ナタリー PowerPush - 東京スカパラダイスオーケストラ

細美武士との邂逅、アメリカRECの裏側を語る

昨年、精力的なツアーを行いながら、2枚のアルバムをリリースした東京スカパラダイスオーケストラ。その勢いは2013年も止まらぬまま、アメリカ三大フェスの1つであるコーチェラを含むアメリカ、メキシコでのライブの合間にレコーディングを敢行した。そして、the HIATUSの細美武士をボーカルに迎えた会心のタイトル曲を含むアルバム「Diamond In Your Heart」がここに完成した。そのギラギラした作品の輝きについて、谷中敦(B.Sax)と加藤隆志(G)が語る。

取材・文 / 小野田雄

 
mixiチェック

コーチェラの主催者が「今年出演したバンドの中でも一番好きだ」って

──まず、2013年のお話を伺う前に、多忙を極めた2012年の活動を振り返ってみていかがですか?

谷中敦(B.Sax) 3月にアルバム「Walkin'」をリリースして、そのツアー最終日、代々木第二体育館のライブが今回のアルバムに付属するDVDに収録されているんですけど、ツアー終了から2日間だけ休んで次の作品の制作に入ったんだよね?

加藤隆志(G) そう。で、そのまま、イギリスのフェス「WOMAD UK 2012」を含むヨーロッパツアーに出て、バルセロナとロンドンでレコーディング。EGO-WRAPPIN'のよっちゃん(中納良恵)にはロンドンにまで来てもらって。帰国して日本の夏フェスに出たあと、11月にもう1枚のアルバム「欲望」をリリースして、さらにそのツアーがあって……(笑)。まあ、その間は後ろを振り返ってる余裕なんてなく、でも今にして思えば、ちゃんと道筋があって今に至っているというか、目の前に何か興味のあることが起こるたびに、みんな、それに食らいついて転がり続けていく感じが2012年はどんどん加速していきましたね。

──では、2012年には2013年の活動の予兆があったと?

加藤 コーチェラ出演の話があったのも、確か「欲望」のツアーをやってる最中だったんじゃないかな。あのフェスの存在の大きさはみんな理解してたし、そのメインステージに出ることがわかったのはけっこうあとだったんですけど、その出演の話でバンド内が盛り上がったのはよく覚えていますね。

──ただ、フェス出演だけでなく、そこに新作のレコーディングスケジュールを入れてしまうのがスカパラの容赦ないところですよね。

東京スカパラダイスオーケストラ(撮影:Rickey Wang)

加藤 コーチェラはロサンゼルスに近い場所で開催されているんですけど、ロサンゼルスにEASTWESTという長い歴史のあるスタジオがあって、「せっかくコーチェラに行くなら、そのスタジオでレコーディングしよう。そして、エンジニアも世界的エンジニアのジョー・ブレイニーさんとアルバムを作るというのはどうだろう?」っていう話になったんです。で、みんなの中にすごくワクワクする感覚が湧いてきたので、その好奇心に駆られて、渡米1カ月前という限られた中で曲を作って、あとはスタジオでガッと録ればいいという状態まで準備を進めていったんです。

──そのコーチェラは、スカパラが2004年に出演したボナルーと並ぶアメリカ三大フェスの1つですが、出演してみていかがでしたか?

加藤 さすがの三大フェスって感じですね。

谷中 そう、今まで出たヨーロッパのいろんなフェスとは何かが大きく違ってたんですよね。平地で足元もいいので、みんなおしゃれしながら参加できるし、フェスに参加できることが1つのステータスというか、「参加してる俺、カッコいい」みたいな(笑)。そういう空気が感じられるハードルの高いお客さんを前に、日本人の集団としてどうやって目立ったらいいのか、改めて考えるきっかけになりましたね。そして、コーチェラの主催者が忙しい中、わざわざ楽屋まで挨拶に来て「今年出演したバンドの中でも一番好きだ」って言ってくれたんです。どうやら、2011年にメキシコのフェス「Vive Latino」に僕らが出演したときの実績が買われて、コーチェラへの出演が決まったということだったみたいです。

──「Vive Latino」というのは中南米で最大の音楽フェスですよね。2011年のアルバム「Sunny Side of the Street」付属のDVDにそのときのドキュメンタリー映像が収録されていますけど、尋常じゃない盛り上がりでしたもんね。

谷中 あのときも漠然と思っていたんですけど、向こうのメインストリームと同じことをやろうとすると、仮にクオリティが同じだったとしても目立ちづらいんですね。だからコーチェラでは、僕らは日本人として、特殊なことをやっているというスタンスで参加するべきなんだなってはっきり思ったんですよね。というのもメキシコは、アメリカへの対抗意識が相当強くて、逆に日本人に対してはシンパシーがあるみたいで、そんな彼らは同胞の日本人が活躍することに興奮するわけですよ。コーチェラのときも客席にそういうメキシコ人の一団がいたし、中南米のオーディエンスの応援をバックに、日本人として胸を張って、これからもアメリカに行き続けるというスタンスがいいんじゃないかなって思いましたね。

──それはいい話ですね。しかも、現地ではスカパラのCDがリリースされていないにも関わらず、コーチェラ出演後のメキシコツアーも一昨年同様、大盛況だったそうで。

谷中 しかも、何やっても受けるという感じではなく、ちゃんと曲を理解した上で、盛り上がってくれるんですよ。音楽に対する素直な愛情が感じられるというか、メキシコのお客さんは今世界で一番音楽に夢を感じているかもしれない。

加藤 向こうの経済事情がどういうことになっているのか、詳しくはわからないですけど、例えばフェスに行くためにみんな1年かけて少しずつ貯金するというような話を聞きましたし、ライブ会場に人が集うんですよね。YouTubeで僕らの音楽を聴いてくれているんだろうけど、パソコンの中で終わらずに会場へ足を運んで、オーディエンスの半端ない一体感を含めて、ライブの空気を存分に楽しむんですよ。そういうライブを経験すると、日本でも同じ状況になったら、演奏する僕らもより楽しいだろうなって思うんですけどね。

細美くんが登場するイメージが鮮明に沸き上がった「Diamond In Your Heart」

──そして、今回のアメリカ、メキシコでのライブには、the HIATUSの細美武士さんが参加されたんですよね。そのニュース(参照:スカパラ×細美武士、揃いのスーツで米国フェスコラボ実現)が唐突な形で日本に伝えられたので、非常に驚きました。

加藤 はははは(笑)。ナタリーにアップされたそのニュースを現地で見てましたよ。

──なんでも、細美さんはプライベートでコーチェラへ遊びに行こうと思っていたところ……。

細美武士(撮影:Rickey Wang)

谷中 そう、観に行くつもりがライブに出ちゃったっていう(笑)。

加藤 でも、そういうコラボレーションに関して、僕らはタイミングを何より大事に考えているんですけど、去年でも来年でもなく、どんぴしゃなタイミングで彼とコラボレーションできたことがすごくうれしかったですね。個人的にはELLEGARDENをやってる7~8年前から親交がありましたね。

谷中 夜、一緒に遊んだりとかね。

加藤 ELLEGARDENでギターを弾いてる生方(真一)くんとも当時から付き合いがあったし、細美くんがthe HIATUSを立ち上げてからもずっと気になる存在だったんですね。DVDになったNHKホールのライブでのオーケストラを交えた試みだったり([Power Push] the HIATUS「The Afterglow Tour 2012」インタビュー)、そうかと思えば、最近は弾き語りで歌ったり、DJをやったりしてますし。僕がスカパラとは別でやってるSo many tearsというバンドが斉藤和義さんと中村達也さんのMANNISH BOYSとツアーを回ったとき、広島のライブに細美くんがゲストで出たんです。そのとき、彼が1人で歌っているのを初めて聴いたんですけど、すごくいい波が来てるんだなって強く思ったんですよね。それで今回のコーチェラの話とレコーディングの話が出たときに「細美くんも呼んじゃおうよ!」って盛り上がった勢いで、ドーンって一気にオファーしたんですよ(笑)。

谷中 かなり無理矢理な話だよね(笑)。だって、今まで歌ったことがない新曲を初めて一緒にやるスカパラと、しかも、コーチェラという場で披露するわけだから。オファーを受けるのは相当な覚悟だっただろうなとも思いますしね。

──では、細美さんの参加を前提に、コラボ曲を書いたわけですね。

加藤 そうですね。うちらは9人メンバーがいるので、「やるぞ!」となってから、いろんな曲が上がってきたんですけど、細美くんはボーカリストとしてもちろん歌はうまいし、カバーだったり、弾き語りだったり、みんなが知ってるthe HIATUSとは別の顔もあるから、選曲は「あれもいいし、これもいいし……」という感じになったんですよ。でも、「まずはコーチェラで演奏しようぜ!」って思いがあったから、9人と細美くんでコーチェラのステージに立つことを想像したとき、みんなの中でイントロのホーンセクションが流れて、細美くんが登場するというイメージが一番鮮明に湧き上がった「Diamond In Your Heart」が最終的に選ばれて、そこからアレンジを詰めていったんです。

東京スカパラダイスオーケストラ ニューアルバム「Diamond in your heart」 / 2013年7月3日発売 / cutting edge
CD+DVD 3600円 / CTCR-14801/B / ※初回プレス分はデジパック仕様
CD 2300円 / CTCR-14802
CD収録曲
  1. Diamond In Your Heart
    (ボーカル:細美武士)
  2. LA Traffic
  3. Aranjuez
  4. Dizzily Dazzled
  5. Born To Be Wild
  6. Skactus
  7. Rockabilly Cutie
  8. You've Got A Friend In Me
DVD収録内容

スカパラ史上最も激しく熱かった“TOUR Walkin'”ファイナル公演 (@代々木第二体育館 2012.7.6) より、客演の中納良恵(EGO-WRAPPIN')が歌う「縦書きの雨」「マライの號」「BONGO TANGO」や、EGO-WRAPPIN'とスカパラによる奇跡のコラボ「くちばしにチェリー」など17曲を収録(90分)。さらに、細美武士をゲストボーカルに迎えた「Diamond In Your Heart」のビデオクリップも収録!

TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
2012 TOUR Walkin' FINAL@代々木第二体育館 2012.7.6
  1. Return of Supercharger
  2. ルパン三世'78
  3. MONSTER ROCK
  4. Walkin'
  5. クールなスパイでぶっとばせ
  6. HURRY UP!!
  7. Lonesome Eddy
  8. マライの號
    ※ゲスト:中納良恵(EGO-WRAPPIN')
  9. BONGO TANGO
    ※ゲスト:中納良恵(EGO-WRAPPIN')
  10. 縦書きの雨
    ※ゲスト:中納良恵(EGO-WRAPPIN')
  11. 水琴窟 -SUIKINKUTSU-
  12. SKA ME CRAZY
  13. LET ME COME THE RIVER FLOW
  14. White Light
  15. All Good Ska is One
  16. くちばしにチェリー
    ※ゲスト:EGO-WRAPPIN'
  17. DOWN BEAT STOMP
  • Diamond In Your Heart –music video-

※初回出荷分はデジパック仕様

沖祐市ソロアルバム「Gospel」 / 2013年7月3日発売 / cutting edge
2800円 / CTCR-14790 / ※初回プレス分はデジパック仕様
So many tearsニューアルバム「LOVE & WANDER」 / 2013年7月3日発売 / cutting edge
2800円 / CTCR-14795 / ※初回プレス分はデジパック仕様
東京スカパラダイスオーケストラ
(とうきょうすかぱらだいすおーけすとら)
東京スカパラダイスオーケストラ

NARGO(Tp)、北原雅彦(Tb)、GAMO(Tenor sax)、谷中敦(Baritone sax)、沖祐市(Key)、川上つよし(B)、加藤隆志(G)、大森はじめ(Per)、茂木欣一(Dr)からなる9人組バンド。1989年11月にインディーズで黄色いアナログ「TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA」をリリースし、その本格的なサウンドと独自のスタイルが話題を集める。1990年4月にシングル「MONSTER ROCK」、アルバム「スカパラ登場」でメジャーデビュー。以降、オリジナルメンバーの逝去や脱退といった幾多の困難を乗り越え、2008年7月より現在の編成となる。スカをルーツに多彩なジャンルを取り込んだ豊かな音楽性は国内外のオーディエンスから高い評価を獲得。国内はもとより、ヨーロッパを中心に世界各国でライブを行い、日本を代表するライブバンドとしてワールドワイドな活躍を続けている。