音楽ナタリー PowerPush - 植田真梨恵

闇を歌って光を照らす「ザクロの実」

今作のテーマと裏テーマ

──確かに「ハイリゲンシュタットの遺書」は打ち込みのサウンドで、ほかの2曲とはガラっと雰囲気が変わっていて面白いですね。

植田真梨恵

私はバンドじゃなくてソロアーティストなので、ある意味なんでもできるじゃないですか? 例えばバンドで弦楽器が入ってたり、「この音何?」っていうのがあると、私はその人たちまで調べたくなる性分なんですけど、私はソロだからなんでもやっていいと思っていて(笑)。

──そうなんですね(笑)。曲調もほかの2曲と比べるとアップテンポで楽しげな曲ですよね。前向きな力強さが伝わってくるし、サビで転調するのも植田さんらしいというか。

そうですね。楽しげな曲にはしたかったですね。転調するのも、この最後のサビを見越して作ったというか。「ザクロの実」もそうですけど、サビの高音を見越してそれまでの前振りがあるという感じで。でも歌詞は少しだけ切なくて、テーマからはそれてないんです。

──3曲目とも恋愛について歌っていると思うのですが、それがこのシングルのテーマですか?

そうですね……もう少し言うと、状況や気持ちは全部違うんですけど、“もしも大切な人がいなくなってしまったら”っていうのがテーマですね。なのでどの曲も切ないという。でもそれは聴く人は知らなくていいというか、例えば「ハイリゲンシュタットの遺書」は大切な人が死んでしまったあとの曲なんですが、ほんのちょっとそれが匂えばいいなと思っているくらいで。悲しいだけじゃなくって、聴いたときに音楽的にも耳に楽しい曲が作れたらとは思っています。

──だからタイトルに「遺書」って出てくるんですね。なんでベートーベンが弟や甥に宛てた手紙という「ハイリゲンシュタットの遺書」がタイトルなんだろうって。

たまたま図書館に行ったときに、「ハイリゲンシュタットの遺書」っていう本が並んでいて、「これだ!」と思ったんです。このシングルは3曲とも「○○の△△」というタイトルにしたかったんですよね。まあ、それはおまけみたいなものですけど(笑)。

“ギタ女”シーンとピアノワンマン

──11月15日に植田さんも出演された「guitar girls recommend powered by M-ON!」が東京・Zepp DiverCity TOKYOで開催されるなど、“ギタ女”と呼ばれるシーンが賑わっていると思うんですが、植田さん自身はそういう状況をどう捉えています?

植田真梨恵

「10のこと」を出したときはそういうシーンについて考えたりもしましたけど、今はあんまり意識してないですね。皆さんそれぞれ個性が違うと思うし、いい作品を作っていればそれでいいかなと。

──植田さんは自身の個性はどこにあると思います?

うーん……わからないんですけど、この“ギタ女”で括りたいこの時期に、ギターレスのピアノだけのシングルを出させてくれるスタッフさんたちでよかったなっていうのは感じていて。だって絶対スタッフさんたちみんな括りたいはずですよ(笑)。

──まあ、そうかもしれませんね(笑)。

でも2ndシングルは「ザクロの実」で勝負するって決まって、それで一丸となれているというか。「『ザクロの実』にギターの音を入れておこう」とか一言も言われなかったですからね。だから、ちゃんと楽曲のよさで勝負できているところが私の個性と自分では言いたいですね。

──このシングルはむしろ、来年1月に大阪と東京で開催されるピアノワンマンツアーへつながりますよね。

あー確かに! なるほどね。そうだったんですか?

スタッフ (うなずく)

そうらしいです。そうなんだ……私は踊らされていました(笑)。

──では最後に、図らずもシングルが布石になっていたというピアノワンマンツアーへの意気込みを(笑)。

ピアノとのライブってすごくいいんですよ。音楽をやっている感じがするんです。皆さんいろいろな音楽が巷にあふれてる中で、ちゃんと血の通ったというか、息づかいの聞こえる音楽を求めていると思うんですが、私もそうで。安心してそういう音楽をお届けできると思うので、ぜひそういうものを求めている方たちに来てほしいです。

ニューシングル「ザクロの実」/ 2014年11月19日発売 / 1296円 / GIZA studio / GZCA-4141
収録曲
  1. ザクロの実
  2. ハイリゲンシュタットの遺書
  3. 朝焼けの番人
  4. ザクロの実 -off vo.-
  5. ハイリゲンシュタットの遺書 -off vo.-
植田真梨恵(ウエダマリエ)

1990年生まれ、福岡県出身のシンガーソングライター。中学卒業を機に単身大阪へ移住し音楽活動をスタートさせる。2008年に1stミニアルバム「退屈なコッペリア」をリリースし、以降コンスタントに作品を発表しながらライブ活動を続ける。2012年に初のフルアルバム「センチメンタルなリズム」をリリースし、東京と大阪でワンマンライブを開催。2014年1月には東阪のCLUB QUATTROにてワンマンライブを実施した。2014年8月6日にシングル「彼に守ってほしい10のこと」でメジャーデビューを果たす。11月19日に2ndシングル「ザクロの実」をリリース。2015年1月に大阪と東京でピアノワンマンツアー「植田真梨恵LIVE OF LAZWARD PIANO -青い廃墟-」を実施する。