音楽ナタリー Power Push - 植田真梨恵

笑顔で寄り添う励ましの歌

ただ聴いてるだけで笑顔になれるように

──そんな中で2年目の幕開けを飾るシングル「わかんないのはいやだ」がリリースされるわけですが、まず気になったのがタイトルで。「はなしはそれからだ」に続いてひらがなシリーズなのかなと。

植田真梨恵

好きなんですよね、ひらがな。ブログとかTwitterとかでもわりとひらがなが多くなる傾向があって。特に「嫌だ」は非常に強い言葉だと思うので、普段からひらがなを使うことが多いですね。ただこのタイトルに関してはそんなに強い思い入れがあるわけではないんです、実は。「はなしはそれからだ」は「絶対にこれ!」と思って付けたんですけど、今回は曲を作って、歌詞を書いて、その後タイトルどうしようかなと思って付けたっていうくらいの感じで。

──曲作りはどうやって始めたんですか?

夏にシングルを出すことが決まっていろいろ考えていたときに、仲のよい友人から突然飼っていた猫がいなくなったという話を聞いたんです。それで、その友人と一緒に猫を探したんですけど、見つからなくて。そのとき、落ち込んでいる友人になんて声をかけていいのかわからなかったんですよね。「あーダメだ、全然わからない!」と思って書き始めた曲です。

──曲を書き始めたシチュエーションや歌詞の内容からしたら、もっとしっとりとした曲でもいいと思うんです。でも、すごくテンポが速いアッパーな曲に仕上がってますよね。

BPM180くらいですもんね。まず、歌詞はどこまでもまっすぐに書きたいんですね。それは私がただただ守れる誠実さなので。でもそれだけじゃ楽しくないと思うんです。音楽の作用って、「笑ってよ」と言って笑わせるんじゃなくて、ただ聴いてるだけで元気にしたり笑わせたりできるものだと思うし、私はそういうほうが好きだし。だから、聴いてるだけで楽しくなるようなサウンドに誠実な歌詞を乗せるっていうのを意識しました。

──その友人だったり、聴いてくれる人を元気にするためにこういう曲調にしたと。

そうですね。なんて声をかけようっていうところから始まっているので、なるべく面白おかしいメロディにして元気付けたいっていうのは考えながら作りましたね。ドラムの手数はかなり細かいので、ドラマーさんはライブで大変だと思います(笑)。

──イントロからスネアの連打ですもんね。ライブですごく盛り上がりそうですし、爆音で鳴らしたら気持ちよさそうな。

夏に出すシングルなので、そこは曲を書こうってなったときから意識しました。ガッと始まって、速くて、あっという間に終わるけどすごく印象に残る曲っていうのを作ろうと。尺も3分ないですし、終わり方もカットアウトですし。

答えのないことを曲にしていきたい

──短い曲の中にもチップチューン風の打ち込みが入っていたり、しっとりとしたピアノの間奏が入っていたりして。ストレートなロックサウンドをベースにいろいろな表情がありますよね。

植田真梨恵

私の中で友人の猫がいなくなるっていうドラマが起こって書いた曲なので、間奏は心配して猫を探しているところを意識したパートですね。それで、サビになって一気に開けるイメージというか。ちなみに、冒頭は猫が走っていくイメージです。

──ピアノの弾む感じですね。

あと、最後に泣きのベースラインをお願いしますってアレンジャーさんに伝えてバッチリ入れてもらいました。この曲は一度だけサビを書き直したんですけど、そしたら一気に全体像が見えたというか、「これで間違いない!」と思えたんです。アレンジに関してもわりと具体的にお願いしましたね。

──歌詞の話をすると、「わかんないのはいやだ わかったふりもいやだ」のラインが、植田さんの真摯な気持ちを表している気がしました。わかったふりをして嘘はつきたくないっていう。

そこのラインがこの曲の肝なんですよね。結局のところわかんないのは嫌だと思っていなくて。それよりも、もし私がその友人の立場だったら、わかったふりをされたら悲しいだろうなと思ったんですよね。それと同時に私はわかったふりしてないかなってすごく不安になったというか。私はその友人に何をしてあげればよかったのか……結局正解がないことなので難しいんですけど、そういう答えのないことこそ曲にしていけたらなって。なので、ここは私にとっても大切な一文ですね。

カレーが食べたくなるジャケット

──今作のアートワークでは、イエローがキーカラーなんですよね。ベッドのシーツのほかに、地面に置かれたランプや植田さんのマニキュアもイエローで。

植田真梨恵「わかんないのはいやだ」通常盤ジャケット

今回の元気なシングルのイメージカラーを考えたときに黄色かなって。元気な黄色と健康的なグリーン、それと晴れた空で。

──ビタミンカラーですね。

そうそう、皆さんの心にビタミンを注入できたらなって。あとはカレーが食べたくなるような感じにしようと(笑)。

──最近よくブログやTwitterでカレーを話題にしてますよね(笑)。

カレー食べると元気出ません? 特に深い理由はないんですけど、夏はカレーが食べたくなるんですよね(笑)。

──ミュージックビデオもジャケットと同じシチュエーションなんですね。

「わかんないのはいやだ」は慌ただしく展開する曲なので、MVも私がすごく速く動いているように見える作品にしたいっていうアイデアを出したんです。まず曲のテンポを半分に落として6分近くにして、それにあわせて撮影し、その映像を倍速にしました。なので私がめっちゃ慌ただしく動いてる感じが出てると思います(笑)。

──ご自身でできあがりを観てみていかがでした?

実は風邪を引いてしまって、当日は走り回るとちょっと目がぐるぐる回りそうだなと思ったりもしたんですが、目まぐるしく動きまわるMVなので、かえってそれも雰囲気があって面白かったなとも思いますね(笑)。

──結果的によかったと(笑)。

はい(笑)。あと、私は歌詞ではいろいろとキレイごとを言っているのに日頃の生活の中で私自身が全然できていないことがたくさんあるんですね。なので歌っていて迷うことがあるんです。「そんなこと言う資格があるのか」って。でもこのMVを観たときはちゃんと自分自身に対して曲がまっすぐ飛んできたというか、「そうだよね」って思えて。その気持ちが皆さんにもまっすぐに伝わったらいいなと思いますね。

ニューシングル「わかんないのはいやだ」2015年8月12日発売 / GIZA studio
初回限定盤 [CD+DVD] 2000円 / GZCA-4142
通常盤 [CD]1296円 / GZCA-4143
CD収録曲
  1. わかんないのはいやだ
  2. クリア
  3. 夏の日
  4. わかんないのはいやだ -off vo.-
  5. クリア -off vo.-
初回限定盤DVD収録内容

植田真梨恵LIVE TOUR 2015「はなしはそれからだ」
3.15 LIQUIDROOMよりLIVE映像 & TOUR DOCUMENT

  1. ハイリゲンシュタットの遺書
  2. センチメンタリズム
  3. FRIDAY
  4. hanamoge
  5. プリーズプリーズ
  6. ザクロの実
  7. 100life
  8. 彼に守ってほしい10のこと
  9. ハルシネーション
  10. S・O・S
  11. カルカテレパシー

通常盤封入特典:スペシャル映像が見られるパスワード封入

植田真梨恵LIVE TOUR UTAUTAU vol.2
  • 2015年10月3日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
  • 2015年10月10日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2015年10月11日(日)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2015年10月25日(日)福岡県 DRUM Be-1
植田真梨恵(ウエダマリエ)
植田真梨恵

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」発売後、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROでワンマンライブを成功させ、同年8月にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。2015年2月にメジャー1stアルバム「はなしはそれからだ」を発表し、東名阪と地元・福岡を回るツアーを実施した。同年8月にメジャー3枚目となるシングル「わかんないのはいやだ」をリリース。