文化祭で「藤井隆のホットホット屋」がバカ売れしたんですよ

──まずお互いの印象から教えていただけますか？

松永天馬（アーバンギャルド）　藤井さんはお笑いの方ですけど、同時にポップアイコンという印象があります。中高生のときに「Matthew's Best Hit TV」というテレビ番組を友達もみんな観ていて、僕はどちらかというとサブカル的なひねくれ者なんですけど、そんな自分でも、すごくエッジィな番組という印象を持ってました。

藤井隆　（きょとんとした顔）

浜崎容子（アーバンギャルド）　マシュー（「Matthew's Best Hit TV」司会のMatthew南）は別人ですよね。

藤井　そう。だから「なんの話なのかな？」と思って。

松永　あ、すみません（笑）。すごく似てらっしゃる方が出ていた番組ですね。

藤井　ごめんなさいね（笑）。きっと彼も喜んでると思います！

浜崎　私10代の頃浅倉大介さんのファンだったんですよ。あとTommy february6さんもすっごく好きで、藤井さんはそのお二人の曲を歌ってらっしゃるじゃないですか。当時、聴いたときアガりました。

藤井　本当に？ ありがとうございます。この段階でお二人がよくできた方であることがわかりました。すっごく気を遣ってくださってね。うれしいです。

松永　（浜崎に）あの話、しなよ。

藤井　何？ どの話？ してして。

浜崎　あの、私の高校時代に藤井さんが「HOT! HOT!」で大ブレイクされたんですよ。そのとき文化祭でホットドッグ屋をやることになって、どうにかして売れないものかと、藤井さんの等身大パネルを勝手に作りまして……（笑）。「藤井隆のホットホット屋」って名前にして、「食べたらHOT! HOT!」みたいな。そしたらバカ売れしたんです。

藤井　なんか申し訳ないねー。当時はなんの考えもなくやってたし、あなたはもうレディやから言ってもいいと思うけど、「HOT! HOT!」って股間がどうにかなったみたいなことじゃない？ だから高校生のお嬢さんや、小さな子供さんがやってたって聞くと……。でも、売れたって聞いて、よかったって思いました。

浜崎　すぐ売り切れて、「どうしよう！ 藤井隆マジやべー！」みたいな。

藤井　僕、関係ないでしょ（笑）。まじめな話をするとね、誰とやりたいか聞かれてアーバンギャルド側から僕の名前を出してくださったって聞いて、本当にうれしかったんですよ。アーバンギャルドのファンの方ってすごく思いも……志も高いでしょうし。

浜崎　思いも重いです（笑）。

藤井　そういう方々がたくさん来られるところに、僕みたいなフワフワした者がお邪魔しちゃって「大丈夫かな？」って緊張してたんですけど、ライブをする前にこうしてお話できて、当日は楽な気持ちで入れそうです。

松永　うちのファンって基本的にポップなものが好きな人が多いですし、何よりアイドルが好きなんですよ。藤井さんはアイドルですよね。

藤井　そんなことないって。

実は藤井さん、こっち側の人間じゃないですか！

──お互いの音楽についてはいかがですか？

藤井　映像は前から観てたんですけど、アルバムは今日のために慌てて聴かせていただきました。映像から先に入ったせいもあるのか、音だけ聴いててもメンバーの皆さんが動き出すイメージが浮かぶんですよ。印象的な情報がいっぱいあるから、頭をすっごく使いました。ぼんやりとは聴けないというか、うかうかさせてくれへんというか。

浜崎　ありがとうございます。確かにアーバンギャルドは聴き流せないと思うんです。

松永　藤井さんの曲は僕も聴かせていただいてます。さっき言った藤井さんの圧倒的なポップアイコン性って、貴重だと思うんですよ。tofubeatsさんが藤井さんに再び歌ってもらいたいと「ディスコの神様」を作ったのはすごくわかるんですよね。若干の中性的な色気もあって、岡村靖幸さんと通じる部分もあるし、清 竜人25を先駆けた感じもあるし。

藤井　そんなそんな、おそれ多いわ。

浜崎　色気のある人が好きなんです。それこそ「HOT! HOT!」の頃から。

藤井　色気なんてめっそうもないけど、そんなに刺さってるの？ がんばってよかったー。

浜崎　大スターですよ。NGK（大阪・なんばグランド花月）に新喜劇を観に行ってましたもん。

藤井　ありがとうございます。でもめっそうもないです。吉本に入ったのも特に大きな動機はなくて、「若手劇団員募集」みたいなのになんとなく応募したら受かっちゃっただけやし。大学に行ってなかったので、土日に演劇とダンスと歌のレッスンがあるって聞いて、サークル感覚で。しかも就職して経理マンをしていたので、長続きするわけないって思ってたし。

松永　もともと演劇か何かやってらしたんですか？

藤井　全然。まったく興味がなかったです。テレビは観てたけど、僕の子供の頃は歌番組が多かったし。

松永　松田聖子さんがお好きだったんですよね。

藤井　でも、子供の頃はCMのディレクターになりたかったんです。実はアイドルには全然詳しくなくて、番組でご一緒することになってからアイドルのことを勉強したりしてたんですよ。聖子さんのレコードも1枚も持ってなくて……。

松永　えーっ、そうだったんですか！

藤井　「初めて買ったレコードは？」みたいな質問をされると、戸川純さんの「玉姫様」が答えです。

浜崎　えーっ！ えーっ！

松永　こっち側の人間じゃないですか！

藤井　小学校5年生かな。あの興奮をアーバンギャルドのステージにも感じますよ。

松永　僕も戸川さんは大好きです。2011年にツーマンやらせていただいたんですよ。新旧アングラ対決みたいになりましたけど。

藤井　「夜のヒットスタジオ」でトンボの羽を背負って歌ってらしたのを観て、すごく怖いし、子供ながらに不穏なものを感じたんです。うちはお小遣い制じゃなくて、欲しいものがあったら申請することになっていたので、母に「昨日テレビで観た戸川さんのレコードが買いたい」って言ったら「いいですねえ（笑）」って笑顔で許可してくれまして。翌日レコード屋さんに行って「これください」って言ったら、店のおじさんに「君がかい？」って驚かれて。「はい」って答えたら、「これを聴いて気に入ったら、次はヤプーズがあるからね」って次に聴くものを薦められました（笑）。