日本語×英語×韓国語が自然に混ざる「PHOENIX」
──次はもう1つのシングル「PHOENIX」についてお聞きします。こちらの表題曲は「劇場版 ACMA:GAME 最後の鍵」の主題歌で、テレビドラマ版の主題歌「MEMORIES of the End」に続いてのタイアップとなります。
以前にLAに行ったときに、何度かコライトしたエリック・ロン(アメリカのソングライター)と一緒に、「ドロップ(※EDM楽曲などにおけるサビ)のカッコいい曲を作ろう」という話になって。カッコいいドロップができたからそれを使おうということで、そこにサビの歌詞を入れました。これは特に考えることなく、ドロップの前後の構成が、何かに呼ばれるようにスススッとできあがっていきました。「ACMA:GAME」のスタッフから「バラードのような雰囲気の曲を」というオーダーが来てたんですけど、ドラマが映画化されるにあたって、僕たちはこの曲が「ACMA:GAME」にすごく合うと思ったので、こっちから提案してみました。「こっちのテイストも合うと思いますが、どうですか?」と。その意見に向こうも納得してくださって、劇場版の主題歌に使われることになったんです。僕はめちゃくちゃ気に入ってます。
──ドロップ主体の構成といい、ある意味過激な音作りといい、これほど攻撃的な楽曲をリード曲としてリリースできる日本のバンドは、ほかにいないと思います。リリックはどんなイメージですか?
フェニックス=不死鳥は、いわゆる幻の生き物ですが、何度朽ち果ててもよみがえるというストーリーが、あの映画の中でもリンクするんじゃないかなと思っています。
──注目したいのは、後半に韓国語で歌っている部分があること。日本語のロックチューンで途中に韓国語が入るのは新しい試みだと思います。
韓国でライブをしたり、韓国の友達ができたりしたことも影響してますね。ただ、今はどの楽曲にも英語が自然に入ってくることが多いですし、その幅が広がったという程度にしか捉えてはいないので、特に深い意味はないです。自然に韓国語を混ぜてもいいかな?と思ったということです。
──すごくナチュラルに響きます。いろんな国の人が普通にUVERworldの曲を聴いている、という証明にもなっていると思います。燃え尽きても何度でもよみがるフェニックスのイメージも、UVERworldがこれまで歌ってきたメッセージと重なる部分が大きいと思います。
そうですね。
──この曲はもうライブで?
やってます。一番盛り上がってます。
CNBLUEジョン・ヨンファ参加「Countdown」
──では最後の1曲について。「PHOENIX」のカップリング「Countdown」には、CNBLUEのジョン・ヨンファが参加していますね。すごいゲストだと思いましたが、そもそも彼とはどんなつながりがあったんですか?
彼と同じ事務所のFTISLANDというグループと仲がよくて、FTISLANDのライブを観に行ったときに、ヨンファを紹介してもらいました。彼とは洋服の趣味が似ていたり、共感できる部分が多くて。そのあと彼のライブを観に行かせてもらって、彼もUVERworldのライブを観に来てくれたんです。食事をしたときに対バンをオファーされて、「ぜひやろう」ということになり、今年の6月に日本、7月に韓国で対バンをやりました。「いつか曲を作りたいね」という話をして、完成した曲「Countdown」のタイトルは、その対バンイベントの名前だったんです。
──なるほど。「Countdown」は、ひと足先にCNBLUE feat. TAKUYA∞ from UVERworldバージョンとしてリリースされているので、未聴の方はぜひチェックをいうところですね。
この曲については、ヨンファがニューヨークのコンポーザーとコライトして作ったトラックがあって、メロディはもう乗っかってたんですけど、「好きなようにいじってくれていいですよ」ということだったので、自分が「これがいいかな?」と思う部分はメロディをこっち側で提示させてもらいました。歌詞は全部日本語でいきたいという話だったので、一部英語も入ってますけど、基本は日本語で自分が全部書かせてもらいました。歌の内容は、まずお互いに似ている部分が多いという1つの大きな要素があって。自分たちではそうは思っていないんですけど、食生活や普段のトレーニングの内容から「ストイック」と言われることが多いんです。恋愛においては、相手の彼女から見たらマイナスな面も多々あると思うんですけど、それは友達としてはすごく「魅力的な欠点」だよね、みたいなところを歌詞として広げていきました。
──そういう、感情の細かい部分まで共有できる外国人の友人がいるというのは、素晴らしいと思います。TAKUYA∞さんの書いた歌詞に、彼は共感してくれましたか?
「めっちゃいい」と言ってくれましたね。
──TAKUYA∞さんにとってヨンファさんはどんな人ですか?
僕にとっては、かわいらしいチャーミングな弟みたいな感じですね。またライブを一緒にすることがあると思います。
──前のアルバムでも、SHUNTO(BE:FIRST)さんやANARCHYさんをフィーチャーした曲がありました。フィーチャリングものをやるときの、心構えみたいなものはありますか?
自分たちだけでやるよりも、大きな力を生み出すようなものにならなければいけないな、とは思います。
昔は自作パソコンで……最近の制作環境
──ちょっと話を変えて、制作環境の話を聞かせてください。だいぶ前にTAKUYA∞さんとお話ししたときに、UVERworldは1曲の中でさまざまなアレンジを試すので、データが重すぎて普通のパソコンでは開けないとか、ミックスは特定のスタジオでしかできないとか、そんな話を聞いた記憶があります。今は変わりましたか?
めちゃくちゃシンプルになりましたね。もう何かをする専用の機材とかはほぼ使わないです。昔は大きなラックに機材を詰め込んでましたけど、今はパソコン1台で作るので鍵盤も使わないです。
──それは機材的な進歩がそうさせたのか、バンドとして自然に、シンプルな作業を求めるようになっていったのか。
音を詰め込むのもいいんですけど、メロディの強さとか、歌詞の強さを本当に追求していくと、そうなるんですよね。音を重ねていくことに、曲の弱さを認めているような気がするというか。コードとメロディだけでいい曲、カッコいい曲を成立させていきたいなと思いますし、その中で、昔はいろんなひらめきを全部入れてしまって「こんなコードにこんな音を乗せちゃいますけど、どうですか?」みたいなことをやりたい時期もありました。でも今はもっとシンプルに、自分たちが長く聴いていられるものを意識しています。たくさん曲を生み出したいですし、1曲1曲に対する熱量は変わっていないですけど、1周2周、回った感じがしますね。
──実際、今回の新曲たちを聴いて、複雑な構成のわりにはストレートに耳に届いてくるなと思ったんですね。長く聴き続けているファンもたぶんそれを感じると思います。その方向性は、メンバーとも話し合って決めているんですか?
いえ、全然しないんですけど、思っていることはだいたい同じですね。ズレを感じることはないです。自分たちの気持ちのありようにタイムラグを感じることはない。みんな同じタイミングで「俺もそう思ってた」「そうだよな」みたいな。
──それこそがバンドだと思います。今、制作に関してはほぼメンバーそれぞれの自宅作業ですよね。
僕らはわりと早いタイミングでそうなりました。パソコンで曲を作るということも、もう25年ぐらい前からやっていますから。Logic(音楽制作ソフト)もバージョン4.5くらいのときからなので、音源も何もない状態で、分厚い説明書付き。アルバムの2、3枚目ぐらいから歌も自分で録ってます。
──バンドとしては相当早いですね。それは誰か、お手本になる人がいたんですか?
例えばTHE MAD CAPSULE MARKETSとかが、電子音を出していましたよね。そのからくりが当時は全然わからなくて、自分たちで模索してるうちにたどり着いた感じです。彼らはサンプラーを使っていたので、全然違うことをやっていたんですけどね。でもそのときは情報がなかったので、「これかな? これかな?」とすべて手探りで作っていましたね。まだMacがLogicに対応してない時代で、パソコンも自作して、マザーボードとかCPUを買ってきて、5万円ぐらいで作ったものを使ってました。
──そういう話を聞くと、歴史の深さを噛みしめるとともに、今のバンドの音作りの充実を強く感じます。「いいバンドの音」は時代によって変化していきますけど、TAKUYA∞さんの思う、今一番いいバンドの音というのはどういうものですか?
音に関していいか悪いかは、いわゆる一般の人たちにとってわからないところがあると思います。だから「カッコいいかどうか」だけだと思いますね。1音でカッコいいと思う音を作れるかどうか。いいか悪いかはわからないけど、カッコいいかどうかはみんなわかると思うので。
──それが今のUVERworldの音の基準。
そうですね。
結成25周年&デビュー20周年に向けて
──さあ、そしてこのリリースを経て、2024年が終わって2025年が始まります。今後、どんな活動を見せてくれますか。
2025年は結成25周年、デビュー20周年なので。そこに向けて、みんなでここまでやってこれたことと、これからもがんばっていこうっていうことで、ちょっとしたお祝いはしたいなと思っています。そのためにも曲をたくさん作ってますし。
──さっきの機材の話もそうですけど、25年経つとさまざまなことが変化していきます。今後もUVERworldは、変化していきそうですか?
そうですね。素直に何かが変わっていくんじゃないですか。時代の流れに沿うように変わっていくと思うんですけど、まったく変わらないのは、やっぱり僕は本当に歌が好きで、歌うことが大好きだということ。その思いが年々強くなってきているので、それも変わったことの1つですよね。昔より今のほうが歌が好きというのは。そういう自然な変わり方はたくさんあると思います。今、歌の練習をしまくってるんですよ。今になってできることが増えてきて、楽しいです。純粋にコントロールできるのが。
──最後におまけで質問させてください。UVERworldは対バンライブを主催していますけど、もっと大規模なフェスの開催を考えるとか、そういうことはありますか?
主催フェスですか? ないです。フェスって、いろんなバンドに気を使わないといけないじゃないですか。来年も出てもらいたいとか、そういうのもあるし、“社長業”みたいなことしなきゃいけないというのを、どこかでちょっと聞いたことがあって、それは俺には向いてないなと思ってます。
──余裕でできるような気もしますが。
ほかのバンドとは全部仲悪くてけっこう、みたいな感じなので。尖っていたいですね。
──呼ばれる分にはウェルカムだけど、ということですよね。
そうですね。僕はいつも、本番まで楽屋から出ないです。ほかの出演者とわいわいやってると、ステージに上がったときに一歩を強く踏み込めないというか。もうバチバチに研ぎ澄まして、ピリピリにしておいたほうが「かかってこい!」「俺たちが一番だ!」みたいなことを言いやすいので。
──ステージで見せる圧倒的な自信は、普段からそうやって研ぎ澄ましているんですね。言い方を変えると、ステージの上でのTAKUYA∞さんの堂々たる振る舞いは、ある意味自分で作っている部分もあると。
自然ではないですね。そんなにいつも堂々としていられるわけじゃないですから。今までやってきたこととか、日々走ってきたこととか、食生活とか、ステージに向かってやってきたことをしっかり思い出さないと、ステージ上で自信がなくなるので。ステージに出る前に不安になったときは、それまでやってきたこと思い出して自信を取り戻している感じです。
プロフィール
UVERworld(ウーバーワールド)
幼馴染のTAKUYA∞(Vo)と信人(B)らを中心に滋賀出身のメンバーで結成されたロックバンド。2005年7月にシングル「D-tecnoLife」でメジャーデビューを果たす。ライブハウスからホール、アリーナ、ドームまで1年を通してライブ活動を精力的に行い、2008年より毎年12月25日に東京・日本武道館でクリスマスライブを開催するなど、常に大きな注目を浴びる。2011年より男性限定ライブ「男祭り」を始め、2017年には埼玉・さいたまスーパーアリーナで約2万3000人の会場キャパシティを男性客のみで埋めるという日本記録を樹立。2019年12月に東京・東京ドームで約4万5000人の男性客を動員する「KING'S PARADE 男祭り FINAL」を行い、その日本記録を自ら更新した。2023年7月にアルバム「ENIGMASIS」を発表し、同年7月に神奈川・日産スタジアムでワンマンライブ2DAYSを開催。2日目は男性限定ライブ「UVERworld KING'S PARADE 男祭りREBORN at NISSAN STADIUM 6 VS 72000」として行い、約7万人を動員した。2024年2月よりライブツアー「UVERworld LIVE TOUR 2024」、女性限定ツアー「QUEEN'S PARTY 女祭り LIVE HOUSE TOUR 2024」を実施。3月にテレビアニメ「青の祓魔師 島根啓明結社篇」のオープニングテーマを表題曲としたシングル「Eye's Sentry」をリリースした。4月にハワイで女性限定ライブ「UVERworld QUEEN'S PARTY 女祭り THE FINAL in HAWAII 2024」を開催。12月4日にニューシングル「MMH」「PHOENIX」を2作同時リリースした。