
EBIがインタビュー場所に選んだのは、横浜のウオーターフロントにある、港が見渡せる開放的な商業エリア。取材を行ったレストランの近くにあるパシフィコ横浜では、2年前の2015年に彼の生誕50年を祝う「ユニコーンEBI50祭 海老乃大漁祭」が行われた。スタイリッシュな彼にふさわしい空間で、EBIは自身の“今”を形作った30年間の出来事を語ってくれた。
「東京に出てきて30年」という感覚
──今日はどうしてこの場所を選んだんですか?
僕、この辺、大好きなんですよ。住まいも横浜で、東京にいるよりも長い。通算すれば15年くらいかな。
──最大の魅力は?
人が少ないのと、東京に比べて街もきれいだし、海沿いっていうのも好きですね。だから神戸も好きだし、長崎も好きです。そういうところが好きみたいですね。
──いわゆる港町ですね。でも「港町ブルース」みたいな曲は書いたことがないですよね?
うははは(笑)。ないっすけど、今後、書くかも(笑)。
──デビュー30周年を迎えてみてどうですか?
今年に入ってから「あ、30周年か」って感じでした。ユニコーンに関しては、途中で間が空いているわけですし、ユニコーンに限らずほかの音楽活動も続けてきたわけなんで、「ああ、東京に出てきて30年経ったんだ」っていう。
──「東京に出てきて30年」という感慨なんですね。
うん。ユニコーンのデビューは、1987年の10月21日なんですよ。ちょうど30周年の今年の10月21日に「おおー!」って昔を回想しましたね。
──泣いたりしたんですか?
泣きはしないですけど(笑)、ちょっとジワジワきましたね。ほんのちょっとだけ。
──そのときに思い出したことは?
うーん、87年10月21日、その日のこと。僕たちにとってはデビューアルバムの「BOOM」が発売された日だった。その日は確か、みんなですぐ近くのレコード店に行ったんですよね。「近所のレコード店は、もうすごいことになってるんだろうな。宣伝のポスターがバーッと貼られて、アルバムもいっぱい並んで、みんなが買ってるんだろうな」みたいな想像をしてたんですが、行ったら何もなくて(笑)。「あれ? 何かの間違いなのかな? 今日じゃないのかな?」ってくらいびっくりしました。「BOOM」は1枚も置いてなかった。
──みんなで「あれ?」ってなった?
うん。それがホントに思い出されちゃって。
──そういう意味では、今回のボックスセットの発売日には、店の中の飾り付けが全部ユニコーンになってて……。
はははは!(笑) それを望みます。そうしてもらえるとうれしいです。
これが古巣ってことなのかなー
──さっき言ってましたけど、ユニコーン30周年であると共に、上京30周年ってことなんですね。
そうですね。あとは30年間、バンドを続けてこれたっていう。ユニコーン以外でもいろいろあったんで、よくここまで来れたなっていう感じです。
──ユニコーンの解散のときに思ったことは?
今思うと、ユニコーンでは信じられないくらいめいっぱいやってたから、6年間の後半は疲れてましたね。若いっていうのもあったし、先が見えないし。なんて言うんでしょう、必死だったんですよ。それが若さなのかもしれないけど、とにかく終わりのほうは、ホッとするではないですけど、解散してソロで自分の思う道をやりたいと思ってました。
──ちなみにデビュー以降、楽しかったことは?
もちろんありましたよ。基本は楽しくできたんですよ。取材もレコーディングもツアーも忙しいんだけど、やっぱり若いときじゃないと経験できないことを経験できた。それがよかった。でも、楽しいことがあれば大変なこともある。いろいろありましたけど、考えてみたらあの時期があったから、今までできてるわけですから。ただあのときは、「もう、いいかな」っていう感じでしたね。あのメンバーであのまま続けるのは無理だった。みんなそうだった。だからホッとしたと思うんです。「6年間ちゃんとやったね」っていう。
──ユニコーンの解散から再結成までの間で、一番覚えていることは?
やっぱりARBに入ったことですかね。大好きだったバンドに入って活動できたことは、すごく大きかったです。
──再結成のときは?
再結成の前に、みんなで集まって音を出したんですよね。スタッフの披露宴パーティで、ひさしぶりに5人で集まって、昔の曲を3曲か4曲やった。ホントにひさしぶりに会ったんですけど、なんかひさしぶりな感じがあんまりしなくて。解散してから16年間、全員そろっては会ってないのに、全員で音を出したら、ものすごく楽しかった。だから今があるんですけど。
──そこから今まで続いている。
集まったときに何も感じなかったら、今はないです。そのときに「いやあ、これ、楽しいね!」って思ったんですよ。興奮したと言うか。「これが古巣ってことなのかなー」って。
──初めての感じ?
初めての感じです。16年間空いてるんだけど、空いてたからよかったのかもしれない(笑)。とにかく「ここが自分の居場所! 楽しい! うれしい!」、そういう場所だったんですよね。それがすごく不思議で、その日は家に帰っても興奮して寝られないくらい幸せな気持ちでした。
──あれから8年経って、解散前の活動期間より長くなりました。
期間は長いですけど、内容的には昔と比べようがないです。今はゆるゆるですから(笑)。
最初の目標は、まず60歳まで
──今回、ボックスセットがリリースされますが、この中で思い入れのある作品はありますか?
いや、特にないです(笑)。あ、言うなれば初めて曲を書いたのが、1枚目の「BOOM」に入ってる「Alone Together」だった。上京してすぐに、夜中に徘徊して、口ずさみながら作った思い出がありますね。
──自分から曲を書こうと?
たぶん民生が言ったんですよ、「みんな、作ろう」って。そのときに、自分で曲を作ろうとか歌おうとかまったく思ってなかった。民生が「みんな、曲も作って、詞も書いて、歌も歌って」ってことを最初から言ってた。ABEDONが入ってきたら、ABEDONも曲が書けるし、歌も歌えるし、そこでまた相乗効果が生まれて。
──今回、「BOOM」を聴いてみてどうでしたか?
かわいらしいなあって(笑)。記念っちゃ記念ですからね。レコーディングした六本木ソニーとか、信濃町ソニーのスタジオを思い出しましたね。たまに「Maybe Blue」とか昔の曲を「やろうか?」「やろうやろう」って言ってやったりするんです。民生が昔の歌を歌うと、歌い方とか声の出し方はまったく違うのに、ちょっと昔の感じが出る。それが面白いなって。
──EBIさんは再結成後、自分で曲を書いたり、ハンドマイクで歌ったり、果てはラップまでやってる自分をどう思ってるんですか?
昔とは全然違う。なんでもありと言うか、とにかくなんでもやってみたいなというのはありますね。昔は歌うのなんてイヤだったし、曲を書くのも「えー!?」って感じだった。それが、やっていくうちになんとなく面白みがわかってきてる。
──曲を書く面白さが?
うん、苦しみもわかるし。いろいろできたほうが楽しい。あれがラップと言えるかどうかわかんないですけど(笑)。
──いやいや、立派なラップでしょう。
なんか、昔はやらされていた部分もあったんですけど、再結成後はもう率先してやってますよ。「大漁祭」では“サブちゃんカツラ”を付けたり、演歌っぽく歌ってみたり。
──以前だったら考えられない?
そうですね。それが今は自分の意思、自分の表現としてやってますから。やっぱり若いうちは凝り固まってますから、美意識が高い。だから自分のやりたいこと、こうでありたいというのが狭くて強い! それが、だんだん周りが見えてきて、こんなに面白いことがあるんだって思うようになった。今は本当にカッコ悪いとは思わないからね。「大漁祭」のときにハッピを着たりカツラを被ったり、全然カッコいいと思ってる。
──革命ですね。
革命ってほどじゃないですけど(笑)。いろんなバンドをやって、いろんな人と会って、それなりに時間も経過して……解散してからは大変なことのほうが多かった。だから今できることのありがたみと言うか、そういう気持ちが自然にあるんじゃないですかね。
──これからのユニコーンはどうなっていくと思いますか?
もっとラクに、もっと肩の力を抜いてやろうよって感じはします。がんばらなくていいと思うんですよ。とにかく、自分たちのことを考えてればいい。自分たちがやりたい、いたい場所であればいい。だから無理する必要はない。みんながいたいと思える環境が作れるように、これからももっともっと力を抜いて、ゆっくりゆったりとできたらいいなと思ってます。
──ってことは、あと10年くらいはやります?
みんなが健康でいられるかっていうのが一番です。自分も健康でいなきゃいけないし。たいした努力ではないんですけど、体に気を付けてやっていこうと思ってます。いつまでもステージに上がっていたい、死ぬまでステージに上がっていたいと言うのが自分の気持ちですね。最初の目標は、まず60歳まで。
──川西さんはもうすぐ60歳ですよ。
そうだ、あはははは(笑)。あと2年ですね。川西さんは大丈夫! 100歳まで生きるって言ってますよ、僕たちを看取るって(笑)。
──ツアー「UC30 若返る勤労」についてはいかがですか?
何が若返るかわかんないですけど、古い曲をいっぱいやるんじゃないかな。今と昔と、五分五分くらいはやるんじゃないの? せっかくの30年だし、節目なんで。
──せっかくだからラップもやってくださいよ。
ラップかあ……あはははは(笑)。

話せないことが多いんだよなあ。若い頃はいろいろみんなに迷惑をかけたと思います。初期の頃にライブにベースを忘れていったことがありますね。デビュー前、都内のライブハウスでのライブだったんですけど、自分の楽器っていうものを意識してなくて、「ライブハウスだから、行ったらあるんじゃないの」とか思ってて。だけど、あるわけない!(笑) 取りに帰りましたよ。でも、そのあとアンプも忘れました……。
川西さんが抜けたことも大きかったなあ。でもその前に、最初に辞めるのは僕だって思われてた。事務所サイドからは要注意人物だったって、あとから聞きました。ホントに僕、心配されるんですよね。なんでなんだろうって、自分では思い当たらないんですけど、たぶん、あんまり意思表示をしなかったからですかね。欲がない、ガツガツしてなかったから、逆に別のところにパッと行っちゃうと思われてたのかな。でも、執着がなかったわけではないんですよ。
まあ、個人的に行った海外旅行では財布盗まれたりとかありましたけど、ユニコーンの活動においてではないですからね。基本的に、僕には事件があんまりない。自分で覚えてないだけかもしれないけど(笑)。
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			川西幸一 インタビュー
		
- ユニコーン「UC30 若返る勤労」
 - 2017年12月6日発売 / Ki/oon Music
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[ボックスセット]
37800円 / KSCL-2981~96 
- DISC 1 「BOOM」
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- Hystery-Mystery
 - Game
 - Maybe Blue
 - Concrete Jungle
 - Limbo
 - Sweet Surrender
 - Alone Together
 - Sadness
 - Fallin' Night
 - Pink Prisoner
 
 
- DISC 2 「PANIC ATTACK」
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- I'M A LOSER
 - HEY MAN!
 - SUGAR BOY
 - 抱けないあの娘 -Great Hip in Japan-
 - FINALLY
 - シンデレラ・アカデミー
 - サービス
 - ペケペケ
 - SHE SAID
 - 眠る
 - ツイストで目を覚ませ -Twistin’in Suits’85-
 
 
- DISC 3 「服部」
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- ハッタリ
 - ジゴロ
 - 服部
 - おかしな2人
 - ペーター
 - パパは金持ち
 - 君達は天使
 - 逆光
 - 珍しく寝覚めの良い木曜日
 - デーゲーム
 - 人生は上々だ
 - 抱けるあの娘
 - 大迷惑
 - ミルク
 
 
- DISC 4 「ケダモノの嵐」
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- 命果てるまで
 - フーガ
 - ロック幸せ
 - ケダモノの嵐
 - エレジー
 - 自転車泥棒
 - 富士
 - リンジューマーチ
 - スライム プリーズ
 - CSA
 - いかんともしがたい男
 - 夜明け前
 - 働く男
 - スターな男
 
 
- DISC 5 「おどる亀ヤプシ」
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- 初恋
 - ママと寝る人
 - 12才
 - ボサノバ父さん
 - PTA ~光のネットワーク~
 - 俺の走り
 
 
- DISC 6 「ハヴァナイスデー」
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- ハヴァナイスデー
 - 魚の脳を持つ男
 - 鼻から牛乳
 - レベル
 - $2000ならOKよ
 - 東京ブギウギ
 
 
- DISC 7 「ヒゲとボイン」
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- ターボ意味無し
 - 黒い炎
 - ニッポンへ行くの巻
 - 開店休業
 - 幸福
 - 看護婦ロック
 - 立秋
 - ザ・マン・アイ・ラヴ
 - フリージャズ
 - 風
 - 家
 - Oh,What a Beautiful Morning
 - 風II
 - 車も電話もないけれど
 - ヒゲとボイン
 
 
- DISC 8 「SPRINGMAN」
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- 与える男
 - 金銀パールベイビー
 - 時には服のない子のように
 - すばらしい日々
 - アナマリア
 - オールウェイズ
 - 素浪人ファーストアウト
 - あやかりたい'65
 - 音楽家と政治家と地球と犬
 - 裸の王様
 - 薔薇と憂鬱
 - 甘い乳房
 - スプリングマンのテーマ
 - 月のワーグナー
 - 8月の
 
 
- DISC 9 「シャンブル」
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- ひまわり
 - スカイハイ
 - WAO!
 - ボルボレロ
 - ザギンデビュー
 - キミトデカケタ
 - オッサンマーチ
 - AUTUMN LEAVES
 - 水の戯れ ~ランチャのテーマ~
 - BLACKTIGER
 - 最後の日
 - R&R IS NO DEAD
 - サラウンド
 - パープルピープル
 - HELLO
 
 
- DISC 10 「Z」
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- 頼みたいぜ
 - Z LIFE
 - デジタルスープ
 - 手島いさむ物語
 - AGONY
 - SAMURAI 5
 - 明日
 - ゆめみら
 - ウルトラヘブン スーパーマイルド
 - オレンジジュース
 - いい雨
 - ライジングボール
 - さらばビッチ
 - 裸の太陽
 
 
- DISC 11 「ZII」
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- 手島いさむ大百科
 - レディオ体操
 - ぶたぶた (ZIIver)
 - いちじく
 - メダカの格好
 - 晴天ナリ
 
 
- DISC 12 「イーガジャケジョロ」
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- イーガジャケジョロ
 - 夢見た男
 - Boys & Girls
 - あなたが太陽
 - 早口カレー
 - We are All Right
 - KEEP ON ROCK'N ROLL
 - 俺のタクシー
 - ユトリDEATH
 - トキメキーノ
 - お前BABY
 - それだけのこと
 - 鳥の特急便
 - Feel So Moon
 
 
- DISC 13 「ゅ 13-14」
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- すばやくなりたい
 - オーレオーレパラダイス
 - サンバ de トゥナイト
 - 僕等の旅路
 - 道
 - ハイになってハイハイ
 - マッシュルームキッシュ
 - TEPPAN KING
 - マイホーム
 - CRY
 - エコー
 - 第三京浜
 - 風と太陽
 - フラットでいたい
 
 
- DISC 14 「アルバム未収録曲集」
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- ブルース
 - サマーな男
 - 雪が降る町
 - お年玉
 - 忍者ロック
 - はいYES!
 - かきまZ!
 - ギンギラギンのスニーカー
 
 
- DISC 15 「半世紀 No.5」
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- 半世紀少年
 - 川西五〇数え唄
 - NEW甘えん坊将軍
 - ゴジュから男
 - ロック! クロック! オクロック!
 - 私はオジさんになった
 - TAIRYO
 - VERTIGO
 - RAMBO N°5
 - 50/50
 
 
- ユニコーンツアー2017「UC30 若返る勤労」
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- 2017年12月6日(水)福岡県 DRUM LOGOS
 - 2017年12月7日(木)福岡県 DRUM LOGOS
 - 2017年12月9日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
 - 2017年12月12日(火)東京都 Zepp Tokyo
 - 2017年12月13日(水)東京都 Zepp Tokyo
 - 2017年12月16日(土)北海道 Zepp Sapporo
 - 2017年12月19日(火)宮城県 チームスマイル・仙台PIT
 - 2017年12月21日(木)愛知県 Zepp Nagoya
 - 2017年12月23日(土・祝)大阪府 Zepp Osaka Bayside
 - 2017年12月24日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
 
 
- ユニコーン
 - 1986年に広島で結成。翌1987年にアルバム「BOOM」でメジャーデビューを果たす。メンバーは奥田民生、EBI、手島いさむ、川西幸一、ABEDONの5人。全員が楽曲制作に携わりボーカルを取るフレキシブルなスタイルで、オリジナリティあふれる活動を展開する。「大迷惑」「働く男」「雪が降る町」「すばらしい日々」など数々のヒット曲を生み出すも1993年に惜しまれつつ解散。その後はそれぞれソロ活動を展開していたが、2009年に16年ぶりに再始動。2月にシングル「WAO!」とアルバム「シャンブル」を発表し、3月より全国ツアー「蘇える勤労」を開催した。それぞれソロ活動と並行してユニコーンとしての活動も行い、メンバーが50歳を迎えた際には「50祭」と銘打ったライブイベントを実施した。2017年10月にデビュー30周年を迎え、12月にリマスタリングボックス「UC30 若返る勤労」リリース。同月より全国ツアー「UC30 若返る勤労」を開催する。
 










