メンバーの中でもっとも多くのバンドに在籍し、もっとも多くのミュージシャンとセッションしてきた川西幸一(Dr)。バンドの屋台骨を支える最年長メンバーであり、チャーミングな愛されキャラでもある彼が語る“ユニコーン論”は、ストイックかつパッションにあふれるものだった。
僕は一番「再結成は絶対ありえない」と言い張ってた
──30周年を迎えてどうですか?
30年も経つんだよね。日々を大切に生きてたら30年経ってたって感じだけど、あっと言う間でしたね。特にみんなと会ってなかった16年間が、あっと言う間だった。
──あ、そうなんですね。
結局、解散前は6年しかやってないけど、それが10年とか20年くらいに思える時間だったから、そっちよりはメンバーと会ってなかった16年のほうがあっと言う間だった。だけど最初の6年間が「長かったなあ」って感じではないんだよ。濃かったんだよ。
──ものすごく濃くて充実感があった?
いや、充実感を感じる暇がなかった(笑)。忙しすぎて、よくわかんなかったんでしょうね。若いから物事がどうなってるのかわからないし。
──濃厚な6年間が終わって、解散したときはどう思ったんですか?
あんまり迷いはなかったですね。広島にいた頃から「プロになろう!」っていうんじゃなくて、「プロになれるだろう」って感じだったし。プロになるのが当たり前で、そこからどうするかだったから。解散してからどんどん、いろんなバンドをやっていった。
──再結成の話が来たときはどんな感じだったんですか?
僕は一番「再結成は絶対ありえない」と言い張ってた。なんでかって言うと、解散したときに、たくさんの人を泣かせたから。でもそれは前に進むためにやったわけだから、そこは落とし前を付けないといけないと思ってた。僕の考えを読んでたのかどうかはわからないけど、阿部くんに呼び出されて話をしたときは、再結成という話じゃなくて、「今は川西くんも含めて5人共いろいろやってるんだけど、音楽の現場から離れているヤツは1人もいない。みんな現役でやってる。今の5人が集まって音楽を作ったらどんなものが生まれるのか興味があって、聴いてみたいんだよね」ってことだったから、「それは面白いだろうね」って言った。その時点でアルバムを作って、ツアーをやるという話は、一切出なかった。言ってみれば「そのへんのリハスタに入って、やってみようか? まだやれるじゃん」みたいなノリだったから、「ほかのメンバーがいいって言うならいいよ」って。で、始まってみたら、みんなすごく成長してるわけじゃないですか。違うジャンルの音楽もやってたりして、その分面白かった。アルバムを出すということではなくて、とにかくレコーディングしてたんですよ。で、気付いたらスタジオ代も使ってて、「これはどうなるの?」って。
──スタジオ代は割り勘だったんですか?
いやいや、それはSMAが払ってくれたんですよ。今考えれば、術中にハマってたんでしょうね(笑)。そうやって作っていって、曲が溜まっていくと、僕らも人に聴いてもらいたいと思うじゃないですか。
──自分でも納得いく出来ではあった?
ありました。けっこう面白いのができたなと思ったし、それぞれの持ってる力もすごいなと思ったし。そっからですよね、「『シャンブル』をアルバムという形で出そう。ツアーをやろう」ってなったのは。
──そうなったら完全に再結成ですよね。
そうですね。今は面倒くさいので再結成って言ってますけど、9年前は“再始動”って言ってたんですよ。再結成って言いたくなかった、今はどうでもいいんですけど。ツアーをやろう、アルバムを出そうってなったときに、僕は「バンド名も変えよう」って言ったんです。全然関係ないバンド名にしようって。「5人が集まってるんだから、名前なんてどうでもいいじゃん」って本気で言ったら、「変えてもいいけど、変えるのも面倒くさくない? 考えるのも面倒くさくない?」ってなって、「ま、いっか」っていう(笑)。
──覚悟としてはそれくらいだったんですね。 つまり前とは違う5人だった?
そうです。前とはまったく違いますからね。テッシーなんてまったく違いますから。
──具体的にどう違ったんですか?
だって、前はテッシーは横向いたら見えなかったからね、痩せててペラペラで。今はどっちを向いてもテッシーですから(笑)。それにしても、あれからもう10年近くも経ったのかっていう。
──解散前の活動期間を超えてるんですよね。
そうなんですよ。でも、ライブの数は解散前に全然及ばない。僕の場合、ライブの数=生きてる数なんだよね。
「シャンブル」で初めて本当のバンドになった
──今回、リマスタリングされた中で、思い入れのあるアルバムを教えてください。
全部っちゃ全部なんですけど、まあ、「服部」と「シャンブル」なんじゃないですかね。「服部」で今のユニコーンの音楽へと進む道ができたと思うんですよ。その前の2枚を作ったあと、成長してやっとスタートラインに立てた。僕の中では解散以前の6年間もユニコーンっていうバンドなんですけど、それから長い年月が経って成長して、「シャンブル」でもっと違うバンドになった。名前を変えようって言ったのは、それもあるんです。「シャンブル」で初めて本当のバンドになったんじゃないかなと思って。
──それは川西さんの実感として?
バンドって、音楽だけじゃないと思うんですよ。昔は完全に音楽でつながってた。今もそれはあるんですけど、人としてつながってるところもあるんですよ。僕の中では大きい変化です。昔もバンドはバンドなんだけど、以前の6年間は「シャンブル」を作るためのバンドだったんじゃないかと思います。
──「シャンブル」を作るべきバンドだったけど、1回解散しないと「シャンブル」には至らなかった。
そう。解散は必然だったと思いますね。
──そして今は音楽でも人間的にもつながってる。
つながってると思いますよ。でも濃いんで、一緒にいると疲れるんですよ(笑)。
──ちなみに「シャンブル」の制作時で覚えていることは?
演奏もそうだけどレコーディングがすごく面白くて、そのときに流れている空気感が以前と違うものだった。メンバーがお互いに攻めながら、お互いをリスペクトしてる。その感じがレコーディングの間に流れていて、それが前と違うと思ったんですよ。「あ、このための16年間、このためのそれ以前の6年間だったんだ」って。
──それはすごいことですね。
当時は若いっていうのもあるし、照れくさいというのもあるけど、今は歳を取って恥ずかしさがなくなってきたからかわかんないですけど、今、5人が集まってる状態が最強だと思ってます。
──前はそれを言うのが恥ずかしかった?
恥ずかしかったですね。でも今は臆面もなく言えます。だからもし誰かが鬼籍に入ってしまったら、バンドの存続はあり得ないでしょうね。替えが効かないので。でも、バンドっていうのは本来そういうものじゃないのかな。
何も考えてないんじゃないですかね
──これからのユニコーンはどうなっていくと思いますか?
みんなもそうだと思いますけど、何も考えてないんじゃないですかね。どうしようかとか、どこ行こうかとか、どこを目指すとかじゃなくて、集まってアルバムを作ってツアーをやって、「じゃっ!」ってバラバラになって。次に会うときには、その間何をやってたかってことじゃないですか。それでまた一緒にやるっていうのがうれしい。そういうことだと思うんですよね、5人共。
──今回の「UC30若返る勤労」ツアーについて何か構想は?
まだなんも考えてないですね。今の5人が集大成みたいな作品を出して、「若返る勤労」っていうツアーをやる。大事なのは、これまでやってきた(椅子のある)ホールじゃなくて、Zeppっていうライブハウスでやるってこと。お客さんとの距離感、空気感が大切。これまで番外編としてZeppでやったことはあったけど、今回はツアーとしてやる。その提案を聞いたときに、電大はお客さんと距離が近いツアーをすでにやってるって思った。誰かがMCやってるときに、横で私語をしてるヤツがいる、みたいな。勝手にやるなみたいな(笑)。そういうライブハウスの空気感って、忘れちゃならないことだと思うんですよ。ツアーの意気込みと言うか、目標としてはそこですね。“みんな”とライブができれば、それが一番いいんじゃないかな。
最初の事件は、2枚目の「PANIC ATTACK」のジャケットで、僕が急にモヒカンになったじゃないですか。あれね、22、23歳のときに弟がモヒカンにしてたんですよ。「いつか俺もやりたい」とずっと思ってた。で、デビューアルバム「BOOM」を出したときに、ロックっぽくない、アイドルっぽい感じでプロモーションされて、「何か違うぞ?」と思って、なんか一発謀反を起こそうと思った。「PANIC ATTACK」のレコーディング期間中に、朝起きて、ハタと思って髪を切りに行って「モヒカンにしてください」って言ったんです。そのままレコーディングに行ったら、メンバーが僕の目の前を通っても、無視して通り過ぎていく。モヒカンにしたついでに、眉も剃ってもらったの。メンバーは「なんか怖い人がいる」って思ったらしい。で、スタジオに「おはよう!」って入っていったら、「何、それ!」ってやんやと喜んでくれた(笑)。その後、「断りなく髪を切るな」ってマネージャーと揉めたんだけど、結局、「PANIC ATTACK」のジャケットはああなりました。
あとアルバム「ヒゲとボイン」に入ってる「黒い炎」で民生がドラムを叩いてることですね。バーッと勢いで叩ける曲だったから、自分へのご褒美に最後にレコーディングしようと取っておいたんです。あれを含めて3曲を残した時点で、河口湖のスタジオから東京に帰ることになった。夜、楽器を片付けてたら、駐車場のアスファルトに真っ黒いウレタンのでっかい板が置いてあって、僕はそれに気が付かなくて、バーッと走っててつまづいて転んだんですよ。手を打って痛かったんだけど、東京に帰って「黒い炎」ともう2曲を録ろうとしたら、手が動かない。病院に行ってレントゲン撮ったら、「骨は大丈夫です」と言われて、2曲を録ったんだけど、また痛くなってきた。「おかしいぞ?」と思ってまた病院行って、もう1回レントゲンを撮ったら「ヒビが入ってますね」と。「マジか!」ってなって、そう思った瞬間にすごく痛くなって、病院から民生に電話して「民生、叩かない?」って言ったの。「どうしたの?」って聞くから、「ヒビが入ったみたい」って答えたら「マジ?」つって。それで「黒い炎」は、民生にドラムを叩いてもらいました。まあ、そもそもゆっくり歩けって話ですよね(笑)。
- ユニコーン「UC30 若返る勤労」
- 2017年12月6日発売 / Ki/oon Music
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[ボックスセット]
37800円 / KSCL-2981~96
- DISC 1 「BOOM」
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- Hystery-Mystery
- Game
- Maybe Blue
- Concrete Jungle
- Limbo
- Sweet Surrender
- Alone Together
- Sadness
- Fallin' Night
- Pink Prisoner
- DISC 2 「PANIC ATTACK」
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- I'M A LOSER
- HEY MAN!
- SUGAR BOY
- 抱けないあの娘 -Great Hip in Japan-
- FINALLY
- シンデレラ・アカデミー
- サービス
- ペケペケ
- SHE SAID
- 眠る
- ツイストで目を覚ませ -Twistin’in Suits’85-
- DISC 3 「服部」
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- ハッタリ
- ジゴロ
- 服部
- おかしな2人
- ペーター
- パパは金持ち
- 君達は天使
- 逆光
- 珍しく寝覚めの良い木曜日
- デーゲーム
- 人生は上々だ
- 抱けるあの娘
- 大迷惑
- ミルク
- DISC 4 「ケダモノの嵐」
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- 命果てるまで
- フーガ
- ロック幸せ
- ケダモノの嵐
- エレジー
- 自転車泥棒
- 富士
- リンジューマーチ
- スライム プリーズ
- CSA
- いかんともしがたい男
- 夜明け前
- 働く男
- スターな男
- DISC 5 「おどる亀ヤプシ」
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- 初恋
- ママと寝る人
- 12才
- ボサノバ父さん
- PTA ~光のネットワーク~
- 俺の走り
- DISC 6 「ハヴァナイスデー」
-
- ハヴァナイスデー
- 魚の脳を持つ男
- 鼻から牛乳
- レベル
- $2000ならOKよ
- 東京ブギウギ
- DISC 7 「ヒゲとボイン」
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- ターボ意味無し
- 黒い炎
- ニッポンへ行くの巻
- 開店休業
- 幸福
- 看護婦ロック
- 立秋
- ザ・マン・アイ・ラヴ
- フリージャズ
- 風
- 家
- Oh,What a Beautiful Morning
- 風II
- 車も電話もないけれど
- ヒゲとボイン
- DISC 8 「SPRINGMAN」
-
- 与える男
- 金銀パールベイビー
- 時には服のない子のように
- すばらしい日々
- アナマリア
- オールウェイズ
- 素浪人ファーストアウト
- あやかりたい'65
- 音楽家と政治家と地球と犬
- 裸の王様
- 薔薇と憂鬱
- 甘い乳房
- スプリングマンのテーマ
- 月のワーグナー
- 8月の
- DISC 9 「シャンブル」
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- ひまわり
- スカイハイ
- WAO!
- ボルボレロ
- ザギンデビュー
- キミトデカケタ
- オッサンマーチ
- AUTUMN LEAVES
- 水の戯れ ~ランチャのテーマ~
- BLACKTIGER
- 最後の日
- R&R IS NO DEAD
- サラウンド
- パープルピープル
- HELLO
- DISC 10 「Z」
-
- 頼みたいぜ
- Z LIFE
- デジタルスープ
- 手島いさむ物語
- AGONY
- SAMURAI 5
- 明日
- ゆめみら
- ウルトラヘブン スーパーマイルド
- オレンジジュース
- いい雨
- ライジングボール
- さらばビッチ
- 裸の太陽
- DISC 11 「ZII」
-
- 手島いさむ大百科
- レディオ体操
- ぶたぶた (ZIIver)
- いちじく
- メダカの格好
- 晴天ナリ
- DISC 12 「イーガジャケジョロ」
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- イーガジャケジョロ
- 夢見た男
- Boys & Girls
- あなたが太陽
- 早口カレー
- We are All Right
- KEEP ON ROCK'N ROLL
- 俺のタクシー
- ユトリDEATH
- トキメキーノ
- お前BABY
- それだけのこと
- 鳥の特急便
- Feel So Moon
- DISC 13 「ゅ 13-14」
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- すばやくなりたい
- オーレオーレパラダイス
- サンバ de トゥナイト
- 僕等の旅路
- 道
- ハイになってハイハイ
- マッシュルームキッシュ
- TEPPAN KING
- マイホーム
- CRY
- エコー
- 第三京浜
- 風と太陽
- フラットでいたい
- DISC 14 「アルバム未収録曲集」
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- ブルース
- サマーな男
- 雪が降る町
- お年玉
- 忍者ロック
- はいYES!
- かきまZ!
- ギンギラギンのスニーカー
- DISC 15 「半世紀 No.5」
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- 半世紀少年
- 川西五〇数え唄
- NEW甘えん坊将軍
- ゴジュから男
- ロック! クロック! オクロック!
- 私はオジさんになった
- TAIRYO
- VERTIGO
- RAMBO N°5
- 50/50
- ユニコーンツアー2017「UC30 若返る勤労」
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- 2017年12月6日(水)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年12月7日(木)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年12月9日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
- 2017年12月12日(火)東京都 Zepp Tokyo
- 2017年12月13日(水)東京都 Zepp Tokyo
- 2017年12月16日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2017年12月19日(火)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
- 2017年12月21日(木)愛知県 Zepp Nagoya
- 2017年12月23日(土・祝)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2017年12月24日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- ユニコーン
- 1986年に広島で結成。翌1987年にアルバム「BOOM」でメジャーデビューを果たす。メンバーは奥田民生、EBI、手島いさむ、川西幸一、ABEDONの5人。全員が楽曲制作に携わりボーカルを取るフレキシブルなスタイルで、オリジナリティあふれる活動を展開する。「大迷惑」「働く男」「雪が降る町」「すばらしい日々」など数々のヒット曲を生み出すも1993年に惜しまれつつ解散。その後はそれぞれソロ活動を展開していたが、2009年に16年ぶりに再始動。2月にシングル「WAO!」とアルバム「シャンブル」を発表し、3月より全国ツアー「蘇える勤労」を開催した。それぞれソロ活動と並行してユニコーンとしての活動も行い、メンバーが50歳を迎えた際には「50祭」と銘打ったライブイベントを実施した。2017年10月にデビュー30周年を迎え、12月にリマスタリングボックス「UC30 若返る勤労」リリース。同月より全国ツアー「UC30 若返る勤労」を開催する。