初めてのライブだって方もすごく多いので。そんな人たちにも気軽に楽しんでねって言えるような役を買って出たんです。

神永 今回のツアーはどの会場でも「これが初めてのライブ」って人が多くてびっくりしました。

黒流 よく来てくれたなあって思います。初めてライブに来るのって実はすごく勇気がいることだし。だから僕は「大丈夫!」って言える場所にしたくて。

神永 和楽器バンドを知ったきっかけや好きなメンバー、全部バラバラだと思うんですけど、でもそんな人たちがライブだとひとつになるんですよね。それがすごくいいなってこのツアーで気付きました。

逆境から学んだ

──全国ツアーの会場によってはスペースの都合で使用する楽器を減らしたこともあったそうですね。

いぶくろ はい。初日の郡山では、演奏スペースが野音の3分の1ぐらいでしたね。真正面を向いて楽器を置けなくて、その日は4回くらいしかお客さんのほうを向けなかったです(笑)。

左から黒流(和太鼓)、神永大輔(尺八)、蜷川べに(津軽三味線)、いぶくろ聖志(箏)。

黒流 そういった場所では2つの箏(琴)を1つ減らしたり、大太鼓を減らしたりして対応しました。しかもそれは当日にわかることが多いのでリハーサルで判断して。結果的にうまくいったし、「この音はこれで代用する」って感じで、過酷な現場だったおかげで新しく生まれたアイデアもありました。「ないからやらない」じゃなくて「じゃあどうすればできるか」で乗り越えることができましたね。

神永 あと狭いところだからこそお客さんとの一体感がすごかったです。そこで「ああ、ライブってこういう感じだ!」って体に刻んで、その気持ちを持って野音のステージに立てた気がします。

和楽器奏者にとっての武道館

──年明けにはいよいよ東京・日本武道館でのワンマンです。ロックバンドだと武道館はある種の到達点の1つだとよく言われます。和楽器奏者の皆さんにとって武道館ってどういう場所なんでしょう?

黒流 実はみんな和楽器奏者としてはすでに武道館で演奏してるんです。僕も何回もステージに立っていて。

──ああ、そうだったんですね。

黒流 ただバンドでっていうのはなくて。少なくとも和楽器奏者がいるロックバンドがあそこのステージに立ったというのを今まで聞いたことがないので、僕らが立つ意味は大きいのかなって。

いぶくろ そうだね。

黒流 でも、前例がないことをやる刺激はあるけど、そこで僕らがすごくカッコ悪いことをやってしまったら、それが悪しき例となってこれから和太鼓や尺八で新しいことをやりたいって子たちの道を閉ざしてしまうことになりかねない。だからそこは責任を持つ必要があると思ってます。重圧とまでは言わないんですけど、「和楽器奏者としてしっかりと」っていう意識はみんな頭の片隅にあると思う。

左から黒流(和太鼓)、神永大輔(尺八)、蜷川べに(津軽三味線)、いぶくろ聖志(箏)。

蜷川 私は、女の自分がこんな格好して(笑)ロックバンドのメンバーとして三味線を弾く意味を改めて考えています。「えっ、三味線ってこんなにカッコいい弾き方ができるの?」「こんな面白いことができるんだ」って新しい発見につながるようなことを武道館で見せたいと思ってて。当日まで技術はもちろん、私にしかできないパフォーマンスは何か追求していくと思います。単に「女なのにギターみたいに三味線を振り回す」ってだけじゃないことを実現したい。

──なるほど。

いぶくろ あと、琴とか尺八の音楽は江戸時代に普及した音楽が古典として残ってることが多いんです。で、日本武道館ってもともと江戸城北丸ですから、そんな場所に江戸時代に流行った楽器を持って演奏するっていうのが個人的にすごく楽しみです。

──ああ、言われてみればそうですね。

いぶくろ その上ロックバンドの聖地でもありますから。すごく意味が大きいライブになると思ってます。

神永 それに先日の野音で観た、客席に紫色のペンライトの光で埋めつくされた光景がすごく幻想的だったので、それが武道館一帯に広がったらどんな景色なんだろうって楽しみですね。

「和楽器バンド 大新年会 2016 in 日本武道館」

2016年1月6日(水)東京都 日本武道館
OPEN 18:00 / START 19:00(予定)
ニューアルバム「八奏絵巻」 / 2015年9月2日発売 / avex trax
「八奏絵巻」豪華絢爛BOX
豪華絢爛BOX [CD+USB+2DVD+Blu-ray+写真集] / 15000円 / AVZ1-93228/B~E
「八奏絵巻」MUSIC VIDEO COLLECTION
MUSIC VIDEO COLLECTION [CD+Blu-ray] 4104円 / AVCD-93224/B
MUSIC VIDEO COLLECTION [CD+DVD] 3780円 / AVCD-93223/B
「八奏絵巻」LIVE COLLECTION
LIVE COLLECTION [CD+Blu-ray] 4104円 / AVCD-93226/B
LIVE COLLECTION [CD+DVD] 3780円 / AVCD-93225/B
「八奏絵巻」通常盤
通常盤 [CD] 2700円 / AVCD-93227
CD収録曲
  1. 戦-ikusa-
  2. 星月夜
  3. Perfect Blue
  4. 追憶
  5. 鋼-HAGANE-
  6. 風鈴の唄うたい
  7. 華火
  8. 郷愁の空
  1. 暁ノ糸
  2. 白斑
  3. なでしこ桜
  4. 反撃の刃
  5. 千本桜
  6. 華振舞
  7. 地球最後の告白を

    (※初回盤のみボーナストラックとして収録)

MUSIC VIDEO COLLECTION 収録内容
  1. 千本桜
  2. 華火
  3. 戦-ikusa-
  4. なでしこ桜
  1. 反撃の刃
  2. 暁ノ糸
  3. 反撃の刃
  4. 暁ノ糸
LIVE COLLECTION 収録内容
  1. 六兆年と一夜物語
  2. 華火
  3. 星月夜
  4. 戦-ikusa-
  5. なでしこ桜
  6. 箏Solo
  7. 郷愁の空
  1. 虹色蝶々
  2. 脳漿炸裂ガール
  3. セツナトリップ
  4. 天樂
  5. 千本桜
  6. チルドレンレコード
和楽器バンド(ワガッキバンド)

和楽器バンド

ボーカル、尺八、箏(琴)、津軽三味線、和太鼓、ギター、ベース、ドラムからなる8人組。個々にプロとしてアーティスト活動するメンバーが、ニコニコ動画にアップした“演奏してみた”動画などを通じて集合し、2014年4月にエイベックスからボーカロイド曲のカバー集「ボカロ三昧」をリリース。同年8月には初のオリジナル曲となるDVD / Blu-ray「華火」を発表。2015年1月の東京・渋谷公会堂公演、5月に台湾で行ったメジャーデビュー1周年記念ライブはいずれもチケットをソールドアウトさせた。9月にはオリジナル曲を中心とした2ndアルバム「八奏絵巻」を発売し、10公演の全国ツアーを実施。2016年1月に東京・日本武道館で単独公演「和楽器バンド大新年会2016」を開催する。