アーバンギャルド|新体制になった3人がたどり着いた“2020年代のテクノポップ”

人を信じなかった男が、人を信じ、自分を信じるまで

浜崎 ……すごくくだらない話をしていいですか? 天馬から電話がかかってきたとき、耳で直接聞くのがしんどいのでスピーカーフォンにして会話してたんですよ。アルバムのことを話してたと思うんですけど、そのときちょうど母がいて。電話を切ったあとに「10年前のあなたたちは電話でも怒鳴り合いのケンカをしてたのに、おとなしく普通の会話をしてて成長を感じた」って言われて(笑)。

松永おおくぼ ははは!(笑)

浜崎 「昔は相手に話させる間を絶対に与えなかった天馬が容子の話を聞いてくれるようになった。天馬も大人になったねえ」と母が言ってくれて。接してる時間が長いから自分じゃわからないけど、第三者に言われると成長したんだなって感じますね。

松永 昔共演してたミュージシャンと会うと「なんかアーバンギャルドっていつも楽屋でケンカしてたよね?」って言われるんですよ(笑)。

おおくぼけい(Key)

おおくぼ ケンカっていうか、天馬くんが説教してた。

浜崎 すごい怒られてたんですよ。毎日。

松永 怒られてたっていうと僕がハラスメントをしてるみたいですけど、実際にはお互い様だったと思うんです。

おおくぼ 「#metoo」(笑)。

松永 当時の気持ちを考えると、たぶん自分のやりたいことができてないことへのジレンマがすごかったんです。

浜崎 MCも昔は一語一句全部決まってたんです。それを私がたまに忘れて、とちったりすると、ライブが終わって袖に引っ込んだらすぐ「なんであのときこれ言わなかったの?」ってすごい言われて。「えっ、私たち劇団員だったの!?」みたいな(笑)。

松永 役者を追い詰める園子温の演出みたいな(笑)。でも、今ではMCもラフにやれるようになってきたし。

浜崎 この前なんてラフにやりすぎて収拾が付かなくなったから「今度はちょっと決めとこうね」って天馬から言ってくれたんです(笑)。

松永天馬(Vo)

松永 2018年の中野サンプラザでのワンマンでは映像を流したりダンサーを呼んだりいろんな演出をやらせてもらったんですけれども、そのとき初めて自分がイメージしていたアーバンギャルドを現実にやれたので余裕が生まれたのかもしれないですね。あとはメンバーや関わってくれるスタッフを信頼できるようになりました。自分が言い過ぎなくても、みんないい曲を書いてくれるし、いいMVを作ってくれるようになってきたなって。

浜崎 やっと人を信じられるようになった!(笑)

松永 基本、人を信じない男なので。

おおくぼ そんな男が人を信じ、自分を信じ。

松永 そう。浜崎さんも自分を信じられるようになったわけですよ。

浜崎 「アーバンのボーカルが自分じゃなかったら」ってけっこう考えるんです。それで脳内で自分じゃない子に歌わせてみたりもするんですけど、たぶん私より背が低い女の子が歌ってたらこういう衣装にならないと思うし、もっと愛らしい顔の女の子だったら違う曲になってただろうし、自分って絶妙なポイントにいるなと思って。それまではもっとちっちゃくてロリータ服が似合う、1人では生きていけなそうな女の子がいいんじゃないかと思っていたんですけど、そういう子だったら誰も付いて行きたくないですよね。やっと自分自身がアーバンギャルドのボーカルとして大きい顔していいんだなって思えるようになりました。

松永 アーバンギャルドはオンリーワンなんです。YouTubeで公開した「あたしフィクション」のMVのコメント欄に「アーバンギャルドの代わりはいない」と書いてあったんですけれども、10年やってきて結局このようなバンドは後にも先にも出てこなかった。だから浜崎さんも誰かと比べる必要はないし、自分というアイコンは唯一無二なんだということに気付けたんじゃないですか?

浜崎 はい。ふふふ(笑)。

松永 自分を信じると書いて“自信”がついたんですよ。

おおくぼ どういうインタビューなんだ!?(笑)

浜崎 浜崎を励ます会、みたいな(笑)。でも確かに言われてみると“アーバンギャルドっぽいサウンド”はあっても、トータルのアプローチで後輩ミュージシャンが出てきてない気はします。

松永 バンドマンではあまりいないですね。アーバンギャルド的な精神性を持ったアイドルは今は多いですけど。

「私、アーバンギャルドでこういうの聴きたかった!」

──1月31日からテクノポップ・セットを主体としたツアー「URBANGARDE 2020 "TOKYOPOP TOUR”」が始まりますが、今作、そしてこれまでの曲がどんなふうに表現されるのか非常に楽しみです。

松永 「ライブはこうでなきゃいけない」っていう意識は、ある意味アイドルが1回解体したと思ってるんです。ライブハウスでは口パクやオケで歌ってはならないとか、ダンスを見せる場所ではないといった固定観念に対して、アイドルが「音楽の楽しみ方は自由なんだよ」っていうことを提示してくれたこともあって。僕らも今回のツアーは3人編成で行っていくので、解き放たれた内容になるんじゃないのかなと思っております。とはいえ、全国18カ所を回る過去最大本数のツアーなので、どうなってしまうのかわからないんですけれども。

おおくぼ 5月まで続く長いツアーなので、その間にライブアレンジもちょっと変わってくると思うんですよね。

松永 最後に浜崎さんから何か言っておきたいことありますか?

浜崎 このアルバムが完成して最初に思った感想が、「私、アーバンギャルドでこういうの聴きたかった!」なんです。今の自分たちの気分がより濃く出てるアルバムだし、こういうことをやってる人たちが存在していてほしかったって思えるものになったなって。きっと探してる人、多いと思います。こういう音を。

松永 皆さんが探してる音はアーバンギャルドにありますよ! 2020年に鳴らす音は「TOKYOPOP」です!

ツアー情報

アーバンギャルド「URBANGARDE 2020 "TOKYOPOP TOUR"」
  • 2020年1月31日(金)東京都 CreAto
  • 2020年2月8日(土)福岡県 INSA
  • 2020年2月9日(日)福島県 BACK BEAT
  • 2020年2月14日(金)愛知県 ell.FITS ALL
  • 2020年2月15日(土)静岡県 Shizuoka UMBER
  • 2020年2月23日(日・祝)宮城県 enn 3rd
  • 2020年2月29日(土)兵庫県 Star-Club
  • 2020年3月1日(日)大阪府 梅田Zeela
  • 2020年3月7日(土)埼玉県 浦和ナルシス
  • 2020年3月8日(日)千葉県 柏616
  • 2020年3月14日(土)北海道 Spiritual Lounge
  • 2020年3月15日(日)北海道 ミステリーツアー(FC限定)
  • 2020年3月21日(土)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
  • 2020年4月11日(土)香川県 sound space RIZIN'
  • 2020年4月12日(日)岡山県 PEPPERLAND
  • 2020年4月24日(金)京都府 LIVE HOUSE GATTACA
  • 2020年4月25日(土)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
  • 2020年4月26日(日)愛知県 X-HALL -ZEN-
  • 2020年5月5日(火・祝)東京都 赤羽ReNY alpha
アーバンギャルド